所得税 – 墨田区錦糸町の会計事務所。アンパサンド税理士法人

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【社内勉強会⑤】現物給与について学ぼう

こんにちは。スタッフの大滝です。

昨年の勉強会は、消費税をテーマにしてきましたが、今年は現物給与について【現物給与の課税対象と非課税の取り扱い】という

テーマで勉強会を行っています。早速ですが、内容を整理していきます。

 

1 福利厚生と現物給与

 

2019年4月に施行された働き方改革関連法案や、ワークライフバランスという言葉を耳にするようになりました。

 

労働者を雇用する企業としては、労働者の健康や生活の向上を目的とした、福利厚生制度を充実させることを重視している企業が増加してきているように思います。

 

金銭支給以外で、従業員に対して食事の支給や商品の値引き販売、レクリエーション行事の開催等のように、

物または権利等の経済的利益をもって支給されることを現物給与と言います。

 

本来、給与は金銭で支給されますが、現物給与は役員や使用人に対して福利厚生の側面があり、

また選択性や換金性に難点があるため、一定のものは非課税とする税務上の取り扱いが設けられています。

 

そこで、現物給与の課税対象と非課税の取り扱いについて、具体的な事例をもとに整理していきます。

 

2 具体例 ~通勤交通費~

 

会社に通勤するための通勤手当は、通常「手当」として金銭で支給されていることが多いと思います。

 

交通機関や有料道路を利用している人に支給する通勤手当は、平成28年度の税制改正により、

最高で月額15万円までは非課税とされています。(改正前の最高限度額は10万円)

 

また、実務上では、新幹線通勤やグリーン車を利用した場合はどのような取り扱いとなるのかという疑問もあるように思います。

 

新幹線通勤は、最も合理的な方法であれば通勤手当として支給できますが、一方でグリーン車等の特別車両の利用は、

合理的な方法という定義の中に含まれないと考えられるため、給与課税される可能性があります。

 

さらに、交通機関を使用せず、自動車や自転車通勤の人に支給する通勤手当の非課税枠は、

通勤距離ごとに限度額が決められています。詳しくは、国税庁HPをご参考ください。

 

国税庁「No.2585 マイカー・自転車通勤者の通勤手当」

 

【課税される範囲】

1か月15万円以上の通勤手当の支給か、マイカー等の通勤については通勤距離ごとの限度額を超えて支給した場合

 

3 具体例 ~社宅家賃~

 

会社(使用者)が、役員や従業員(使用人)に対して社宅を提供している場合があります。

借上げ社宅等という制度として会社で設けていることも多いと思います。

 

役員と従業員で計算方法が異なりますが、1か月当たり賃料相当額を本人から受け取っていれば給与として課税されません。

下記【賃料相当額の計算について】に記載の計算方法を用いて、賃料相当額を計算します。

 

もし、本人から賃料相当額を受け取っていない場合には、賃料相当額と実際の徴収額の差額が給与課税されます。

 

例えば、賃料相当額が10万円で、実際に徴収している金額が4万円の場合、差額の6万円に対して給与課税されます。

 

なお、多くは従業員への福利厚生の要素が大きいと考えますが、例えば病院の夜間勤務など、業務遂行上の必要により、

役員または従業員の居住場所を著しく制限しなければならない理由で、社宅や寮に入居させている場合等

給与課税されないケースもあります。

 

【賃料相当額の計算について】

 

Ⅰ 役員

役員に対する社宅の貸与は、社宅の床面積により「小規模な住宅(木造132平米以下、非木造99平米以下:共用部分を含む)」と「それ以外の住宅」に分かれ、下記のように計算します。

また、いずれにも該当しないような豪華な社宅(床面積240平米超え)である場合には、算式の適用はなく、通常支払うべき使用料に相当する額(時価)が賃料相当額になります。

 

①小規模な住宅である場合

 《算式A》 (1)~(3)の合計額

(1)(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%

(2)12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/(3.3平方メートル))

(3)(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%

 

②上記①以外の住宅(小規模な住宅以外)で自己所有の場合

 《算式B》 (1)~(2)の合計額の1/12

(1)(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×12%

※ただし、法定耐用年数が30年を超える建物の場合には12%ではなく、10%となります。

(2)(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×6%

 

③上記①以外の住宅(小規模な住宅以外)で借り上げ社宅の場合

 《算式B》または、賃料の50% のいずれか高い方

 

国税庁「No.2600 役員に社宅などを貸したとき」

 

Ⅱ 従業員

 《算式A》 (1)~(3)の合計額

従業員の場合には、算式Aで計算した賃料相当額の1/2の金額を本人から徴収していれば、課税されないことになります。

もし、本人から賃料相当額を受け取っていない場合には、算式A⑴~⑶の合計額と、本人から徴収している金額の差額が給与課税されます。

 

また、算式Aに用いられている固定資産の課税標準額は3年に1度変更があります。

特に役員の場合には、このタイミングで都度、賃料相当額を見直すことも重要ですが、

従業員の場合には、課税標準額が20%以内の増減の時は改定計算を要しません。

 

国税庁「No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき」

 

【課税される範囲】

役員や使用人に無償で社宅を貸与したり、賃料相当額よりも低い金額を徴収している場合

 

<一口メモ> 社会保険における現物給与 ~住宅で支払われる報酬等~

 

役員や従業員に社宅を貸与した場合には、上記のような税務上の取り扱いだけでなく、社会保険においても現物給与の対象となります。

物価の変動などに合わせて、毎年4月に改定される「厚生労働大臣が定める現物給与の価額」(厚生労働省告示)に定められた額に基づいて、

社会保険の被保険者が受けた現物給与を通貨に換算して、社会保険料を算定します。

 

令和4年4月改定 「厚生労働大臣が定める現物給与の価額」

 

例:東京都(令和4年4月価格 2,830円)

居住スペース 5畳/本人が負担する賃料相当額 10,000円の場合

2,830円×5畳=14,150円

14,150円-10,000円=4,150円(現物給与)

 

社宅家賃を会社が全額負担している場合には、14,150円が現物給与となり、社会保険の標準月額を算定する際には、毎月の報酬月額に上乗せします。

一方で、従業員から賃料相当額を徴収している場合には、徴収している金額を引いた4,150円が現物給与となります。

 

4 具体例 ~食事支給~

 

社内食堂での食事提供や、食券の支給などを採用している会社も多く、現物給与の中では一番身近なものだと思います。

 

①昼食

食事の支給(昼食)については、下記の要件を満たしていれば課税されないこととなります。

(1)役員または使用人が、食事の価額の50%相当額以上を負担している場合

(2)役員や使用人に支給した食事について、使用者(会社)が負担した金額が月額3,500円以下の場合

※消費税および地方消費税の額は除く

 

②夜食

夜勤や深夜残業など会社から命令された勤務時間帯での、食事支給については無料で提供しても課税しなくて良いとされています。

深夜勤務者への食事支給(夜食)は、深夜時間帯の食事の提供が困難であるという考え方により、1食あたり300円以下であれば課税されません。

 

国税庁「No.2594 食事を支給したとき」

 

【課税される範囲】

昼食代を会社が負担して下記①②のいずれかに該当する場合は、

食事の価額から役員や使用人の負担している金額を控除した残額に課税

①役員や使用人が負担している金額<食事の価額×50%

②役員や使用人が負担している金額<会社が負担している金額(月額3,500円以上)

 

 

<一口メモ> 社会保険における現物給与 ~食事で支払われる報酬等~

 

先程、社宅家賃の項目でも整理しましたが、食事についても社会保険の現物給与の対象となります。

現物給与額の計算方法は、社宅と同様ですが、食事の場合には「1か月あたり/1日あたり/1日あたり(朝食・昼食・夕食)」と

単価が細分化されているので、社会保険料の算定時に気を付けるポイントかと思います。

 

住宅の現物給与との違いとして、食事の場合には、現物給与価額の3分の2以上を食事代として徴収している場合には、食事の供与はないもとして取扱います。

 

5 具体例 ~金銭の貸付~

 

役員や従業員に対して、会社が無利息または、低い利息で金銭を貸し付ける場合、経済的利益を受けることになるため原則として給与課税となります。

 

しかし、災害等の理由で臨時的に多額の生活資金を必要とする場合や、会社における借入金の平均調達金利と同等の貸付金利を定め、利息を徴収している場合は、担税力の考慮や少額不追及の趣旨により、課税しないこととされています。

 

国税庁のHPによると、貸付を行った日の属する年に応じた利率が定められており、令和3年中に貸付けを行ったものは、金利1.0%とされています。

無利息や低い金利で金銭を貸し付けた場合には、実際に支払う利息の額と貸付を行った日の属する年に応じた利率で計算した利息の額の差額が、給与課税されます。

 

国税庁「No.2606 金銭を貸し付けたとき」

 

【課税される範囲】

役員や従業員に対して、無利息や低い金利での貸付を行った場合

 

6 具体例 ~レクリエーション費用~

 

社内交流やチーム力の向上等を目的として、会社は社員旅行や会食、運動会などのレクリエーションを行うことがあります。

 

原則として、これらの行事に参加して受けた経済的利益は給与として課税されることになります。

しかし、社会通念上一般的な行事と認められれば、会社がその費用を負担した場合でも給与課税されないこととして取り扱われます。

 

非課税とされる行事の範囲として、下記のように整理できます。

 

①社員旅行

国内、海外を問わず4泊5日以内の期間で、社員の50%以上が参加している場合

 

②その他(会食、運動会など)

参加対象者を限定していない場合

 

上記ともに、不参加者に対して金銭を支給した場合には、参加者も含め全員が給与課税されることになります。

これは、旅行に参加するか・金銭をもらうかを選択できる状況になるためです。

 

国税庁「No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行」

 

【課税される範囲】

特定の人(役員のみ・成績優秀者のみ等)を対象とした行事

 

7 具体例 ~技術取得~

 

従業員のスキルアップや業務に必要な技術習得のために、研修制度を設けている会社も多いと思います。

 

知識や技術の習得にかかる研修受講費用や教材費などは、会社の仕事に直接必要であること、その費用が適正な金額であれば、

給与として課税しなくてもよいことになっています。

 

例えば、経理課に所属となり簿記の資格取得のための費用を会社で負担してもらうといった場合には、研修費という判断が出来ると思います。

一方で、資格の合格者のみに資格取得にかかった費用を支給するとなると、お祝い金のような意味合いが強くなると考えられますので、給与課税されることがあります。

 

国税庁「No.2588 職務に必要な技術などを習得する費用を支出したとき」

 

【課税される範囲】

業務に直接必要とされない知識や技術取得にかかる費用

特定の人(合格者のみ等)を対象とした費用支給

 

8 具体例 ~生命保険~

 

会社が、役員または従業員を被保険者とする生命保険の保険料を支払ったことによる経済的利益は、生命保険の種別によって取り扱いが下記のように整理できます。

 

①養老保険

 

②定期保険

【課税される範囲】

特定の人(役員のみ等)が加入対象の場合

 

9 具体例 ~商品値引~

 

従業員に対して、会社で取り扱っている商品や製品を提供する場合には、値引き販売をする制度を設けている企業が多いです。

一般的に行われている値引販売については、経済的利益の額が少額であることや一般の消費者に対しても値引販売が行われる場合があること等を考慮して設けられています。

 

この場合、下記を全て満たす場合に非課税とされます。ただし、土地、建物、有価証券についてはこの制度の対象外です。

 

①販売価額が取得価額以上であること

例:会社の仕入価額1,000円、従業員への値引き価額1,200円

 

②値引販売する価額が、会社が販売する価額に比べて著しく低くないこと(通常、他に販売する価額のおおむね70%未満でない)

例:会社が販売する価額2,000円、従業員への値引き価額1,500円

 

③値引率が全員一律か、地位や勤続年数に応じて合理的なバランスが取れていること例:勤続5年以上の従業員は15%オフで販売等

 

④一般消費者が通常消費できる数量

 

【課税される範囲】

会社の仕入価額より低い価額やアンバランスな価額での販売

 

10 具体例 ~永年勤続・創立記念品等~

 

従業員の永年勤続を表彰したり、会社の創業を記念して、従業員に創立記念品を配布するような行事は一般的に行われています。

 

創業記念品の支給のついては、役員や従業員だけでなく株主や取引先などの社外の関係者にも供与されることが想定されるため、

下記の要件を満たす場合には、給与課税しないこととして取り扱います。

 

①支給する記念品が社会通念上ふさわしいもの

②処分見込み額が10,000円以下のもの ※消費税等の金額を除いて判定します。

 

一方で、金銭や有価証券等の支給や、記念品を従業員が自由に選択できる場合には給与課税されます。

 

【課税される範囲】

金銭・有価証券、記念品を従業員が自由に選択できるもの、処分見込額が10,000円超のもの、などを支給した場合

 

11 所長の一言

 

こんにちは。税理士の山田です。

現物給与については、課税・非課税の判断が難しく、非常にグレーな取扱いが多くあります。

従業員のためと思って行っていた福利厚生が急に給与として課税されるケースもあります。

 

とあるIT企業が無料で社員食堂を提供いていたところ給与課税がされたケースや、仕事の都合で社員旅行に参加出来ない方に金銭を支給したところ、

全従業員に給与課税がされたケースなどあります。社員のための福利厚生が結果として、社員の税金を増やして負担をさせてしまうことがあるので注意しましょう。

 

福利厚生の設計時には給与課税がされないように、税法上の取扱いを整理する必要があります。

また、社会通念上一般的と言える範囲が非課税、という非常にあいまいな基準な部分も多く、税務調査の際に議論となることも少なくありません。

全く準備がされていないとゼロベースでの議論になってしまい調査で不利な判断がされてしまうことがありますが、

非課税であると判断するための根拠を整えておくことで、調査官の心象も大きく変わってくると考えます。


超速報!令和4年度(2022年度)税制改正大綱を徹底解説!

こんにちは。

税理士の山田です。

 

今回は令和3年12月10日に公表された『令和4年度(2022年度)税制改正大綱』の中から特に気になった項目を抜粋して解説をします。公表されたばかりの情報ですので、スピードと解り易さを重視して解説しております。正確性を担保するものではございませんので、予めご了承ください。内容に誤り等がございましたら随時訂正して参ります。

また、税制改正大綱は税制改正の素案となるものであり、おおむねこの通りの改正がされることがほとんどですが、100%確実ではございません。読みやすさを重視するために文中ではまだ予定であることを態々記載していませんが、確定事項ではない点はご理解ください。

 

なお、一部で話題になっていた『相続税と贈与税の一体化』については、今回の改正では織り込まれていません。引き続き検討を進めるようですが、早くても再来年以降の税制改正項目ということになりますので、改正のタイミングとしても早くても令和5年4月以降になります。

 

※令和4年度(2022年度)税制改正大綱についてはこちらをご覧ください。

https://www.jimin.jp/news/policy/202382.html

 

Ⅰ個人所得税課税(地方税含む)・源泉所得税

  1. 住宅ローン控除の改正

従前では令和3年において住宅ローンを組んで自宅を購入した場合に、借入限度額を5000万円(住宅の取得等が特定取得以外の場合は3000万円)として、住宅借入金の年末残高に対して1%の税額控除を10年間適用出来る取扱いとなっていましたが、令和4年以降も延長はするもの主に増税傾向となります。具体的には下記の表の取扱いとなります。

種類

居住年

借入限度額

控除率

控除期間

認定住宅等以外の居住用家屋の新築等

令和4年~5年

3000万円

0.7%

13年

令和6年~7年

2000万円

10年

認定住宅等以外の中古家屋の取得等

令和4年~7年

認定住宅(認定長期優良住宅と認定低炭素住宅)の新築等

令和4年~5年

5000万円

13年

令和6年~7年

4500万円

ZEH水準省エネ住宅の新築等

令和4年~5年

4500万円

令和6年~7年

3500万円

省エネ水準適合住宅の新築等

令和4年~5年

4000万円

令和6年~7年

3000万円

認定住宅等の中古家屋の取得等

令和4年~7年

3000万円

10年

※ 本税制の適用対象者はその年の合計所得金額が3000万円以下であることが要件となっていましたが、令和4年以降は2000万円以下が要件に引き下げられます。

※ 中古住宅の取得については、従来設けられていた築件数要件が撤廃される一方で、新耐震基準に適合する住宅であることが要件となります。

 

控除率が下がるのは住宅ローンの金利が大幅に下がりいわゆる逆ザヤ状態になってしまっていたためにそれを解消する措置となります。つまり、住宅ローンの変動金利が0.5%を下回ることも珍しくなくなってしまうほどの低金利であり、支払う住宅ローンの金利よりも本税制の控除額の方が多くなってしまうという現象が生じてしまっていたためとなります。

従前の新型コロナ税特法においては一定の条件で借入限度額を5000万円、控除率1%、控除期間は13年間とする取扱いが令和4年まで可能ですが、その点は特に変更がないと思われます。(大綱に詳細はなし)

 

  1. 子会社等からの配当に係る源泉所得税を廃止

以下の会社からの配当については、所得税の源泉徴収を行わないこととします。適用時期としては、令和5年10月1日以降に支払いをすべき配当について適用されます。

・ 完全子法人株式等(100%保有の子会社)

・ 基準日に置いて直接保有する株式等の保有割合が3分の1超である子会社

 

  1. 配当が総合課税とされる大口株主の範囲を拡充

上場株式等の配当等については源泉分離課税が適用されるところですが、大口株主が受け取る配当についてはこの制度が適用されずに、非上場株式からの配当と同様の取扱いとして、20.42%の源泉徴収がされたうえで総合課税により確定申告が必要とされています。

従来はこの大口株主の範囲として、直接にその会社の発行済株式の3%以上が保有する方が対象となっていましたが、その方が支配関係を持つ同族会社がその会社の株式を持っている場合に、3%の判定に含めることになる予定です。この改正は、令和5年10月1日以後に支払うべき配当等について適用がされます。

なお、私見ですが3%の判定おいては分母である発行済株式総数に自己株式を含めて判定することになっており、この点についても本来は改正がされるべき点であると思われますが、今回の大綱には含まれていません。将来的に改正となる可能性は高い部分ではないかと考えます。

 

  1. 納税地の変更に関する届出書

納税地が変更した場合には、税務署長に届出書を提出するルールとなっておりましたが、令和5年以降については届出書の提出が不要となります。(個人消費税についても同様)

 

  1. 上場株式等の配当所得割に係る課税方式の改正

個人住民税において、特定配当等及び特定株式等譲渡所得金額に係る所得の課税方式を所得税と一致させることとなりました。恐らくですが、これは所得税と住民税について別々の課税方法を選択することで、上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除額が所得税と住民税で不一致になってしまうことを防ぐ措置であると思われます。

 

Ⅱ資産課税

  1. 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税措置

適用期限(現行は令和3年12月31日)を令和5年12月31日までに延長し、限度額については下記の通りとなります。

・ 通常の住宅 500万円

・ 耐震、省エネ又はバリアフリーの住宅用家屋 1000万円

 

  1. 非上場株式等に係る納税猶予の特例制度

特例承継計画の提出期限が現行は2023年3月末までとなっていますが、1年延長してい2024年3月末までとなります。

 

  1. 添付書面等記載事項の提供方法の見直し

相続税の申告書の添付書類の提供方法に、光ディスク及び磁気ディスクが追加されました。相続税の申告書の添付書類は膨大な量となりますが、電子申告の添付データについては容量が限られているために取られた措置であると推察します。

 

  1. 財産債務調書制度等の見直し

まずは提出義務者が拡大され、現行の提出義務者にプラスでその年の12月31日において有する財産の価額の合計額が10億円以上である居住者が追加されました。

一方で提出期限については、現行は翌年の3月15日までとされていたものが翌年の6月30日に延長がされました。こちらの改正は国外財産調書についても同様の改正となります。

 

Ⅲ法人課税(地方税含む)

  1. 人材確保等促進税制の改正(いわゆる大企業向け)

従来の人材確保等促進税制を改正し、下記の変更が行われます。対象となる給与額の計算については、令和3年3月31日以前の開始事業年度に対する取扱いに戻る形になると思われます。(この1年間は一体なんだったのか・・・)

改正項目

現行

改正

適用期間

令和3年4月1日から令和5年3月31日までに開始する事業年度 令和4年4月1日から令和6年3月31日までに開始する事業年度

適用要件

新規雇用者給与等支給額(※)が、前年度より2%以上増えていること

※    国内新規雇用者のうち雇用保険の一般被保険者に対してその雇用した日から1年以内に支給する給与等の支給額

継続雇用者給与等支給額(※)が、前年度より3%以上増えていること

※    当期及び前期の全期間の各月分の給与等の支給がある雇用者で一定のもの(おそらく雇用保険の一般被保険者)に対して支給する給与等の支給額

控除額計算

控除対象新規雇用者給与等支給額(※)の15%

※    国内新規雇用者に対してその雇用した日から1年以内に支給する給与等の支給額

控除対象雇用者給与等支給増加額(※)の15%

※    明記されていないが、おそらく役員と役員親族以外の全従業員に対する給与等の支給額についての前年からの増加額

上乗せ措置

①教育訓練費の額が、前年度より20%以上増えている場合には、税額控除率を5%加算

 

①継続雇用者給与等支給額の増加割合が4%以上である場合には、税額控除率を10%加算

②教育訓練費の額が、前年度より20%以上増えている場合には、税額控除率を5%加算(変わらず)

教育訓練費の明細書

確定申告書の添付 会社保管

※ 資本金の額が10億円以上であり、かつ、常時使用する従業員の数が1000人以上である場合には、一定の事項を経済産業大臣に届出が必要

※ 人材確保等促進税制について

https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/syotokukakudaisokushin/syotokukakudai.html

 

  1. 所得拡大促進税制の改正(中小企業者限定)

従来の所得拡大促進税制を改正し、下記の変更が行われます。

改正項目 現行 改正
適用期間 令和3年4月1日から令和5年3月31日までに開始する事業年度 令和4年4月1日から令和6年3月31日までに開始する事業年度
上乗せ措置 雇用者給与等支給額の増加割合が2.5%以上であり、次のいずれかに該当する場合は税額控除率を10%加算

①教育訓練費の額が、前年度より10%以上増えている場合

②経営力向上計画の認定を受けて、かつ証明がされた場合

①雇用者給与等支給額の増加割合が2.5%以上である場合には、税額控除率を15%加算

②教育訓練費の額が、前年度より10%以上増えている場合には、税額控除率を10%加算

※ 所得拡大促進税制について

https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/syotokukakudai.html

 

  1. 大企業向けの税額控除制限措置の改正

大企業向けの研究開発税制等の特定税額控除規定の適用を受けることができないこととする措置について要件が改正されます。資本金の額が10億円以上であり、かつ、常時使用する従業員の数が1000人以上である場合で、かつ、前年度の課税所得金額がプラスであるときについては、継続雇用者給与等支給額の前年からの増加割合が1%以上(令和4年4月1日から令和5年3月31日までに開始する事業年度は0.5%以上)でなければ、特定税額控除規定の適用を受けることが出来ません。

 

  1. みなし配当の計算について

資本の払い戻しに係るみなし配当の額の計算について、払戻等対応資本金額等はその払い戻しにより減少した資本剰余金の額を限度とすることになりました。(従前は取扱い無)

また、種類株式を発行する法人の資本の払い戻しに係るみなし配当の額の計算について、種類資本金額を基礎と計算することになりました。(従前は取扱い無)

 

  1. 少額資産の損金算入制度について貸付用資産を除外

下記の規定について貸付の用に供する資産を対象から除外します。ただし、主要な事業として行われるものを除きます。

・ 少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度(10万円未満の少額資産)

・ 一括償却資産の損金算入制度(20万円未満の一括償却資産)

・ 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入特例(30万円未満の少額資産)

 

  1. グループ通算制度の投資簿価修正の改正

グループ通算制度ではグループ離脱時の、通算子法人株式の譲渡原価の計算を税務上の簿価純資産を元に計算するような仕組みとなっていましたが、これでは子法人買収時の買収プレミア相当額を税務上の損金として算入出来なくなってしまうことが問題視されていましたが、改正が行われました。

改正としては、グループ離脱時における各法人の確定申告において一定の計算明細を添付することで、子法人株式の帳簿価額に資産調整勘定等対応金額を加算するような調整計算が行われます。資産調整勘定等対応金額とはグループ通算開始時に時価取得をしたその子法人株式の取得価額のうち、仮にその時点で合併をしたものとした場合における資産調整勘定又は負債調整勘定相当額とされています。

個人的な意見として、負債調整勘定相当額が調整計算に含まれているのは、買収時の負ののれん相当額が離脱時に損金に算入されることを防ぐ措置であると思われますが、そもそもの取扱いが明細書の添付を要件としている規定となっており、不利な取扱いの場合には明細書の添付をあえてしないことで課税を免れることが出来るのか否か、という点が気になる点となります。

また、グループ離脱時の時価評価資産の取扱いで、帳簿価額が1000万円未満である資産については時価評価資産から除外されていますが、営業権については帳簿価額が1000万円未満であっても除外されないことになりました。

 

  1. ソフトバンクグループ対策税制の改正

ソフトバンクグループ対策税制とは、50%超の支配関係がある子会社からの配当を適用対象として、その株式等の簿価の10%を超える配当が行われた場合に、株式の簿価の切り下げを行う措置となります。ただ、適用除外要件として下記のような配当については対象から除外されます。複雑な制度となりますが、詳細は割愛しております。

① 設立以来90%以上国内資本のみの内国法人からの配当

② 買収後に発生した利益剰余金からの配当

③ 10年超支配継続している会社からの配当

④ 2000万円以下の配当

また、適用回避防止規定として、子法人が一定の孫法人(適用除外要件の①か③を満たす法人以外である法人)から1事業年度中に受ける配当等の額が、孫法人株式等の帳簿価額の10%を超え、かつ、2000万円を超える場合には、適用除外要件を満たさない措置が従来から取られています。

このソフトバンクグループ対策税制として、下記の2点の改正が行われます。こちらは令和2年4月1日以後の開始する事業年度から遡って適用するようです。

① 一点目として、上記適用除外要件の②について、従来は特定支配日の直前事業年度から配当決議等の直前事業年度までの利益剰余金額の増加額が配当金額を超えている場合には適用除外とされる措置が取られていました。ただし、このルールでは『配当決議等の直前事業年度から配当決議等までの間に増減した利益剰余金額』を原資として配当した場合には、適用除外要件を満たすことが出来ないことから、一定の書類保存を要件として上記の金額を計算に反映させることが可能となります。ただし、その場合には『特定支配日の直前事業年度から特定支配日までの間に増減した利益剰余金額』についても調整が必要となります。

② 二点目として、適用回避防止規定については孫法人が以下の要件を満たす場合には適用しないこととします。つまり、子法人は適用除外要件を満たせば本税制の適用を回避出来ます。

・ 配当等の基準時以前10年以内に子法人との間に特定支配関係があった孫法人の全てが、孫法人の設立時からその基準時まで継続してその子法人の特定支配関係にあった場合

・ 親法人と孫法人の間に、その孫法人の設立時から孫法人から子法人への配当等の基準時まで継続して親法人による特定支配関係がある場合で、かつ、その基準時以前10年以内に孫法人との間に特定支配関係があったひ孫法人の全てが、ひ孫法人の設立時からその基準時まで継続してその孫法人の特定支配関係にあった場合

 

  1. 大法人に対する事業税所得割の税率の見直し

外形標準課税適用法人については、令和4年4月1日以後の開始事業年度から軽減税率適用法人に該当しないことになり、所得割の標準税率は一律で1%となりました。

 

Ⅵその他

  1. 隠蔽仮装行為があって確定申告書が提出された場合等の措置

隠蔽仮装行為があって確定申告書が提出された場合や確定申告書の提出が無い場合には、帳簿書類や明らかな証拠書類等が無い限りは、その明らかなエビデンスが準備出来ない経費については損金の額に算入しないような措置が取られるようです。これは証拠書類が無い場合に調査で水掛け論になることを防ぐために取られた措置であると思われます。

 

  1. 修正申告書や更正の請求書の記載事項の整備

修正申告書や更正の請求書の記載事項より、申告前又は更正前の「課税標準等」「納付すべき税額の計算上控除する金額」「還付金の額の計算の基礎となる税額」を除外することになりました。これにより様式が簡略化されると思われます。

 

  1. 電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存の宥恕措置

電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度について、令和4年1月~令和5年12月までの期間については、税務署長が保存できないことにつきやむを得ない事情があると認め、保存義務者が税務調査を受けた際に印刷した書面の提出が出来る状況にある場合には、保存要件を満たすこととなります。この趣旨としては、保存要件への対応が困難な事業者の実情に配慮し、税務署長への手続きを要せずに出力書面等による保存を可能とするためのものである旨が大綱に明記されています。

ここからは私見となりますが、上記の『税務署長が保存できないことにつきやむを得ない事情があると認め』という部分については全ての法人について(又は中小企業限定か)、一律でやむを得ない事情があると認めるものと考えます。つまり、法律が施行された後に国税庁よりその旨の案内がされるのではないかと推察します。そうでなければ、上記の大綱の趣旨にそぐわないと考えます。

 

  1. 消費税の適格請求書等保存方式に係る見直し

免税事業者が令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中に適格請求書発行事業者の登録を受ける場合には、その登録日から発行事業者になれるような措置が取られます。また、この適用を受けて登録日から課税事業者となる適格請求書発行事業者については、2年間は課税事業者が強制される措置が取られるようです。

※ 本制度の概要については当社の別記事をご確認下さい。

適格請求書保存方式(インボイス制度)の概要

 

  1. 税理士制度の見直し

税理士事務所に該当するかどうかの判定について、設備又は使用人の有無等の物理的な事実により行わないことにするようです。リモートワーク等の柔軟な対応が出来るようにすることへの配慮であると思われます。

また、税理士試験の会計科目(簿記論と財務諸表論)の受験資格について、不要となります。つまり、高校生や大学低学年であっても会計学の試験は柔軟に受検が出来るようになると思われます。これは令和5年の試験から適用がされるようです。個人的には業界の発展のために非常に嬉しい改正です。


生命保険にまつわる税務

 

こんにちは。
公認会計士の岸です。

 

ご家族にもしものことがあった場合に備えて、生命保険に加入されている方が多いのではないでしょうか。

この点、保険契約期間中は保険料の支払いや保険事故発生に伴う保険金の受取りなどが行われますが、

それぞれのタイミングで課税関係の検討が必要になります。

検討が不十分ですと、保険に関する処理で思わぬ税金の支払いが生じてしまった、ということにもなりかねません。

 

そこで、本記事では、個人、法人の生命保険にまつわる税務の概略をまとめましたので、

保険契約内容の現状確認や新規契約などにあたっての参考にご覧いただけますと幸いです。

 

1.保険期間中の流れ

 

保険期間中に発生するイベントは主に以下のようなものがあります。

保険事故の発生か、保険契約の解約、により保険契約は終了します。

それぞれのタイミングで課税関係の検討が必要となります。

 

 

2.保険契約の登場人物

 

保険契約には、「被保険者」、「保険料の負担者」、「保険金受取人」の三者が登場します。

 

一般の人に馴染みがあるのは、親が自身が亡くなった時のために子供のために保険を契約しているなどの

個人間の契約かと思いますが、法人として役員や従業員のために保険を契約する場合もあります。

そのため、保険契約はその主体が個人であったり、法人であったり、と個々のケースによって様々であるため、

保険の税務は複雑になります。

 

この三者の組み合わせによって、保険契約に関する課税関係が大きく変わってきます。

 

 

3.保険料支払時の課税関係

 

本節以降で、保険契約中に発生するイベントごとに課税関係を紹介していきます。

まずは、契約期間中に保険料を支払った際の税務です。

 

(1)所得税(個人)

 

個人の方が生命保険料を支払っている場合には、確定申告で生命保険料控除(所得税法第76条)を適用することができます。

 

詳しい計算方法の説明は割愛しますが、必ずしも支払った保険料の全額が控除されるわけではなく、

一定の限度額までしか控除が認められていません。

 

年末近くになると保険会社から保険種類や支払保険料をまとめた資料がご自宅に送付され、

年末調整にあたって資料の提出を行われている方が多いのではないでしょうか。

 

(2)法人税

 

法人が加入する保険には様々なタイプのものがありますが、ここでは基本的な保険種類である「養老保険」と「定期保険」の

取り扱いに絞ってご紹介していきたいと思います。

 

養老保険」とは、被保険者の死亡または生存を保険事故とする生命保険です。

いわゆる積立型の保険であり、お亡くなりになった際に生命保険金がおりるとともに、

いつ解約しても積み立てた額のうち一定額が必ず将来返ってきますので、貯蓄性のある保険といえます。

 

定期保険」とは、一定期間内における被保険者の死亡を保険事故とする生命保険、と定義されています。

いわゆる掛け捨て型の保険であり、養老保険とは異なり満期保険金が存在せず、

被保険者が亡くならない限りは保険金が支払われないことから、貯蓄性がない保険といえます。

 

特徴としては「養老保険」は積立がある分、保険料が高くなる傾向があり、「定期保険」は保障のみですので、

保険料は低くなる傾向があります。

 

また、以下でご紹介する保険料の法人税の取り扱いに関しては、実は法人税法上には明確な定めはなく、

国税職員内部の取り扱い指針である基本通達というものに、その詳細が定められています。

基本通達は法令ではないので、厳密には納税者を拘束するものではないのですが、

この基本通達に従って申告を行うのが実務になっています。

 

理解にあたっては、その保険契約によって誰が受益者となるか?によって課税関係が変わってくると考えると、

整理しやすいかと思います。

 

a.養老保険の取り扱い

 

養老保険を契約している場合の課税関係は以下の通りです。

養老保険は貯蓄性のある保険であることから、法人が受け取る保険金に対応する部分(保険料の半額)については、

資産計上が求められています。

 

 

b.定期保険の取り扱い

 

定期保険については、掛け捨て型の保険であり、養老保険とは異なり貯蓄性がないことから、

その全額について損金算入が認められています。

 

なお、定期保険には満期保険金が存在しませんが、契約期間途中で契約を解約した場合に

解約返戻金が発生するタイプのものがあります。

そのような定期保険に関しては、将来の解約時に戻ってくる返戻金部分については貯蓄性があるだろうということで、

基本通達では以下のように解約返戻率(支払保険料に対する解約返戻金の割合)という指標に基づいて定期保険を分類し、

税務上のルールを規定しています。

支払った保険料に対する解約返戻金の割合が高いほど、貯蓄性が高いものと考え、資産計上額が増加するイメージです。

 

(法人税基本通達9-3-5の2より抜粋)

 

(3)消費税(個人、法人)

 

消費税法上は、保険料は課税対象として馴染まないもの、非課税となっています。

個人の方が保険料を支払われている場合には、その保険料には消費税は課税されていないことになります。

また、法人が保険料を支払っている場合には、その保険料に関しては仕入税額控除が適用できないことに

留意する必要があります。

 

(4)その他(相続税、贈与税)

 

契約者が子供であるのに、その親が保険料を支払っている場合には、

実質的には親が契約者であるとみなされる可能性があることに注意する必要があります。

 

後ほどご説明させていただきますが、契約者と保険金受取人の関係によっては、

所得税が課税されるのか、相続税が課税されるのか、といった判定結果が大きく変わってくるため、

親が契約者であるとみなされると、課税関係が大きく変わるリスクがあります。

 

このリスクを回避するためには、一旦親の口座から子供の口座へ保険料相当額を振込み、

子供の口座から保険料を支払う方法が考えられます。

この時、子供の口座を実質的には親が管理している口座、すなわち名義預金として取り扱われないよう、

子供自身が通帳や印鑑を管理したり、親子間で保険料相当額の資金について贈与契約を締結することも考慮する必要があります。

 

4.保険名義変更時の課税関係

 

保険契約期間中、保険料の負担者や保険金の受取人を変更するなどの目的で、保険契約の名義変更を行うケースがあります。

パターンとしては、名義変更の対象となる部分(契約者、受取人)、変更前後の主体(個人、法人)によって、

実務上は主に以下のケースが想定されるかと思います。

 

(1)契約者の変更(個人→個人)

 

父親が契約者となって保険料を支払っていた生命保険について、契約者を子供に変更する場合が想定されます。

 

この場合には、契約変更時には贈与税などの課税関係は生じず、その後の保険事故が実際に発生した際に、

保険料負担者と受取人の関係に応じて課税されます。

(国税庁質疑応答事例「生命保険契約について契約者変更があった場合」,

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/sozoku/14/05.htm)

 

なお、相続時の取り扱いを参考までにご説明しますと、相続により死亡保険金を子供が受け取る場合には、

その死亡保険金のうち、父親が支払っていた保険料の割合部分については相続税、

子供が支払っていた保険料の割合部分については所得税(一時所得)が課税されます。

 

(2)契約者の変更(法人→個人)

 

法人で契約していた保険を、役員などの個人に有償で契約譲渡する場合や、

退職金として現物支給する場合がケースとして考えられるかと思います。

 

以下では、社長の退職金として保険契約を現物支給する際の税務処理をご紹介します。

契約変更時の解約返戻金相当額に基づいて、課税処理が行われるイメージです。

 

(3)契約者の変更(個人→法人)

 

個人事業主の方が法人成りした場合で、従来の保険を法人向けの保険商品に切り替えるために、

一旦、名義変更で個人から法人へ契約を移し、その後保険の変更を行うケースが考えられるかと思います。

この方法のメリットは、保険の変更の際には、健康上に問題がある場合でも診査不要なケースがあることです。

 

以下では、法人が個人から、養老保険契約を解約返戻相当額で買い取る場合を想定します。

    

 

(4)保険金受取人の変更(法人受取→個人受取)

 

上記とは異なり、契約者は変えずに、保険金の受取人を法人から個人に変更するケースです。

 

以下では、【法人契約】、【死亡保険金(法人受取)】、【満期保険金(法人受取)】で契約していた養老保険を、

【死亡保険金(従業員、役員の遺族受取)】、【満期保険金(従業員、役員受取)】に変更する場合を想定します。

 

a.有償で保険契約を譲渡するケース

 

b.無償で保険契約を譲渡するケース

 

(5)保険金受取人の変更(個人受取→法人受取)

 

保険金の受取人を個人から法人に変更するケースです。

 

【法人契約】、【死亡保険金(従業員、役員の遺族受取)】、【満期保険金(従業員、役員受取)】で契約していた養老保険を、

【死亡保険金(法人受取)】、【満期保険金(従業員、役員受取)】に変更する場合を想定します。

 

この点、死亡保険金、満期保険金ともに、従業員、役員が従来の受取人であったことを想定しているので、過去に支払済の養老保険は全額給与として処理されているかと思います。

そのため、受取人の変更にあたっては特に課税関係は生じません。

 

5.保険解約時の課税関係

 

次に、保険契約を解約した場合の税務を見ていきます。

資金繰りの観点から保険料を支払えなくなった場合や、手元資金が早急に必要な場合などは、

保険契約の解約を検討されるケースがあるかと思います。

解約した場合に解約返戻金を受け取ることができる保険については、その返戻金に対して課税が生じます。

 

解約返戻金は契約者が受け取ることになります。

個人が受け取った場合と、法人が受け取った場合とに分けて、課税関係をご紹介いたします。

 

(1)個人が解約返戻金を受け取るケース

 

契約者と保険料負担者が同一の人である場合は、解約返戻金額から既に払い込んだ保険料を差し引いた金額が

一時所得として課税されます。

一方で、契約者と保険料負担者が異なる場合には、

保険料負担者から契約者(解約返戻金の受取人)に贈与があったものとして、贈与税が課税されます。

 

(2)法人が解約返戻金を受け取るケース

 

法人が解約返戻金を受け取った際の課税関係は下記の通りです。

 

6.保険事故発生時の課税関係

 

ここでは、保険の保障機能として、保険事故発生時に保険金が交付された場合の処理をご紹介いたします。

保険金の受取人が個人か、法人か、で分けて考えていきます。

 

(1)個人が保険金を受け取った場合

 

a.死亡保険金のケース

 

個人が死亡保険金を受け取った場合の課税関係については、以下の国税庁のHPが詳しいです。

(国税庁 タックスアンサー No.1750 死亡保険金を受け取った時,

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1750.htm)

 

国税庁のHPをもとに、各パターンの課税関係をまとめたものは下記の通りになります。

保険料の負担者と受取人の関係、及び一時金による受け取りか年金による受け取りか、で課税関係が変わってきます。

【パターン1】は、保険料を支払っていたその人自身が、保険金を受け取るケースです。

 

このケースでは、その保険料の受取人が所得税を課されることになりますが、

受取方法によって、一時所得か雑所得かに分かれます。

一時所得(一時金)の場合には、特別控除である50万円控除が適用できたり、最終的な所得税の計算では

一時所得の金額の1/2をもとに計算が行われるため、雑所得(年金)の場合と比べて、税務上のメリットが生じます。

 

【パターン2】は、被保険者と保険料の負担者が同一人のケースです。

 

この場合には、保険金受取人が、保険料を負担していた者から相続により保険金を取得したものとみなします。(相続税法第3条)

 

なお、一時金として受け取る場合には、相続税の1回のみで課税関係が終了しますが、

年金として受け取る場合には、相続年に相続税が課税された後、

翌年以降は毎年受取る年金受取額に対して所得税(雑所得)が課税されます。

この場合の雑所得の計算方法は、年々階段状に所得金額が増加していく特殊な計算方法を採用しており、

以下の国税庁のタックスアンサーにて詳細な計算方法が定められています。

(国税庁 タックスアンサー No.1620 相続等により取得した年金受給権に係る生命保険契約等に基づく年金の課税関係,

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1620.htm

 

【パターン3】は、被保険者、保険料の負担者、保険金の受取人、がすべて異なるケースです。

 

この場合には、保険料を負担していた者から、保険金受取人が保険金を贈与されたものとみなします。(相続税法第5条)

 

なお、こちらもパターン2のケースと同様、一時金として受け取る場合には贈与税の1回のみで課税関係が終了します。

一方で年金として受け取る場合には、贈与税に加えて、贈与年の翌年以後からの年金受取額に対して、

所得税(雑所得)が年々階段状に増加していくかたちで課税されます。

 

b.満期保険金のケース

 

個人が満期保険金を受け取った場合の課税関係については、以下の国税庁のHPが詳しいです。

(国税庁 タックスアンサー No.1755 生命保険契約に係る満期保険金等を受け取ったとき,

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1755.htm)

 

国税庁のHPをもとに、各パターンの課税関係をまとめたものは以下の通りになります。

死亡保険の場合と同様に、保険料負担者と保険金受取人の関係、

及び一時金による受け取りか、年金による受け取りか、でパターン分けされます。

2年目以降の雑所得の計算方法は、死亡保険金の場合と同様ですので、詳細は割愛します。

 

(2)法人が保険金を受け取ったケース

 

法人が保険金を受け取った際の課税関係は以下の通りです。

 

7.その他

(1) 遺留分対策としての生命保険

 

民法では、遺留分の侵害額請求というものが認められています。

 

これは、遺言などによる遺産分割の結果、法定相続人の中に分割財産の取り分が少ない方がいる場合に、

相続財産のうち自己の法定相続分の1/2(相続人が直系尊属のみの場合は1/3)に相当する部分までの金額に関して、

金銭の支払いを請求することができるものです。

 

例えば、被相続人に子供が2人おり、そのうち1人とは仲が悪く疎遠であり、遺言で疎遠の子供へ財産を一切分割しないことを

定めた場合でも、その疎遠の子供は他の兄弟などの相続人に対して、金銭の支払いを請求することができます。

 

この点、生命保険金は相続財産ではなく、民法上は受取人固有の財産になると考えられているため、

原則は遺留分侵害額の計算の母数には含まれないというメリットがあります。

そのため、他の相続人に干渉されない財産として、生命保険を活用することができます。

 

(2)逆ハーフタックスプラン(逆養老保険)

 

上記3.節では、法人が契約者となる養老保険に関する取り扱いをご説明しました。

そのうち、【死亡保険金(従業員、役員受取)】、【満期保険金(法人受取)】、として基本通達で規定されている契約形態を、

以下のように保険金の受取人を逆にしたものを、逆ハーフタックスプランといいます。

逆ハーフタックスプランの契約形態については、基本通達上明確な定めはなく、実務上は、保険料の1/2を支払保険料として損金算入、残りの1/2を給与(又は福利厚生費)として損金算入する処理が行われています。

 

この結果、養老保険で資産計上している保険料部分についても損金算入が可能になるというメリットがあります。

 

ただし、この処理は基本通達で特段規定されていない処理であるために税務否認リスクがあること、

さらに保険料の1/2が福利厚生費ではなく給与扱いとなる場合には源泉徴収事務が発生するという点に注意が必要です。

 

実際は福利厚生プランというよりかはオーナー個人の保障という観点で保険契約をされている場合も多いかと思われます。

そのような場合には、福利厚生費ではなく給与として扱われ、保険料相当金額に関して源泉徴収されるケースが多くなるかと思います。

源泉徴収事務を回避するためには、毎月の保険料は役員貸付金として処理し、満期保険金を減資として

その貸付金をオーナーから返済してもらえば、源泉徴収事務は発生しません。

ただし、役員貸付金として処理する場合には、会社がオーナーから貸付に係る受取利息を徴収しなければならないことに

注意してください。

 

8.さいごに

 

今回は生命保険にまつわる税務をご紹介いたしました。

基本通達には上記以外の規定もあり、さらに実際に販売されている保険プランも多種多様なものがあります。

  まずは、本稿で基本的な生命保険の課税関係を整理していただき、保険契約の見直しなどにお役立ていただけますと幸いです。


2020年より給与所得控除、基礎控除が変わります!

こんにちは。

税理士の大塚です。

 

今回は2020年の所得税から変更になる給与所得控除、基礎控除について解説します。

また、青色申告の65万円特別控除の要件も追加されておりますのであわせてご確認下さい。

 

1 給与所得控除

まず給与所得控除とは何かについて簡単に説明をします。

個人の所得税は「所得」の金額に対して税金が課せられますが、所得の金額とは「利益」の金額のことです。

個人事業主の方は、売上から経費を控除した残額が利益になるということで分かりやすいと思います。

 

一方で、給与をもらっているサラリーマンの方の利益はどう計算されるかというと、給与収入の金額に応じて経費に相当する金額が自動的に決まります。

例えば、給与収入500万円の方は、経費相当として144万円を差し引くことができます。この経費に相当する金額を給与所得控除と言います。

(特定支出の控除については省略します。)

 

2020年より給与所得控除の金額が変わります。

改正点のポイントは以下の二つです。

 

(1)一律で控除額が10万円減少する

後述します基礎控除が逆に10万円上がる関係で、多くの方は影響がありません。但し、合計所得金額が2,400万円を超える方は、基礎控除も減少していきますので、増税になる方も出ます。

(2)子育て・介護世帯以外の給与収入850万円超の方は195万円が上限になる

改正前は、給与収入1,000万円超の方の上限を220万円としていました。

子育て・介護世帯は影響を受けませんので、改正前と比べると(1)の通り10万円減少するのみになります。

 

まとめると下記の表の通りになります。

給与収入額 給与所得控除 改正前 給与所得控除額 改正後
子育て・介護世帯以外 子育て・介護世帯
162.5万円以下 65万円 55万円 55万円
162.5万円超

180万円以下

収入×40% 収入×40%-10万円 収入×40%-10万円
180万円超

360万円以下

収入×30%+18万円 収入×30%+8万円 収入×30%+8万円
360万円超

660万円以下

収入×20%+54万円 収入×20%+44万円 収入×20%+44万円

660万円超

850万円以下

収入×10%+120万円 収入×10%+110万円 収入×10%+110万円

850万円超

1,000万円以下

195万円
1,000万円超 220万円 210万円

 

子育て・介護世帯とは、(1)給与所得者本人が特別障害者に該当する場合、(2)年齢23歳未満の扶養親族を有する場合、(3)特別障害者である同一生計配偶者又は扶養親族を有する場合、を言います。

 

2 基礎控除

2020年より基礎控除の額が38万円から48万円へ10万円引き上げられます。

また、これまで基礎控除は一律で38万円の控除が認められてきましたが、合計所得金額が2,400万円を超える方から段階的に減少していき、合計所得金額が2,500万円を超える方は0円となります。

住民税も同様に基礎控除額が変更になります。

 

まとめると以下の表の通りとなります。

合計所得金額 所得税 住民税
改正前 改正後 改正前 改正後
2,400万円以下 38万円 48万円 33万円 43万円
2,400万円超2,450万円以下 32万円 29万円
2,450万円超2,500万円以下 16万円 15万円
2,500万円超 0円 0円

 

また、これに合わせて配偶者控除、扶養控除の要件も変わります

改正前は配偶者や被扶養者の合計所得金額が38万円以下であることが要件となっていましたが、改正後は10万円引き上げられ、48万円以下に変更になります。

 

配偶者特別控除については、合計所得金額ごとに控除額が変動しますが、こちらも同様に各段階の合計所得金額が10万円引き上げられます。

 

3 青色申告の特別控除

事業所得や不動産所得(事業的規模の方に限ります。)のある青色申告者については、複式簿記により記帳を行うことで、最高65万円の青色申告特別控除を受けることができます。

この65万円の特別控除について、2020年の所得税より、次のいずれかの要件を満たす場合に限定されました。

いずれの要件も満たさない場合、控除額が最高55万円に減少します。

(1)電磁的記録の備付及び保存をしている場合

(2)e-Taxにより電子申告をしている場合

 

(1)については、事前に税務署へ申請書を提出して、帳簿書類を紙ベースではなく電磁的記録により保存する方法であり、正直個人の方が行うにはそれなりの手間が掛かるものと思います。

(2)の電子申告をしているという要件については、会計事務所に申告を依頼されている方は満たす方が多いと思われます。弊社のお客様も全て電子申告に対応しておりますので、引き続き最大65万円の控除が可能です。

 

ご自身で申告書を提出される場合でも、最近は電子申告を行いやすいように整備されてきていますので是非ご検討下さい。

 

4 影響まとめ

最後に、今回の改正を受けてどのような方に影響があるのかをまとめたいと思います。

 

(1)子育て・介護世帯の給与所得者

給与所得控除は減少しますが、基礎控除は増加する為、基本的に影響はありません。但し合計所得金額が2,400万円を超えてくると基礎控除が減少するため増税になります。

 

(2)子育て・介護世帯以外の給与所得者

給与収入850万円以下の場合は影響ありません。給与収入850万円を超える場合は、給与所得控除が195万円で頭打ちになりますので増税になります。

また、合計所得金額が2,400万円を超えてくると基礎控除も減少しますので、更に増税になります。

 

(3)事業所得や不動産所得がある方

給与所得がなく、事業所得や不動産所得がある方は、基礎控除が増加しますので減税になります。

但し、合計所得金額が2,400万円を超えると基礎控除が減少しますので、利益次第では増税になる可能性もあります。

また、65万円の青色申告特別控除の適用を受けられている方は、引き続き控除が取れる要件に該当するかの確認を忘れないようにして下さい。要件を満たさないと控除額が減る関係で増税になります。

給与所得に加えて事業所得や不動産所得等がある方は、給与所得控除が減少になる為、減税にはなりません。改正前と比較して、影響が出ないか、増税になるかは(1)(2)と同様です。


災害により損害を受けたときの所得税の軽減措置とは!?【雑損控除~ポイント編~】

こんにちは。

税理士の山田です。

 

いよいよ2019年度の確定申告の時期となりました。

昨年は台風15号と19号で被害を受けられた方が多くいらっしゃるかと思います。

そのような方のために、以前に雑損控除の制度概要についてまとめました。

まず、そもそも雑損控除とはどのような制度なのか、下記の記事をご覧になって概要を抑えて下さい。

 

災害により損害を受けたときの所得税の軽減措置とは!?【雑損控除~制度概要~】

 

今回はもう一歩踏み込んで、雑損控除の適用にあたり、不利益な処理をしてしまわないように特に重要なポイントを整理します。

雑損控除は非常に複雑な制度でして、グレーな範囲も多い制度ですので、税務署の方に任せるだけではなく、ご自身で是非ポイントは抑えておいてください。

 

ポイント① 雑損控除の申告はいつまで出来るか?

まずは、そもそも雑損控除の申告はいつまで行うことが出来るのでしょうか?

実は、還付申告や更正の請求という手続きを行うことで、5年前まで遡って手続きを行うことが出来ます。

具体的には、申告期限から5年間は手続きが出来ます。つまり、2014年度以降の更正の請求であれば、2020年の3月15日(還付申告の場合には、2020年1月1日)までの間に手続きをすることで、雑損控除の適用を受けることが出来ます。

 

なお、一度も確定申告を行っていない年度の申告をする場合には、期限後申告という手続きになり、一度確定申告を行った年度について雑損控除の適用をする場合には、更正の請求という手続きになります。

過去の雑損控除が出来たのに、手続きをしていなかったという方がいらっしゃればまだチャンスがあるかもしれないので、是非確認してみてください。

ただし、雑損控除の繰越控除については連続して確定申告をすることが要件となっており、一度でも申告をしてしまっていると、適用が受けられない可能性があります。

 

ポイント② 損失額の計算方法を抑える~特に家財に注意!~

雑損控除の損失額の計算は大まかにいうと『資産の時価 × 被害割合』で計算します。まずはこの資産の時価の考え方を抑えましょう。

時価の計算方法は、『住宅』『家財』『車両』でそれぞれ異なるとともに、『取得価額が明らかな場合』『取得価額が明らかでない場合』で異なります。

特に家財の計算方法は取得価額が明らかであるか、そうでないか、によって大きく異なります。また、家財の取得価額が明らかでない場合には、下記の表に当てはめて計算をすることになります。

上記に当てはめてみると解りますが、40歳以上の夫婦であれば、家財の時価が1000万円を超えてきます。これだけの家財を持っていらっしゃるご家庭をそうそうないのではないでしょうか?しかも、この金額は減価償却をした後の金額となります。

また、実際にご自宅の家財をいつ頃にいくらで購入したか、という情報を残していらっしゃる方はほとんどいないのではないでしょうか?

家財の情報は解らなければ上記の有利な計算をすることが出来ます。その点を踏まえて是非計算をしてみてくださいませ。

 

ポイント③ 被害割合の考え方を抑える~割合の合算とは?~

まず、国税庁が公表している被害割合の表を見てポイントを抑えましょう。表は下記の通りです。

被害割合の判定とり災証明書

上記の被害割合の判定にあたっては、『り災証明書』を参考にして行うことになっていますが、これはあくまで参考にするだけで、り災証明書の被害区分とは必ずしも一致しないことになります。

これは国税庁が公表している下記の資料にも明記してあります。

東日本大震災により損害を受けた場合の所得税の取扱い

第2 雑損控除(共通)

23 「り災証明書」の必要性

問 雑損控除による還付申告書を提出するに当たって、「り災証明書」のような被害を証明する書類の提出は必要ですか。

「り災証明書」は、大震災により家屋に被害を受けた場合、その被害を受けた方が市区町村に被害の状況を申告した後、その市区町村がその状況を確認した上で発行されるものです。
この証明書には、例えば、り災害原因や、全壊や半壊などの家屋についての被害状況等が表示されていることから、損失額の合理的な計算方法の被害割合を判定する際の目安になるものです。
したがって、税務署では、申告書等を提出する際に「り災証明書」(コピーでも可)を添付していただくか、又は提示していただくよう、お願いしているところです。
しかし、津波による被害を受け、その方の住所地などから地域全域の建物等が全壊するなどその被害の規模や状況が明らかな場合にはご提示いただかなくても差し支えありません。
また、個々の事情により証明書を添付又は提示ができない場合には、被害の実情を十分お聞きした上で被害状況を判断することとしています。
(注) り災証明書に記載される被害の程度(証明内容)と損失額の合理的な計算方法における「被害区分」は一致するものではないことに留意が必要です。
例えば、液状化被害の認定は、一般的に家屋の傾斜や基礎等の地盤面下への潜り込みの状況を基に行われますが、家屋に係る損失額の合理的な計算方法は、その家屋の主要構造部に損壊がある場合に利用できます。また、この計算における被害区分の判定においても、その被害の状況を十分お聴きして判断することになります。

損壊で言うと、『一部損壊』で被害割合5%、『半壊』で被害割合50%と大きく異なります。り災証明書の区分が一部損壊となっていても、上記表の半壊摘要欄の状況に合致しているようであれば、写真などの根拠資料を集めて、税務署に相談してみましょう。

 

被害割合の合算

これもあまり知られていないことですが、上記表の損壊と浸水の被害割合はいずれか片方を当てはめるのではなく、両方該当する場合には、両方の被害割合を合算することが出来ます。

こちらについても国税庁が公表している下記の資料に明記してあります。

東日本大震災により損害を受けた場合の所得税の取扱い

第3 雑損控除における損失額の合理的な計算方法

21 被害割合の考え方(損壊+浸水の場合)

問 住宅の一部が津波により損壊した上、浸水(床上 30 ㎝・二階建住宅)しました。この場合、被害割合はどのように計算しますか。
(答)
被害の種類ごとに被害割合を加算していくため、一部損壊した上、海水による浸水(床上 30 ㎝・二階建住宅)した場合は、

一部破損(5%) + 床上 50 ㎝未満・二階建住宅(35%) = 40%

となり、40%がその住宅の被害割合となります。
(注) 24 時間以上の長期浸水の場合は、その割合にさらに 15%を加算した割合となります。

上記のように被害割合の考え方は非常に複雑です。税務署でもわかっていない可能性が考えられますが、国税庁が公表している情報であれば、税務署でもその通りに処理しなければいけないはずです。

上記で引用している国税庁の資料は下記のリンクより見ることが出来ますので、是非参考にしてみてください。

東日本大震災により損害を受けた場合の所得税の取扱い

ポイント④ 雑損控除の適用は自分の家でなくても大丈夫!

これが一番最後のポイントです。

ご自身が被害を受けていないから関係ないと思っていらっしゃる方がいたら気を付けてください。

雑損控除は自分でなくても、同一生計の親族が被害に遭われていれば、適用をすることが出来ます。

では、同一生計の親族とは、①総所得金額等が38万円以下(令和元年のケース)である、②生計を一にする親族、を指します。特に②の生計を一にする、とは下記のことを言います。

日常の生活の資を共にすることをいいます。
会社員、公務員などが勤務の都合により家族と別居している又は親族が修学、療養などのために別居している場合でも、1生活費、学資金又は療養費などを常に送金しているときや、2日常の起居を共にしていない親族が、勤務、修学等の余暇には他の親族のもとで起居を共にしているときは、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki2017/a/03/order3/yogo/3-3_y03.htm

つまり、両親に対して仕送りをしているケースは同一生計親族に当てはまる可能性があります。

ということは、仕送りをしているご両親が今回の台風の被害に遭われていて、なおかつ年金生活をされているケースですと、同一生計親族にあたる可能性が非常に高くなります。

その場合には、税務署または顧問の税理士の方に相談して見てください。

 

最後に

今回は雑損控除の適用に当たって特に重要と思われるポイントを重点的に説明しました。

雑損控除の申告は、専門家である税理士でも滅多に行うことはありません。

実際に私も雑損控除の申告をしたことは一度もありません。

今回の災害で被害に遭われた方々に少しでも支援になればと思い、制度のポイントを整理してみました。

この内容が少しでも多くの方の目に触れて、制度を有効に活用できる方が増えることを祈っております。


国外中古不動産を活用した節税策にメス 2020年度税制改正案を徹底検証

こんにちは。

税理士の山田です。

 

2020年度税制改正において、海外の中古不動産投資を利用した節税策が封じ込められることになります。

海外中古不動産に投資し、耐用年数の短さを利用して多額の損失を計上した上で、給与所得や事業所得を通算して租税負担の軽減を図るという節税策は、高額所得層を中心にかなり広範に行われています。

この種の租税回避策については、あまりにも行き過ぎているのではないかとして、会計検査院報告でも問題視されていました。

会計検査院は、2015年度検査報告で「各国の不動産は、気候や構造の違いにより、滅失までの期間が大きく異なるにもかかわらず、1951年から見直しされていない『中古資産の耐用年数の簡便法』(法定耐用年数を経過した古い建物については、耐用年数の20%の年数で償却してよいという制度)を適用するのは合理的でない」と指摘し、財務省に見直しを求めていました。これを踏まえて、2020年度の税制改正で所要の手当てがなされることになりました。

 

海外中古不動産の節税策とは?

そもそものスキームの流れについてまず整理しましょう。米国不動産のスキームを例にとってみます。

①米国不動産は物件価格に対して建物の比率が高い(7-8割程度)また、木造でも長期に渡って居住することが出来るため中古物件の価値が落ちない。

②日本のルールに当てはめると木造の建物の耐用年数は22年で、中古の場合には一定のルールで経過年数を控除することが出来る。木造で22年以上経過している建物であれば、耐用年数は4年で計算出来る。つまり、貸付をして不動産所得の計算をする際には、購入価格の7-8割を4年で費用に落とせる。

③不動産所得の赤字は他の所得と通算することが出来るので、給与などと通算が可能。そうすると給与から源泉徴収されていた所得税について還付を受けられる。

④また、不動産は1月1日時点で取得から5年超経過してから売却すると長期譲渡所得の扱いになり、税率が20%程となる。5年超経過していると簿価は土地の価格である2-3割ほどのみ。

⑤高所得者の方であると給与に対して課税される税率は最大で55%にも上るため、55%の税率部分について損益通算をすることで税還付を受ける一方で、売却時の課税は20%で済むことになるため、35%分の税率差異でメリットが取れる。

 

2020年度税制改正の内容は?

2020年度税制改正大綱によると、国外中古建物に係る損益通算の特例を創設するとして、「個人が、2021年以後の各年において、国外中古建物から生ずる不動産所得を有する場合においてその年分の不動産所得の金額の計算上国外不動産所得の損失の金額があるときは、その損失の金額のうち、国外中古建物の償却費に相当する部分の金額は、所得税に関する法令の規定の適用については、生じなかったものとみなす」としました。

つまり、上記の流れでいうところ、③の部分で損益通算をブロックする方向性で改正がまとまりました。

ただし、この部分で単純に損益通算自体を不可にしてしまうと、中古の不動産を購入した方は、減価償却費部分についてどの時点でも費用を認識することが出来なくなってしまい、余分に課税が生じてしまうことになってしまいます。

そのため、改正としては『減価償却費を生じなかったものとする』とすることで、建物を売却したタイミングで譲渡原価として費用を認識することが出来ることにしました。

なお、改正のタイミングとしては2021年からとのことです。

 

具体的な計算例

例えば、2020年1月に不動産を購入したケースを見て見ましょう。前提は下記の通り。

《前提》

・2020年1月に米国不動産購入

・不動産は1億円(土地2000万円、建物8000万円)

・中古耐用年数は4年間

・収入は年間500万円、経費は年間100万円(減価償却費は除く)

・減価償却費は8000万円は4年で償却のため年間2000万円

・2026年1月に9000万円で売却

 

《2020年の計算》

収入500万円 - 経費100万円 - 減価償却費2000万円 = 赤字1600万円

⇒ 他の給与所得等と通算する、例えば税率が50%あれば800万円の還付

 

《2021年~2023年の計算》

収入500万円 - 経費100万円 - 減価償却費2000万円 = 赤字1600万円

⇒ 赤字1600万円の減価償却費はなかったものとするため他の所得と通算はなし

 

《2024年~2025年の計算》

収入500万円 - 経費100万円 = 黒字400万円

⇒ 400万円については他の所得と合算して課税。例えば税率が50%であれば400万円の納税。

 

《2026年の計算》

譲渡対価9000万円 - 譲渡原価(土地2000万円+建物4800万円) =譲渡益2200万円

譲渡益2200万円 × 税率20% = 440万円 ⇒ 納税

 

《トータルキャッシュ》

①収入 売却9000万円 + 2020年~2025年利回 2400万円 + 2020年還付 800万円 = 1億2200万円

②支出 取得1億円 + 2024年~2025年 納税400万円 + 2026年納税440万円 = 1億840万円

③収支 ① - ② = プラス1360万円

 

※上記は2020年2月8日時点で公表されている情報に基づいて想定される内容で計算しており、法令が決まった際の計算方法が異なる可能性があります。

※税率については簡易的な率で計算をしています。

 

懸念点

現時点の情報では明確にされていないのが、上記の通り『なかったものとされた減価償却費の金額』について、不動産所得の計算においても、再度減価償却費として認識出来ないのかどうか、という点です。

現時点で公表されている『所得税法等の一部を改正する法律案要綱』では下記の通り記載がされています。

《法令案要綱》

① 個人が、令和3年以後の各年において、国外中古建物(個人において使用され、又は法人において事業の用に供された国外にある建物であって、個人が取得をしてこれをその個人の不動産所得を生ずべき業務の用に供したもののうち、当該不動産所得の金額の計算上その建物の償却費として必要経費に算入する金額を計算する際に所得税法の規定により定められている耐用
年数を一定の方法により算定しているものをいう。以下同じ。)から生ずる不動産所得を有する場合においてその年分の不動産所得の金額の計算上国外不動産所得の損失の金額があるときは、当該国外不動産所得の損失の金額に相当する金額は、所得税に関する法令の規定の適用については、生じなかったものとみなす。

② 上記①の国外不動産所得の損失の金額とは、その個人の不動産所得の金額の計算上国外中古建物の貸付けによる損失の金額(当該国外中古建物以外の国外不動産等の貸付けによる不動産所得の金額がある場合には、その損失の金額を当該国外不動産等の貸付けによる不動産所得の金額の計算上控除してもなお控除しきれない金額)のうち当該国外中古建物の償却費の額に相当する部分の金額として一定の方法により計算した金額をいう。

③ 上記①の適用を受けた国外中古建物を譲渡した場合には、その譲渡による譲渡所得の金額の計算上、その取得費から控除することとされる償却費の額の累積額からは、上記①により生じなかったものとみなされた損失の金額に相当する金額の合計額を控除する。

上記①の『所得税に関する法令の規定の適用については、生じなかったものとみなす。』という書き方は、発生をなかったことにする、と読めますので、上記の計算例でいうと、2024年2025年においても減価償却費は認識出来るようにも取れます。

ただし、上記③にて、態々『その取得費から控除することとされる償却費の額の累積額からは、上記①により生じなかったものとみなされた損失の金額に相当する金額の合計額を控除する。』と記載しているということは、譲渡所得の計算上の特例の用にも取れます。

いずれにしても現時点では明確に定まっていないところになりますので、法令が決まってから確認するようにしましょう。

 

取るべき対策は?

本件についてどのような対策が考えられるかというところですが、正直対策としてはほとんどありません。

まず、2020年末までは減価償却費を認識して、他の所得と通算することが出来ますので、今まで通りのタックスメリットを取ることが出来ます。

2021年以降は国外の損失部分の減価償却費を認識することが出来なくなってしまいますが、売却をした際には費用として認識することが出来ますので、無理に動くべきではありません。

少なくとも1月1日時点での保有期間が5年を超えれば、長期譲渡所得の扱いにはなりますので、譲渡時点でのメリットを取ることも出来ます。

あとは、現地の不動産市況とタックスメリットを天秤にかけて、売却のタイミングを探るのが得策であると言えます。


競走馬オーナーの所得税について

こんにちは。

税理士の大塚です。

 

12月22日は競馬の有馬記念でした。優勝賞金は3億円にもなるそうです。

歌手の北島三郎さんが所有するキタサンブラックが2017年に優勝したことも記憶に新しいところです。

 

今回は競走馬のオーナー、いわゆる「馬主」についての税金について解説します。

法人で馬主になることもありますが、個人のお話に限定します。

 

1 収益と費用

収益は、レースに出た際に貰える賞金や出走手当、もしくは競技中にケガを負った場合などにもらえる給付金といったものがあります。

 

費用としては、調教師に支払う委託料、騎手に支払う進上金、馬の輸送料などです。

通常の事業と同様、交際費や旅費交通費なども馬主事業に関するものであれば経費計上が可能です。

 

特徴的と言えるのは、競走馬の減価償却です。

器具備品や機械装置と同じように、競走馬も資産計上した上で、減価償却費として毎年徐々に費用化します。

競走馬の耐用年数は4年と決められています。

 

減価償却は、原則的には競走馬登録が完了した日から開始するのですが、継続適用することにより、馬齢二歳の4月から開始することも認められています。

 

2 事業所得か雑所得か

馬主の税金で、最も重要なのが事業所得になるか雑所得になるかという点です。

両者の最大の違いは、事業所得であれば損益通算ができますが、雑所得では損益通算ができないことです。

 

事業所得で赤字となった場合、他に給与所得などがあれば相殺することが可能です。

雑所得では赤字は切り捨てられて終わりです。

 

所有している馬があまり勝てないと赤字になる年も多くなりますので、事業所得として損益通算ができることは大きなメリットです。

その他、青色申告による最大65万円の青色申告控除など、事業所得の方が優遇されている規定が多くなっています。

 

事業所得になるかは、競走馬の保有数や出走回数によって決まります。

具体的には下記のような取り扱いです。

 

(1)保有頭数による判定

①その年において、登録期間が6月以上である競走馬を5頭以上保有している場合

②その年以前3年以内の各年において、登録期間が6月以上の競走馬を2頭以上保有し、かつ、その年の前年以前3年以内のうちに、競走馬の保有に係る所得の金額が黒字の金額である年が1年以上ある場合

 

(2)出走回数による判定

その年の前3年間の各年において競馬賞金等の収入があり、その各年のうち年間5回以上(2歳馬については年間3回以上)出走している競走馬を保有する年が1年以上ある場合

 

※事業所得として認められためには、日本中央競馬会や各地方競馬組合が発行する証明書の添付が必要となります。

 

一口馬主という制度もありますが、これは組合に対して出資をし、組合が競走馬を持つような仕組みで、賞金の配当なども口数に応じて受け取れますが、出資の配当という位置づけになり、雑所得になります。

 

3 消費税の納税義務者になることも

馬主事業で消費税の納税義務者になることもあります。

競馬の賞金は競走馬を出走したことによる対価であり、通常の事業の売上と同じく消費税がかかっています。

 

消費税は、幾つか例外規定はありますが、原則として前々年の課税売上が1,000万円以上の場合に納税義務が生じます。

 

賞金や出走手当などで、1,000万円以上あった場合は、翌々年に消費税納税義務が出ることに注意が必要です。

 

消費税は、賞金などの収入に対する消費税から、競走馬購入や経費など支払った消費税を控除して納付します。

競走馬の購入金額が大きいような場合は、還付となることもあり得ます。

 

納税義務がない場合でも、届出を出すことで敢えて消費税の納税義務者となり、還付を取ることもできます。

この場合、一定年数消費税の納税義務が生じますので、翌年以降の計画を検討して決める必要があります。

 

4 その他の税金

競馬の賞金については75万円を超えた場合、源泉所得税が引かれて入金されます。

源泉所得税はあくまで所得税の前払ですので、確定申告をすることで精算されます。

 

雑所得で赤字だった場合、損益通算もできないので確定申告をしても意味がないかと思いがちですが、源泉所得税が引かれている場合は申告することで還付を受けられる可能性があります。

 

個人事業税については、対象業種に入っていないためかかりません。

 

5 最後に

競走馬のオーナーにかかる税金は、事業所得になるか雑所得になるかでも取り扱いが大きく異なりますし、消費税の納税などもあり、奥が深いものです。

是非、今回解説したことを参考にして、税金面の検討もしてみて下さい。


一時的に収入が増加された場合 平均課税制度の検討を

こんにちは。

税理士の大塚です。

 

プロ野球もドラフト会議が終わり、新人選手の契約のニュースも一段落してきました。

上位で入団する選手は契約金1億円など景気の良い話が出ますが、税金が大変ではないかと思われる方もいるのではないでしょうか。

 

日本の所得税は超過累進課税制度と言って、所得が増えるほど税率が上がります。

その年の所得金額によって、税率が変わる制度が採られています。

 

プロ野球選手の契約金のように収入が大きければ、当然税率も高くなります。

ところが、翌年の収入は契約金がなくなりますので、契約金をもらえる年は一時的に収入が増加した状態とも言えます。

 

このような話は何もプロ野球選手に限ったことではありません。

収入の変動が激しい事業を行われていて、ある年だけ収入が多くなるという場合もあるでしょう。

通常はもっと低い税率なのに、たまたま収入が増加した際にその分高い税率で多額の税金を支払わなければならない。

これでは、不公平だと感じる方もいらっしゃると思います。

 

例えば、同じ1億円をもらう場合でも、1年で1億円もらう方と、5年間2,000万ずつもらう方では、税金負担は圧倒的に前者が大きくなります。

 

そのような場合に備えて、「平均課税制度」という制度があります。

 

1 制度概要

平均課税制度とは、一時的に収入が増加した方や収入の変動が激しい方に対して設けられているもので、通常使用される超過累進税率よりも低い税率で計算できる制度です。

 

ただし、全ての方が適用できる制度ではありません。

前提として「変動所得」と「臨時所得」のいずれかの所得がある方が対象となります。

 

2 臨時所得と変動所得

代表的な「変動所得」、「臨時所得」は以下のものです。

(1)変動所得

原稿、作曲の報酬 著作権の使用料 漁獲による所得 など

(2)臨時所得

プロ野球選手の契約金、不動産の長期貸し付けによる権利金 など

 

これらに該当しない場合は、一時的に収入が増加されていても使用できません。

 

ただし、変動所得が範囲を限定しているのに対して、臨時所得は「これらに類する所得」と範囲を限定していませんので、該当しそうな収入があれば税務署へ相談してみるのも良いと思います。

 

3 適用できる条件

変動所得や臨時所得があった場合、平均課税制度を利用できる条件は下記の通りです。

 

(1)臨時所得、変動所得の合計が、総所得の20%以上であること

(臨時所得+変動所得) ≧ 総所得金額の20%

 

(2)変動所得がある場合は、前年、前々年の変動所得の合計の50%を超えていること

前年、前々年に変動所得がない場合は、金額の要件はありません。

この要件を満たさないと、臨時所得のみが平均課税制度の対象となります。

 

4 計算方法

平均課税制度が適用できる場合の具体的な計算例をみていきます。

 

●総所得金額35,000,000円

内 臨時所得10,000,000円 変動所得20,000,000円

●前々年と前年の変動所得の合計12,000,000円

 

(1)平均課税対象金額を求める

臨時所得の金額 + 変動所得の金額 -(前々年と前年の変動所得合計額の50%)

前々年と前年に変動所得がない場合は、単純に臨時所得と変動所得の合計となります。

 

10,000,000円+(20,000,000円-12,000,000円×50%)=24,000,000円

 

(2)平均課税対象金額の5分の4 を除いた所得金額に対する税金を求める

この場合は、通常の超過累進税率を用いて計算を行います。

 

35,000,000円 -24,000,000円 × 5分の4 =15,800,000円

15,800,000円に対する税金を超過累進税率で計算 → 税金 3,678,000円

 

(3)平均税率を求める

上記の(2)で求めた税金を、対象となった所得で除して割合を求めます。小数点以下は切り捨てです。

 

税金3,678,000円 ÷ 対象となった所得15,800,000 = 平均税率 23%

 

(4)残りの平均課税対象額の5分の4部分の所得に対して平均税率で税金を求める

 

24,000,000円 × 5分の4 =19,200,000円

19,200,000円 × 23% = 税金 4,416,000円

 

(5)税額を合算する

上記(2)と上記(4)の合算になります。

3,678,000円 + 4,416,000円 = 税金 8,094,000円

 

※平均課税を用いずに、通常の超過累進税率を用いた場合

35,000,000円に対する税金を超過累進税率で計算 → 税金 11,204,000円

結果、平均課税を利用すると3,110,000円お得になります。

 

5 最後に

計算例で示したように、平均課税を使用する場合と使用しない場合とでは税金に大きな違いが出ることがあります。

 

臨時的な収入があったような方は、平均課税制度が適用できないかを検討してみることをお勧めします。

 

ここでは書いていない細かい要件もありますし、実際に適用する場合は、確定申告に計算書を添付する必要もあります。

 

分からないことがあればお気軽にお問い合わせ下さい。


災害により損害を受けたときの所得税の軽減措置とは!?【雑損控除~制度概要~】

こんにちは。

税理士の山田です。

 

台風15号及び19号による被害は甚大なものがありました。

被害を受けてしまった方々に心からお見舞い申し上げます。

 

また、災害によりご自宅などに損害を受けた方は多いかと思いますが、その場合については、所得税の軽減措置があります。

制度としては少し複雑なものとなりますが、まとめていきたいと思います。

ご自宅などの被害に遭われた方の一助になれば幸いです。

 

さて、地震・火災・風水害などによって、住宅や家財などに損害を受けたときは、

確定申告で下記のいずれかの方法で所得税の軽減を受けることが出来ます。

 

Ⅰ「所得税法」による雑損控除による方法

Ⅱ「災害減免法」による所得税の軽減免除による方法

 

どちらか有利な方法を選ぶことが出来ますので、それぞれどのような制度なのか整理していきたいと思います。

1 制度概要

まず、それぞれの制度の概要を表に整理します。

Ⅰ「所得税法」による雑損控除による方法

項目 内容
損失の発生原因 災害盗難横領による損失
対象となる資産の範囲等 住宅家財(家具、家電、什器、衣類、書籍、現金など)車両等で生活に通常必要な資産

※対象にならないもの・・・棚卸資産や事業用の固定資産、生活に通常必要でない資産(高級車、別荘、ゴルフ会員権、1個で30万円を超える貴金属・書画・骨とう等)

控除額の計算 控除額は次のAとBのうち、いずれか多い方の金額です。

A 差引損失額-総所得金額等の10分の1

B 差引損失額のうちの災害関連支出の金額-5万円

控除の期間 3年間の繰越控除が可能

 

Ⅱ「災害減免法」による所得税の軽減免除による方法

項目 内容
損失の発生原因 災害による損失(盗難・横領は×)
対象となる資産の範囲等 住宅又は家財の損失額(※1)が、その価額の2分の1以上である場合
所得税等の軽減額 その年分の所得金額 所得税等の軽減額
500万円以下 全額免除
500万円超750万円以下 2分の1の軽減
750万円超1,000万円以下 4分の1の軽減
控除の期間 被害を受けた年のみで控除が可能

 

どちらの制度を使うのが有利かは非常に判定が難しいですので、どちらも当てはめて計算してみて有利となる方で申告をしましょう。

 

2 「差引損失額」「災害関連支出の金額」とは

(1)「差引損失額」の計算方法

「差引損失額」とは下記の算式で求めます。

差引損失額

= 損害金額※1 + 災害等に関連した
やむを得ない支出の金額※2

保険金などにより
補てんされる金額※3

 

※1 「損害金額」とは、損害を受けた直前におけるその資産の時価を基にして計算した損害の額です。計算方法については、次の(2)で詳しく説明していきます。

※2 「災害等に関連したやむを得ない支出の金額」とは、災害の場合にはほとんど「災害関連支出の金額」とイコールと考えてください。

※3 「保険金などにより補てんされる金額」とは、災害などに関して受け取った保険金・災害見舞金・損害賠償金の合計額です。

 

(2)「損害金額」

損害金額の計算は下記の区分に応じて計算します。

① 住宅に対する損失額の計算

A 住宅の取得価額が明らかな場合

損失額(注1、2) =(住宅の取得価額 - 減価償却費) × 被害割合※

B 住宅の取得価額が明らかでない場合

損失額 =〔(1m2当たりの工事費用※ × 総床面積)- 減価償却費〕 × 被害割合※

② 家財に対する損失額の計算

A 家財の取得価額が明らかな場合

損失額 = (家財の取得価額 - 減価償却費) × 被害割合※

B 家財の取得価額が明らかでない場合

損失額 = 家族構成別家庭用財産評価額※ × 被害割合※

③ 車両に対する損失額の計算

損失額 = (車両の取得価額 - 減価償却費 )× 被害割合※

 

下記の国税庁HPにてそれぞれの別表情報を公表しています。

https://www.nta.go.jp/about/organization/tokyo/topics/sonshitsu/index.htm

別表1 地域別・構造別の工事費用表(1平方メートル当たり)
別表2 家族構成別家財評価額
別表3 被害割合表

 

非常に複雑な計算となりますが、諦めずにチャレンジしましょう。

判断に迷う部分についても所轄の税務署にも相談しながら進めて下さい。

 

(3)「災害関連支出の金額」

災害関連支出は、災害に関連してやむを得ない支出をいい、次のようなものが該当します。

① 被災した資産の取り壊し・除去のための支出

・住宅、家財などの取り壊し・除去

② 被災した資産を使用できるようにするための支出で災害後1年以内(大規模な災害の場合には3年以内)に支出したもの

・土砂その他の障害物を除去するための支出

・原状回復のための支出(損失部分の金額を除く)

・損壊又は価値の減少を防止するための支出

③ 被害の拡大又は発生を防止するため緊急に必要な措置を講ずるための支出

・倒壊する恐れがある住宅からの家具の搬出

・家屋の倒壊を防止するための雪下ろし

 

3 どのように確定申告の準備をすべきか?

色々と複雑な説明を続けましたが、まずすぐに準備出来ることは何か?

そんな視点で内容をまとめてみましたので、参考にしてみてください。

 

(1)罹災(被災)証明書の取得

まず前提として罹災証明書の取得は必須ではありません。

なので、仮に罹災証明書が無かったとしても諦めないでください。

ただ、罹災証明書があることによって税金の還付手続きもスムーズに進められる可能性が高いです。

可能な限り証明書の取得申請をしておきましょう。

 

罹災証明書の申請はお住いの市区町村に対して行います。

その際には『現場の被害状況が解る写真など』があると手続きがスムーズに進みますので、準備しておきましょう。

 

(2)被害を受けた資産の取得時の情報を把握

損害額の計算にあたって、被害を受けた資産の取得時の情報、つまり、資産内容、取得時期、取得価額が解るとベターです。

ただし、情報が無かったとしても『取得価額が明らかでない場合』の計算方法を上記国税庁のHPにて記してくれています。

諦めずに計算してみましょう。

 

(3)被害を受けた資産の取得時の情報を把握

後は実は確定申告にあたって提出が必須となる書類は『災害関連支出の金額の領収証と明細』のみとなります。

ただし、(1)(2)にも記載の通り下記の書類があると、手続きがスムーズに進められますので参考にしてください。

 

・被害を受けた資産の明細(内容、取得時期、取得金額)が解るもの

・保険金、損害保険金、災害見舞金があれば、その金額が分かるもの

・市町村から交付を受けた罹災(被災)証明書の写し

・その他源泉徴収票などの通常の確定申告で必要な書類

 

4 最後に

災害により損害を受けたときの所得税の軽減措置についてまとめてみました。制度としては、非常に複雑なものとなりますので、出来る限り正確かつシンプルに整理しました。

それでも中々すぐに見て解る説明ではないと思いますが、特に『3どのように確定申告の準備をすべきか?』について準備を進めて最後は税務署に相談しましょう。

 

どこまでの情報でどこまで税金の還付が受けられるか最終的な判断は税務署で行います。

税務署の職員は優しい方も多いですし親身になって対応してくれます。

 

『税金を徴収する怖い人』というのは過去のイメージですので、気軽に問い合わせて見てください。

雑損控除は災害による被害を受けた方の優遇制度として設けられた制度です。

ちゃんと制度を使うことが出来る多くの方々が、適正に制度の適用を受けられることを祈っています。


中小企業向けの即時償却+αの優遇制度がスタート!!

こんにちは。

 

税理士の山田です。

 

中小・小規模事業者向けに「攻めの投資」を支援する税制措置が出来たのをご存知でしょうか。

 

一定の手続きを踏んで取得した設備に対して、購入年度に100%即時償却が出来ます。

 

さらに、一定の地域・業種については、固定資産税を3年間半分に減免します。

 

そして対象となる設備は、建物付属設備、工具器具備品、機械装置と幅広いです。

 

 

手続きが非常に煩雑なのですが、準備がちゃんと出来ていれば、要件自体は決して厳しくありません。

 

下記のポイントを抑えて確実に制度の適用を受けられるようにしてください。

 

 1、優遇制度を受けるための手続きの流れは?

 

要件はA類型・B類型の2パターンあり、それぞれ手続きの流れが異なります。

 

【A類型 生産性向上設備】

 

① まずは生産性が旧モデル比年平均1%以上改善する設備であることを証明

⇒ 設備の種類ごとに管轄の工業会にて証明書を発行して貰う。

 

② 続いて経営強化法の認定

⇒ 「経営力向上計画」を策定し、各事業分野の担当省庁から認定を受ける。

 

【B類型 収益強化設備】

 

① まずは投資利益率が年平均5%以上の投資計画に係る設備の認定

⇒ 経済産業局による投資利益率に関する確認書を取得

 

② 続いて経営強化法の認定

⇒ 「経営力向上計画」を策定し、各事業分野の担当省庁から認定を受ける。

 

A類型①の手続きはメーカー経由で手続きを行いますが、それ以外の手続きは事業者自身で行う必要があります。

 

つまり、A類型の手続きの方が事業者の負担は軽いですので、証明書の発行が可能かまずはメーカーに問い合わせ確認しましょう。

 

また、B類型の手続きは設備の取得前に完了している必要があります。1日でも送れますと優遇制度を受けられませんので注意してください。

 

手続きの詳細は下記の中小企業庁のサイトをご確認ください。

 

http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/2017/170315kyoka.htm

 

2 対象となる設備は?

 

対象設備は非常に幅広いのですが、設備の種類ごとに取得価額の要件があります。また、A類型の場合には先端設備であるために販売開始時期の要件もありますので合わせてまとめてみます。

 

設備の種類 取得価額の要件 販売開始時期の要件
機械及び装置 160万以上 10年以内
工具 30万以上 5年以内
器具備品 30万以上 6年以内
建物付属設備 60万円以上 14年以内
ソフトウェア 70万円以上 5年以内

 

他にも以下の4点を抑える必要がありますので注意してください。

□ 生産等設備であること(事務用器具、管理部門、寄宿舎の設備は対象外)

□ 国内への投資であること(国外資産は対象外)

□ 新品の資産であること(中古資産は対象外)

□ 自社で使用する資産であること(貸付用資産は対象外)

 

3 指定事業にあてはまるか?

 

事業内容が以下の指定事業のいずれかにあてはまる必要がありますので、注意しましょう。

 

製造業、建設業、農業、林業、漁業、水産養殖業、鉱業、卸売業、道路貨物運送業、倉庫業、港湾運送業、ガス業、小売業、料理店業その他の飲食店業(料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブその他これらに類する事業を除く)、一般旅客自動車運送業、海洋運輸業及び沿海運輸業、内航船舶貸渡業、旅行業、こん包業、郵便業、損害保険代理業、情報通信業、駐車場業、学術研究、専門・技術サービス業、宿泊業、洗濯・理容・美容・浴場業、その他の生活関連サービス業、映画業、教育・学習支援業、医療、福祉業、協同組合、サービス業

※性風俗関連特殊営業に該当するものは除く

 

ほとんどの業種が含まれてはいるのですが、電気業は含まれていませんので、いわゆる全量売買のための太陽光設備は対象になりません。

 

例えば自社の工場で利用する場合には、製造業の区分となりますので、設備自体ではなく、事業の内容に応じて判定を行います。

 

4 どのような優遇が受けられるか?

 

上記の手続き・要件を踏まえたうえで、設備を購入した企業は以下のいずれかの制度が受けられます。

 

① 100%即時償却(購入金額の全額を初年度に費用処理)

② 7~10%の税額控除(購入金額の7~10%を法人税額等から控除)

 

どちらを選択するにしても大きなメリットがある制度です。是非、事前に検討しておきましょう。

 

 

(参考)取得価額の判定、機械装置とは?

 

本制度の検討を行うにあたり、取得価額の判定は非常に難しい要素になります。

 

機械装置ですと160万円以上、器具備品ですと30万円以上の設備が対象ですが、そもそも設備が機械装置に該当するのか、器具備品に該当するのかは難しい判断となります。

 

機械装置の定義は「外力に抵抗し得る物体の結合からなり、一定の相対運動をなし、外部から与えられたエネルギーを有用な仕事に変形するもので、かつ、複数のものが設備を形成して、設備の一部としてそれぞれのものがその機能を果たすものをいう」となっております。

 

(平成19年10月30日の不服審判所の裁決を参照)

http://www.kfs.go.jp/service/JP/74/16/index.html

 

上記の定義にあてはまらないものは、一般的に『器具備品』に該当する可能性が高いです。

 

ですが、『複数のものが設備を形成して』という部分については例外の設備もあり、クレーン、ブルドーザー、のように単一の設備で機械装置に該当するものもあります。

 

また、逆に機械装置に該当した場合には、定義に『複数のものが設備を形成して』とありますので、購入単位とは関係なく、複数のものを合算して取得価額の判定が出来ることもあります。

 

今までは税務署も設備の区分について、納税者の判断を覆すことは多くありませんでしたが、本制度の適用を考えますと設備の区分を慎重に検討する必要があります。