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国外中古不動産を活用した節税策にメス 2020年度税制改正案を徹底検証

こんにちは。

税理士の山田です。

 

2020年度税制改正において、海外の中古不動産投資を利用した節税策が封じ込められることになります。

海外中古不動産に投資し、耐用年数の短さを利用して多額の損失を計上した上で、給与所得や事業所得を通算して租税負担の軽減を図るという節税策は、高額所得層を中心にかなり広範に行われています。

この種の租税回避策については、あまりにも行き過ぎているのではないかとして、会計検査院報告でも問題視されていました。

会計検査院は、2015年度検査報告で「各国の不動産は、気候や構造の違いにより、滅失までの期間が大きく異なるにもかかわらず、1951年から見直しされていない『中古資産の耐用年数の簡便法』(法定耐用年数を経過した古い建物については、耐用年数の20%の年数で償却してよいという制度)を適用するのは合理的でない」と指摘し、財務省に見直しを求めていました。これを踏まえて、2020年度の税制改正で所要の手当てがなされることになりました。

 

海外中古不動産の節税策とは?

そもそものスキームの流れについてまず整理しましょう。米国不動産のスキームを例にとってみます。

①米国不動産は物件価格に対して建物の比率が高い(7-8割程度)また、木造でも長期に渡って居住することが出来るため中古物件の価値が落ちない。

②日本のルールに当てはめると木造の建物の耐用年数は22年で、中古の場合には一定のルールで経過年数を控除することが出来る。木造で22年以上経過している建物であれば、耐用年数は4年で計算出来る。つまり、貸付をして不動産所得の計算をする際には、購入価格の7-8割を4年で費用に落とせる。

③不動産所得の赤字は他の所得と通算することが出来るので、給与などと通算が可能。そうすると給与から源泉徴収されていた所得税について還付を受けられる。

④また、不動産は1月1日時点で取得から5年超経過してから売却すると長期譲渡所得の扱いになり、税率が20%程となる。5年超経過していると簿価は土地の価格である2-3割ほどのみ。

⑤高所得者の方であると給与に対して課税される税率は最大で55%にも上るため、55%の税率部分について損益通算をすることで税還付を受ける一方で、売却時の課税は20%で済むことになるため、35%分の税率差異でメリットが取れる。

 

2020年度税制改正の内容は?

2020年度税制改正大綱によると、国外中古建物に係る損益通算の特例を創設するとして、「個人が、2021年以後の各年において、国外中古建物から生ずる不動産所得を有する場合においてその年分の不動産所得の金額の計算上国外不動産所得の損失の金額があるときは、その損失の金額のうち、国外中古建物の償却費に相当する部分の金額は、所得税に関する法令の規定の適用については、生じなかったものとみなす」としました。

つまり、上記の流れでいうところ、③の部分で損益通算をブロックする方向性で改正がまとまりました。

ただし、この部分で単純に損益通算自体を不可にしてしまうと、中古の不動産を購入した方は、減価償却費部分についてどの時点でも費用を認識することが出来なくなってしまい、余分に課税が生じてしまうことになってしまいます。

そのため、改正としては『減価償却費を生じなかったものとする』とすることで、建物を売却したタイミングで譲渡原価として費用を認識することが出来ることにしました。

なお、改正のタイミングとしては2021年からとのことです。

 

具体的な計算例

例えば、2020年1月に不動産を購入したケースを見て見ましょう。前提は下記の通り。

《前提》

・2020年1月に米国不動産購入

・不動産は1億円(土地2000万円、建物8000万円)

・中古耐用年数は4年間

・収入は年間500万円、経費は年間100万円(減価償却費は除く)

・減価償却費は8000万円は4年で償却のため年間2000万円

・2026年1月に9000万円で売却

 

《2020年の計算》

収入500万円 - 経費100万円 - 減価償却費2000万円 = 赤字1600万円

⇒ 他の給与所得等と通算する、例えば税率が50%あれば800万円の還付

 

《2021年~2023年の計算》

収入500万円 - 経費100万円 - 減価償却費2000万円 = 赤字1600万円

⇒ 赤字1600万円の減価償却費はなかったものとするため他の所得と通算はなし

 

《2024年~2025年の計算》

収入500万円 - 経費100万円 = 黒字400万円

⇒ 400万円については他の所得と合算して課税。例えば税率が50%であれば400万円の納税。

 

《2026年の計算》

譲渡対価9000万円 - 譲渡原価(土地2000万円+建物4800万円) =譲渡益2200万円

譲渡益2200万円 × 税率20% = 440万円 ⇒ 納税

 

《トータルキャッシュ》

①収入 売却9000万円 + 2020年~2025年利回 2400万円 + 2020年還付 800万円 = 1億2200万円

②支出 取得1億円 + 2024年~2025年 納税400万円 + 2026年納税440万円 = 1億840万円

③収支 ① - ② = プラス1360万円

 

※上記は2020年2月8日時点で公表されている情報に基づいて想定される内容で計算しており、法令が決まった際の計算方法が異なる可能性があります。

※税率については簡易的な率で計算をしています。

 

懸念点

現時点の情報では明確にされていないのが、上記の通り『なかったものとされた減価償却費の金額』について、不動産所得の計算においても、再度減価償却費として認識出来ないのかどうか、という点です。

現時点で公表されている『所得税法等の一部を改正する法律案要綱』では下記の通り記載がされています。

《法令案要綱》

① 個人が、令和3年以後の各年において、国外中古建物(個人において使用され、又は法人において事業の用に供された国外にある建物であって、個人が取得をしてこれをその個人の不動産所得を生ずべき業務の用に供したもののうち、当該不動産所得の金額の計算上その建物の償却費として必要経費に算入する金額を計算する際に所得税法の規定により定められている耐用
年数を一定の方法により算定しているものをいう。以下同じ。)から生ずる不動産所得を有する場合においてその年分の不動産所得の金額の計算上国外不動産所得の損失の金額があるときは、当該国外不動産所得の損失の金額に相当する金額は、所得税に関する法令の規定の適用については、生じなかったものとみなす。

② 上記①の国外不動産所得の損失の金額とは、その個人の不動産所得の金額の計算上国外中古建物の貸付けによる損失の金額(当該国外中古建物以外の国外不動産等の貸付けによる不動産所得の金額がある場合には、その損失の金額を当該国外不動産等の貸付けによる不動産所得の金額の計算上控除してもなお控除しきれない金額)のうち当該国外中古建物の償却費の額に相当する部分の金額として一定の方法により計算した金額をいう。

③ 上記①の適用を受けた国外中古建物を譲渡した場合には、その譲渡による譲渡所得の金額の計算上、その取得費から控除することとされる償却費の額の累積額からは、上記①により生じなかったものとみなされた損失の金額に相当する金額の合計額を控除する。

上記①の『所得税に関する法令の規定の適用については、生じなかったものとみなす。』という書き方は、発生をなかったことにする、と読めますので、上記の計算例でいうと、2024年2025年においても減価償却費は認識出来るようにも取れます。

ただし、上記③にて、態々『その取得費から控除することとされる償却費の額の累積額からは、上記①により生じなかったものとみなされた損失の金額に相当する金額の合計額を控除する。』と記載しているということは、譲渡所得の計算上の特例の用にも取れます。

いずれにしても現時点では明確に定まっていないところになりますので、法令が決まってから確認するようにしましょう。

 

取るべき対策は?

本件についてどのような対策が考えられるかというところですが、正直対策としてはほとんどありません。

まず、2020年末までは減価償却費を認識して、他の所得と通算することが出来ますので、今まで通りのタックスメリットを取ることが出来ます。

2021年以降は国外の損失部分の減価償却費を認識することが出来なくなってしまいますが、売却をした際には費用として認識することが出来ますので、無理に動くべきではありません。

少なくとも1月1日時点での保有期間が5年を超えれば、長期譲渡所得の扱いにはなりますので、譲渡時点でのメリットを取ることも出来ます。

あとは、現地の不動産市況とタックスメリットを天秤にかけて、売却のタイミングを探るのが得策であると言えます。


中小企業向けの即時償却+αの優遇制度がスタート!!

こんにちは。

 

税理士の山田です。

 

中小・小規模事業者向けに「攻めの投資」を支援する税制措置が出来たのをご存知でしょうか。

 

一定の手続きを踏んで取得した設備に対して、購入年度に100%即時償却が出来ます。

 

さらに、一定の地域・業種については、固定資産税を3年間半分に減免します。

 

そして対象となる設備は、建物付属設備、工具器具備品、機械装置と幅広いです。

 

 

手続きが非常に煩雑なのですが、準備がちゃんと出来ていれば、要件自体は決して厳しくありません。

 

下記のポイントを抑えて確実に制度の適用を受けられるようにしてください。

 

 1、優遇制度を受けるための手続きの流れは?

 

要件はA類型・B類型の2パターンあり、それぞれ手続きの流れが異なります。

 

【A類型 生産性向上設備】

 

① まずは生産性が旧モデル比年平均1%以上改善する設備であることを証明

⇒ 設備の種類ごとに管轄の工業会にて証明書を発行して貰う。

 

② 続いて経営強化法の認定

⇒ 「経営力向上計画」を策定し、各事業分野の担当省庁から認定を受ける。

 

【B類型 収益強化設備】

 

① まずは投資利益率が年平均5%以上の投資計画に係る設備の認定

⇒ 経済産業局による投資利益率に関する確認書を取得

 

② 続いて経営強化法の認定

⇒ 「経営力向上計画」を策定し、各事業分野の担当省庁から認定を受ける。

 

A類型①の手続きはメーカー経由で手続きを行いますが、それ以外の手続きは事業者自身で行う必要があります。

 

つまり、A類型の手続きの方が事業者の負担は軽いですので、証明書の発行が可能かまずはメーカーに問い合わせ確認しましょう。

 

また、B類型の手続きは設備の取得前に完了している必要があります。1日でも送れますと優遇制度を受けられませんので注意してください。

 

手続きの詳細は下記の中小企業庁のサイトをご確認ください。

 

http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/2017/170315kyoka.htm

 

2 対象となる設備は?

 

対象設備は非常に幅広いのですが、設備の種類ごとに取得価額の要件があります。また、A類型の場合には先端設備であるために販売開始時期の要件もありますので合わせてまとめてみます。

 

設備の種類 取得価額の要件 販売開始時期の要件
機械及び装置 160万以上 10年以内
工具 30万以上 5年以内
器具備品 30万以上 6年以内
建物付属設備 60万円以上 14年以内
ソフトウェア 70万円以上 5年以内

 

他にも以下の4点を抑える必要がありますので注意してください。

□ 生産等設備であること(事務用器具、管理部門、寄宿舎の設備は対象外)

□ 国内への投資であること(国外資産は対象外)

□ 新品の資産であること(中古資産は対象外)

□ 自社で使用する資産であること(貸付用資産は対象外)

 

3 指定事業にあてはまるか?

 

事業内容が以下の指定事業のいずれかにあてはまる必要がありますので、注意しましょう。

 

製造業、建設業、農業、林業、漁業、水産養殖業、鉱業、卸売業、道路貨物運送業、倉庫業、港湾運送業、ガス業、小売業、料理店業その他の飲食店業(料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブその他これらに類する事業を除く)、一般旅客自動車運送業、海洋運輸業及び沿海運輸業、内航船舶貸渡業、旅行業、こん包業、郵便業、損害保険代理業、情報通信業、駐車場業、学術研究、専門・技術サービス業、宿泊業、洗濯・理容・美容・浴場業、その他の生活関連サービス業、映画業、教育・学習支援業、医療、福祉業、協同組合、サービス業

※性風俗関連特殊営業に該当するものは除く

 

ほとんどの業種が含まれてはいるのですが、電気業は含まれていませんので、いわゆる全量売買のための太陽光設備は対象になりません。

 

例えば自社の工場で利用する場合には、製造業の区分となりますので、設備自体ではなく、事業の内容に応じて判定を行います。

 

4 どのような優遇が受けられるか?

 

上記の手続き・要件を踏まえたうえで、設備を購入した企業は以下のいずれかの制度が受けられます。

 

① 100%即時償却(購入金額の全額を初年度に費用処理)

② 7~10%の税額控除(購入金額の7~10%を法人税額等から控除)

 

どちらを選択するにしても大きなメリットがある制度です。是非、事前に検討しておきましょう。

 

 

(参考)取得価額の判定、機械装置とは?

 

本制度の検討を行うにあたり、取得価額の判定は非常に難しい要素になります。

 

機械装置ですと160万円以上、器具備品ですと30万円以上の設備が対象ですが、そもそも設備が機械装置に該当するのか、器具備品に該当するのかは難しい判断となります。

 

機械装置の定義は「外力に抵抗し得る物体の結合からなり、一定の相対運動をなし、外部から与えられたエネルギーを有用な仕事に変形するもので、かつ、複数のものが設備を形成して、設備の一部としてそれぞれのものがその機能を果たすものをいう」となっております。

 

(平成19年10月30日の不服審判所の裁決を参照)

http://www.kfs.go.jp/service/JP/74/16/index.html

 

上記の定義にあてはまらないものは、一般的に『器具備品』に該当する可能性が高いです。

 

ですが、『複数のものが設備を形成して』という部分については例外の設備もあり、クレーン、ブルドーザー、のように単一の設備で機械装置に該当するものもあります。

 

また、逆に機械装置に該当した場合には、定義に『複数のものが設備を形成して』とありますので、購入単位とは関係なく、複数のものを合算して取得価額の判定が出来ることもあります。

 

今までは税務署も設備の区分について、納税者の判断を覆すことは多くありませんでしたが、本制度の適用を考えますと設備の区分を慎重に検討する必要があります。