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超速報!令和6年度(2024年度)税制改正大綱を徹底解説!

 

こんにちは。

税理士の山田です。

 

今回は令和5年12月14日に公表された『令和6年度税制改正大綱』の中から主要な項目を抜粋して解説をします。公表されたばかりの情報ですので、スピードと解り易さを重視して解説しております。読みやすさを重視しており、正確性を担保するものではございませんので、予めご了承ください。内容に誤り等がございましたら随時訂正して参ります。

 

また、税制改正大綱は税制改正の骨組となるものであり、おおむねこの通りの改正がされる予定ですが、あくまで骨組みである点はご了承ください。

 

令和6年度税制改正解説テキストの販売を決定!!

お陰様で、本記事は大変好評頂いておりますが、令和5年度に続き令和6年度でもKACHIELさんで税制改正解説テキストを販売することになりました。 本記事以上に気合を入れて作成しますので、購入を検討頂けると幸いです。後悔させない内容に仕上げるように尽力します。12/22までのご購入で早割が効きますので、是非是非ご検討下さい。

テキストの特徴は下記の通りです。

■ 細かい論点なども含めて徹底的に解説した大ボリューム!(昨年度はワード100ページ以上)

■ 12月中にリリースされる追加情報(各省庁の情報など)を追加し、さらにレベルアップ

■ 出来る限り事例を交えて解り易く説明

■ テキストの内容を説明した動画付

テキストの詳細と申込はこちらより  

 

 

Ⅰ 個人所得課税

1.所得税・個人住民税の定額減税(12.18に一部記載を訂正

令和6年分の所得税と住民税について、定額による特別控除を実施する。

 

【制度概要】

① 対象者の要件

居住者であり令和6年分の所得税(住民税)の合計所得金額が1805万円以下(給与収入の場合には2000万円以下)である者(大綱を読む限り、住民税は令和6年分の住民税の合計所得金額とあるため、所得税ベースで言う令和5年分の所得で判定

 

② 特別控除の額

(所得税)

 本人分 3万円 + (同一生計配偶者扶養親族)の人数 × 3万円

(住民税)

 本人分 1万円 + (控除対象配偶者扶養親族)の人数 × 1万円

 

※ 人数のカウントは全て居住者に限定

※ 言葉の定義は下記の通り

同一生計配偶者:生計を一にする配偶者で合計所得金額が48 万円以下(青色・白色の事業専従者に該当しないもの)

扶養親族:生計を一にする親族で合計所得金額が48 万円以下(青色・白色の事業専従者に該当しないもの)

控除対象配偶者:同一生計配偶者に該当し、納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下のケース

※ 住民税については、対象が控除対象配偶者に限定されているが、居住者であって控除対象配偶者を除く同一生計配偶者である場合については、令和7年度分の住民税額から1万円を控除するため、結論としては所得税と同様に、同一生計配偶者に該当すれば1万円の控除はされることになる。

 

【ケース1 給与所得者に係る特別控除の額の控除】

① 毎月の給与からの所得税額の控除

■ 令和6年6月以後最初に支払いを受ける給与等(賞与含む)につき源泉徴収をされる所得税額から特別控除の額を控除する。

■ 控除しきれない控除の額がある場合には、それ以降に支払う給与等につき源泉徴収をされる所得税額から順次控除をしていく。

■ 毎月の源泉徴収をされる所得税額から控除する場合には、配偶者の情報は「源泉控除対象配偶者」でカウントをする。(「源泉控除対象配偶者」とは、同一生計配偶者に該当し、納税者本人の合計所得金額が900万円以下のケース)

⇒ これは、現時点での「扶養控除等申告書」の様式でカウントできる情報が「源泉控除対象配偶者」に限られてしまうため。

■ 扶養親族に異動が生じたことにより特別控除の額が変わるときは、年末調整により調整する。

■ 給与明細には、特別控除の額を記載する。

 

② 年末調整での所得税額の控除

■ 令和6年分の年末調整の際には、年税額から特別控除の額を控除する。

⇒ 年末調整で再度計算をして差額があれば精算される。つまり、合計所得金額の正しい計算はこの時点で行うことになると考えらえる

■ 源泉徴収票の摘要の欄に控除した額等を記載する。

 

③ 個人住民税の控除

■ 特別徴収義務者は、令和6年6月に支払う給与からの特別徴収を行わない。

■ 令和6年分の個人住民税の額から特別控除の額を控除した金額を11分割し(端数調整あり)、令和6年7月~令和7年5月のそれぞれの給与から毎月徴収する。

■ 上記の計算がされた住民税額が各自治体から通知されてくる。

■ 上記の通り、居住者であって控除対象配偶者を除く同一生計配偶者である場合については、令和7年度分の住民税額から1万円を控除

 

※所得税の控除イメージ

 

※住民税の控除イメージ

出典:総務省「令和6年度地方税制改正(案)について」

 

【ケース2 公的年金等の受給者に係る特別控除の額の控除】

■ 令和6年6月以降に支払いを受ける公的年金等につき源泉徴収をされる所得税額から特別控除の額を順次控除していく。(考え方はケース1の給与と同様)

■ 公的年金等の受給者で、扶養親族に異動が生じたことにより特別控除の額が変わるときは、令和6年分の確定申告により調整する。

■ 公的年金等の受給者については、住民税額からの控除は所得税と同様の考え方。

  

【ケース3 事業所得者等に係る特別控除の額の控除】

■ 第1期分予定納税額(7月)から本人分に係る特別控除の額を控除する。

■ 第1期分予定納税額から控除しきれない部分の金額は、第2期分予定納税額(11月)から控除する。

■ 予定納税額の減額の承認の申請をすることで、同一生計配偶者等に係る特別控除の額についても控除を受けることができる。

■ 令和6年分の期限の延期(令和6年分のみ)

項目

現行

延期

第1期分予定納税額の納付期限

7月31日

9月30日

予定納税額の減額の承認の申請の期限

7月15日

7月31日

■ 最終的には確定申告で所得税額から特別控除の額を控除して精算する。控除対象は住宅ローン控除後の所得税額からの控除。(控除しきれない場合には、交付金等で調整がされると思われる)

 

【ケース4 住民税の普通徴収の場合】

■ 第1期分の納付額から特別控除の額を控除し、控除しきれない場合には第2期分以降の納付額から順次控除する

 

【実務上のポイントと気になる点】

■ 特別控除の順番は下記の通り

① まずは6月以降の給与又は年金から順次控除(配偶者の人数カウントは暫定的

② その後に給与の場合は年末調整で計算をして差額があれば調整

③ 最後に確定申告で計算をして差額があれば再度調整

■ 合計所得金額の算定が年の途中では困難であるため年末調整や確定申告で判定をして超えることになる場合には、特別控除の額相当額の返還がされる形になると思われる

■ 大綱の記載では、「給与等の支払者が同一生計配偶者等を把握するための措置を講ずる」との記載がある。現行での「扶養控除等申告書」では、「源泉控除対象配偶者」の記載項目しかないため、「同一生計配偶者」を把握するために(詳細は続報で確認

■ 6月以降に転職で入社した人で控除していない特別控除の額があった場合の取扱いが不明(詳細は続報で確認

 

出典:「令和5年10月26日 政府与党政策懇談会資料」(首相官邸ホームページ)

 

 

2.ストックオプション税制の要件緩和

権利行使時に経済的利益が非課税となる税制適格ストックオプションの要件が、次の通り緩和される。

 

【改正内容】

①保管委託要件の撤廃

■ 権利行使で取得した株式を証券会社等に保管委託することが要件であったが、撤廃される(ただし、譲渡制限株式で発行会社自身が株式管理をすることが要件)

②年間の権利行使価額の限度額の引き上げ

項目

現行

改正

設立から5年未満の株式会社

1200万円

2400万円

設立以後5年以上20年未満の会社で、以下のいずれかに該当する会社・未上場の会社

・上場後5年未満の会社

1200万円

3600万円

 

③社外高度人材である特定従事者がストックオプション税制の適用を受けるための要件を緩和

■ 認定対象企業の要件のうち、ベンチャーキャピタルからの出資を受けた時点での要件(資本金5講演未満かつ従業員数900人以下)を撤廃する

■ 社外高度人材の要件のうち、上場企業役員の経験については3年以上の実務要件を1年以上に緩和し、それ以外の専門家については、実務要件を廃止する

■ 社外高度人材の要件に一定のもの(教授、一定の実務経験がある未上場企業役員・上場企業の重要な使用人、など)を追加する。

 

※現行の取扱い(出典:経済産業省HP)

https://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/stock_option/sogaiyou3.pdf

 

【実務上のポイントと気になる点】

■ 改正内容①により未上場の状態での権利行使であっても税制適格ストックオプションが適用しやすくなり、活用の幅が広がる

 

 

3.子育て支援に関する政策税制(住宅ローン控除等)

子育て世帯に対する支援策として、住宅ローン控除と住宅リフォーム税制について一定の拡充を行う。令和6年度のみの暫定措置で、令和7年度以降については、次年度の税制改正にて検討を行う。

 

【子育て世帯とは】

以下のいずれかに該当する者=「子育て特例対象個人」

・ 自分の年齢が40歳未満で、かつ、配偶者を有する者

・ 自分の年齢が40歳以上で、かつ、40歳未満の配偶者を有する者

・ 年齢19歳未満の扶養親族を有する者

 

【住宅ローン控除の拡充】

① 子育て特例対象個人が、認定住宅等の新築等をして居住の用に供した場合の、借入限度額は次の通りとする。(控除率は0.7%)

住宅の区分

借入限度額(現行)

借入限度額(改正)

認定住宅

4,500万円

5,000万円

ZEH水準省エネ住

3,500万円

4,500万円

省エネ基準適合住宅

3,000万円

4,000万円

 

② 令和5年末までに建築確認を受けた認定住宅等の新築等については、床面積要件が緩和(通常は50㎡以上の床面積要件が、合計所得金額1,000万円以下に限り40㎡以上に緩和)されているが、これを令和6年末まで延長

③ 子育て特例対象個人である震災特例法の住宅被災者が、認定住宅等の新築等をして居住の用に供した場合の、借入限度額は次の通りとする。(控除率は0.9%)

住宅の区分

借入限度額(現行)

借入限度額(改正)

認定住宅等

4,500万円

5,000万円

 

出典:国土交通省「令和6年度国土交通省税制改正概要」

 

【住宅リフォーム税制】

子育て特例対象個人が、所有する居住用家屋について一定の子育て対応改修工事をして、令和6年4月~12月までに居住した場合、その工事に係る標準的な工事費用相当額(250万円を限度)の10%をその年分の所得税額から控除できる。

 

 

  

Ⅱ 資産課税

1.住宅資金贈与の非課税措置延長

以下の住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置等について、3年間延長する。

出典:国土交通省「令和6年度国土交通省税制改正概要」

 

 

2.法人版事業承継税制の特例承継計画の提出期限延長

非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予の特例制度(法人版事業承継税制)について、現行では2024年3月末までである特例承継計画の提出期限を、2026年3月末まで延長する。(適用期限は令和9年12月末のまま)

 

 

 

Ⅲ 法人課税

1.賃上促進税制(大企業・中堅企業向け)

大企業・中堅企業向けの人材促進税制について、次の通り見直しをする。(適用期間:令和6年4月1日~令和9年3月31日)

 

【改正内容】

① 大企業向け控除率の改正

要件の内容

現行

改正

控除率差

トリガー

控除率

トリガー

控除率

【ベース部分】

継続雇用者給与等支給額の増加割合

3%以上

15% 3%以上

10%

△5%

4%以上

25% 4%以上 15% △10%

5%以上

20%

△5%

7%以上 25%

±0%

【上乗せ①】(※1)

教育訓練費の増加割合

20%以上

+5% 10%以上 +5%

±0%

【上乗せ②】(※2)

女性子育て支援

+5%

+5%

最大控除率

30% 35%

+5%

※1 上乗せ①の要件で、教育訓練費の額が雇用者給与等支給額の0.05%以上であることが要件に追加

※2 「プラチナくるみん認定(優良な子育てサポート企業の認定)」又は「プラチナえるぼし認定(優良な女性の活躍推進企業の認定)」を受けている場合

 

②中堅企業向け控除率の改正(大企業向けとの違い部分のみ)

■ 中堅企業は、「中小企業以外の企業」で「従業員数が2000人以下の企業」(その会社の子会社を含むグループ全体で従業員数が1万人を超える場合を除く)

■ ベース部分の控除率は、トリガー(継続雇用者給与等支給額の増加割合)4%以上になると、MAXの25%となる(大企業でいうトリガー7%以上の控除率)

■ 女性子育て支援上乗せ措置に「3段階目のえるぼし認定を受けている企業」を追加

 

③ マルチステークホルダー方針を公表しなければならない企業の範囲に従業員数2,000人超の企業を追加

現行

改正

資本金が10億円以上かつ従業員数が1,000人以上の企業のみ 従業員数2,000人を超える企業が追加

 

 

2.賃上促進税制(中小企業)

中小企業向けの人材促進税制について、次の通り見直しをする。(適用期間:令和6年4月1日~令和9年3月31日)

 

【改正内容】

① 控除率の改正

要件の内容

現行

改正

控除率差

トリガー 控除率 トリガー

控除率

【ベース部分】

全雇用者給与等支給額の増加割合

1.5%以上

15%

変更なし

±0%

2.5%以上

30%

±0%

【上乗せ①】(※1)

教育訓練費の増加割合

10%以上

+10% 5%以上 +10%

±0%

【上乗せ②】(※2)

女性子育て支援

+5%

+5%

最大控除率

40%

45%

+5%

※1 上乗せ①の要件で、教育訓練費の額が雇用者給与等支給額の0.05%以上であることが要件に追加

※2 以下のいずれかの認定を受けてる場合

・「プラチナくるみん認定(優良な子育てサポート企業の認定)」

・「プラチナえるぼし認定(優良な女性の活躍推進企業の認定)」

・「くるみん認定」又は「2段階目以上のえるぼし認定」

 

② 法人税額から控除がしきれない控除額があるときは、5年間の繰越が出来る制度を追加する。

 

【実務上のポイントと気になる点】

■ 5年間の繰越が出来るようになったために、赤字である場合や控除上限(法人税額の20%)に抵触しても、最大限の控除が取れるように申告をする必要がある

■ 従前では通常の税額控除率で計算して控除上限に抵触してしまえば、上乗せ措置を検討する必要もなかったが、今後は繰越が可能であるため、可能な範囲で上乗せ措置を適用するべき

 

 

3.特定税額控除不適用規定の見直し

大企業向けの特定税額控除不適用規定について見直しを行う。

 

【改正内容】

① 要件が強化される法人について、「資本金が10億円以上かつ従業員数が1,000人以上の企業」のみでなく、「従業員数2,000人を超える企業」を追加。なお、前年度が赤字の場合には、従前より要件強化の対象外。

② 要件が強化される法人についての要件(いずれかの要件に該当しないと特定税額控除規定の適用を受けることができない)

要件

現行

改正

所得金額 対前年比で減少 変更なし
継続雇用者の給与等支給額 対前年増加率1%以上 変更なし
国内設備投資額 減価償却費の30%超 減価償却費の40%超

 

【制限対象の特定税額控除規定】

・研究開発税制(総額型、オープンイノベーション型)

・地域未来促進税制

・5G投資促進税制

・カーボンニュートラルに向けた投資促進税制

・デジタルトランスフォーメーション投資促進税制

 

 

4.中小企業事業再編投資損失準備金制度の拡充

中小企業事業再編投資損失準備金制度について、現行制度に新制度を追加して、適用を令和9年3月末まで延長する。

 

【新制度の内容】

① 「特別事業再編計画(仮)」の認定を受けた事業者が対象

② 購入する株式の金額が1億円以上100億円以下であることが要件となる。

③ 準備金の積立が出来る金額は、初回が株式取得価額の90%二回目以降は100%

(現行制度では70%)

④ 準備金取崩の期間が積立から10年経過後(現行制度では積立から5年経過後)以降5年間に渡って取崩を行って益金に算入となる。

 

【現行制度と新制度の共通の改正】

① 一定の表明保障保険契約を締結している場合には本制度の適用が受けられなくなる。

② 準備金積立後も一定の表明保障保険契約を締結すると全額の取崩が必要になる。

 

※現行の制度概要

出典:中小企業庁HP(https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/shigenshuyaku_zeisei.html

 

【実務上のポイントと気になる点】

■ 特別事業再編計画(仮)の認定手続きについて要確認(産業競争力強化法の改正)

■ 現行制度の経営力向上計画の認定に比べると、特別事業再編計画(仮)の認定手続きはかなりハードルが高いと考えらる。

■ 新制度の株式金額要件について、M&Aでは購入する株式対価の設定にあたっては、退職金の支給やM&A後の顧問料などを含めて金額の設定をするため、新制度の適用可否も含めてスキームを検討する必要がある。

■ 本制度の適用が受けられなくなる一定の表明保障保険契約について、どのような契約が該当するのか詳細の確認が必要(大綱には記載なし)

 

 

5.国内投資促進税制(戦略分野国内生産促進税制・イノベーションボックス税制)

 

【戦略分野国内生産促進税制の創設】

■ 産業競争力強化法の改正を前提に事業適応計画の認定が必要

■ 計画に基づいて産業競争力基盤強化商品の生産をするための設備(産業競争力基盤強化商品生産用資産)の購入が対象

■ 認定後10年間に渡って販売数量に応じて税額控除を行っていく

■ 控除が出来ない場合についても3年間~4年間の繰越控除がある

 

【イノベーションボックス税制の創設】

■ 無形資産への国内投資を後押しするための制度

■ 内国法人等に対して特定特許検討の譲渡・貸付を行った場合に、その事業から発生する一定の課税所得の30%相当額を損金に算入する

■ 国外への投資については制度対象外であり、国内投資のみが対象

 

  

6.交際費の損金不算入制度の除外措置拡大

損金不算入となる交際費等から除外されるいわゆる5,000円以下飲食費(社外との飲食に限る)の範囲について、金額要件を1人当たり5,000円以下から10,000円以下に引き上げる。

  

【実務上のポイントと気になる点】

■ 中小企業についてはいずれにしても年間800万円までの損金算入枠があるため影響は少ない

■ インボイス制度の適格請求書に該当しない飲食費の場合には、控除対象外消費税も上乗せした金額で単価判定が必要になるため注意が必要

 

 

7.外形標準課税制度の対象拡大

外形標準課税制度の適用対象法人の範囲について、現行の基準(資本金の額が1億円超の法人)を維持したうえで、範囲を拡大する

 

【減資への対応】

当分の間、以下の全てに該当する法人を外形標準課税の対象とする。

① 前事業年度に外形標準課税の対象であること(※)

② 当該事業年度に資本金が1億円以下であること

③ 当該事業年度に資本金と資本剰余金の合計額が 10 億円を超えること

※公布日(令和6年3月末を想定)以後に減資をして資本金が1億円以下になった法人については、①に該当するものとして扱われる。

※適用開始時期:令和7年4月1日に施行し、同日以後に開始する事業年度から適用

出典:総務省「令和6年度地方税制改正(案)について」

  

【100%子法人等への対応】

以下の全てに該当する法人を外形標準課税の対象とする。

① 資本金と資本剰余金の合計額が 50 億円を超える外形対象法人の100%子法人等

② 当該事業年度に資本金が1億円以下であること

③ 当該事業年度に資本金と資本剰余金の合計額(※)が 2億円を超えること

※公布日以後に、子会社から親会社への資本剰余金配当等があった場合には、加算した金額で判定する

※適用開始時期:令和8年4月1日に施行し、同日以後に開始する事業年度から適用

※上記改正により、新たに外形標準課税の対象となる法人に係る税負担の緩和措置が講じられる。(初年度:増差税額の3分の2を控除 次年度:増差税額の3分の1を控除)

出典:総務省「令和6年度地方税制改正(案)について」

 

【実務上のポイントと気になる点】

■ 公布日までの対応であれば適用対象から外れることも可能と思われる

■ 資本金と資本剰余金は会計上の金額を利用するが、監査法人の監査等が行われていない企業においては、会計処理で誤りがある可能性も十分考えられるので、資本取引の会計処理について精査が必要

 

8.その他

【倒産防止共済の掛け金の損金算入の特例】

■ 共済契約の解除があった後に再度共済契約を締結した場合には損金算入に一定の制限がされる

■ その解除の日から同日以後2年を経過する日までの間に支出する当該共済契約に係る掛金については損金算入できない

 

  

Ⅳ 消費税(インボイス制度)

1.国外事業者に係る消費税の課税の適正化(プラットフォーム課税など)

 【プラットフォーム課税の導入】

■ 国外事業者がデジタルプラットフォームを介して行う消費者向けの電気通信利用役務の提供のうち、特定プラットフォーム事業者を介したものについては、その特定プラットフォーム事業者が行ったものとみなす。

■ その課税期間における上記の取引金額が50億円を超える場合には、特定プラットフォーム事業者として指定される。

■ 適用開始時期:令和7年4月1日以後に行われる電気通信利用役務の提供

 

【事業者免税点制度の特例の見直し】

■ 特定期間における課税売上高による納税義務の免除の特例について、給与支払額による判定の対象から国外事業者を除外する。

■ 資本金1,000万円以上の新設法人に対する納税義務の免除の特例について、外国法人は基準期間を有する場合も、国内事業開始時点で本特例の適用の判定を行う。

 

【簡易課税制度等の見直し】

■ その課税期間の初日において恒久的施設を有しない国外事業者については、簡易課税制度の適用を認めない。

 

2.その他

 【高額特定資産の範囲拡大】

■ 高額特定資産を取得した場合の事業者免税点制度等の制限措置の対象に、その課税期間において取得した金地金等の合計額が200万円以上である場合を加える。

 

【免税購入された物品の課税仕入れについて仕入税額控除の制限】

■ 外国人旅行者向け消費税免税制度により免税購入された物品と知りながら行った課税仕入れについては、仕入税額控除制度の適用を認めないこととする。

 

【インボイス制度の自販機特例についての帳簿記載要件を緩和】

■ 帳簿のみの保存により仕入税額控除が認められるインボイス制度の自販機特例については、帳簿へ住所等の記載が必要であったが、不要とする。(令和5年10月まで遡って不要とする)

 

 

Ⅴ その他

1.GビズIDとの連携によって電子署名等の省略

法人が、GビズIDを入力して、e-Taxにより申請等を行う場合には、ID・PWの入力、電子署名・電子証明書の送信を要しないこととする。

 


ストックオプションに対する課税(Q&A)(最終改訂令和5年7月)を徹底解説!

こんにちは。税理士の山田です。

国税庁は5月30日、ストックオプションに対する課税(Q&A)を公表するとともに、税制適格SOに係る付与契約時の株価算定ルールに関連して通達改正に向けたパブリックコメントを開始しました。更にこの7月にパブリックコメントの募集が終了するとともに、ストックオプションに対する課税(Q&A)が更新されましたので、その内容をまとめていきたいと思います。

 

【留意点】

・この記事は、主にChatGPTを利用して作成しています。

・この記事は、出典:国税庁「ストックオプションに対する課税(Q&A)令和5年5月(最終改訂令和5年7月)」に基づいて作成しています。

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/kaisei/230707/pdf/02.pdf

・図表は「ストックオプションに対する課税(Q&A)令和5年5月(最終改訂令和5年7月)」より引用しています。

 

1用語の意義

用語の意義は以下の通りです。

用語説明
ストックオプション企業が従業員に対して株式を一定の価格で購入する権利を与える制度。この権利を行使することで、従業員は企業の株式を取得することができます。ストックオプションは、従業員のモチベーション向上や長期的な雇用関係の維持を目的としています。
権利行使ストックオプションで与えられた株式購入権利を実際に使用し、株式を購入する行為を指します。
権利行使価額ストックオプションで株式を購入する際の価格を指します。この価格はストックオプションが付与される際に設定されます。
税制適格税法上特定の条件を満たすことで、税務上の優遇措置を受けることができる制度や取引を指します。ストックオプションにおいては、税制適格とされると、ストックオプションの付与や行使に関連する所得が課税されるタイミングや方法に影響を与えます。

 

 

2税制適格ストックオプションの要件

税制適格ストックオプションの要件は以下の通りです。

要件詳細
ストックオプションの対象者ストックオプションは、発行会社の取締役等に無償で付与されること。
ストックオプションの権利行使期間ストックオプションの行使は、付与決議の日後2年を経過した日からその付与決議の日後10年(設立後5年以内であることなど特定の条件を満たす会社では15年)を経過する日までの間に行わなければならない。
ストックオプションの権利行使価額の年間合計ストックオプションの行使の際の権利行使価額の年間の合計額が1,200万円を超えないこと。
ストックオプションの行使価格ストックオプションの行使に係る1株当たりの権利行使価額は、当該ストックオプションの付与に係る契約を締結した株式会社の当該契約の締結の時における1株当たりの価額相当額以上であること。
ストックオプションの譲渡制限取締役等において、ストックオプションの譲渡が禁止されていること。
ストックオプションの行使に係る株式の交付ストックオプションの行使に係る株式の交付が、会社法第238条第1項に定める事項に反しないで行われるものであること。
ストックオプションの行使により取得した株式の保管発行会社と金融商品取引業者等との間であらかじめ締結された取決めに従い、金融商品取引業者等において、当該ストックオプションの行使により取得した株式の保管の委託等がされること。

 

 

3税制適格ストックオプションの課税関係

税制適格ストックオプションの課税関係については以下のようになります。

課税時期課税内容
付与時の課税課税関係なし
権利行使時の課税課税関係なし(繰り延べ課税)
譲渡時の課税株式譲渡益課税(譲渡価額 – 権利行使価額)

 

付与時の課税:税制適格ストックオプションの付与時には、譲渡制限が付されているため、そのストックオプションを譲渡して所得を実現させることができない。したがって、付与時には課税関係は生じません。

権利行使時の課税:税制適格ストックオプションの行使時(株式の取得時)の経済的利益については、租税特別措置法の規定により、課税が繰り延べられることから、行使時には課税関係は生じません。

譲渡時の課税:税制適格ストックオプションを行使して取得した株式を売却した場合、株式譲渡益課税の対象となります。具体的には、譲渡時の株価から、権利行使価額を差し引いた額が株式譲渡益となります。

 

具体的な事例を考えてみましょう:

ある従業員が勤務先から税制適格ストックオプションを取得したとします。以下のような価格が設定されているとします:

ストックオプションの付与時の株価:200円

ストックオプションの行使時の株価:800円(権利行使価額:200円)

権利行使により取得した株式の譲渡時の株価:1,000円

この場合、付与時には課税が生じません。次に、従業員がストックオプションを行使して株式を取得した場合でも、課税は繰り延べられます。最後に、従業員が取得した株式を売却した場合、売却価格(1,000円)から権利行使価額(200円)を差し引いた800円が株式譲渡益となり、これが課税の対象となります。

 

 

4税制非適格ストックオプション(無償・有利発行型)の課税関係

税制非適格ストックオプション(無償・有利発行型)の課税関係については以下のようになります。

課税時期課税内容
付与時の課税通常は課税関係なし(ただし、一部の場合において付与時に所得として課税される可能性あり)
権利行使時の課税給与所得として課税(行使時の株価 – 権利行使価額)
譲渡時の課税株式譲渡益課税(譲渡時の株価 – 行使時の株価)

 

付与時の課税: 一般的に、非適格ストックオプションには譲渡制限が付されており、そのストックオプションを譲渡して所得を実現させることができないため、付与時には課税関係は生じません。しかし、オプションが「即時行使可能」である場合や、特定の条件下では、付与時に所得として課税されることがあります。

権利行使時の課税:税制非適格ストックオプションの行使時(株式の取得時)には、行使によって生じた経済的利益は給与所得となります。具体的には、行使時の株価から権利行使価額を差し引いた額が給与所得となります。発行会社は、この経済的利益について、源泉所得税を徴収して納付する必要があります。

譲渡時の課税:税制非適格ストックオプションを行使して取得した株式を売却した場合、株式譲渡益課税の対象となります。具体的には、譲渡時の株価から、行使時の株価を差し引いた額が株式譲渡益となります。

 

具体的な事例を考えてみましょう:

ある従業員が勤務先から税制非適格ストックオプションを取得したとします。以下のような価格が設定されているとします:

ストックオプションの付与時の株価:200円

ストックオプションの行使時の株価:800円(権利行使価額:200円)

権利行使により取得した株式の譲渡時の株価:1,000円

この場合、付与時には課税が生じません。次に、従業員がストックオプションを行使して株式を取得した場合、行使時の株価(800円)から権利行使価額(200円)を差し引いた600円が給与所得として課税されます。最後に、従業員が取得した株式を売却した場合、売却価格(1,000円)から行使時の株価(800円)を差し引いた200円が株式譲渡益となり、これが課税の対象となります。

 

 

5税制非適格ストックオプション(有償型)の課税関係

税制非適格ストックオプション(有償型)の課税関係については以下のようになります。

課税時期課税内容
購入時の課税課税関係なし
権利行使時の課税課税関係なし(経済的利益は所得税法上認識されない)
譲渡時の課税株式譲渡益課税(譲渡時の株価 – 購入価額 – 権利行使価額)

 

購入時の課税:税制非適格ストックオプション(有償型)は、適正な時価で購入されているため、経済的利益は発生せず、課税関係は生じません。

権利行使時の課税:税制非適格ストックオプション(有償型)の行使時に生じる経済的利益(ストックオプションの値上がり益)については、所得税法上、認識しないこととされています。

譲渡時の課税:税制非適格ストックオプション(有償型)を行使して取得した株式を売却した場合、株式譲渡益課税の対象となります。具体的には、譲渡時の株価から、ストックオプションの購入価額と権利行使価額の合計額を差し引いた額が株式譲渡益となります。

 

具体的な事例を考えてみましょう:

ある従業員が勤務先から税制非適格ストックオプションを適正な時価(50円)で購入したとします。以下のような価格が設定されているとします:

ストックオプションの購入時の株価:200円

ストックオプションの行使時の株価:800円(権利行使価額:200円)

権利行使により取得した株式の譲渡時の株価:1,000円

この場合、購入時には課税が生じません。次に、従業員がストックオプションを行使した場合でも、行使時に生じる経済的利益は所得税法上認識されません。最後に、従業員が取得した株式を売却した場合、売却価格(1,000円)からストックオプションの購入価格(50円)と権利行使価額(200円)の合計額(250円)を差し引いた750円が株式譲渡益となり、これが課税の対象となります。

 

 

6税制非適格ストックオプション(信託型)の課税関係

税制非適格ストックオプション(信託型)の課税関係については以下のようになります。

課税時期課税内容
信託組成時の課税信託金銭に対する法人課税
ストックオプション購入時の課税課税関係なし
ストックオプション付与時の課税課税関係なし
権利行使時の課税給与所得として課税(行使時の株価 – 取得価額 – 権利行使価額)
譲渡時の課税株式譲渡益課税(譲渡時の株価 – 行使時の株価)

 

信託組成時の課税:発行会社又は発行会社の代表取締役等が信託会社に信託した金銭に対して、法人課税が行われます。

ストックオプション購入時の課税:信託会社がストックオプションを適正な時価で購入した場合、経済的利益が発生しないため、課税関係は生じません。

ストックオプション付与時の課税:発行会社が役職員を受益者に指定し、信託財産として管理しているストックオプションを付与した場合、課税関係は生じません。

権利行使時の課税:役職員がストックオプションを行使して発行会社の株式を取得した場合、その経済的利益は給与所得となります。具体的には、行使時の株価から取得価額と権利行使価額の合計額を差し引いた額が経済的利益となります。

譲渡時の課税:役職員がストックオプションを行使して取得した株式を売却した場合、株式譲渡益課税の対象となります。具体的には、譲渡時の株価から、行使時の株価を差し引いた額が株式譲渡益となります。

 

具体的な事例を考えてみましょう:

ある役職員が勤務先から信託会社を通じて税制非適格ストックオプションを適正な時価(50円)で取得したとします。以下のような価格が設定されているとします:

ストックオプションの購入時の株価:200円

ストックオプションの付与時の株価:600円

ストックオプションの行使時の株価:800円(権利行使価額:200円)

権利行使により取得した株式の譲渡時の株価:1,000円

この場合、信託組成時には法人課税が行われます。次に、信託会社がストックオプションを適正な時価で購入した場合、課税は生じません。また、発行会社が役職員を受益者に指定し、ストックオプションを付与した場合も課税は生じません。役職員がストックオプションを行使して株式を取得した場合、行使時の株価(800円)から取得価額と権利行使価額の合計額(250円)を差し引いた550円が経済的利益となり、これが給与所得として課税されます。最後に、役職員が取得した株式を売却した場合、売却価格(1,000円)から行使時の株価(800円)を差し引いた200円が株式譲渡益となり、これが課税の対象となります。

 

 

7税制非適格ストックオプションを行使して取得した株式の価額

税制非適格ストックオプション(無償・有利発行型又は信託型)を行使して取得した株式の価額は、所得税基本通達 23~35 共-9の例により算定します。具体的には以下の通りです。

 

【取引相場のある株式のケース】

まずは取引相場のある株式については、以下のそれぞれのケースで算定をします。株式が金融商品取引所に上場されている場合、公表された最終価格を使用します。旧株が上場されており新株が上場されていない場合、旧株の最終価格を基準に新株の価額を合理的に計算します。株式が上場されておらず、気配相場価格がある場合、その価格を使用します。

 

【取引相場のない株式のケース】

取引相場のない株式に該当しない場合には、以下のケースごとにそれぞれの方法で算定します。

■売買実例がある場合:最近(一般的には約6ヶ月以内)に行われた売買の中から適正と認められる価額を使用します。売買が1回だけであっても売買実例として扱います。なお、増資は売買実例として取り扱いますが、新株予約権の発行や行使は売買実例には該当しません。また、種類株式を発行している場合には、株式の種類ごとに売買実例の有無を判定することになります。

■公開途上にある株式の場合:ブックビルディング方式または競争入札方式により決定される公募等の価格等を参照します。公開途上にある株式とは、金融商品取引所が株式の上場を承認したことを明らかにした日から上場の日の前日までのその株式及び日本証券業協会が株式を登録銘柄として登録することを明らかにした日から登録の日の前日までのその株式を指します。

■売買実例がなく、発行会社と事業の種類、規模、収益の状況等が類似する他の株式会社の株式の価額がある場合:その価額に比準して推定した価額を使用します。

■上記に該当しない場合:権利行使日等または権利行使日等に最も近い日におけるその発行会社の1株当たりの純資産価額等を参照して、通常取引されると認められる価額を算定します。ただし、一定の条件の下で財産評価基本通達の例により算定している場合には、その算定した価額とすることができます。ただし、その価額が著しく不適当と認められる場合(例えば、財産評価基本通達の例により算定した普通株式の価額が、会計上算定した普通株式の価額の2分の1以下となる場合など)は除きます。

 

 

8税制適格ストックオプションの権利行使価額(付与契約時の株価)

税制適格ストックオプションの要件である「権利行使価額が、付与契約時の株価以上であること」が要件とされていますが、その算定方法について説明をします。表にすると以下の通りになります。

方法評価方式
Ⅰ原則方式所得税基本通達 23~35 共-9による算定方式
Ⅱ特例方式財産評価基本通達の例による算定方式
└ⅰ原則的評価方式同族株主等が取得した株式の評価に使用
 └類似業種比準方式発行会社と事業の種類が同一又は類似する複数の上場会社の株価の平均値に比準
 └純資産価額方式発行会社の純資産価額(時価ベース)を発行済株式数で除算
└ⅱ特例的評価方式同族株主等以外の者が取得した株式の評価に使用
 └配当還元方式配当金額に一定の比率を適用

 

算定方法はⅠ原則方式Ⅱ特例方式の二つがあり、どちらの方式を用いても算定した価額以上の価額で「権利行使価額」を設定すれば、権利行使価額に関する要件を満たすこととなります。

 

Ⅰ原則方式:所得税基本通達 23~35 共-9によって算定する方式であり、 上記「7税制非適格ストックオプションを行使して取得した株式の価額」で説明をした方法です。

 

Ⅱ特例方式:財産評価基本通達の例によって算定します。この方式は、さらにⅰ原則的評価方式ⅱ特例的評価方式の二つに分かれます。

ⅰ原則的評価方式:同族株主等が取得した株式の評価に使用されます。評価方法としては以下の2つがあります。

・類似業種比準方式:発行会社と事業の種類が同一又は類似する複数の上場会社の株価の平均値に比準して、株式の価額を算定する方法です。

・純資産価額方式:発行会社の純資産価額(時価ベース)を発行済株式数で除して、株式の価額を算定する方法です。

ⅱ特例的評価方式:同族株主等以外の者が取得した株式の評価に使用されます。評価方法としては以下の1つがあります。

・配当還元方式:配当金額に一定の比率を適用して株式の価額を算定する方法です。

 

以下の表が具体的な算定方法になります。

 

また、特例方式を用いる場合には以下の点に留意する必要があります。

・新株予約権を与えられた者が発行会社にとって同通達 188 の⑵に定める「中心的な同族株主」に該当するときは、当該株式会社は常に「小会社」に該当するものとして計算をします。小会社の株式の価額は、1株当たりの純資産価額による評価を原則とするが、納税義務者の選択により、Lを0.50として以下の算式により計算することができます。
【算式】
類似業種比準価額×L+1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)×(1-L)

・発行会社が土地や上場有価証券等を有しているときは、財産評価基本通達 185 に定める「1株当たりの純資産価額」の計算に当たり、これらの資産については、新株予約権の付与に係る契約時における時価で計算します。

・純資産価額の計算に当たり、同通達 186-2により計算した評価差額に対する法人税額等に相当する金額は控除できません。


超速報!令和5年度(2023年度)税制改正大綱を徹底解説!

こんにちは。

税理士の山田です。

今回は令和4年12月16日に公表された『令和5年度税制改正大綱』の中から特に気になった項目を抜粋して解説をします。公表されたばかりの情報ですので、スピードと解り易さを重視して解説しております。正確性を担保するものではございませんので、予めご了承ください。内容に誤り等がございましたら随時訂正して参ります。

また、税制改正大綱は税制改正の素案となるものであり、おおむねこの通りの改正がされることがほとんどですが、100%確実ではございません。読みやすさを重視するために文中ではまだ予定であることを態々記載していませんが、確定事項ではない点はご理解ください。

税制改正解説テキストの販売を決定!!

お陰様で、本記事は大変好評頂いておりますが、ご縁ありましてKACHIELさんで税制改正解説テキストを販売することになりました。 本記事以上に気合を入れて作成しますので、購入を検討頂けると幸いです。後悔させない内容に仕上げるように尽力します。12/25までのご購入で早割が効きますので、是非是非ご検討下さい。

テキストの詳細はこちらより

(2023年1月12日追記)

上記の税制改正解説テキストが完成しました!テキストにも収録している令和5年度税制改正の全体イメージをこちらにも掲載します。

Ⅰ 所得税(源泉所得税含む)

1.NISAの抜本的拡充と恒久化

令和6年1月より現行の制度を大幅に見直して、下記のように制度が生まれ変わります。

【その他のポイント】

■ ジュニアNISAは2023年で終了

■ 限度額の計算は簿価ベースで計算、上限に達するまで出し入れは自由で何度でも利用可

■ 過去の投資枠とは別枠で利用が可能

 

【実務上のポイントと私見】

■ 何度でも出し入れができる点は利便性が非常に高い

■ 中長期で預金に持っているくらいであれば、インデックスに投資をするメリットが高い

■ 成長投資枠をつみたて投資枠のように利用することも可能

【適用開始時期】 令和6年1月より

2.スタートアップへの再投資にかかる非課税措置の創設など

M&Aなどで多額の売却益が出た際に、売却資金を元手に創業する場合やエンジェル投資家としてプレシード・シード期のスタートアップに再投資する場合に、再投資金額をした金額を株式の売却益から控除することが出来る制度を創設されました。

投資額のうち20億円までについては完全に非課税となり、20億円を超えた投資についても投資株式の取得価額から控除をすることで課税の繰り延べが行われます。

また、エンジェル税制や創業5年未満の会社がストックオプションを発行する場合のストックオプション税制についても一定の要件の緩和が行われます。

 

【対象となる投資先の主な要件】

■ 設立以後1年未満

■ 販管費/出資金額が30%を超えること

■ 株式の99%以上を特定の株主グループが所有していないこと

■ 大企業の子会社等でないこと

 

【計算例】

5億円で購入した株式を30億円で売却、売却資金を元手に税制優遇が受けられるスタートアップに22億円を投資

「所得税の計算(復興特別所得税は除いて計算)

(売却額30億円 - 取得価額5億円 - 控除22億円) × 所得税率(15%) ⇒ 4500万円が課税

「スタートアップ株式の取得価額」

取得価額22億円 - (22億円 - 20億円) ⇒ 取得価額20億円

【実務上のポイントと私見】

■ 下記の「高所得者層に対する課税の強化」との兼ね合いが重要になると思われる

■ 「高所得者層に対する課税の強化」への課税回避のためにこの制度の利用が有効だと思われる

3.高所得者層に対する課税の強化

極めて所得が高い個人についての所得税の課税が強化されます。具体的には、下記の計算式で計算した金額が所得税額を上回る場合には、差額が上乗せされて課税されます。

【計算式】 (合計所得金額 - 特別控除3.3億円) × 22.5%

【計算例】

5億円で購入した株式を30億円で売却

「所得税の計算(復興特別所得税は除いて計算)

① (売却額30億円 - 取得価額5億円) × 所得税率(15%) = 3.75億円

② (合計所得金額25億円 - 特別控除3.3億円) × 22.5% = 4億8825万円

③ ②>① になるので、 ②の4億8825万円が課税

【実務上のポイントと私見】

■ 上記「スタートアップへの再投資にかかる非課税措置」を活用すれば、この制度の適用を回避することが可能だと思われる

■ 合計所得金額の計算からは源泉分離課税の所得は除かれるので、特定口座の株式の申告の有無で税額が変わることもあり得る (2022.12.18 11:43訂正) 合計所得金額の計算では『申告不要制度を適用しないで計算した金額』とあるので、特定口座の申告の有無によって税額が変わることは無いと思われる(ただし、源泉分離課税の所得は含めずに計算する)

【適用開始時期】 令和7年以降

4.個人事業者の各種届出等の手続きの簡素化

個人事業主の各種届出等の手続きが簡素化されます。

 

【ポイント】

■ 事業の開業・廃業時の届出書の様式が統一され、複数の届出書を一括で作成出来るようにする

■ 各種届出書の提出期限を「確定申告期限まで」とすることで、確定申告書へのチェックや追記などで届出書の提出が行えるようになる予定

 

【対象となる思われる届出書】

■ 個人事業の開業・廃業届出書

■ 青色申告承認申請書

■ 青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書

■ 青色申告の取りやめ届出書

■ 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

■ 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書

 

【適用開始時期】 令和8年~令和9年

5.その他

【源泉徴収票の提出方法等の見直し】

源泉徴収票の提出先が市区町村に一本化されます。つまり、法定調書の作成にあたって給与情報の記載が不要になると思われます。

 

【年末調整関係書類の記載事項の簡略化】

扶養控除等申告書や保険料控除等申告書の記載事項が簡略化されます。

Ⅱ 資産課税

1.資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築

相続時精算課税制度の使い勝手を向上し、次世代への資産移転をしやすくする狙いがあるようです。一方で暦年贈与については、相続対策としての利用が恒常化しており、バランスを取る形で生前贈与加算の期間が延長されます。

相続時精算課税制度について毎年110万円の基礎控除を創設

相続時精算課税制度により行われた贈与について、課税価格から毎年110万円の基礎控除が出来るようになります。また、相続税の計算において加算される金額も贈与財産の価額から過去の基礎控除額を控除した後の金額となります。

 

相続時精算課税制度による贈与財産が災害により被害を受けた場合の再計算】

精算課税制度による贈与後に、贈与財産である土地や建物が災害によって一定の被害を受けた場合には、相続税の計算において加算される金額は贈与財産の価額から災害を受けた金額を控除した金額とします。

 

【生前贈与加算制度の見直し(加算期間の延長)】

暦年贈与により生前に贈与を受けていた財産について、相続時に加算される贈与期間が相続前3年間から相続前7年間に延長されます。ただし、延長した4年間の贈与について総額100万円までは相続財産に加算しない措置が取られます。延長の期間は令和9年以降の相続から随時延長がされ、令和13年に7年間に達します。

 

【実務上のポイントと私見】

■ 暦年贈与による生前贈与加算制度では相続時に加算される際には基礎控除額が控除されない一方で、精算課税贈与では基礎控除額が控除されることになったため、相続前7年間の贈与は暦年贈与より精算課税贈与の方が有利になる

■ 基礎控除額を利用して相続税対策を行う場合には、精算課税贈与の選択が以前よりもしやすくなった。

■ 相続前7年間はいずれの制度を利用した贈与財産であっても相続財産への加算が必要となるため、相続時の預金調査が以前よりも重要になってくる

■ 災害をうけた場合の判定についての考え方はどうなるか?(雑損控除の考え方を引用するか?)

 

【適用開始時期】 令和6年1月以降

2.教育資金や結婚資金等の一括贈与に係る非課税措置の見直しと延長

【教育資金の一括贈与に係る非課税措置】

適用期限を3年間延長し、契約終了時に残高が残っていた場合にかかってくる贈与税の税率は本則の税率で計算をすることになりました。また、契約期間中に贈与者が死亡した場合で、贈与者の相続税の課税価格が5億円を超える場合には、受贈者の年齢に変わらず残高を相続財産に加算することになりました。

【結婚・子育て資金の一括贈与に係る非課税措置の見直し】

適用期限を2年間延長し、契約終了時に残高が残っていた場合にかかってくる贈与税の税率は本則の税率で計算をすることになりました。

Ⅲ 法人課税

1.オープンイノベーション促進税制の拡充

対象となる特定株式に発行法人からの株式発行以外に既存株主からの購入で一定の要件を満たすものを追加した一方で、取得価額の上限を100億円から50億円に引き下げます。また、購入から5年以内に一定の成長要件を満たせば減税効果が継続することになります。

【オープンイノベーション促進税制とは?】

オープンイノベーションを目的としてスタートアップ企業の株式を取得する場合に、取得価額の25%を課税所得から控除できる制度です。現行制度の詳細は経済産業省のHPを参照して下さい。

https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/open_innovation/open_innovation_zei.html

2.研究開発税制の見直しと延長

研究開発税制は次の見直しを行います。

【見直しのポイント】

■ 税額控除率を調整し、試験研究費の増加による控除率のカーブを見直された。

■ ビッグデータを活用した「サービス開発」のための試験研究費の範囲として、従来は新たにビッグデータを収集する場合のみが対象であったが、既存のビッグデータの活用も対象として認められた。

■ 従来はデザインに基づく「設計・試作」であって性能向上を目的としていなくても試験研究費の対象とされていたが、性能向上を目的としないことが明らかな「設計・試作」は対象から除外された。

3.中小企業投資促進税制等の見直しと延長

中小企業のための優遇税制である中小企業投資促進税制(7%税額控除・30%特別償却)と中小企業経営強化税制(10%税額控除・100%即時償却)の対象財産から一定のコインランドリー設備とマイニング設備が除外されることになりました。

【中小企業投資促進税制】

中小企業投資促進税制の対象設備からはコインランドリー業(主たる事業でない場合)の機械装置でその管理の大部分を外部に委託しているものを除外することになりました。

【中小企業経営強化税制】

中小企業経営強化税制の対象設備からはコインランドリー業か暗号通貨マイニング業(主たる事業でない場合)の機械装置でその管理の大部分を外部に委託しているものを除外することになりました。

中小企業経営強化税制の適用には一定の手続きが必要になるため詳細は中小企業庁のHPを確認してください。

https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/

 

【実務上のポイントと私見】

■ コインランドリー設備やマイニング設備は設備投資を全額即時償却が出来ることで課税の繰り延べ策として利用される側面があったため、それを回避する改正

■ ここ数年、国としては課税の繰延策をブロックする意向が明らかにあるため、ギリギリを攻めているような繰延策については、強攻策に出てくる可能性もあると考える

【適用開始時期】 令和5年4月1日以降

4.株式交付税制の見直し(同族会社を対象から除外)

株式交付税制の対象となる株式交付親会社が同族会社(非同族の会社が株主のケースを除く)に該当する場合には税制の適用を受けられなくなります。

【実務上のポイントと私見】

■ 株式交付税制はどこの子会社でもない会社(50%支配を受けていない)が対象

■ 上場前などに一定の状態で資産管理会社を作る際にも株式交付制度の利用が出来てしまっていたために、それをブロックするための改正

【適用開始時期】 令和5年10月1日以後に行われるもの

5.暗号資産の評価方法等の見直し

暗号資産の発行会社が自社発行の暗号資産を発行時から継続して保有する場合等については、その暗号資産は時価評価から除外されることになりました。

【実務上のポイントと私見】

■ 多額の納税によって暗号通貨発行法人の資金が枯渇してしまい、事業継続が困難であったための措置

6.その他

【特定の資産の買換えの圧縮記帳の見直しと延長】

既成市街地等内から既成市街地等外への買換えが対象から除外されるなど、一定の見直しがされたうえで制度が3年間延長されました。

【DX投資促進税制の見直しと延長】

DX認定基準を改定し、人材促進・確保等に関連する事項を要件化するなど、一定の見直しがされたうえで制度が2年間延長されました。

Ⅳ 消費税(インボイス制度)

1.小規模事業者に対する納税額に係る負担軽減措置

一定の小規模事業者であるインボイス発行事業者は、消費税の納付税額を売上に係る消費税額の2割の金額とすることが出来ることとなります。

【適用対象事業者】

下記のいずれかに該当するインボイス発行事業者

■ 免税事業者が適格請求書発行事業者になった場合

■ 課税事業者選択届出書を提出したことにより課税事業者になっている場合

⇒ つまり、基準期間の課税売上高が1000万円以下であるインボイス発行事業者が対象

【その他のポイント】

■ 令和5年10月1日より前から課税事業者を選択している場合には、令和5年10月1日の属する課税期間では適用出来ない

■ 課税事業者選択届出書を提出したことで、令和5年10月1日の属する課税期間から課税事業者となる場合には、その課税期間中に選択不適用届出書を提出すれば、課税事業者選択届出書は効力を失う

■ 消費税の申告書に適用を受ける旨を付記するだけで適用が可能

■ 当該特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間中に簡易課税の選択届出書を提出すれば、提出をした課税期間から簡易課税の適用が可能(インボイス制度の適用初年度の課税期間については現行制度でも届出を提出をした課税期間から簡易課税の適用が可能なため、翌期についてもOKとなった)

【実務上のポイントと私見】

■ 原則課税と簡易課税と当該特例の3通りの計算が可能なため、より詳細なシミュレーションが必要となる

■ 当該特例は申告書への記載のみで適用が受けられるので、実際の消費税額の計算後に有利な選択が出来る

■ 逆に選択を誤ると税理士には賠償責任が発生する可能性が考えられる

■ 当該特例の更正の請求の可否は現時点では不明

【適用課税期間】 令和5年10月1日~令和8年9月30日までの日の属する課税期間

2.中小事業者等に対する事務負担の軽減措置

一定の中小事業者は、対価が1万円未満の課税仕入については、インボイスの保存が無くても帳簿の保存のみで仕入税額控除の適用を認めることになります。

【適用対象事業者】

下記のいずれかに該当する事業者

■ 基準期間における課税売上高が1億円以下である

■ 特定期間における課税売上高が5000万円以下である

【実務上のポイントと私見】

■ 逆に売上が1億円を超える事業者は少額なものについても全てインボイス番号の確認と書類の保存が必要になる

■ クレジットカードで決済した経費などについても全てインボイス番号の確認や書類の保存が必要になるために書類の管理やオペレーションが非常に煩雑になることが想定される

【適用時期】 令和5年10月1日~令和11年9月30日までの間に行う課税仕入

3.少額な返還インボイスの交付義務の見直し

税込価格が1万円未満の売上返還については、返還インボイスの交付義務が免除ことになります。

【実務上のポイントと私見】

■ 売上が入金される際に振込手数料などを控除して振り込まれる場合などが対象

【適用開始時期】 令和5年10月1日以後に行う課税資産の譲渡等に係る対価返還が対象

4.登録申請手続の柔軟化

インボイス制度に係る届出書の提出期限について柔軟化がされました。

【免税事業者が登録申請をする場合】

免税事業者が課税期間の初日からインボイス発行事業者として登録を受けようとする場合の提出期限について、現行の課税期間の初日から起算して1月前であったのものが15日前までに緩和されます。

【登録の取消しを求める場合】

インボイス発行事業者が登録の取消を求める場合の届出書の提出期限について、取消を受けようとする課税期間の初日から起算して30日前の日の前日であったのものが15日前までに緩和されます。

【経過措置により10月1日より後で登録を受けようとする場合】

10月1日より後の日付でインボイス発行事業者の登録を受けようとする場合の登録申請書について、登録を受けようとする日から起算して15日前までに提出していれば、希望日に登録が受けられることになります。

【令和5年10月1日からインボイス発行事業者の登録申請を受ける場合の申請期限】

本来の申請期限は令和5年3月31日であるものが、困難な事情がある場合に、令和5年9月 30 日までの間にその困難な事情を記載して提出し、税務署長により適格請求書発行事業者の登録を受けたときは、令和5年10月1日に登録を受けたこととみなされる措置が設けられていました。この措置について、困難な事情の記載が撤廃され、実質的に令和5年9月30日が期限になったことになります。

Ⅴ 国際課税

1.グローバルミニマム課税の創設

多国籍企業グループの総収入金額が7億5000万ユーロ相当以上である場合に、最低税率15%に至るまでの課税がされる仕組みが創設されます。

2.タックスヘイブン税制(CFC税制)の見直し

タックスヘイブン税制について下記の見直しがされます。

■ 合算課税から免除される特定外国関係会社の租税負担割合の判定が、現行の30%以上から27%以上に引き下げられます。

■ 申告書に添付する外国関係会社に関する書類で株主関係を記載する書類について、その書類に代えて株主関係図に記載事項を埋めたもので代用が出来ることになる

Ⅵ 電子帳簿保存制度

1.電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度の見直し

電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度について要件の緩和が行われました。

【検索要件を不要とする措置】

下記のいずれかの場合において、税務調査等の際にデータのダウンロードに応じることが出来る場合には、検索要件を不要とされます。

■ 判定期間における売上高が5000万円以下である場合

■ 出力書面が整然かつ明瞭な状態で、取引年月日や取引先ごとに整理がされている場合

【出力書面での保存について猶予措置について】

令和4年1月~令和5年12月までの期間については、税務署長がやむを得ない事情があると認め、税務調査等の際に整然かつ明瞭な状態で出力された書面の提示が可能であれば、書面での保存が認められていました。従前にプラスして、電子保管対応が出来ないことに相当の理由があり、データのダウンロードの求めにも応じることが出来るようにしておけば、電子帳簿保存の要件が充足されることになります。

つまり、実質的にはほぼ紙保管が認められることになると考えます。

2.その他

優良電子帳簿の範囲の見直し

優良電子帳簿の範囲が以前は全ての帳簿であったが、「その他必要な帳簿」について一定の補助帳簿に限るものとなりました。具体的には、売上帳、仕入帳、経費帳、売掛帳、買掛帳、手形記入帳、貸付帳、借入帳、未決済項目に係る帳簿、有価証券受け払い簿、固定資産台帳、繰延資産台帳などです。

【スキャナ保存制度の見直し】

国税関係書類について、下記の要件緩和がされることになりました。

■ 解像度や大きさなどの情報について保存要件が廃止

■ 入力者等情報の確認要件が廃止

■ 相互関連性の保持要件が契約書や領収書等の重要書類に限定

Ⅶその他の納税環境整備

1.高額な無申告に対する無申告加算税の割合の引上げ

納付すべき税額が300万円を超える場合には、超える部分の無申告加算税の割合を30%に引き上げることになりました。(現行では、50万円までは15%、50万円を超える部分は20%)

また、更正の予知がない場合の期限後申告等については、300万円を超える部分の無申告加算税の割合を25%に引き上げることになりました。(現行では、50万円までは10%、50万円を超える部分は15%)

2.一定期間繰り返し行われる無申告行為に対する無申告加算税等の加重措置の整備

3回連続で期限後申告が行われる場合には、無申告加算税を10%加重する措置が取られることになります。

Ⅷ 次年度以降に持ち越しがされたもの

1.外形標準課税のあり方

資本金を1億円以下に減資すると外形標準課税の課税から逃れることが出来るため、以前と比べて課税対象となる法人数が3分の2まで減っているようです。外形標準課税の対象から外れている実質的な大規模法人については、制度の見直しを今後に検討する方針です。

2.マンションの相続税評価について

マンションについては、市場での売買価格と通達による相続税評価額に大きく乖離が見られるケースがあり、適正化について今後に検討をする方針です。

3.防衛力強化に係る財源確保のための税制措置

日本国の防衛力強化を目的として、安定的な財源を確保するために、令和6年以降に適切な時期で下記の内容で措置が講じられる予定です。

■ 法人税 法人税額に対して税率4~4.5%の付加税を課す

■ 所得税 所得税額に対して税率1%の付加税を課す

■ 復興特別所得税 課税期間を延長したうえで、税率を1%引き下げる

■ たばこ税 3円/1本相当の引き上げを行う


【社内勉強会⑤】現物給与について学ぼう

こんにちは。スタッフの大滝です。

昨年の勉強会は、消費税をテーマにしてきましたが、今年は現物給与について【現物給与の課税対象と非課税の取り扱い】という

テーマで勉強会を行っています。早速ですが、内容を整理していきます。

 

1 福利厚生と現物給与

 

2019年4月に施行された働き方改革関連法案や、ワークライフバランスという言葉を耳にするようになりました。

 

労働者を雇用する企業としては、労働者の健康や生活の向上を目的とした、福利厚生制度を充実させることを重視している企業が増加してきているように思います。

 

金銭支給以外で、従業員に対して食事の支給や商品の値引き販売、レクリエーション行事の開催等のように、

物または権利等の経済的利益をもって支給されることを現物給与と言います。

 

本来、給与は金銭で支給されますが、現物給与は役員や使用人に対して福利厚生の側面があり、

また選択性や換金性に難点があるため、一定のものは非課税とする税務上の取り扱いが設けられています。

 

そこで、現物給与の課税対象と非課税の取り扱いについて、具体的な事例をもとに整理していきます。

 

2 具体例 ~通勤交通費~

 

会社に通勤するための通勤手当は、通常「手当」として金銭で支給されていることが多いと思います。

 

交通機関や有料道路を利用している人に支給する通勤手当は、平成28年度の税制改正により、

最高で月額15万円までは非課税とされています。(改正前の最高限度額は10万円)

 

また、実務上では、新幹線通勤やグリーン車を利用した場合はどのような取り扱いとなるのかという疑問もあるように思います。

 

新幹線通勤は、最も合理的な方法であれば通勤手当として支給できますが、一方でグリーン車等の特別車両の利用は、

合理的な方法という定義の中に含まれないと考えられるため、給与課税される可能性があります。

 

さらに、交通機関を使用せず、自動車や自転車通勤の人に支給する通勤手当の非課税枠は、

通勤距離ごとに限度額が決められています。詳しくは、国税庁HPをご参考ください。

 

国税庁「No.2585 マイカー・自転車通勤者の通勤手当」

 

【課税される範囲】

1か月15万円以上の通勤手当の支給か、マイカー等の通勤については通勤距離ごとの限度額を超えて支給した場合

 

3 具体例 ~社宅家賃~

 

会社(使用者)が、役員や従業員(使用人)に対して社宅を提供している場合があります。

借上げ社宅等という制度として会社で設けていることも多いと思います。

 

役員と従業員で計算方法が異なりますが、1か月当たり賃料相当額を本人から受け取っていれば給与として課税されません。

下記【賃料相当額の計算について】に記載の計算方法を用いて、賃料相当額を計算します。

 

もし、本人から賃料相当額を受け取っていない場合には、賃料相当額と実際の徴収額の差額が給与課税されます。

 

例えば、賃料相当額が10万円で、実際に徴収している金額が4万円の場合、差額の6万円に対して給与課税されます。

 

なお、多くは従業員への福利厚生の要素が大きいと考えますが、例えば病院の夜間勤務など、業務遂行上の必要により、

役員または従業員の居住場所を著しく制限しなければならない理由で、社宅や寮に入居させている場合等

給与課税されないケースもあります。

 

【賃料相当額の計算について】

 

Ⅰ 役員

役員に対する社宅の貸与は、社宅の床面積により「小規模な住宅(木造132平米以下、非木造99平米以下:共用部分を含む)」と「それ以外の住宅」に分かれ、下記のように計算します。

また、いずれにも該当しないような豪華な社宅(床面積240平米超え)である場合には、算式の適用はなく、通常支払うべき使用料に相当する額(時価)が賃料相当額になります。

 

①小規模な住宅である場合

 《算式A》 (1)~(3)の合計額

(1)(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%

(2)12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/(3.3平方メートル))

(3)(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%

 

②上記①以外の住宅(小規模な住宅以外)で自己所有の場合

 《算式B》 (1)~(2)の合計額の1/12

(1)(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×12%

※ただし、法定耐用年数が30年を超える建物の場合には12%ではなく、10%となります。

(2)(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×6%

 

③上記①以外の住宅(小規模な住宅以外)で借り上げ社宅の場合

 《算式B》または、賃料の50% のいずれか高い方

 

国税庁「No.2600 役員に社宅などを貸したとき」

 

Ⅱ 従業員

 《算式A》 (1)~(3)の合計額

従業員の場合には、算式Aで計算した賃料相当額の1/2の金額を本人から徴収していれば、課税されないことになります。

もし、本人から賃料相当額を受け取っていない場合には、算式A⑴~⑶の合計額と、本人から徴収している金額の差額が給与課税されます。

 

また、算式Aに用いられている固定資産の課税標準額は3年に1度変更があります。

特に役員の場合には、このタイミングで都度、賃料相当額を見直すことも重要ですが、

従業員の場合には、課税標準額が20%以内の増減の時は改定計算を要しません。

 

国税庁「No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき」

 

【課税される範囲】

役員や使用人に無償で社宅を貸与したり、賃料相当額よりも低い金額を徴収している場合

 

<一口メモ> 社会保険における現物給与 ~住宅で支払われる報酬等~

 

役員や従業員に社宅を貸与した場合には、上記のような税務上の取り扱いだけでなく、社会保険においても現物給与の対象となります。

物価の変動などに合わせて、毎年4月に改定される「厚生労働大臣が定める現物給与の価額」(厚生労働省告示)に定められた額に基づいて、

社会保険の被保険者が受けた現物給与を通貨に換算して、社会保険料を算定します。

 

令和4年4月改定 「厚生労働大臣が定める現物給与の価額」

 

例:東京都(令和4年4月価格 2,830円)

居住スペース 5畳/本人が負担する賃料相当額 10,000円の場合

2,830円×5畳=14,150円

14,150円-10,000円=4,150円(現物給与)

 

社宅家賃を会社が全額負担している場合には、14,150円が現物給与となり、社会保険の標準月額を算定する際には、毎月の報酬月額に上乗せします。

一方で、従業員から賃料相当額を徴収している場合には、徴収している金額を引いた4,150円が現物給与となります。

 

4 具体例 ~食事支給~

 

社内食堂での食事提供や、食券の支給などを採用している会社も多く、現物給与の中では一番身近なものだと思います。

 

①昼食

食事の支給(昼食)については、下記の要件を満たしていれば課税されないこととなります。

(1)役員または使用人が、食事の価額の50%相当額以上を負担している場合

(2)役員や使用人に支給した食事について、使用者(会社)が負担した金額が月額3,500円以下の場合

※消費税および地方消費税の額は除く

 

②夜食

夜勤や深夜残業など会社から命令された勤務時間帯での、食事支給については無料で提供しても課税しなくて良いとされています。

深夜勤務者への食事支給(夜食)は、深夜時間帯の食事の提供が困難であるという考え方により、1食あたり300円以下であれば課税されません。

 

国税庁「No.2594 食事を支給したとき」

 

【課税される範囲】

昼食代を会社が負担して下記①②のいずれかに該当する場合は、

食事の価額から役員や使用人の負担している金額を控除した残額に課税

①役員や使用人が負担している金額<食事の価額×50%

②役員や使用人が負担している金額<会社が負担している金額(月額3,500円以上)

 

 

<一口メモ> 社会保険における現物給与 ~食事で支払われる報酬等~

 

先程、社宅家賃の項目でも整理しましたが、食事についても社会保険の現物給与の対象となります。

現物給与額の計算方法は、社宅と同様ですが、食事の場合には「1か月あたり/1日あたり/1日あたり(朝食・昼食・夕食)」と

単価が細分化されているので、社会保険料の算定時に気を付けるポイントかと思います。

 

住宅の現物給与との違いとして、食事の場合には、現物給与価額の3分の2以上を食事代として徴収している場合には、食事の供与はないもとして取扱います。

 

5 具体例 ~金銭の貸付~

 

役員や従業員に対して、会社が無利息または、低い利息で金銭を貸し付ける場合、経済的利益を受けることになるため原則として給与課税となります。

 

しかし、災害等の理由で臨時的に多額の生活資金を必要とする場合や、会社における借入金の平均調達金利と同等の貸付金利を定め、利息を徴収している場合は、担税力の考慮や少額不追及の趣旨により、課税しないこととされています。

 

国税庁のHPによると、貸付を行った日の属する年に応じた利率が定められており、令和3年中に貸付けを行ったものは、金利1.0%とされています。

無利息や低い金利で金銭を貸し付けた場合には、実際に支払う利息の額と貸付を行った日の属する年に応じた利率で計算した利息の額の差額が、給与課税されます。

 

国税庁「No.2606 金銭を貸し付けたとき」

 

【課税される範囲】

役員や従業員に対して、無利息や低い金利での貸付を行った場合

 

6 具体例 ~レクリエーション費用~

 

社内交流やチーム力の向上等を目的として、会社は社員旅行や会食、運動会などのレクリエーションを行うことがあります。

 

原則として、これらの行事に参加して受けた経済的利益は給与として課税されることになります。

しかし、社会通念上一般的な行事と認められれば、会社がその費用を負担した場合でも給与課税されないこととして取り扱われます。

 

非課税とされる行事の範囲として、下記のように整理できます。

 

①社員旅行

国内、海外を問わず4泊5日以内の期間で、社員の50%以上が参加している場合

 

②その他(会食、運動会など)

参加対象者を限定していない場合

 

上記ともに、不参加者に対して金銭を支給した場合には、参加者も含め全員が給与課税されることになります。

これは、旅行に参加するか・金銭をもらうかを選択できる状況になるためです。

 

国税庁「No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行」

 

【課税される範囲】

特定の人(役員のみ・成績優秀者のみ等)を対象とした行事

 

7 具体例 ~技術取得~

 

従業員のスキルアップや業務に必要な技術習得のために、研修制度を設けている会社も多いと思います。

 

知識や技術の習得にかかる研修受講費用や教材費などは、会社の仕事に直接必要であること、その費用が適正な金額であれば、

給与として課税しなくてもよいことになっています。

 

例えば、経理課に所属となり簿記の資格取得のための費用を会社で負担してもらうといった場合には、研修費という判断が出来ると思います。

一方で、資格の合格者のみに資格取得にかかった費用を支給するとなると、お祝い金のような意味合いが強くなると考えられますので、給与課税されることがあります。

 

国税庁「No.2588 職務に必要な技術などを習得する費用を支出したとき」

 

【課税される範囲】

業務に直接必要とされない知識や技術取得にかかる費用

特定の人(合格者のみ等)を対象とした費用支給

 

8 具体例 ~生命保険~

 

会社が、役員または従業員を被保険者とする生命保険の保険料を支払ったことによる経済的利益は、生命保険の種別によって取り扱いが下記のように整理できます。

 

①養老保険

 

②定期保険

【課税される範囲】

特定の人(役員のみ等)が加入対象の場合

 

9 具体例 ~商品値引~

 

従業員に対して、会社で取り扱っている商品や製品を提供する場合には、値引き販売をする制度を設けている企業が多いです。

一般的に行われている値引販売については、経済的利益の額が少額であることや一般の消費者に対しても値引販売が行われる場合があること等を考慮して設けられています。

 

この場合、下記を全て満たす場合に非課税とされます。ただし、土地、建物、有価証券についてはこの制度の対象外です。

 

①販売価額が取得価額以上であること

例:会社の仕入価額1,000円、従業員への値引き価額1,200円

 

②値引販売する価額が、会社が販売する価額に比べて著しく低くないこと(通常、他に販売する価額のおおむね70%未満でない)

例:会社が販売する価額2,000円、従業員への値引き価額1,500円

 

③値引率が全員一律か、地位や勤続年数に応じて合理的なバランスが取れていること例:勤続5年以上の従業員は15%オフで販売等

 

④一般消費者が通常消費できる数量

 

【課税される範囲】

会社の仕入価額より低い価額やアンバランスな価額での販売

 

10 具体例 ~永年勤続・創立記念品等~

 

従業員の永年勤続を表彰したり、会社の創業を記念して、従業員に創立記念品を配布するような行事は一般的に行われています。

 

創業記念品の支給のついては、役員や従業員だけでなく株主や取引先などの社外の関係者にも供与されることが想定されるため、

下記の要件を満たす場合には、給与課税しないこととして取り扱います。

 

①支給する記念品が社会通念上ふさわしいもの

②処分見込み額が10,000円以下のもの ※消費税等の金額を除いて判定します。

 

一方で、金銭や有価証券等の支給や、記念品を従業員が自由に選択できる場合には給与課税されます。

 

【課税される範囲】

金銭・有価証券、記念品を従業員が自由に選択できるもの、処分見込額が10,000円超のもの、などを支給した場合

 

11 所長の一言

 

こんにちは。税理士の山田です。

現物給与については、課税・非課税の判断が難しく、非常にグレーな取扱いが多くあります。

従業員のためと思って行っていた福利厚生が急に給与として課税されるケースもあります。

 

とあるIT企業が無料で社員食堂を提供いていたところ給与課税がされたケースや、仕事の都合で社員旅行に参加出来ない方に金銭を支給したところ、

全従業員に給与課税がされたケースなどあります。社員のための福利厚生が結果として、社員の税金を増やして負担をさせてしまうことがあるので注意しましょう。

 

福利厚生の設計時には給与課税がされないように、税法上の取扱いを整理する必要があります。

また、社会通念上一般的と言える範囲が非課税、という非常にあいまいな基準な部分も多く、税務調査の際に議論となることも少なくありません。

全く準備がされていないとゼロベースでの議論になってしまい調査で不利な判断がされてしまうことがありますが、

非課税であると判断するための根拠を整えておくことで、調査官の心象も大きく変わってくると考えます。


超速報!令和4年度(2022年度)税制改正大綱を徹底解説!

こんにちは。

税理士の山田です。

 

今回は令和3年12月10日に公表された『令和4年度(2022年度)税制改正大綱』の中から特に気になった項目を抜粋して解説をします。公表されたばかりの情報ですので、スピードと解り易さを重視して解説しております。正確性を担保するものではございませんので、予めご了承ください。内容に誤り等がございましたら随時訂正して参ります。

また、税制改正大綱は税制改正の素案となるものであり、おおむねこの通りの改正がされることがほとんどですが、100%確実ではございません。読みやすさを重視するために文中ではまだ予定であることを態々記載していませんが、確定事項ではない点はご理解ください。

 

なお、一部で話題になっていた『相続税と贈与税の一体化』については、今回の改正では織り込まれていません。引き続き検討を進めるようですが、早くても再来年以降の税制改正項目ということになりますので、改正のタイミングとしても早くても令和5年4月以降になります。

 

※令和4年度(2022年度)税制改正大綱についてはこちらをご覧ください。

https://www.jimin.jp/news/policy/202382.html

 

Ⅰ個人所得税課税(地方税含む)・源泉所得税

  1. 住宅ローン控除の改正

従前では令和3年において住宅ローンを組んで自宅を購入した場合に、借入限度額を5000万円(住宅の取得等が特定取得以外の場合は3000万円)として、住宅借入金の年末残高に対して1%の税額控除を10年間適用出来る取扱いとなっていましたが、令和4年以降も延長はするもの主に増税傾向となります。具体的には下記の表の取扱いとなります。

種類

居住年

借入限度額

控除率

控除期間

認定住宅等以外の居住用家屋の新築等

令和4年~5年

3000万円

0.7%

13年

令和6年~7年

2000万円

10年

認定住宅等以外の中古家屋の取得等

令和4年~7年

認定住宅(認定長期優良住宅と認定低炭素住宅)の新築等

令和4年~5年

5000万円

13年

令和6年~7年

4500万円

ZEH水準省エネ住宅の新築等

令和4年~5年

4500万円

令和6年~7年

3500万円

省エネ水準適合住宅の新築等

令和4年~5年

4000万円

令和6年~7年

3000万円

認定住宅等の中古家屋の取得等

令和4年~7年

3000万円

10年

※ 本税制の適用対象者はその年の合計所得金額が3000万円以下であることが要件となっていましたが、令和4年以降は2000万円以下が要件に引き下げられます。

※ 中古住宅の取得については、従来設けられていた築件数要件が撤廃される一方で、新耐震基準に適合する住宅であることが要件となります。

 

控除率が下がるのは住宅ローンの金利が大幅に下がりいわゆる逆ザヤ状態になってしまっていたためにそれを解消する措置となります。つまり、住宅ローンの変動金利が0.5%を下回ることも珍しくなくなってしまうほどの低金利であり、支払う住宅ローンの金利よりも本税制の控除額の方が多くなってしまうという現象が生じてしまっていたためとなります。

従前の新型コロナ税特法においては一定の条件で借入限度額を5000万円、控除率1%、控除期間は13年間とする取扱いが令和4年まで可能ですが、その点は特に変更がないと思われます。(大綱に詳細はなし)

 

  1. 子会社等からの配当に係る源泉所得税を廃止

以下の会社からの配当については、所得税の源泉徴収を行わないこととします。適用時期としては、令和5年10月1日以降に支払いをすべき配当について適用されます。

・ 完全子法人株式等(100%保有の子会社)

・ 基準日に置いて直接保有する株式等の保有割合が3分の1超である子会社

 

  1. 配当が総合課税とされる大口株主の範囲を拡充

上場株式等の配当等については源泉分離課税が適用されるところですが、大口株主が受け取る配当についてはこの制度が適用されずに、非上場株式からの配当と同様の取扱いとして、20.42%の源泉徴収がされたうえで総合課税により確定申告が必要とされています。

従来はこの大口株主の範囲として、直接にその会社の発行済株式の3%以上が保有する方が対象となっていましたが、その方が支配関係を持つ同族会社がその会社の株式を持っている場合に、3%の判定に含めることになる予定です。この改正は、令和5年10月1日以後に支払うべき配当等について適用がされます。

なお、私見ですが3%の判定おいては分母である発行済株式総数に自己株式を含めて判定することになっており、この点についても本来は改正がされるべき点であると思われますが、今回の大綱には含まれていません。将来的に改正となる可能性は高い部分ではないかと考えます。

 

  1. 納税地の変更に関する届出書

納税地が変更した場合には、税務署長に届出書を提出するルールとなっておりましたが、令和5年以降については届出書の提出が不要となります。(個人消費税についても同様)

 

  1. 上場株式等の配当所得割に係る課税方式の改正

個人住民税において、特定配当等及び特定株式等譲渡所得金額に係る所得の課税方式を所得税と一致させることとなりました。恐らくですが、これは所得税と住民税について別々の課税方法を選択することで、上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除額が所得税と住民税で不一致になってしまうことを防ぐ措置であると思われます。

 

Ⅱ資産課税

  1. 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税措置

適用期限(現行は令和3年12月31日)を令和5年12月31日までに延長し、限度額については下記の通りとなります。

・ 通常の住宅 500万円

・ 耐震、省エネ又はバリアフリーの住宅用家屋 1000万円

 

  1. 非上場株式等に係る納税猶予の特例制度

特例承継計画の提出期限が現行は2023年3月末までとなっていますが、1年延長してい2024年3月末までとなります。

 

  1. 添付書面等記載事項の提供方法の見直し

相続税の申告書の添付書類の提供方法に、光ディスク及び磁気ディスクが追加されました。相続税の申告書の添付書類は膨大な量となりますが、電子申告の添付データについては容量が限られているために取られた措置であると推察します。

 

  1. 財産債務調書制度等の見直し

まずは提出義務者が拡大され、現行の提出義務者にプラスでその年の12月31日において有する財産の価額の合計額が10億円以上である居住者が追加されました。

一方で提出期限については、現行は翌年の3月15日までとされていたものが翌年の6月30日に延長がされました。こちらの改正は国外財産調書についても同様の改正となります。

 

Ⅲ法人課税(地方税含む)

  1. 人材確保等促進税制の改正(いわゆる大企業向け)

従来の人材確保等促進税制を改正し、下記の変更が行われます。対象となる給与額の計算については、令和3年3月31日以前の開始事業年度に対する取扱いに戻る形になると思われます。(この1年間は一体なんだったのか・・・)

改正項目

現行

改正

適用期間

令和3年4月1日から令和5年3月31日までに開始する事業年度 令和4年4月1日から令和6年3月31日までに開始する事業年度

適用要件

新規雇用者給与等支給額(※)が、前年度より2%以上増えていること

※    国内新規雇用者のうち雇用保険の一般被保険者に対してその雇用した日から1年以内に支給する給与等の支給額

継続雇用者給与等支給額(※)が、前年度より3%以上増えていること

※    当期及び前期の全期間の各月分の給与等の支給がある雇用者で一定のもの(おそらく雇用保険の一般被保険者)に対して支給する給与等の支給額

控除額計算

控除対象新規雇用者給与等支給額(※)の15%

※    国内新規雇用者に対してその雇用した日から1年以内に支給する給与等の支給額

控除対象雇用者給与等支給増加額(※)の15%

※    明記されていないが、おそらく役員と役員親族以外の全従業員に対する給与等の支給額についての前年からの増加額

上乗せ措置

①教育訓練費の額が、前年度より20%以上増えている場合には、税額控除率を5%加算

 

①継続雇用者給与等支給額の増加割合が4%以上である場合には、税額控除率を10%加算

②教育訓練費の額が、前年度より20%以上増えている場合には、税額控除率を5%加算(変わらず)

教育訓練費の明細書

確定申告書の添付 会社保管

※ 資本金の額が10億円以上であり、かつ、常時使用する従業員の数が1000人以上である場合には、一定の事項を経済産業大臣に届出が必要

※ 人材確保等促進税制について

https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/syotokukakudaisokushin/syotokukakudai.html

 

  1. 所得拡大促進税制の改正(中小企業者限定)

従来の所得拡大促進税制を改正し、下記の変更が行われます。

改正項目 現行 改正
適用期間 令和3年4月1日から令和5年3月31日までに開始する事業年度 令和4年4月1日から令和6年3月31日までに開始する事業年度
上乗せ措置 雇用者給与等支給額の増加割合が2.5%以上であり、次のいずれかに該当する場合は税額控除率を10%加算

①教育訓練費の額が、前年度より10%以上増えている場合

②経営力向上計画の認定を受けて、かつ証明がされた場合

①雇用者給与等支給額の増加割合が2.5%以上である場合には、税額控除率を15%加算

②教育訓練費の額が、前年度より10%以上増えている場合には、税額控除率を10%加算

※ 所得拡大促進税制について

https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/syotokukakudai.html

 

  1. 大企業向けの税額控除制限措置の改正

大企業向けの研究開発税制等の特定税額控除規定の適用を受けることができないこととする措置について要件が改正されます。資本金の額が10億円以上であり、かつ、常時使用する従業員の数が1000人以上である場合で、かつ、前年度の課税所得金額がプラスであるときについては、継続雇用者給与等支給額の前年からの増加割合が1%以上(令和4年4月1日から令和5年3月31日までに開始する事業年度は0.5%以上)でなければ、特定税額控除規定の適用を受けることが出来ません。

 

  1. みなし配当の計算について

資本の払い戻しに係るみなし配当の額の計算について、払戻等対応資本金額等はその払い戻しにより減少した資本剰余金の額を限度とすることになりました。(従前は取扱い無)

また、種類株式を発行する法人の資本の払い戻しに係るみなし配当の額の計算について、種類資本金額を基礎と計算することになりました。(従前は取扱い無)

 

  1. 少額資産の損金算入制度について貸付用資産を除外

下記の規定について貸付の用に供する資産を対象から除外します。ただし、主要な事業として行われるものを除きます。

・ 少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度(10万円未満の少額資産)

・ 一括償却資産の損金算入制度(20万円未満の一括償却資産)

・ 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入特例(30万円未満の少額資産)

 

  1. グループ通算制度の投資簿価修正の改正

グループ通算制度ではグループ離脱時の、通算子法人株式の譲渡原価の計算を税務上の簿価純資産を元に計算するような仕組みとなっていましたが、これでは子法人買収時の買収プレミア相当額を税務上の損金として算入出来なくなってしまうことが問題視されていましたが、改正が行われました。

改正としては、グループ離脱時における各法人の確定申告において一定の計算明細を添付することで、子法人株式の帳簿価額に資産調整勘定等対応金額を加算するような調整計算が行われます。資産調整勘定等対応金額とはグループ通算開始時に時価取得をしたその子法人株式の取得価額のうち、仮にその時点で合併をしたものとした場合における資産調整勘定又は負債調整勘定相当額とされています。

個人的な意見として、負債調整勘定相当額が調整計算に含まれているのは、買収時の負ののれん相当額が離脱時に損金に算入されることを防ぐ措置であると思われますが、そもそもの取扱いが明細書の添付を要件としている規定となっており、不利な取扱いの場合には明細書の添付をあえてしないことで課税を免れることが出来るのか否か、という点が気になる点となります。

また、グループ離脱時の時価評価資産の取扱いで、帳簿価額が1000万円未満である資産については時価評価資産から除外されていますが、営業権については帳簿価額が1000万円未満であっても除外されないことになりました。

 

  1. ソフトバンクグループ対策税制の改正

ソフトバンクグループ対策税制とは、50%超の支配関係がある子会社からの配当を適用対象として、その株式等の簿価の10%を超える配当が行われた場合に、株式の簿価の切り下げを行う措置となります。ただ、適用除外要件として下記のような配当については対象から除外されます。複雑な制度となりますが、詳細は割愛しております。

① 設立以来90%以上国内資本のみの内国法人からの配当

② 買収後に発生した利益剰余金からの配当

③ 10年超支配継続している会社からの配当

④ 2000万円以下の配当

また、適用回避防止規定として、子法人が一定の孫法人(適用除外要件の①か③を満たす法人以外である法人)から1事業年度中に受ける配当等の額が、孫法人株式等の帳簿価額の10%を超え、かつ、2000万円を超える場合には、適用除外要件を満たさない措置が従来から取られています。

このソフトバンクグループ対策税制として、下記の2点の改正が行われます。こちらは令和2年4月1日以後の開始する事業年度から遡って適用するようです。

① 一点目として、上記適用除外要件の②について、従来は特定支配日の直前事業年度から配当決議等の直前事業年度までの利益剰余金額の増加額が配当金額を超えている場合には適用除外とされる措置が取られていました。ただし、このルールでは『配当決議等の直前事業年度から配当決議等までの間に増減した利益剰余金額』を原資として配当した場合には、適用除外要件を満たすことが出来ないことから、一定の書類保存を要件として上記の金額を計算に反映させることが可能となります。ただし、その場合には『特定支配日の直前事業年度から特定支配日までの間に増減した利益剰余金額』についても調整が必要となります。

② 二点目として、適用回避防止規定については孫法人が以下の要件を満たす場合には適用しないこととします。つまり、子法人は適用除外要件を満たせば本税制の適用を回避出来ます。

・ 配当等の基準時以前10年以内に子法人との間に特定支配関係があった孫法人の全てが、孫法人の設立時からその基準時まで継続してその子法人の特定支配関係にあった場合

・ 親法人と孫法人の間に、その孫法人の設立時から孫法人から子法人への配当等の基準時まで継続して親法人による特定支配関係がある場合で、かつ、その基準時以前10年以内に孫法人との間に特定支配関係があったひ孫法人の全てが、ひ孫法人の設立時からその基準時まで継続してその孫法人の特定支配関係にあった場合

 

  1. 大法人に対する事業税所得割の税率の見直し

外形標準課税適用法人については、令和4年4月1日以後の開始事業年度から軽減税率適用法人に該当しないことになり、所得割の標準税率は一律で1%となりました。

 

Ⅵその他

  1. 隠蔽仮装行為があって確定申告書が提出された場合等の措置

隠蔽仮装行為があって確定申告書が提出された場合や確定申告書の提出が無い場合には、帳簿書類や明らかな証拠書類等が無い限りは、その明らかなエビデンスが準備出来ない経費については損金の額に算入しないような措置が取られるようです。これは証拠書類が無い場合に調査で水掛け論になることを防ぐために取られた措置であると思われます。

 

  1. 修正申告書や更正の請求書の記載事項の整備

修正申告書や更正の請求書の記載事項より、申告前又は更正前の「課税標準等」「納付すべき税額の計算上控除する金額」「還付金の額の計算の基礎となる税額」を除外することになりました。これにより様式が簡略化されると思われます。

 

  1. 電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存の宥恕措置

電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度について、令和4年1月~令和5年12月までの期間については、税務署長が保存できないことにつきやむを得ない事情があると認め、保存義務者が税務調査を受けた際に印刷した書面の提出が出来る状況にある場合には、保存要件を満たすこととなります。この趣旨としては、保存要件への対応が困難な事業者の実情に配慮し、税務署長への手続きを要せずに出力書面等による保存を可能とするためのものである旨が大綱に明記されています。

ここからは私見となりますが、上記の『税務署長が保存できないことにつきやむを得ない事情があると認め』という部分については全ての法人について(又は中小企業限定か)、一律でやむを得ない事情があると認めるものと考えます。つまり、法律が施行された後に国税庁よりその旨の案内がされるのではないかと推察します。そうでなければ、上記の大綱の趣旨にそぐわないと考えます。

 

  1. 消費税の適格請求書等保存方式に係る見直し

免税事業者が令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中に適格請求書発行事業者の登録を受ける場合には、その登録日から発行事業者になれるような措置が取られます。また、この適用を受けて登録日から課税事業者となる適格請求書発行事業者については、2年間は課税事業者が強制される措置が取られるようです。

※ 本制度の概要については当社の別記事をご確認下さい。

適格請求書保存方式(インボイス制度)の概要

 

  1. 税理士制度の見直し

税理士事務所に該当するかどうかの判定について、設備又は使用人の有無等の物理的な事実により行わないことにするようです。リモートワーク等の柔軟な対応が出来るようにすることへの配慮であると思われます。

また、税理士試験の会計科目(簿記論と財務諸表論)の受験資格について、不要となります。つまり、高校生や大学低学年であっても会計学の試験は柔軟に受検が出来るようになると思われます。これは令和5年の試験から適用がされるようです。個人的には業界の発展のために非常に嬉しい改正です。


必見!合併時の税務申告

こんにちは!公認会計士の岸です。

 

現状のコロナ禍において、業績悪化に悩まれている中小企業様は多いかと思われます。

その中で、事業の継続が困難になり、会社や事業を他社に売却するM&Aの動きが徐々に活発になってくるものと思われます。

 

M&Aを実行する際には、様々な税務論点の検討が必要となり、特にメインの論点となる

組織再編の適格判定や欠損金の引継ぎに関しては多くの書籍や文献が存在します。

 

一方で、実際の申告書をどう書くか、といった部分を解説している媒体はそこまで多くないように見受けられたため、

私自身の備忘も兼ねて、組織再編時の申告書作成の実務的な留意点をご紹介いたします。

 

組織再編には様々な形態がありますが、ここでは、ある会社が他社を吸収合併した場合を想定します。

※ 2022.6.2追記 一部内容に誤りがあることが解り、訂正させて頂きました。大変失礼しました。

※ 2022.6.2追記 一部の様式が変更されていますが、古い様式での記載例となっています。

 

1.想定条件

以下の条件を想定して、申告書の記載例などを紹介していきます。

簡単な吸収合併のケースを想定します。

 

2.法人税申告(被合併法人)

被合併法人の最終事業年度の申告といっても、基本的には通常の期の申告と同様に税務処理を行えば問題ありません。

ただし、申告書の記載上、いくつかの留意点があります。

 

■国税申告書(別表一)

主な記載欄ごとの情報は以下の通りです。

記載例は以下の通りです。

 

提出先等

被合併法人の情報ではなく、合併法人の情報を記載する点に注意しましょう。

被合併法人の最終事業年度の税金の申告、納付時には、被合併法人は合併により消滅してしまっていることから、

合併法人が申告、納付を行うためです。

なお、法人名の欄では、合併法人名の後ろに、被合併法人名を併せて記載します。

 

旧納税地及び旧法人名等

被合併法人の納税地及び法人名を記載します。

 

添付書類

以下の書類にチェックを付けます。

通常の申告ではチェックが付かない場所かと思いますので、チェック漏れに注意しましょう。

また、チェックするだけではなく、書類の申告書への添付も忘れないようにしましょう。

 

◆“組織再編成に係る契約書の等の写し“

:合併の場合には合併契約書の写しです。

◆“組織再編成に係る移転資産等の明細書”

:(2)で説明する付表のことです。

 

利用者識別番号(e-Tax)

電子申告を行う法人限定の注意点ですが、利用者識別番号も合併法人の番号を使用しますので注意してください。

 

■組織再編成に係る主な事項の明細書(付表)

組織再編を行った際にはこの付表の添付が求められます。

当該付表は2020年12月時点において、電子申告に対応していないため、電子申告の達人などで

電子申告を行う際には、申告書の添付資料として、別ファイルで送付する必要があります。

 

記載例は以下の通りです。(当該附表は2020年12月時点のものです)

 

組織再編成の態様

該当する組織再編の形態をチェックします。

また、組織再編成の日には、合併契約書に記載されている組織再編の効力発生日を記載します。

 

適格区分

法人税法上の適格組織再編に該当するかどうかをチェックします。

適格組織再編に該当する場合には、根拠条文を併せて記載します。

適格要件の条文は複雑なので、参照条文を誤らないよう注意しましょう。

 

●組織再編成に係る関連法人

合併法人及び被合併法人の情報を記載します。

(名称及び所在地)

 

●株式保有関係等

適格組織再編の判定の基礎となる、株式の保有関係や割合、事業関連性などを記載します。

該当する適格要件の形態によって、記載の必要な箇所が異なってきます。

記載例は、最も要件が多い、共同で事業を行うための合併による適格合併を想定しています。

 

■地方税申告書

地方税の申告書の各欄に記載する情報は以下の通りとなります。

記載例は以下の通りです。

提出先等

提出先や法人番号、所在地については、被合併法人の情報を記載します。

それ以外の法人名などの欄は、合併法人の情報を記載します。

 

利用者ID(eLTAX)

利用者IDは、東京都については被合併法人のIDを使うように回答がありましたが、

自治体によって運用が異なる可能性があります。

そのため、申告書の提出前に、各自治体へ合併法人と被合併法人のどちらの利用者IDを使用すべきか、

電話で確認するようにしましょう。

 

3.消費税申告(被合併法人)

法人税と同様のため、省略します。

提出先や納税地は全て合併法人のものを記載します。

 

4.税務届出関係

吸収合併の際に提出する税務届出で基本的なものは以下の通りです。

 

この他にも、被合併法人が課税事業者選択届出書を提出している場合で、

合併法人が課税事業者の選択の特例を適用したい場合には、合併法人として改めて届出書を提出する必要があるなど、

個々の事例によって求められる届出が変わります。

また、特に会社分割の場合には、下記の国税庁のHPにもあるように、提出を検討する届出書が多岐に渡るため、

慎重な検討が必要になります。

届出の提出漏れが生じないように注意しましょう。

https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/kigyosaihen/mokuji.htm

 

5.合併における税務論点

以上では、申告書の記載について重点的に解説しましたが、合併における税務論点についても簡単に解説していきます。

 

合併にあたっては、そもそもその合併が適格合併に該当するのかどうか、

また適格合併に該当しても繰越欠損金が引き継げるのかどうか、といった点が最も重要な税務論点になるかと思います。

適格組織再編の判定や、繰越欠損金の取扱いについては非常に論点が多く、

それだけで本が1冊書けるような難解な税制になりますので、改めて記事にしたいと思います。

 

下記では、その他の合併における税務論点について俯瞰していきます。

 

◆適格合併の取扱い:

合併が税法上の適格合併に該当する場合には、被合併法人の資産負債は全て税務上の“簿価”で

合併法人に引き継ぐことになります。

そのため、いわゆる別表五(一)上の税務調整項目も、全て合併法人に引き継ぐことになります。

純資産部分についても、税務上の利益積立金額と資本金等の額をそのまま引き継ぐことになりますが、

親子間の合併などの場合には、抱き合わせ株式の調整が必要となりますので、注意が必要です。

他にも、法人税法では様々な規定に影響があり、過去の数値を使用して限度額計算や判定計算が

行われるような規定では、原則として被合併法人の数値と合併法人の数値の合計額で判定を行うことになります。

 

◆非適格合併の取扱い:

合併が税法上の非適格合併にが該当する場合には、被合併法人の資産負債は全て“時価”で

合併法人に譲渡されたものとして取り扱います。

被合併法人では時価譲渡により譲渡損益を認識する必要がありますし、

合併法人側ではいわゆるのれん相当額を 資産(負債)調整勘定という形で、

税務上の資産(負債)として認識します。

 

◆被合併法人のみなし事業年度:

合併を行った場合には、被合併法人は合併により消滅するため、合併が期中に行われた場合には

被合併法人の事業年度が1年を経過しない途中で途切れることになります。

この、途中で途切れた被合併法人の最終事業年度を、みなし事業年度といいます。

合併の効力発生日の前日が、被合併法人のみなし事業年度の末日となります。

 

◆事業年度が1年未満の場合の各種取扱い:

減価償却資産の償却率については、事業年度が1年存在することを前提として設定されています。

そのため、みなし事業年度が1年未満となる場合には、みなし事業年度の月数で償却率を調整することが必要となります。

また、交際費の定額控除限度額、法人税の税率判定、地方税の均等割、なども年額をベースとしているため、

月数による調整を行う必要があります。

 

◆納税義務判定と簡易課税判定(消費税):

合併により被合併法人を吸収した合併法人については、被合併法人の基準期間に相当する期間の課税売上高を考慮して、

納税義務判定を行う規定が設けられています。

課税事業者の判定漏れがないように注意しましょう。

一方で、簡易課税制度の適用判定における基準期間における課税売上高は、合併があったとしても

合併法人の課税売上高のみを使用して判定します。

納税義務判定の計算と混同しないように注意が必要です。

 

◆調整対象固定資産(消費税):

被合併法人が調整対象固定資産を取得しており、その調整対象固定資産を合併により合併法人が引き継いでいる場合には、

調整対象固定資産の調整計算に係る通算課税売上割合の判定を、合併法人で引き続き行う必要があります。

 

6.さいごに

今回は、吸収合併の場合を想定し、主に申告書の記載方法についてメインに解説いたしました。

M&Aは検討すべき論点が非常に多岐にわたり、税務業務の中でも高度な知識が求められる分野です。

事前に組織再編業務に精通した税理士に、組織再編実行時だけではなく、

事前のスキーム策定まで含めて相談することが非常に重要です。

 

弊社でもM&Aのスキーム提案などを数多く行っており、M&Aのマッチングサイトのアドバイザーとしての登録も行っています。

M&Aに興味がある方は、弊社でも様々なアドバイスや提案が可能ですので、お気軽にご相談いただければと思います。


生命保険にまつわる税務

 

こんにちは。
公認会計士の岸です。

 

ご家族にもしものことがあった場合に備えて、生命保険に加入されている方が多いのではないでしょうか。

この点、保険契約期間中は保険料の支払いや保険事故発生に伴う保険金の受取りなどが行われますが、

それぞれのタイミングで課税関係の検討が必要になります。

検討が不十分ですと、保険に関する処理で思わぬ税金の支払いが生じてしまった、ということにもなりかねません。

 

そこで、本記事では、個人、法人の生命保険にまつわる税務の概略をまとめましたので、

保険契約内容の現状確認や新規契約などにあたっての参考にご覧いただけますと幸いです。

 

1.保険期間中の流れ

 

保険期間中に発生するイベントは主に以下のようなものがあります。

保険事故の発生か、保険契約の解約、により保険契約は終了します。

それぞれのタイミングで課税関係の検討が必要となります。

 

 

2.保険契約の登場人物

 

保険契約には、「被保険者」、「保険料の負担者」、「保険金受取人」の三者が登場します。

 

一般の人に馴染みがあるのは、親が自身が亡くなった時のために子供のために保険を契約しているなどの

個人間の契約かと思いますが、法人として役員や従業員のために保険を契約する場合もあります。

そのため、保険契約はその主体が個人であったり、法人であったり、と個々のケースによって様々であるため、

保険の税務は複雑になります。

 

この三者の組み合わせによって、保険契約に関する課税関係が大きく変わってきます。

 

 

3.保険料支払時の課税関係

 

本節以降で、保険契約中に発生するイベントごとに課税関係を紹介していきます。

まずは、契約期間中に保険料を支払った際の税務です。

 

(1)所得税(個人)

 

個人の方が生命保険料を支払っている場合には、確定申告で生命保険料控除(所得税法第76条)を適用することができます。

 

詳しい計算方法の説明は割愛しますが、必ずしも支払った保険料の全額が控除されるわけではなく、

一定の限度額までしか控除が認められていません。

 

年末近くになると保険会社から保険種類や支払保険料をまとめた資料がご自宅に送付され、

年末調整にあたって資料の提出を行われている方が多いのではないでしょうか。

 

(2)法人税

 

法人が加入する保険には様々なタイプのものがありますが、ここでは基本的な保険種類である「養老保険」と「定期保険」の

取り扱いに絞ってご紹介していきたいと思います。

 

養老保険」とは、被保険者の死亡または生存を保険事故とする生命保険です。

いわゆる積立型の保険であり、お亡くなりになった際に生命保険金がおりるとともに、

いつ解約しても積み立てた額のうち一定額が必ず将来返ってきますので、貯蓄性のある保険といえます。

 

定期保険」とは、一定期間内における被保険者の死亡を保険事故とする生命保険、と定義されています。

いわゆる掛け捨て型の保険であり、養老保険とは異なり満期保険金が存在せず、

被保険者が亡くならない限りは保険金が支払われないことから、貯蓄性がない保険といえます。

 

特徴としては「養老保険」は積立がある分、保険料が高くなる傾向があり、「定期保険」は保障のみですので、

保険料は低くなる傾向があります。

 

また、以下でご紹介する保険料の法人税の取り扱いに関しては、実は法人税法上には明確な定めはなく、

国税職員内部の取り扱い指針である基本通達というものに、その詳細が定められています。

基本通達は法令ではないので、厳密には納税者を拘束するものではないのですが、

この基本通達に従って申告を行うのが実務になっています。

 

理解にあたっては、その保険契約によって誰が受益者となるか?によって課税関係が変わってくると考えると、

整理しやすいかと思います。

 

a.養老保険の取り扱い

 

養老保険を契約している場合の課税関係は以下の通りです。

養老保険は貯蓄性のある保険であることから、法人が受け取る保険金に対応する部分(保険料の半額)については、

資産計上が求められています。

 

 

b.定期保険の取り扱い

 

定期保険については、掛け捨て型の保険であり、養老保険とは異なり貯蓄性がないことから、

その全額について損金算入が認められています。

 

なお、定期保険には満期保険金が存在しませんが、契約期間途中で契約を解約した場合に

解約返戻金が発生するタイプのものがあります。

そのような定期保険に関しては、将来の解約時に戻ってくる返戻金部分については貯蓄性があるだろうということで、

基本通達では以下のように解約返戻率(支払保険料に対する解約返戻金の割合)という指標に基づいて定期保険を分類し、

税務上のルールを規定しています。

支払った保険料に対する解約返戻金の割合が高いほど、貯蓄性が高いものと考え、資産計上額が増加するイメージです。

 

(法人税基本通達9-3-5の2より抜粋)

 

(3)消費税(個人、法人)

 

消費税法上は、保険料は課税対象として馴染まないもの、非課税となっています。

個人の方が保険料を支払われている場合には、その保険料には消費税は課税されていないことになります。

また、法人が保険料を支払っている場合には、その保険料に関しては仕入税額控除が適用できないことに

留意する必要があります。

 

(4)その他(相続税、贈与税)

 

契約者が子供であるのに、その親が保険料を支払っている場合には、

実質的には親が契約者であるとみなされる可能性があることに注意する必要があります。

 

後ほどご説明させていただきますが、契約者と保険金受取人の関係によっては、

所得税が課税されるのか、相続税が課税されるのか、といった判定結果が大きく変わってくるため、

親が契約者であるとみなされると、課税関係が大きく変わるリスクがあります。

 

このリスクを回避するためには、一旦親の口座から子供の口座へ保険料相当額を振込み、

子供の口座から保険料を支払う方法が考えられます。

この時、子供の口座を実質的には親が管理している口座、すなわち名義預金として取り扱われないよう、

子供自身が通帳や印鑑を管理したり、親子間で保険料相当額の資金について贈与契約を締結することも考慮する必要があります。

 

4.保険名義変更時の課税関係

 

保険契約期間中、保険料の負担者や保険金の受取人を変更するなどの目的で、保険契約の名義変更を行うケースがあります。

パターンとしては、名義変更の対象となる部分(契約者、受取人)、変更前後の主体(個人、法人)によって、

実務上は主に以下のケースが想定されるかと思います。

 

(1)契約者の変更(個人→個人)

 

父親が契約者となって保険料を支払っていた生命保険について、契約者を子供に変更する場合が想定されます。

 

この場合には、契約変更時には贈与税などの課税関係は生じず、その後の保険事故が実際に発生した際に、

保険料負担者と受取人の関係に応じて課税されます。

(国税庁質疑応答事例「生命保険契約について契約者変更があった場合」,

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/sozoku/14/05.htm)

 

なお、相続時の取り扱いを参考までにご説明しますと、相続により死亡保険金を子供が受け取る場合には、

その死亡保険金のうち、父親が支払っていた保険料の割合部分については相続税、

子供が支払っていた保険料の割合部分については所得税(一時所得)が課税されます。

 

(2)契約者の変更(法人→個人)

 

法人で契約していた保険を、役員などの個人に有償で契約譲渡する場合や、

退職金として現物支給する場合がケースとして考えられるかと思います。

 

以下では、社長の退職金として保険契約を現物支給する際の税務処理をご紹介します。

契約変更時の解約返戻金相当額に基づいて、課税処理が行われるイメージです。

 

(3)契約者の変更(個人→法人)

 

個人事業主の方が法人成りした場合で、従来の保険を法人向けの保険商品に切り替えるために、

一旦、名義変更で個人から法人へ契約を移し、その後保険の変更を行うケースが考えられるかと思います。

この方法のメリットは、保険の変更の際には、健康上に問題がある場合でも診査不要なケースがあることです。

 

以下では、法人が個人から、養老保険契約を解約返戻相当額で買い取る場合を想定します。

    

 

(4)保険金受取人の変更(法人受取→個人受取)

 

上記とは異なり、契約者は変えずに、保険金の受取人を法人から個人に変更するケースです。

 

以下では、【法人契約】、【死亡保険金(法人受取)】、【満期保険金(法人受取)】で契約していた養老保険を、

【死亡保険金(従業員、役員の遺族受取)】、【満期保険金(従業員、役員受取)】に変更する場合を想定します。

 

a.有償で保険契約を譲渡するケース

 

b.無償で保険契約を譲渡するケース

 

(5)保険金受取人の変更(個人受取→法人受取)

 

保険金の受取人を個人から法人に変更するケースです。

 

【法人契約】、【死亡保険金(従業員、役員の遺族受取)】、【満期保険金(従業員、役員受取)】で契約していた養老保険を、

【死亡保険金(法人受取)】、【満期保険金(従業員、役員受取)】に変更する場合を想定します。

 

この点、死亡保険金、満期保険金ともに、従業員、役員が従来の受取人であったことを想定しているので、過去に支払済の養老保険は全額給与として処理されているかと思います。

そのため、受取人の変更にあたっては特に課税関係は生じません。

 

5.保険解約時の課税関係

 

次に、保険契約を解約した場合の税務を見ていきます。

資金繰りの観点から保険料を支払えなくなった場合や、手元資金が早急に必要な場合などは、

保険契約の解約を検討されるケースがあるかと思います。

解約した場合に解約返戻金を受け取ることができる保険については、その返戻金に対して課税が生じます。

 

解約返戻金は契約者が受け取ることになります。

個人が受け取った場合と、法人が受け取った場合とに分けて、課税関係をご紹介いたします。

 

(1)個人が解約返戻金を受け取るケース

 

契約者と保険料負担者が同一の人である場合は、解約返戻金額から既に払い込んだ保険料を差し引いた金額が

一時所得として課税されます。

一方で、契約者と保険料負担者が異なる場合には、

保険料負担者から契約者(解約返戻金の受取人)に贈与があったものとして、贈与税が課税されます。

 

(2)法人が解約返戻金を受け取るケース

 

法人が解約返戻金を受け取った際の課税関係は下記の通りです。

 

6.保険事故発生時の課税関係

 

ここでは、保険の保障機能として、保険事故発生時に保険金が交付された場合の処理をご紹介いたします。

保険金の受取人が個人か、法人か、で分けて考えていきます。

 

(1)個人が保険金を受け取った場合

 

a.死亡保険金のケース

 

個人が死亡保険金を受け取った場合の課税関係については、以下の国税庁のHPが詳しいです。

(国税庁 タックスアンサー No.1750 死亡保険金を受け取った時,

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1750.htm)

 

国税庁のHPをもとに、各パターンの課税関係をまとめたものは下記の通りになります。

保険料の負担者と受取人の関係、及び一時金による受け取りか年金による受け取りか、で課税関係が変わってきます。

【パターン1】は、保険料を支払っていたその人自身が、保険金を受け取るケースです。

 

このケースでは、その保険料の受取人が所得税を課されることになりますが、

受取方法によって、一時所得か雑所得かに分かれます。

一時所得(一時金)の場合には、特別控除である50万円控除が適用できたり、最終的な所得税の計算では

一時所得の金額の1/2をもとに計算が行われるため、雑所得(年金)の場合と比べて、税務上のメリットが生じます。

 

【パターン2】は、被保険者と保険料の負担者が同一人のケースです。

 

この場合には、保険金受取人が、保険料を負担していた者から相続により保険金を取得したものとみなします。(相続税法第3条)

 

なお、一時金として受け取る場合には、相続税の1回のみで課税関係が終了しますが、

年金として受け取る場合には、相続年に相続税が課税された後、

翌年以降は毎年受取る年金受取額に対して所得税(雑所得)が課税されます。

この場合の雑所得の計算方法は、年々階段状に所得金額が増加していく特殊な計算方法を採用しており、

以下の国税庁のタックスアンサーにて詳細な計算方法が定められています。

(国税庁 タックスアンサー No.1620 相続等により取得した年金受給権に係る生命保険契約等に基づく年金の課税関係,

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1620.htm

 

【パターン3】は、被保険者、保険料の負担者、保険金の受取人、がすべて異なるケースです。

 

この場合には、保険料を負担していた者から、保険金受取人が保険金を贈与されたものとみなします。(相続税法第5条)

 

なお、こちらもパターン2のケースと同様、一時金として受け取る場合には贈与税の1回のみで課税関係が終了します。

一方で年金として受け取る場合には、贈与税に加えて、贈与年の翌年以後からの年金受取額に対して、

所得税(雑所得)が年々階段状に増加していくかたちで課税されます。

 

b.満期保険金のケース

 

個人が満期保険金を受け取った場合の課税関係については、以下の国税庁のHPが詳しいです。

(国税庁 タックスアンサー No.1755 生命保険契約に係る満期保険金等を受け取ったとき,

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1755.htm)

 

国税庁のHPをもとに、各パターンの課税関係をまとめたものは以下の通りになります。

死亡保険の場合と同様に、保険料負担者と保険金受取人の関係、

及び一時金による受け取りか、年金による受け取りか、でパターン分けされます。

2年目以降の雑所得の計算方法は、死亡保険金の場合と同様ですので、詳細は割愛します。

 

(2)法人が保険金を受け取ったケース

 

法人が保険金を受け取った際の課税関係は以下の通りです。

 

7.その他

(1) 遺留分対策としての生命保険

 

民法では、遺留分の侵害額請求というものが認められています。

 

これは、遺言などによる遺産分割の結果、法定相続人の中に分割財産の取り分が少ない方がいる場合に、

相続財産のうち自己の法定相続分の1/2(相続人が直系尊属のみの場合は1/3)に相当する部分までの金額に関して、

金銭の支払いを請求することができるものです。

 

例えば、被相続人に子供が2人おり、そのうち1人とは仲が悪く疎遠であり、遺言で疎遠の子供へ財産を一切分割しないことを

定めた場合でも、その疎遠の子供は他の兄弟などの相続人に対して、金銭の支払いを請求することができます。

 

この点、生命保険金は相続財産ではなく、民法上は受取人固有の財産になると考えられているため、

原則は遺留分侵害額の計算の母数には含まれないというメリットがあります。

そのため、他の相続人に干渉されない財産として、生命保険を活用することができます。

 

(2)逆ハーフタックスプラン(逆養老保険)

 

上記3.節では、法人が契約者となる養老保険に関する取り扱いをご説明しました。

そのうち、【死亡保険金(従業員、役員受取)】、【満期保険金(法人受取)】、として基本通達で規定されている契約形態を、

以下のように保険金の受取人を逆にしたものを、逆ハーフタックスプランといいます。

逆ハーフタックスプランの契約形態については、基本通達上明確な定めはなく、実務上は、保険料の1/2を支払保険料として損金算入、残りの1/2を給与(又は福利厚生費)として損金算入する処理が行われています。

 

この結果、養老保険で資産計上している保険料部分についても損金算入が可能になるというメリットがあります。

 

ただし、この処理は基本通達で特段規定されていない処理であるために税務否認リスクがあること、

さらに保険料の1/2が福利厚生費ではなく給与扱いとなる場合には源泉徴収事務が発生するという点に注意が必要です。

 

実際は福利厚生プランというよりかはオーナー個人の保障という観点で保険契約をされている場合も多いかと思われます。

そのような場合には、福利厚生費ではなく給与として扱われ、保険料相当金額に関して源泉徴収されるケースが多くなるかと思います。

源泉徴収事務を回避するためには、毎月の保険料は役員貸付金として処理し、満期保険金を減資として

その貸付金をオーナーから返済してもらえば、源泉徴収事務は発生しません。

ただし、役員貸付金として処理する場合には、会社がオーナーから貸付に係る受取利息を徴収しなければならないことに

注意してください。

 

8.さいごに

 

今回は生命保険にまつわる税務をご紹介いたしました。

基本通達には上記以外の規定もあり、さらに実際に販売されている保険プランも多種多様なものがあります。

  まずは、本稿で基本的な生命保険の課税関係を整理していただき、保険契約の見直しなどにお役立ていただけますと幸いです。


債権の貸倒れと債権放棄に関する法人税務

こんにちは。

公認会計士の岸です。

 

新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、業績悪化や倒産の危機に直面している企業が

多いかと思われます。

取引先の企業がそのような状況に直面している場合には、取引先の資金繰りや支払能力からみて、

取引先に対する債権の回収が困難になるケースが増えてくるものと想定されます。

この点、法人が保有する債権に関する貸倒損失の計上については、いくつかのルールがあり、

そのルールを満たさない場合には貸倒損失の損金算入が認められないこともあるため、

慎重な検討が必要となります。

本稿では、法人が保有する債権が貸倒れたり、放棄されたりした場合の税務上の取り扱いをご紹介いたします。

 

1.法人税法上の貸倒損失の体系

実は、法人税法上は貸倒損失の取り扱いについての明確な規定はありません。

しかし、実際にどのような状況であれば債権が貸倒れたと判断するかどうかは、個々の債務者の事情などにも左右されるため、

非常に難しい作業となります。

そこで、国税庁内部における事務処理の指針を定めた法人税基本通達というものに、貸倒れの判定に関する取り扱いが

規定されています。

基本通達では、債権の貸倒れについて以下の3つの類型を規定しています。

2.貸倒損失かどうかの判定

基本通達において示されている貸倒れの類型をそれぞれ見ていきましょう。

 

 (a)法律上の貸倒れ(法人税基本通達9-6-1)

基本通達の文言を引用すると下記の通りです。

 

9-6-1 法人の有する金銭債権について次に掲げる事実が発生した場合には、その金銭債権の額のうち次に掲げる金額は、その事実の発生した日の属する事業年度において貸倒れとして損金の額に算入する。(昭55年直法2-15「十五」、平10年課法2-7「十三」、平11年課法2-9「十四」、平12年課法2-19 「十四」、平16年課法2-14「十一」、平17年課法2-14「十二」、平19年課法2-3「二十五」、平22年課法2-1「二十一」により改正)

 

(1) 更生計画認可の決定又は再生計画認可の決定があった場合において、これらの決定により切り捨てられることとなった部分の金額

 

(2) 特別清算に係る協定の認可の決定があった場合において、この決定により切り捨てられることとなった部分の金額

 

(3) 法令の規定による整理手続によらない関係者の協議決定で次に掲げるものにより切り捨てられることとなった部分の金額

 

イ 債権者集会の協議決定で合理的な基準により債務者の負債整理を定めているもの

 

ロ 行政機関又は金融機関その他の第三者のあっせんによる当事者間の協議により締結された契約でその内容がイに準ずるもの

 

(4) 債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができないと認められる場合において、

       その債務者に対し書面により明らかにされた債務免除額

 

(1)~(4)の事実に該当する場合には、当該事実により切り捨てられた債権金額を損金の額に算入できることが定められています。

 

(1)~(3)の場合には、更生計画の認可による債権の切り捨てなど、法的整理手続を踏んで債権が切り捨てられた場合を想定しています。

債権が法的に切り捨てられたような状況にある場合には、誰の目から見ても債権が貸倒れたことは明らかであるため、

貸倒損失の計上を認めています。

 

一方、(4)の場合には、(1)~(3)とは異なり、債権が貸倒れたという事実ではなく債権放棄を行ったことを要件しています。

債権の「貸倒れ」ではなく債権の「放棄」であることから、もしその放棄が税務上の貸倒損失に該当しないとして否認された場合には、

取引先に対して何ら対価を受け取らずに債権回収を免除してあげたということで、税務上の寄附金として取り扱われる場合があるため、注意が必要です。

 

また、“その事実の発生した日の属する事業年度”において、損金に算入することとされていることにも注意が必要です。

例えば、過去に既に更生計画の認可などにより債権が切り捨てられている場合において、その切り捨てられた年度に債権金額を損金に算入していない場合には、その後の事業年度で債権金額を貸倒損失として損金に算入することはできません。

その事実が発生した事業年度の法定申告期限から5年以内であれば、更正の請求により過去に遡って貸倒損失に関する税金を取り戻すことができます。

しかし、その債権の切り捨てから5年超を経過しているような債権については、その損失に係る税金を取り戻せないことに注意が必要です。

 

(b)事実上の貸倒れ(法人税基本通達9-6-2)

基本通達の文言を引用すると下記の通りです。

 

9-6-2 法人の有する金銭債権につき、その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合には、その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理をすることができる。この場合において、当該金銭債権について担保物があるときは、その担保物を処分した後でなければ貸倒れとして損金経理をすることはできないものとする。(昭55年直法2-15「十五」、平10年課法2-7「十三」により改正)

 

(注) 保証債務は、現実にこれを履行した後でなければ貸倒れの対象にすることはできないことに留意する。

 

(a)のケースとは異なり、法的整理手続による債権の切り捨てにまで至らない状況であっても、

債務者の資産状況、支払能力等という実態からみて、債権の全額が回収できないことが明らかである場合においては、

貸倒損失の計上を認めているものです。

「全額が回収できないことが明らか」の判定については、債務者の置かれている状況(破産、債務超過など)を具体的に分析し、

実質的な判断を行うことが求められることから、当該判定について税務当局と争いになることも多いです。

なお、債権について担保が提供されている場合には、その担保物の価値分はまだ債権の回収見込みがあると考えられるため、

担保物を処分するまでは貸倒損失を計上できないことに留意する必要があります。

 

(c) 形式上の貸倒れ(法人税基本通達9-6-3)

基本通達の文言を引用すると下記の通りです。

 

9-6-3 債務者について次に掲げる事実が発生した場合には、その債務者に対して有する売掛債権(売掛金、未収請負金その他これらに準ずる債権をいい、貸付金その他これに準ずる債権を含まない。以下9-6-3において同じ。)について法人が当該売掛債権の額から備忘価額を控除した残額を貸倒れとして損金経理をしたときは、これを認める。(昭46年直審(法)20「6」、昭55年直法2-15「十五」により改正)

 

(1) 債務者との取引を停止した時(最後の弁済期又は最後の弁済の時が当該停止をした時以後である場合には、これらのうち最も遅い時)以後1年以上経過した場合(当該売掛債権について担保物のある場合を除く。)

 

(2) 法人が同一地域の債務者について有する当該売掛債権の総額がその取立てのために要する旅費その他の費用に満たない場合において、当該債務者に対し支払を督促したにもかかわらず弁済がないとき

 

(注) (1)の取引の停止は、継続的な取引を行っていた債務者につきその資産状況、支払能力等が悪化したためその後の取引を停止するに至った場合をいうのであるから、例えば不動産取引のようにたまたま取引を行った債務者に対して有する当該取引に係る売掛債権については、この取扱いの適用はない。

 

こちらも、(b)と同様に債権の法的切捨てにまで至らない状態であったとしても、

1年以上弁済がない場合や、取立費用が債権総額を上回る場合には、実態としては債権の回収可能性が既にないものと考えて、

貸倒損失の計上を認めたものです。

経過年数(1年以上)や取立費用の大小などの形式的な要件が定められているため、いわゆる形式要件などと言われることがあります。

 

(a)、(b)のケースと異なり、対象となる債権が通常の営業活動から生じる売掛債権に限定されている点に注意が必要です。

例えば、貸付金や損害賠償請求権といった、通常の営業活動以外から生じている債権についてはこの規定の対象外となります。

 

また、「継続的な取引を行っていた債務者」であることが求められているため、仮に営業債権であったとしても、

単発の取引で生じた債権については基本的に適用対象とならないことに注意が必要です。

しかし、一般消費者向けのネット販売で、継続的に取引を行うことを期待して顧客情報を管理していたが

結果的に1回の取引しか発生しなかったようなケースには、この基本通達の適用が認められていますので

(国税庁質疑応答事例「通信販売により生じた売掛債権の貸倒れ」)、

その債権が置かれている状況に応じて、適切な判断を行う必要があります。

 

4.貸倒れ以外の債権放棄

基本通達9-4-1(4)の貸倒損失の要件である債権放棄について、税務上の貸倒損失に該当しないと判断された場合には、

その債権放棄は取引先に対する経済的な利益の供与として、原則として法人税法37条に定める寄附金として取り扱われます。

 

寄附金として扱われる場合には、債権放棄額のうち、寄附金の損金算入限度額として計算される一定の金額までしか、損金に算入することができません。

具体的には、債権放棄は一般寄附金というものに該当し、以下の算式によって損金算入限度額を求めます。

一見すると難しい計算式となっていますが、要するに利益が多く計上されていたり、資本金の額が多額である会社の場合には、

損金に算入できる寄附金の額が大きくなります。

 

 

5.寄附金として取り扱われない債権放棄

 

税務上の貸倒損失として認められなかった債権放棄であったとしても、寄附金としては取り扱われず、

その全額を損金に算入できるケースがあります。

 

(1)子会社等を整理、再建する場合の債権放棄等(法人税基本通達9-4-1、9-4-2)

基本通達の文言を引用すると下記の通りです。

 

(子会社等を整理する場合の損失負担等)

9-4-1 法人がその子会社等の解散、経営権の譲渡等に伴い当該子会社等のために債務の引受けその他の損失負担又は債権放棄等(以下9-4-1において「損失負担等」という。)をした場合において、その損失負担等をしなければ今後より大きな損失を蒙ることになることが社会通念上明らかであると認められるためやむを得ず(必要性)その損失負担等をするに至った等そのことについて相当な理由があると認められるときは、その損失負担等により供与する経済的利益の額は、寄附金の額に該当しないものとする。(昭55年直法2-8「三十三」により追加、平10年課法2-6により改正)

(注) 子会社等には、当該法人と資本関係を有する者のほか、取引関係、人的関係、資金関係等において事業関連性を有する者が含まれる(以下9-4-2において同じ。)。

 

(子会社等を再建する場合の無利息貸付け等)

9-4-2 法人がその子会社等に対して金銭の無償若しくは通常の利率よりも低い利率での貸付け又は債権放棄等(以下9-4-2において「無利息貸付け等」という。)をした場合において、その無利息貸付け等が例えば業績不振の子会社等の倒産を防止するためにやむを得ず行われるもの(必要性)で合理的な再建計画に基づくものである等その無利息貸付け等をしたことについて相当な理由があると認められるときは、その無利息貸付け等により供与する経済的利益の額は、寄附金の額に該当しないものとする。(昭55年直法2-8「三十三」により追加、平10年課法2-6により改正)

(注) 合理的な再建計画かどうかについては、支援額の合理性、支援者による再建管理の有無、支援者の範囲の相当性及び支援割合の合理性等について、個々の事例に応じ、総合的に判断するのであるが、例えば、利害の対立する複数の支援者の合意により策定されたものと認められる再建計画は、原則として、合理的なものと取り扱う。

 

子会社や取引先など、事業関連性を有する者に対する債権放棄や無利息貸付について、

その債権放棄等をしなければより大きな損失を蒙ることが明らかな場合や、合理的な経営再建計画に基づく行為である場合には、

それが必ずしも経済的利益の供与に該当しないものとして、その債権放棄等の金額は寄附金の額に該当しないものとされています。

この点、経営再建計画等が合理的であるかどうかなどの判断を慎重に行う必要があります。

 

上記の要件を満たさない場合には、原則に戻って寄附金として取り扱われ、一定の損金算入限度額までしか損金算入が

認められません。

 

また、債務者が100%の支配関係がある国内の子会社に該当するようなケース(法人税法37条2項)や、

50%以上の支配関係がある海外子会社に該当するようなケース(租税特別措置法66の4条第1項)には、

その寄附金の全額が損金不算入となります。グループ会社に対する債権を放棄するようなケースには注意が必要です。

 

(2)新型コロナウイルスに関連する資金繰りの悪化(法人税基本通達9-4-6の2、9-4-6の3)

基本通達の文言を引用すると下記の通りです。

 

(災害の場合の取引先に対する売掛債権の免除等)

9-4-6の2 法人が、災害を受けた得意先等の取引先(以下9-4-6の3までにおいて「取引先」という。)に対してその復旧を支援することを目的として災害発生後相当の期間(災害を受けた取引先が通常の営業活動を再開するための復旧過程にある期間をいう。以下9-4-6の3において同じ。)内に売掛金、未収請負金、貸付金その他これらに準ずる債権の全部又は一部を免除した場合には、その免除したことによる損失の額は、寄附金の額に該当しないものとする。

 既に契約で定められたリース料、貸付利息、割賦販売に係る賦払金等で災害発生後に授受するものの全部又は一部の免除を行うなど契約で定められた従前の取引条件を変更する場合及び災害発生後に新たに行う取引につき従前の取引条件を変更する場合も、同様とする。(平7年課法2-7「六」により追加、令2年課法2-10「一」により改正)

 

(注)

 

1 「得意先等の取引先」には、得意先、仕入先、下請工場、特約店、代理店等のほか、商社等を通じた取引であっても価格交渉等を直接行っている場合の商品納入先など、実質的な取引関係にあると認められる者が含まれる。

 

2 本文の取扱いは、新型インフルエンザ等対策特別措置法の規定の適用を受ける同法第2条第1号《定義》に規定する新型インフルエンザ等が発生し、入国制限又は外出自粛の要請など自己の責めに帰すことのできない事情が生じたことにより、売上の減少等に伴い資金繰りが困難となった取引先に対する支援として行う債権の免除又は取引条件の変更についても、同様とする。

 

上記の基本通達は、従来、被災した取引先の債権の免除について、寄附金に該当しないことを定めていたものでした。

しかし、令和2年4月13日付の法人税基本通達の改正により、新型コロナウイルス等の感染症の影響に伴う取引先の資金繰りの悪化に

起因して行う債権の免除も、上記の通達の対象に含まれることが明確化されました。

この場合においても、その債権の免除が通達に定める事象に起因したものかどうか、因果関係などについて詳細な分析を行うことが

必要です。

 

6.消費税の取り扱い

過去に消費税が課されていた債権について、貸倒れの事実が生じた場合には、当該貸倒債権に係る消費税額を、

その貸倒れが生じた期の消費税額から控除することができます。(消費税法39条)

消費税法上の貸倒れの判定については、消費税法施行令59条、消費税法施行規則18条に具体的に定められていますが、

上記の法人税法基本通達9-6-1~9-6-3と内容に大きな差異はありません。

しかし、法人税法基本通達9-4-1,9-4-2により計上した子会社に対する債権放棄による損失などについては債権の放棄であるため、

あくまで貸倒損失には該当せず、資産の譲渡等にも該当しないため、消費税の控除ができないなど、消費税法上の貸倒損失に関する

取り扱いにも留意する必要があります。


解散、清算時の税務

こんにちは。

税理士の大塚です。

事業を廃止する場合や子会社を整理する目的で法人を消滅させたい為、解散、清算という手続きを踏むことがあります。

今回は会社を解散、清算した際の税務の取り扱いについて解説します。

法的な会社清算などもありますが、今回は、通常の解散、清算に限定します。

 

1 解散から清算までの流れ

 

(1)事業年度の考え方

 

法人を消滅させる場合、「解散」と「清算」という二段階を踏むことになります。

法人を解散した場合、期首から解散の日までの期間をみなし事業年度として、その時点で事業年度が区切れます。

ここで解散事業年度として、一度申告が必要となります。(図 みなし事業年度①)

その後、残った資産、債務を整理する期間があり、株主に分配すべき財産を確定させます。

この財産のことを残余財産と言います。残余財産が確定するまでに1年以上を要する場合は、

解散の日の翌日から1年毎に申告が必要となります。(図 みなし事業年度②)

残余財産が確定すると、残余財産の確定日までの期間がみなし事業年度となり、

これが最終事業年度となり、最後の申告が必要となります。(図 みなし事業年度③)

 

 

従って、解散・清算を行うと、解散事業年度、清算事業年度で最低2回は申告が必要となり、

残余財産が確定するまでに1年以上を要する場合は、申告回数もその分増加します。

申告期限は、原則事業年度終了の日の翌日から2か月以内であり、延長申請を出されている場合は延長も可能です。

但し、残余財産確定事業年度のみ、残余財産確定した日の翌日から1か月以内

(その期間に残余財産の最終分配が行われる場合は、行われる日の前日まで)となります。

 

(2)税金の計算方法

 

通常の損益計算(益金から損金を控除)により税金が計算されます。

会社清算にあたり、債務免除を受ける場合も想定されますが、債務免除益として収益認識される為、注意が必要です。

 

(3)残余財産の分配

 

株主に対して残余財産の分配があった場合、有価証券の譲渡損益のみならず、みなし配当が発生する場合があります。

みなし配当は、本来の配当ではないものの、配当を受けたとみなされる制度です。

清算時の資本金等の額を超える金額の分配があった場合には、

資本金等の額部分は有価証券の譲渡対価となりますが、その超える金額はみなし配当とされます。

個人株主の場合、みなし配当は総合課税となりますので、累進税率により税額が高額になる可能性があります。

 

 

また、清算される法人としては、みなし配当にかかる源泉所得税を徴収して納付する必要があります。

2 繰越欠損金の取り扱い

(1)概要

 

通常の事業年度と同じく繰越欠損金の利用は可能です。

資本金1億円超の会社や資本金5億円以上の完全子会社は繰越欠損金の利用につき

所得金額の50%までの使用制限が生じますが、それも同様です。

解散事業年度、清算事業年度につき特例で制限が生じないということはありません。

 

債務免除を受ける場合など、多額の利益が出る可能性もありますので、

特に欠損金の制限がある会社は納税も意識しないといけません。

 

(2)残余財産がないと見込まれる場合

 

清算事業年度については、残余財産がないと見込まれる場合は、期限切れ欠損金を利用することができます。

残余財産がないと見込まれるかどうかは、清算事業年度毎に判定を行う必要があります。

残余財産確定までに時間を要する場合は、複数回申告することが想定されますが、それぞれで判定を行います。

 

法人税基本通達12-3-8によると、債務超過であれば要件を満たすことになります。

但し、残余財産確定事業年度については債務超過の状態だと通常の清算はできませんので、

純資産が0円の状態であれば、残余財産はないこととなり、期限切れ欠損金を利用できると考えられます。

 

また、期限切れ欠損金を利用する場合は、残余財産がないと見込まれる書類を申告時に添付する必要があります。

実務上は、資産、負債を時価に修正した実態貸借対照表などを添付します。

時価については、事業年度終了時の処分価格によりますが、

事業譲渡を前提とした解散である場合で継続して他の法人で事業供用される見込みであるときは、

譲渡される場合に通常付される価額によります(法人税基本通達12-3-9)。

 

(3)期限切れ欠損金の計算方法

 

具体的な期限切れ欠損金の金額は①から②を控除した金額となります。

①適用年度終了の時における前事業年度以前の事業年度から繰り越された欠損金額の合計額

②青色欠損金額又は災害損失欠損金額

 

上記①は法人税法基本通達12-3-2において、別表5(1)の期首現在利益積立金額の合計額とされています。

期限切れ欠損金は俗称ですので、適用期限を経過した別表7(1)の繰越欠損金ということではなく、

別表5(1)を確認すれば損金可能限度額が分かります。

 

(4)欠損金の繰戻還付

 

通常は、中小企業者等以外は繰戻還付の適用は停止されていますが、

解散事業年度、清算事業年度に関しては、資本金の大きさに関わらず適用可能です。

 

3 繰越欠損金の引継

例えば100%子会社など完全支配関係のある会社が清算した場合、

親会社は子会社が使用し切れなかった繰越欠損金を引き継ぐことが可能です。

その代わり、親会社で子会社株式の清算損失を損金にすることはできません。

清算損失を損金にして繰越欠損金も引き継ぐと、二重で損失を取り込むことになりますので、制限を入れています。

また、繰越欠損金を全額引き継げるのは、支配関係が生じてから5年を経過している場合、

子会社設立から継続して支配関係がある場合などに限られます。

清算する子会社が過去5年以内に買収されたものである場合は、

買収した事業年度以降に生じた欠損金しか引継ぐことができないため注意が必要です。

 

4 その他の税金の取り扱い

(1)事業税

 

事業税は申告書を提出した日を含む事業年度の損金になります。

そうすると、残余財産確定事業年に生じる事業税は損金算入されるタイミングが失われてしまう為、

残余財産確定最終事業年度において事業税を損金算入させることができます。

 

また、外形標準対象法人については、解散の日における資本金が1億円を超える場合に適用されます。

この場合、解散後に減資をしたとしても、清算事業年度は外形標準の対象となります。

但し、清算事業年度中は資本割については課せられません。

加えて、残余財産確定した日を含む最終の清算事業年度は、付加価値割、資本割ともに課税されません。

 

(2)消費税

 

解散、清算中の事業年度であっても消費税の納税義務は通常通りです。

資産の整理による売却が多額になる場合などは、消費税の納税があることにも留意する必要があります。

 


中小企業向けの即時償却+αの優遇制度がスタート!!

こんにちは。

 

税理士の山田です。

 

中小・小規模事業者向けに「攻めの投資」を支援する税制措置が出来たのをご存知でしょうか。

 

一定の手続きを踏んで取得した設備に対して、購入年度に100%即時償却が出来ます。

 

さらに、一定の地域・業種については、固定資産税を3年間半分に減免します。

 

そして対象となる設備は、建物付属設備、工具器具備品、機械装置と幅広いです。

 

 

手続きが非常に煩雑なのですが、準備がちゃんと出来ていれば、要件自体は決して厳しくありません。

 

下記のポイントを抑えて確実に制度の適用を受けられるようにしてください。

 

 1、優遇制度を受けるための手続きの流れは?

 

要件はA類型・B類型の2パターンあり、それぞれ手続きの流れが異なります。

 

【A類型 生産性向上設備】

 

① まずは生産性が旧モデル比年平均1%以上改善する設備であることを証明

⇒ 設備の種類ごとに管轄の工業会にて証明書を発行して貰う。

 

② 続いて経営強化法の認定

⇒ 「経営力向上計画」を策定し、各事業分野の担当省庁から認定を受ける。

 

【B類型 収益強化設備】

 

① まずは投資利益率が年平均5%以上の投資計画に係る設備の認定

⇒ 経済産業局による投資利益率に関する確認書を取得

 

② 続いて経営強化法の認定

⇒ 「経営力向上計画」を策定し、各事業分野の担当省庁から認定を受ける。

 

A類型①の手続きはメーカー経由で手続きを行いますが、それ以外の手続きは事業者自身で行う必要があります。

 

つまり、A類型の手続きの方が事業者の負担は軽いですので、証明書の発行が可能かまずはメーカーに問い合わせ確認しましょう。

 

また、B類型の手続きは設備の取得前に完了している必要があります。1日でも送れますと優遇制度を受けられませんので注意してください。

 

手続きの詳細は下記の中小企業庁のサイトをご確認ください。

 

http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/2017/170315kyoka.htm

 

2 対象となる設備は?

 

対象設備は非常に幅広いのですが、設備の種類ごとに取得価額の要件があります。また、A類型の場合には先端設備であるために販売開始時期の要件もありますので合わせてまとめてみます。

 

設備の種類 取得価額の要件 販売開始時期の要件
機械及び装置 160万以上 10年以内
工具 30万以上 5年以内
器具備品 30万以上 6年以内
建物付属設備 60万円以上 14年以内
ソフトウェア 70万円以上 5年以内

 

他にも以下の4点を抑える必要がありますので注意してください。

□ 生産等設備であること(事務用器具、管理部門、寄宿舎の設備は対象外)

□ 国内への投資であること(国外資産は対象外)

□ 新品の資産であること(中古資産は対象外)

□ 自社で使用する資産であること(貸付用資産は対象外)

 

3 指定事業にあてはまるか?

 

事業内容が以下の指定事業のいずれかにあてはまる必要がありますので、注意しましょう。

 

製造業、建設業、農業、林業、漁業、水産養殖業、鉱業、卸売業、道路貨物運送業、倉庫業、港湾運送業、ガス業、小売業、料理店業その他の飲食店業(料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブその他これらに類する事業を除く)、一般旅客自動車運送業、海洋運輸業及び沿海運輸業、内航船舶貸渡業、旅行業、こん包業、郵便業、損害保険代理業、情報通信業、駐車場業、学術研究、専門・技術サービス業、宿泊業、洗濯・理容・美容・浴場業、その他の生活関連サービス業、映画業、教育・学習支援業、医療、福祉業、協同組合、サービス業

※性風俗関連特殊営業に該当するものは除く

 

ほとんどの業種が含まれてはいるのですが、電気業は含まれていませんので、いわゆる全量売買のための太陽光設備は対象になりません。

 

例えば自社の工場で利用する場合には、製造業の区分となりますので、設備自体ではなく、事業の内容に応じて判定を行います。

 

4 どのような優遇が受けられるか?

 

上記の手続き・要件を踏まえたうえで、設備を購入した企業は以下のいずれかの制度が受けられます。

 

① 100%即時償却(購入金額の全額を初年度に費用処理)

② 7~10%の税額控除(購入金額の7~10%を法人税額等から控除)

 

どちらを選択するにしても大きなメリットがある制度です。是非、事前に検討しておきましょう。

 

 

(参考)取得価額の判定、機械装置とは?

 

本制度の検討を行うにあたり、取得価額の判定は非常に難しい要素になります。

 

機械装置ですと160万円以上、器具備品ですと30万円以上の設備が対象ですが、そもそも設備が機械装置に該当するのか、器具備品に該当するのかは難しい判断となります。

 

機械装置の定義は「外力に抵抗し得る物体の結合からなり、一定の相対運動をなし、外部から与えられたエネルギーを有用な仕事に変形するもので、かつ、複数のものが設備を形成して、設備の一部としてそれぞれのものがその機能を果たすものをいう」となっております。

 

(平成19年10月30日の不服審判所の裁決を参照)

http://www.kfs.go.jp/service/JP/74/16/index.html

 

上記の定義にあてはまらないものは、一般的に『器具備品』に該当する可能性が高いです。

 

ですが、『複数のものが設備を形成して』という部分については例外の設備もあり、クレーン、ブルドーザー、のように単一の設備で機械装置に該当するものもあります。

 

また、逆に機械装置に該当した場合には、定義に『複数のものが設備を形成して』とありますので、購入単位とは関係なく、複数のものを合算して取得価額の判定が出来ることもあります。

 

今までは税務署も設備の区分について、納税者の判断を覆すことは多くありませんでしたが、本制度の適用を考えますと設備の区分を慎重に検討する必要があります。