【社内勉強会③】消費税の納税義務について学ぼう

【社内勉強会③】消費税の納税義務について学ぼう

こんにちは。

スタッフの大滝です。

あっという間に入社して1年が経ちました。この1年で、様々なテーマで行われた勉強会を経験してきました。

早速ですが、第3回は消費税の納税義務について整理してまいります。

 

1 消費税の納税義務とは

 

第1回の社内勉強会の記事にて、消費税の基本的な仕組みについて整理しました通り、

消費税の特徴として、「事業者が申告・納付すること」が挙げられます。

第1回の記事はこちら

しかし、消費税は全ての事業者に対して納税義務があるわけではありません。

消費税の納付義務がある事業者を「課税事業者」、納付義務がない事業者を「免税事業者」と言います。

「課税事業者」と「免税事業者」の判定について、いくつかのパターンに分けて、整理していきます。

 

⑴基準期間による判別

①基本的な考え方

まずは、納税義務の判定に使う用語の意味を見ていきます。

 

課税期間…消費税の申告対象となる期間

基準期間…納税義務の判定基準となる期間

 

課税期間と基準期間について、法人と個人事業主のケースで、それぞれについて図にまとめました。

法人と個人それぞれ、課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円を超える場合に、消費税の課税事業者となります。

課税売上高とは、消費税がかかる売上の合計額 + 輸出取引等の免税となる売上の合計額を指します。

 

基準期間が課税事業者の場合には、税抜金額で1,000万円の判定を行い、免税事業者の場合は税込金額で1,000万円の判定を行います。

よって、基準期間が課税事業者か免税事業者のどちらなのか確認する必要があります。

 

②基準期間が1年未満の場合

消費税納税義務の判定をする際に、会社設立1期目や決算期の変更等により、基準期間が1年未満の場合が考えられます。

このように、基準期間が1年未満の場合は、原則として、1年相当に換算した金額により判定をすることになります。

具体的には、基準期間中の課税売上高を、基準期間に含まれる事業年度の月数で割った額に12を掛けて計算した金額により判定します。

例の場合では、調整計算をすると1期目の課税売上高は1,400万円となり、3期目は課税事業者という判定となります。

3期目になる法人は、基準期間である1期目が1年未満の場合が多いため、消費税の判定には留意する必要があります。

なお、個人事業主は、仮に年の途中で開業したとしても、上記の調整計算は行いません。

 

⑵特定期間

基準期間の判定で納税義務がない場合でも、特定期間の判定により納税義務が生じる場合があります。

特定期間とは、原則として前事業年度(下記の例だと1期目)の開始の日以後6ヶ月の期間を指します。

特定期間については、課税売上高と給与支払額のいずれかを選択して、その金額が1,000万円を超える場合には、その課税期間は課税事業者となります。

実務的には。課税売上高と給与支払額の両方が1,000万円を超えたら、課税事業者に該当すると整理しましょう。

特定期間の判定については、以下のようにパターン分けをして判定することができます。

なお、特定期間が7か月以下の場合は、特定期間の判定は不要となります。

詳しくは、国税庁ホームページをご覧ください。

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/22/10.htm

 

⑶基準期間がない場合

会社を設立して、1期目、2期目には、前々事業年度がないので、基準期間はありません。

しかし、基準期間がない事業年度であっても、以下の①、②いずれにも該当する場合は消費税の納税義務は免除されずに、課税事業者になります。

 

①期首の資本金または出資金の額が1,000万円以上の場合

…この場合の判定には、資本準備金は含みません。

よって、例として、1,500万円の出資で会社を設立しようとする場合、資本金の2分の1の金額までは資本準備金に積み立てることができますので、

資本金750万円、資本準備金750万円とすると、1期目は免税事業者となります。

また、資本金の額はそれぞれの期首の時点で判定するので、1期目が免税事業者であっても、増資をすることで、2期目は課税事業者になる場合があります。

 

②特定新規設立法人に該当する場合

…特定新規設立法人とは、平成26年4月1日以後に新規で設立した法人のうち、下記のAかつBに該当する法人を言います。

 

A その基準期間がない事業年度開始日に他の者によりその法人の株式等の50%超を直接又は間接に保有されている場合など一定の場合(特定要件)に該当すること。

 

B Aの判定の基礎となったその他の者及び他の者と特殊な関係にある法人のうち、

いずれかの者(判定対象者)のその新規設立法人の基準期間相当期間の課税売上高が5億円を超えていること。

 

簡単に図解するとこのようになります。

 

 

特定新規設立法人については、弊社のホームページ記事でも以前取り上げておりますので、こちらもご覧ください。

特定新規設立法人の記事はこちら

 

③特定期間

設立2期目は基準期間がありませんが、先ほど、⑵で整理した特定期間の判定で課税事業者になる可能性があるので、注意が必要です。

 

⑷その他

相続や組織再編があった場合、または高額特定資産(一つの取引単位の価額が1,000万円以上の固定資産)を取得した場合は、上記に限らず、課税事業者になる場合があります。

 

2 課税事業者の選択

 

今まで整理してきた内容は、要件に該当する場合に、強制的に課税事業者となる例でした。

一方で、免税事業者であっても、課税事業者となることを選択することもできます。

 

消費税は、売上に係る消費税から仕入に係る消費税を引いて計算した金額を納税します。

仕入に係る消費税が売上に係る消費税より大きい場合は、還付されます。

 

免税事業者の場合は、還付を受けることができませんが、課税事業者を選択することによって、還付を受けることができます。

 

課税事業者を選択する場合の手続きは、「消費税課税事業者選択届出書」を、適用しようとする課税期間の開始の日の前日(=前期末)までに、所轄する税務署長へ提出します。

なお、設立1期目の場合は、事業年度の終了までが提出期限となります。

 

一方で、免税事業者に戻りたい場合は、「消費税課税事業者選択不適用届出書」(以降、不適用届出書)を提出します。

 

一度、課税事業者を選択すると、不適用届出書を提出しない限り、課税売上高に関係なく、ずっと課税事業者となりますので、注意が必要です。

ただし、不適用届出書を提出するにあたり、いくつか注意点があります。

 

⑴2年継続適用

「消費税課税事業者選択届出書」を提出した課税期間の、翌課税期間の初日(設立1期目から課税事業者を選択する場合は、1期目の初日)から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ不適用届出を提出することができません。

つまり、2年間は課税事業者になります。

 

⑵調整対象固定資産の仕入等を行った場合

⑴の期間までに、調整対象固定資産の仕入等を行った場合には、その仕入れなどの属する課税期間の初日から3年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ提出することができません。

つまり、調整対象固定資産を購入した課税期間から、3年間は課税事業者になります。

※期首資本金判定、特定新規設立法人の判定により、課税事業者となっている期間に調整対象固定資産を購入すると、同様に一定期間課税事業者が継続します。

 

調整固定資産とは、棚卸資産以外の資産で、建物、構築物、器具及び備品などの固定資産で、一つの取引単位の価額が100万円以上の固定資産を指します。

この一連の流れを図で整理してみます。

 

届出を提出するタイミングは、条文を読解すると難しく見えますので、このように図解しながら判定すると解りやすいと思います。

 

3 まとめ

 

法人や個人事業主が事業を行う際に発生する消費税は、私たちが日常生活で何気なく目にしている消費税とは考え方が異なります。

課税事業者となる条件を確認することは実務ではとても重要です。

1期目、2期目と創業まもない会社の場合には、基準期間がなくても課税事業者となる条件に該当しないか、今一度確認する必要がありますね。