消費税 – 墨田区錦糸町の会計事務所。アンパサンド税理士法人

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適格請求書保存方式(インボイス制度)の概要

こんにちは。

税理士の大塚です。

 

令和3年10月1日より適格請求書(インボイス)発行事業者の登録がスタートしました。

適用開始は令和5年10月1日からであり、まだ先の話ではありますが、現在の情報を基に、制度概要を解説します。

 

1 インボイス制度の概要

 

適格請求書とは、売手が買手に対して正確な適用税率や消費税額を伝えるための手段であり、一定の事項を記載した請求書や納品書その他これらに類する書類を言います。

請求書、納品書、領収書、レシート等、名称は問われません。

 

インボイス制度が開始されると、消費税の仕入税額控除の要件に適格請求書の保存が入りますので、適格請求書がなければ仕入税額控除が取れなくなります。(経過措置があります。)

 

現在は取引内容から消費税の課税仕入れになるかを判断して仕入税額控除を取っていますが、将来的には適格請求書があるか否かで判断をすることになります。

従って、インボイス制度は消費税の仕入税額控除に関する改正になります。

 

逆に売手側の立場からすれば、取引先から適格請求書の発行が可能かどうかの確認を受けたり、発行を依頼されたりといったことが想定されます。

 

適用時期:令和5年10月1日開始

 

出典:国税庁ホームページ(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-01.pdf

 

2 登録制度

消費税の課税事業者が適格請求書を発行する為には、事前に税務署長に申請して適格請求書発行事業者として登録する必要があります。

令和3年10月1日から登録受付が開始されています。

 

制度開始である令和5年10月1日から適格請求書を発行できるようにする為には、令和5年3月31日までに登録申請書を提出する必要があります。

なお、特定期間の判定により課税事業者となる場合は令和5年6月30日までが期限となっています。また、期限までに困難な事情がある場合は、令和5年9月30日までに提出して税務署長により登録を受けた際には令和5年10月1日に登録を受けたこととみなされます。

出典:国税庁ホームページ(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-01.pdf

 

3 免税事業者が登録を受ける場合

現在免税事業者である事業者が、インボイス制度開始である令和5年10月1日の属する課税期間中に登録を受ける場合、登録日から課税事業者になる経過措置が設けられています。

経過措置を受ける場合は、課税事業者選択届出書の提出は不要です。

 

 

出典:国税庁ホームページ(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/300416.pdf

 

※9月30日時点の棚卸資産は棚卸資産の調整対象になります。

※経過措置期間に簡易課税を受けたいときは、その課税期間終了までに簡易課税度の選択届出書を提出すれば適用可能です。

上記ケースの場合、令和5年12月末までに届出書を提出すれば簡易課税を選択することができます。

 

課税事業者を選択して課税事業者になり、適格請求発行事業者として登録したい場合は、その課税期間の初日の前日から起算して1月前の日までに登録申請書を提出しなければなりません。

つまり前期末まではなく、前期末の1月前までに検討が必要になりますので注意が必要です。

 

 

出典:国税庁ホームページ(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/300416.pdf

 

4 新設法人

設立事業年度末日までに、事業を開始した日の属する課税期間の初日から登録を受けようとする旨を記載した登録申請書を提出すれば、設立事業年度開始の日に登録を受けたとみなされます。つまり遡っての登録が可能です。

 

ただし、遡っての登録となる場合、登録される期間までは適格請求書は発行できませんので、取引先への説明や登録することになった際の請求書の再発行など、事後対応が煩雑になることが予想されます。いつから登録するかは、現実的には早めの選択が求められると考えられます。

出典:国税庁ホームページ(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-01.pdf

 

5 登録の取りやめ

登録を取りやめたい場合は、取り消しを求める届出書を税務署長へ提出する必要があります。

この場合、届出を提出した翌課税期間から効力が発生しますが、提出のあった日の属する課税時間の末日から起算して30日前の日から、末日までの間に提出した場合は翌々課税期間から効力が発生します。

 

従って、翌課税期間から取りやめようとする場合は、課税期間末日までではなく、末日から30日前までに届出書を提出しておく必要が出ます。

 

 

 

出典:国税庁ホームページ(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-01.pdf

 

なお、適格請求書発行事業者は基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも免税事業者にはなりませんので、免税事業者にするつもりで登録の取りやめを行う場合は課税期間末日から30日前という期日に注意が必要です。

また、課税事業者を選択して課税事業者となり、登録もしている事業者が免税に戻りたい場合には、「登録の取りやめ」と「課税事業者選択不適用届出」の両方を提出する必要があります。

いわば二重にロックが掛かっている状態ですので、両方を解除することが必要です。

 

6 登録番号

登録番号は法人、個人別に下記のように定められています。

 

法人:T+法人番号

個人:T+数字13桁

※通知を受けた登録番号は変更不可

※相続で事業を引き継いだ場合は、相続人は改めて登録する必要あり

※インボイス制度開始前に請求書に登録番号を記載することは特段問題なし

 

7 公表

適格請求書発行事業者は国税庁HPに情報が公表されます。具体的には、氏名、名称、本店住所、登録番号、登録年月日などです。

個人事業主の場合、本人申請により屋号なども加えることができます。

公表情報に変更が生じた場合は、「適格請求書発行事業者登録簿の登載事項変更届出書」の提出が必要となります。

 

8 適格請求書の記載事項

適格請求書の記載事項は下記の表の通りです。

なお、小売業、飲食業、タクシー業など不特定多数の者に課税資産の譲渡等を行う場合には、適格請求書に代えて適格簡易請求書の交付が可能です。

適格簡易請求書は、⑥の書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称が不要になる等、簡略化されたものです。なお、消費税額の端数処理は一つの適格請求書ごとに行う必要があります

 

出典:国税庁ホームページ(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-01.pdf

適格請求書 記載例

出典:国税庁ホームページ(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/300416.pdf

 

9 登録日から通知を受けるまでの取り扱い

登録申請から通知を受けるまでの間に請求書などを発行しなくてはならないケースも想定されます。

この場合、通知を受けるまでは適格請求書は発行できませんので、通知を受けた後に改めて適格請求書の交付が必要となります。

また、登録番号のみなど、不足する事項を相手方に書面等で通知することでも可能となりますが、既に交付した書類と相互の関連を明確にする必要があります。

 

10 適格請求書の例示

⑴仕入側が作成する書式でも記載事項が含まれていれば問題はありません。

例えば販売奨励金を支払う側が明細を作成するような場合

 

出典:国税庁ホームページ(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-01.pdf

 

例えば仕入明細書を仕入側が作成して売手に送付している場合

 

出典:国税庁ホームページ(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-01.pdf

 

⑵適格請求書を頭紙として、納品書を別紙のようにする形式でも問題ありません。

 

出典:国税庁ホームページ(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-01.pdf

 

11 通常の取引で良くあるケース

⑴立替金

下図の例の場合、C社からB社への適格請求書のみですとA社は仕入税額控除を取ることができません。

B社から立替金精算書等により、A社のものであることが明らかにされる場合には可能です。

この場合、B社が適格請求書発行事業者以外であっても、C社が適格発行事業者であれば仕入税額控除を取ることができます。

 

出典:国税庁ホームページ(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-01.pdf

 

⑵家賃口座振替

契約書に適格請求書として必要な記載事項の一部が記載されており、取引を行った事実を客観的に示す書類とともに保存があれば仕入税額控除は可能となります。

例えば、契約書(課税資産の譲渡等の年月日以外は記載あり)+通帳の写し(課税資産の譲渡等の年月日に相当)を併せて保存するといった対応が考えられます。

なお、令和5年9月30日以前からの契約については、適格請求書の記載項目のうち不足している事項の通知を受け、契約書と一緒に保存しておけば、改めて契約書を締結しなくても差し支えないとされています。

 

12 仕入税額控除 経過措置

基本は適格請求書、適格簡易請求書の保存が仕入税額控除の要件となりますが、経過措置として、以下の規定あり当面は全額控除できないわけではなく、部分的に仕入税額控除ができなくなります。合計6年間経過措置があり、段階的に仕入税額控除の金額が少なくなっていきます。

 

令和5年10月1日から令和8年9月30日まで :仕入税額相当額の80%

令和8年10月1日から令和11年9月30日まで:仕入税額相当額の50%

 

13 帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められるもの

適格請求書、適格簡易請求書がない場合であっても仕入税額控除が認められるものがあります。主なものは下記の通りです。

 

⑴公共交通機関の特例の対象として適格請求書が免除される3万円未満の公共交通機関による旅客の運送

→船舶、バス、鉄道。タクシーは入っていない。

→3万円は1回の取引で判定。複数人分を購入して3万以上の場合は対象外

⑵適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除く)が記載されている入場券等が使用の際に回収される取引

⑶古物営業を営む者の適格請求発行事業者でない者からの古物(古物営業者の棚卸資産に該当するものに限る)の購入

⑷質屋を営む者の適格発行事業者でない者からの質物(質屋を営む者の棚卸資産に該当するものに限る)の購入

⑸宅地建物取引業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの建物(宅地建物取引業を営む者の棚卸資産に該当するものに限る)の購入

⑹適格請求書発行事業者でない者からの再生資源及び再生部品(購入者の棚卸資産に該当するものに限る)の購入

→⑶から⑹は棚卸資産として購入する場合に限る為、固定資産は不可

⑺適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入等

→コインロッカー、コインランドリーなども含む。

→ATMの振込手数料なども該当。

⑻郵便ポストに差し出された郵便切手類を対価とする郵便・貨物サービス

⑼従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)⑼

  

14 税額計算

インボイス制度の導入に伴い、消費税の計算方法も一部変わります。従前の方法も認められていますので、企業の体制と影響額などを考慮して決めることになるかと思います。

 

 <売上税額>

 原則:総額割戻し計算 (10%の場合。以下同じ)

税込金額 × 100/110 =課税標準額

課税標準額 × 7.8% =売上消費税額

 

特例:積上げ計算

発行する適格請求書等の消費税額の合計 ×78/100 =売上消費税額

 

<仕入税額>

原則:積上げ計算 

  • 請求書等積上げ方式

適格請求書等の消費税額の合計 ×78/100 =仕入消費税額

 

  • 帳簿積上げ方式

帳簿の仮払消費税額の合計 ×78/100 =仕入消費税額

一つの取引ごとに 取引金額×10/110=消費税額として集計する

 

特例:総額割戻し計算

税込金額 × 7.8/110 =仕入消費税額

 

・売上原則の場合、仕入は選択適用

・売上特例の場合、仕入は原則のみ(積上げのみ)

・売上併用の場合、仕入は原則のみ(積上げのみ)

 

売上は積上げ計算を行った方が切り捨ての関係から有利になります。

一方で仕入は逆に割り戻し計算を行った方が、仕入税額控除が大きくなり有利になります。有利になる方式同士を組み合わせる方法は認められません。

 

15 適格請求書発行事業者以外の事業者が請求書を発行する場合

適格請求書発行事業者の登録を受けていない事業者が、適格請求書と誤認される恐れのある書類を交付することは禁止されており、罰則規定も設けられています。

 

16 免税事業者の選択

免税事業者が適格請求書を出せないことで顧客離れにつながる可能性があります。例えば、同じタクシー代でも、適格請求書が発行できるタクシーとできないタクシーがあった場合、会社の経費としては仕入税額控除を取れる方が有利なので、金額が同じであれば適格請求書の発行ができるタクシーを選ぶのは自然なことです。

また、営業を行った際に適格請求書を発行できないので他社を選択されて取引に至らないというケースも想定されます。

 

現在は免税事業者で不自由がない場合でも、今後は課税事業者になることも選択肢として考えていく必要が出ると思われます。

 

国税庁 インボイス制度 Q&A

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_faq.htm

 


【社内勉強会④】消費税の簡易課税制度について学ぼう

 

こんにちは。スタッフの大滝です。

前回に引き続き、今回は消費税の簡易課税について整理していきます。

 

1 消費税の簡易課税制度とは

 

簡易課税制度とは、消費税申告の計算方法の一つです。

原則として、消費税は売上に係る消費税から仕入に係る消費税を差し引いて計算します。

それに対して、簡易課税の計算では、売上に係る消費税から売上に係る消費税にみなし仕入れ率を乗じた額を控除して、計算します。

つまり、簡易課税とは、仕入れに係る消費税を売上に係る消費税額から簡易的に求め、納める消費税額を計算できる制度です。

算式にある「みなし仕入れ率」とは、下図のように分類され、事業の種類によって適用される割合が定められています。

図にある通り、みなし仕入れ率は第1種事業~第6種事業に分かれており、それぞれ乗ずる割合が異なり、取引ごとに計算します。

複数の事業を行っている場合については、後のトピックスで整理します。

事業区分は、国税庁ホープページに記載されているフローチャートを参考いただくと、より理解しやすいと思います。

 

参考:国税庁ホームページ 簡易課税の事業区分について(フローチャート)

 

2 簡易課税制度の適用要件

 

前回の記事で、消費税の納税義務は、課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円を超える場合に、消費税の課税事業者と判定されると整理しました。

この場合は、自動的に課税事業者となり、選択の余地はありません。

一方で、簡易課税制度を選択する場合には、下記の適用要件があります。

 

⑴基準期間における課税売上高が5,000万円以下であること

⑵前課税期間末までに「消費税簡易課税制度選択届出書」(以降、選択届出書)を提出していること

 

図にあるように、2期目の期末までに選択届出書を提出すると、「翌課税期間以降の課税期間」から効力が発生するので、3期目から簡易課税となります。

 

例外として設立1期目の法人で、1期目に簡易課税を選択したい場合は、1期目の事業年度終了までに選択届出書を提出することとなります。

また、1期目から期首資本金、特定新規設立法人の要件で、強制的に課税事業者になっている場合でも、上記⑴⑵の要件を満たしていれば、簡易課税を選択できます。

 

一方で、簡易課税の選択を取りやめたい場合には、「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」(以降、不適用届出書)を、その課税期間の初日の前日(=前期末)までに、所轄する税務署長へ提出します。

しかし、簡易課税制度を選択すると2年間は継続適用となるため、不適用届出書を提出できないこともあります。こちらは後のトピックで説明します。

 

3 複数の事業を行う場合における簡易課税の計算方法

 

先程、簡易課税を選択した場合の消費税の計算方法について整理しました。

この計算方法は、1つの種類の事業を行う企業に当てはまる原則的な計算方法です。

 

一方、世の中には複数の業種を行う企業も多々ありますので、特例の計算方法について、特例のケースごとに、原則と特例の計算方法を比較して、整理していきます。

なお、税額の計算については簡便法で計算します。

 

ケース①の場合は、卸売業が売上比率の75%以上を占めるので、

小売業の計算は、第1種のみなし仕入率(90%)で計算することができます。

結果として、原則で計算するより、特例の計算の方が、納税額は少なくなります。

 

ケース②の場合は、3種の事業を行っており、そのうち卸売業と小売業の合計が売上比率の75%以上を占めるので、それ以外の事業(この場合は、不動産業)は、卸売業と小売業のうち、低い方のみなし仕入れ率(小売業の80%)で計算することができます。

結果として、原則で計算するより、特例の計算の方が、納税額は少なくなります。

ケース③の場合は、複数の事業を行っていますが、その事業の比率が不明なので、卸売業(90%)と小売業(80%)のうち、低い方の80%で計算しています。

このように、特例を用いることで納税額が変わることもありますので、原則と特例の計算をシミュレーションする必要があります。

特例の計算方法を用いる際には、届出の提出などの提出の必要はありません。

 

4 簡易課税制度を選択する際の注意点

 

最後に、簡易課税制度を選択する場合に、あらかじめ検討しておく点について整理します。

 

⑴2年継続適用

簡易課税制度を選択すると、2年間は簡易課税が継続します。

つまり、2年間を通じて、原則課税のままでいくよりも、簡易課税を選択すると有利になるのかを判断する必要があります。

しかし、簡易課税の要件は「基準期間における課税売上高が5,000万円以下であること」なので、選択届を提出してから2年間のうちに、基準期間の課税売上高が5,000万円を超える事業年度がある場合には、簡易課税は外れ、原則課税になります。

 

下図を例にすると、3期目は、基準期間(1期目)の課税売上高が5,000万円以下なので、簡易課税を選択できます。

通常であれば、2年継続適用により、4期目も簡易課税となります。

しかし、4期目の判定をする際に、基準期間(2期目)の課税売上高が5,000万円を超えているので、簡易課税の要件から外れ、4期目は課税事業者になります。

 

よって、簡易課税を選択しても、必ずしも2年連続で簡易課税の計算がされるとは限りません。

このケースでは、3期目が原則課税か簡易課税かで、有利になる方を選択すれば良いことになります。

 

⑵簡易課税制度の選択ができない場合

調整対象固定資産の仕入れ等を行ったことにより、消費税の納税義務の免除がされない期間については、消費税の簡易課税を選択することができません。

具体的には、課税事業者の選択をしている場合や、基準期間がない法人で期首資本金額が1,000万円以上の場合等において、調整対象固定資産の仕入れ等を行っているケースが該当します。

また、高額特定資産の仕入等を行ったことにより、消費税の納税義務の免除がされない期間についても、消費税の簡易課税を選択することができません。

 

5 最後に

簡易課税の選択をする場合には、原則として課税期間が始まる前に選択をする必要がありますが、将来の消費税をシミュレーションすることは非常に困難であると思います。

簡易課税はあくまで特例であり損得が発生します。

 

例えば、預かった消費税が100、支払った消費税が30でみなし仕入れ率が50%だとすると、原則課税の納税は70、簡易課税での納税は50になります。この場合には簡易課税の方が得をしますが、原則課税が損をしているわけではなく、キャッシュベースでは実際に70の消費税を預かっていることになりますので損得という考えは発生しません。

 

つまり、簡易課税は特例計算であり実際の取引を一部無視して計算する方法であるため、ギャンブル的な要素があります。どちらを選択するか迷われる場合には、原則に立ち返って原則課税を選択されることをお勧めします。


【社内勉強会③】消費税の納税義務について学ぼう

こんにちは。

スタッフの大滝です。

あっという間に入社して1年が経ちました。この1年で、様々なテーマで行われた勉強会を経験してきました。

早速ですが、第3回は消費税の納税義務について整理してまいります。

 

1 消費税の納税義務とは

 

第1回の社内勉強会の記事にて、消費税の基本的な仕組みについて整理しました通り、

消費税の特徴として、「事業者が申告・納付すること」が挙げられます。

第1回の記事はこちら

しかし、消費税は全ての事業者に対して納税義務があるわけではありません。

消費税の納付義務がある事業者を「課税事業者」、納付義務がない事業者を「免税事業者」と言います。

「課税事業者」と「免税事業者」の判定について、いくつかのパターンに分けて、整理していきます。

 

⑴基準期間による判別

①基本的な考え方

まずは、納税義務の判定に使う用語の意味を見ていきます。

 

課税期間…消費税の申告対象となる期間

基準期間…納税義務の判定基準となる期間

 

課税期間と基準期間について、法人と個人事業主のケースで、それぞれについて図にまとめました。

法人と個人それぞれ、課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円を超える場合に、消費税の課税事業者となります。

課税売上高とは、消費税がかかる売上の合計額 + 輸出取引等の免税となる売上の合計額を指します。

 

基準期間が課税事業者の場合には、税抜金額で1,000万円の判定を行い、免税事業者の場合は税込金額で1,000万円の判定を行います。

よって、基準期間が課税事業者か免税事業者のどちらなのか確認する必要があります。

 

②基準期間が1年未満の場合

消費税納税義務の判定をする際に、会社設立1期目や決算期の変更等により、基準期間が1年未満の場合が考えられます。

このように、基準期間が1年未満の場合は、原則として、1年相当に換算した金額により判定をすることになります。

具体的には、基準期間中の課税売上高を、基準期間に含まれる事業年度の月数で割った額に12を掛けて計算した金額により判定します。

例の場合では、調整計算をすると1期目の課税売上高は1,400万円となり、3期目は課税事業者という判定となります。

3期目になる法人は、基準期間である1期目が1年未満の場合が多いため、消費税の判定には留意する必要があります。

なお、個人事業主は、仮に年の途中で開業したとしても、上記の調整計算は行いません。

 

⑵特定期間

基準期間の判定で納税義務がない場合でも、特定期間の判定により納税義務が生じる場合があります。

特定期間とは、原則として前事業年度(下記の例だと1期目)の開始の日以後6ヶ月の期間を指します。

特定期間については、課税売上高と給与支払額のいずれかを選択して、その金額が1,000万円を超える場合には、その課税期間は課税事業者となります。

実務的には。課税売上高と給与支払額の両方が1,000万円を超えたら、課税事業者に該当すると整理しましょう。

特定期間の判定については、以下のようにパターン分けをして判定することができます。

なお、特定期間が7か月以下の場合は、特定期間の判定は不要となります。

詳しくは、国税庁ホームページをご覧ください。

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/22/10.htm

 

⑶基準期間がない場合

会社を設立して、1期目、2期目には、前々事業年度がないので、基準期間はありません。

しかし、基準期間がない事業年度であっても、以下の①、②いずれにも該当する場合は消費税の納税義務は免除されずに、課税事業者になります。

 

①期首の資本金または出資金の額が1,000万円以上の場合

…この場合の判定には、資本準備金は含みません。

よって、例として、1,500万円の出資で会社を設立しようとする場合、資本金の2分の1の金額までは資本準備金に積み立てることができますので、

資本金750万円、資本準備金750万円とすると、1期目は免税事業者となります。

また、資本金の額はそれぞれの期首の時点で判定するので、1期目が免税事業者であっても、増資をすることで、2期目は課税事業者になる場合があります。

 

②特定新規設立法人に該当する場合

…特定新規設立法人とは、平成26年4月1日以後に新規で設立した法人のうち、下記のAかつBに該当する法人を言います。

 

A その基準期間がない事業年度開始日に他の者によりその法人の株式等の50%超を直接又は間接に保有されている場合など一定の場合(特定要件)に該当すること。

 

B Aの判定の基礎となったその他の者及び他の者と特殊な関係にある法人のうち、

いずれかの者(判定対象者)のその新規設立法人の基準期間相当期間の課税売上高が5億円を超えていること。

 

簡単に図解するとこのようになります。

 

 

特定新規設立法人については、弊社のホームページ記事でも以前取り上げておりますので、こちらもご覧ください。

特定新規設立法人の記事はこちら

 

③特定期間

設立2期目は基準期間がありませんが、先ほど、⑵で整理した特定期間の判定で課税事業者になる可能性があるので、注意が必要です。

 

⑷その他

相続や組織再編があった場合、または高額特定資産(一つの取引単位の価額が1,000万円以上の固定資産)を取得した場合は、上記に限らず、課税事業者になる場合があります。

 

2 課税事業者の選択

 

今まで整理してきた内容は、要件に該当する場合に、強制的に課税事業者となる例でした。

一方で、免税事業者であっても、課税事業者となることを選択することもできます。

 

消費税は、売上に係る消費税から仕入に係る消費税を引いて計算した金額を納税します。

仕入に係る消費税が売上に係る消費税より大きい場合は、還付されます。

 

免税事業者の場合は、還付を受けることができませんが、課税事業者を選択することによって、還付を受けることができます。

 

課税事業者を選択する場合の手続きは、「消費税課税事業者選択届出書」を、適用しようとする課税期間の開始の日の前日(=前期末)までに、所轄する税務署長へ提出します。

なお、設立1期目の場合は、事業年度の終了までが提出期限となります。

 

一方で、免税事業者に戻りたい場合は、「消費税課税事業者選択不適用届出書」(以降、不適用届出書)を提出します。

 

一度、課税事業者を選択すると、不適用届出書を提出しない限り、課税売上高に関係なく、ずっと課税事業者となりますので、注意が必要です。

ただし、不適用届出書を提出するにあたり、いくつか注意点があります。

 

⑴2年継続適用

「消費税課税事業者選択届出書」を提出した課税期間の、翌課税期間の初日(設立1期目から課税事業者を選択する場合は、1期目の初日)から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ不適用届出を提出することができません。

つまり、2年間は課税事業者になります。

 

⑵調整対象固定資産の仕入等を行った場合

⑴の期間までに、調整対象固定資産の仕入等を行った場合には、その仕入れなどの属する課税期間の初日から3年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ提出することができません。

つまり、調整対象固定資産を購入した課税期間から、3年間は課税事業者になります。

※期首資本金判定、特定新規設立法人の判定により、課税事業者となっている期間に調整対象固定資産を購入すると、同様に一定期間課税事業者が継続します。

 

調整固定資産とは、棚卸資産以外の資産で、建物、構築物、器具及び備品などの固定資産で、一つの取引単位の価額が100万円以上の固定資産を指します。

この一連の流れを図で整理してみます。

 

届出を提出するタイミングは、条文を読解すると難しく見えますので、このように図解しながら判定すると解りやすいと思います。

 

3 まとめ

 

法人や個人事業主が事業を行う際に発生する消費税は、私たちが日常生活で何気なく目にしている消費税とは考え方が異なります。

課税事業者となる条件を確認することは実務ではとても重要です。

1期目、2期目と創業まもない会社の場合には、基準期間がなくても課税事業者となる条件に該当しないか、今一度確認する必要がありますね。


生命保険にまつわる税務

 

こんにちは。
公認会計士の岸です。

 

ご家族にもしものことがあった場合に備えて、生命保険に加入されている方が多いのではないでしょうか。

この点、保険契約期間中は保険料の支払いや保険事故発生に伴う保険金の受取りなどが行われますが、

それぞれのタイミングで課税関係の検討が必要になります。

検討が不十分ですと、保険に関する処理で思わぬ税金の支払いが生じてしまった、ということにもなりかねません。

 

そこで、本記事では、個人、法人の生命保険にまつわる税務の概略をまとめましたので、

保険契約内容の現状確認や新規契約などにあたっての参考にご覧いただけますと幸いです。

 

1.保険期間中の流れ

 

保険期間中に発生するイベントは主に以下のようなものがあります。

保険事故の発生か、保険契約の解約、により保険契約は終了します。

それぞれのタイミングで課税関係の検討が必要となります。

 

 

2.保険契約の登場人物

 

保険契約には、「被保険者」、「保険料の負担者」、「保険金受取人」の三者が登場します。

 

一般の人に馴染みがあるのは、親が自身が亡くなった時のために子供のために保険を契約しているなどの

個人間の契約かと思いますが、法人として役員や従業員のために保険を契約する場合もあります。

そのため、保険契約はその主体が個人であったり、法人であったり、と個々のケースによって様々であるため、

保険の税務は複雑になります。

 

この三者の組み合わせによって、保険契約に関する課税関係が大きく変わってきます。

 

 

3.保険料支払時の課税関係

 

本節以降で、保険契約中に発生するイベントごとに課税関係を紹介していきます。

まずは、契約期間中に保険料を支払った際の税務です。

 

(1)所得税(個人)

 

個人の方が生命保険料を支払っている場合には、確定申告で生命保険料控除(所得税法第76条)を適用することができます。

 

詳しい計算方法の説明は割愛しますが、必ずしも支払った保険料の全額が控除されるわけではなく、

一定の限度額までしか控除が認められていません。

 

年末近くになると保険会社から保険種類や支払保険料をまとめた資料がご自宅に送付され、

年末調整にあたって資料の提出を行われている方が多いのではないでしょうか。

 

(2)法人税

 

法人が加入する保険には様々なタイプのものがありますが、ここでは基本的な保険種類である「養老保険」と「定期保険」の

取り扱いに絞ってご紹介していきたいと思います。

 

養老保険」とは、被保険者の死亡または生存を保険事故とする生命保険です。

いわゆる積立型の保険であり、お亡くなりになった際に生命保険金がおりるとともに、

いつ解約しても積み立てた額のうち一定額が必ず将来返ってきますので、貯蓄性のある保険といえます。

 

定期保険」とは、一定期間内における被保険者の死亡を保険事故とする生命保険、と定義されています。

いわゆる掛け捨て型の保険であり、養老保険とは異なり満期保険金が存在せず、

被保険者が亡くならない限りは保険金が支払われないことから、貯蓄性がない保険といえます。

 

特徴としては「養老保険」は積立がある分、保険料が高くなる傾向があり、「定期保険」は保障のみですので、

保険料は低くなる傾向があります。

 

また、以下でご紹介する保険料の法人税の取り扱いに関しては、実は法人税法上には明確な定めはなく、

国税職員内部の取り扱い指針である基本通達というものに、その詳細が定められています。

基本通達は法令ではないので、厳密には納税者を拘束するものではないのですが、

この基本通達に従って申告を行うのが実務になっています。

 

理解にあたっては、その保険契約によって誰が受益者となるか?によって課税関係が変わってくると考えると、

整理しやすいかと思います。

 

a.養老保険の取り扱い

 

養老保険を契約している場合の課税関係は以下の通りです。

養老保険は貯蓄性のある保険であることから、法人が受け取る保険金に対応する部分(保険料の半額)については、

資産計上が求められています。

 

 

b.定期保険の取り扱い

 

定期保険については、掛け捨て型の保険であり、養老保険とは異なり貯蓄性がないことから、

その全額について損金算入が認められています。

 

なお、定期保険には満期保険金が存在しませんが、契約期間途中で契約を解約した場合に

解約返戻金が発生するタイプのものがあります。

そのような定期保険に関しては、将来の解約時に戻ってくる返戻金部分については貯蓄性があるだろうということで、

基本通達では以下のように解約返戻率(支払保険料に対する解約返戻金の割合)という指標に基づいて定期保険を分類し、

税務上のルールを規定しています。

支払った保険料に対する解約返戻金の割合が高いほど、貯蓄性が高いものと考え、資産計上額が増加するイメージです。

 

(法人税基本通達9-3-5の2より抜粋)

 

(3)消費税(個人、法人)

 

消費税法上は、保険料は課税対象として馴染まないもの、非課税となっています。

個人の方が保険料を支払われている場合には、その保険料には消費税は課税されていないことになります。

また、法人が保険料を支払っている場合には、その保険料に関しては仕入税額控除が適用できないことに

留意する必要があります。

 

(4)その他(相続税、贈与税)

 

契約者が子供であるのに、その親が保険料を支払っている場合には、

実質的には親が契約者であるとみなされる可能性があることに注意する必要があります。

 

後ほどご説明させていただきますが、契約者と保険金受取人の関係によっては、

所得税が課税されるのか、相続税が課税されるのか、といった判定結果が大きく変わってくるため、

親が契約者であるとみなされると、課税関係が大きく変わるリスクがあります。

 

このリスクを回避するためには、一旦親の口座から子供の口座へ保険料相当額を振込み、

子供の口座から保険料を支払う方法が考えられます。

この時、子供の口座を実質的には親が管理している口座、すなわち名義預金として取り扱われないよう、

子供自身が通帳や印鑑を管理したり、親子間で保険料相当額の資金について贈与契約を締結することも考慮する必要があります。

 

4.保険名義変更時の課税関係

 

保険契約期間中、保険料の負担者や保険金の受取人を変更するなどの目的で、保険契約の名義変更を行うケースがあります。

パターンとしては、名義変更の対象となる部分(契約者、受取人)、変更前後の主体(個人、法人)によって、

実務上は主に以下のケースが想定されるかと思います。

 

(1)契約者の変更(個人→個人)

 

父親が契約者となって保険料を支払っていた生命保険について、契約者を子供に変更する場合が想定されます。

 

この場合には、契約変更時には贈与税などの課税関係は生じず、その後の保険事故が実際に発生した際に、

保険料負担者と受取人の関係に応じて課税されます。

(国税庁質疑応答事例「生命保険契約について契約者変更があった場合」,

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/sozoku/14/05.htm)

 

なお、相続時の取り扱いを参考までにご説明しますと、相続により死亡保険金を子供が受け取る場合には、

その死亡保険金のうち、父親が支払っていた保険料の割合部分については相続税、

子供が支払っていた保険料の割合部分については所得税(一時所得)が課税されます。

 

(2)契約者の変更(法人→個人)

 

法人で契約していた保険を、役員などの個人に有償で契約譲渡する場合や、

退職金として現物支給する場合がケースとして考えられるかと思います。

 

以下では、社長の退職金として保険契約を現物支給する際の税務処理をご紹介します。

契約変更時の解約返戻金相当額に基づいて、課税処理が行われるイメージです。

 

(3)契約者の変更(個人→法人)

 

個人事業主の方が法人成りした場合で、従来の保険を法人向けの保険商品に切り替えるために、

一旦、名義変更で個人から法人へ契約を移し、その後保険の変更を行うケースが考えられるかと思います。

この方法のメリットは、保険の変更の際には、健康上に問題がある場合でも診査不要なケースがあることです。

 

以下では、法人が個人から、養老保険契約を解約返戻相当額で買い取る場合を想定します。

    

 

(4)保険金受取人の変更(法人受取→個人受取)

 

上記とは異なり、契約者は変えずに、保険金の受取人を法人から個人に変更するケースです。

 

以下では、【法人契約】、【死亡保険金(法人受取)】、【満期保険金(法人受取)】で契約していた養老保険を、

【死亡保険金(従業員、役員の遺族受取)】、【満期保険金(従業員、役員受取)】に変更する場合を想定します。

 

a.有償で保険契約を譲渡するケース

 

b.無償で保険契約を譲渡するケース

 

(5)保険金受取人の変更(個人受取→法人受取)

 

保険金の受取人を個人から法人に変更するケースです。

 

【法人契約】、【死亡保険金(従業員、役員の遺族受取)】、【満期保険金(従業員、役員受取)】で契約していた養老保険を、

【死亡保険金(法人受取)】、【満期保険金(従業員、役員受取)】に変更する場合を想定します。

 

この点、死亡保険金、満期保険金ともに、従業員、役員が従来の受取人であったことを想定しているので、過去に支払済の養老保険は全額給与として処理されているかと思います。

そのため、受取人の変更にあたっては特に課税関係は生じません。

 

5.保険解約時の課税関係

 

次に、保険契約を解約した場合の税務を見ていきます。

資金繰りの観点から保険料を支払えなくなった場合や、手元資金が早急に必要な場合などは、

保険契約の解約を検討されるケースがあるかと思います。

解約した場合に解約返戻金を受け取ることができる保険については、その返戻金に対して課税が生じます。

 

解約返戻金は契約者が受け取ることになります。

個人が受け取った場合と、法人が受け取った場合とに分けて、課税関係をご紹介いたします。

 

(1)個人が解約返戻金を受け取るケース

 

契約者と保険料負担者が同一の人である場合は、解約返戻金額から既に払い込んだ保険料を差し引いた金額が

一時所得として課税されます。

一方で、契約者と保険料負担者が異なる場合には、

保険料負担者から契約者(解約返戻金の受取人)に贈与があったものとして、贈与税が課税されます。

 

(2)法人が解約返戻金を受け取るケース

 

法人が解約返戻金を受け取った際の課税関係は下記の通りです。

 

6.保険事故発生時の課税関係

 

ここでは、保険の保障機能として、保険事故発生時に保険金が交付された場合の処理をご紹介いたします。

保険金の受取人が個人か、法人か、で分けて考えていきます。

 

(1)個人が保険金を受け取った場合

 

a.死亡保険金のケース

 

個人が死亡保険金を受け取った場合の課税関係については、以下の国税庁のHPが詳しいです。

(国税庁 タックスアンサー No.1750 死亡保険金を受け取った時,

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1750.htm)

 

国税庁のHPをもとに、各パターンの課税関係をまとめたものは下記の通りになります。

保険料の負担者と受取人の関係、及び一時金による受け取りか年金による受け取りか、で課税関係が変わってきます。

【パターン1】は、保険料を支払っていたその人自身が、保険金を受け取るケースです。

 

このケースでは、その保険料の受取人が所得税を課されることになりますが、

受取方法によって、一時所得か雑所得かに分かれます。

一時所得(一時金)の場合には、特別控除である50万円控除が適用できたり、最終的な所得税の計算では

一時所得の金額の1/2をもとに計算が行われるため、雑所得(年金)の場合と比べて、税務上のメリットが生じます。

 

【パターン2】は、被保険者と保険料の負担者が同一人のケースです。

 

この場合には、保険金受取人が、保険料を負担していた者から相続により保険金を取得したものとみなします。(相続税法第3条)

 

なお、一時金として受け取る場合には、相続税の1回のみで課税関係が終了しますが、

年金として受け取る場合には、相続年に相続税が課税された後、

翌年以降は毎年受取る年金受取額に対して所得税(雑所得)が課税されます。

この場合の雑所得の計算方法は、年々階段状に所得金額が増加していく特殊な計算方法を採用しており、

以下の国税庁のタックスアンサーにて詳細な計算方法が定められています。

(国税庁 タックスアンサー No.1620 相続等により取得した年金受給権に係る生命保険契約等に基づく年金の課税関係,

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1620.htm

 

【パターン3】は、被保険者、保険料の負担者、保険金の受取人、がすべて異なるケースです。

 

この場合には、保険料を負担していた者から、保険金受取人が保険金を贈与されたものとみなします。(相続税法第5条)

 

なお、こちらもパターン2のケースと同様、一時金として受け取る場合には贈与税の1回のみで課税関係が終了します。

一方で年金として受け取る場合には、贈与税に加えて、贈与年の翌年以後からの年金受取額に対して、

所得税(雑所得)が年々階段状に増加していくかたちで課税されます。

 

b.満期保険金のケース

 

個人が満期保険金を受け取った場合の課税関係については、以下の国税庁のHPが詳しいです。

(国税庁 タックスアンサー No.1755 生命保険契約に係る満期保険金等を受け取ったとき,

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1755.htm)

 

国税庁のHPをもとに、各パターンの課税関係をまとめたものは以下の通りになります。

死亡保険の場合と同様に、保険料負担者と保険金受取人の関係、

及び一時金による受け取りか、年金による受け取りか、でパターン分けされます。

2年目以降の雑所得の計算方法は、死亡保険金の場合と同様ですので、詳細は割愛します。

 

(2)法人が保険金を受け取ったケース

 

法人が保険金を受け取った際の課税関係は以下の通りです。

 

7.その他

(1) 遺留分対策としての生命保険

 

民法では、遺留分の侵害額請求というものが認められています。

 

これは、遺言などによる遺産分割の結果、法定相続人の中に分割財産の取り分が少ない方がいる場合に、

相続財産のうち自己の法定相続分の1/2(相続人が直系尊属のみの場合は1/3)に相当する部分までの金額に関して、

金銭の支払いを請求することができるものです。

 

例えば、被相続人に子供が2人おり、そのうち1人とは仲が悪く疎遠であり、遺言で疎遠の子供へ財産を一切分割しないことを

定めた場合でも、その疎遠の子供は他の兄弟などの相続人に対して、金銭の支払いを請求することができます。

 

この点、生命保険金は相続財産ではなく、民法上は受取人固有の財産になると考えられているため、

原則は遺留分侵害額の計算の母数には含まれないというメリットがあります。

そのため、他の相続人に干渉されない財産として、生命保険を活用することができます。

 

(2)逆ハーフタックスプラン(逆養老保険)

 

上記3.節では、法人が契約者となる養老保険に関する取り扱いをご説明しました。

そのうち、【死亡保険金(従業員、役員受取)】、【満期保険金(法人受取)】、として基本通達で規定されている契約形態を、

以下のように保険金の受取人を逆にしたものを、逆ハーフタックスプランといいます。

逆ハーフタックスプランの契約形態については、基本通達上明確な定めはなく、実務上は、保険料の1/2を支払保険料として損金算入、残りの1/2を給与(又は福利厚生費)として損金算入する処理が行われています。

 

この結果、養老保険で資産計上している保険料部分についても損金算入が可能になるというメリットがあります。

 

ただし、この処理は基本通達で特段規定されていない処理であるために税務否認リスクがあること、

さらに保険料の1/2が福利厚生費ではなく給与扱いとなる場合には源泉徴収事務が発生するという点に注意が必要です。

 

実際は福利厚生プランというよりかはオーナー個人の保障という観点で保険契約をされている場合も多いかと思われます。

そのような場合には、福利厚生費ではなく給与として扱われ、保険料相当金額に関して源泉徴収されるケースが多くなるかと思います。

源泉徴収事務を回避するためには、毎月の保険料は役員貸付金として処理し、満期保険金を減資として

その貸付金をオーナーから返済してもらえば、源泉徴収事務は発生しません。

ただし、役員貸付金として処理する場合には、会社がオーナーから貸付に係る受取利息を徴収しなければならないことに

注意してください。

 

8.さいごに

 

今回は生命保険にまつわる税務をご紹介いたしました。

基本通達には上記以外の規定もあり、さらに実際に販売されている保険プランも多種多様なものがあります。

  まずは、本稿で基本的な生命保険の課税関係を整理していただき、保険契約の見直しなどにお役立ていただけますと幸いです。


債権の貸倒れと債権放棄に関する法人税務

こんにちは。

公認会計士の岸です。

 

新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、業績悪化や倒産の危機に直面している企業が

多いかと思われます。

取引先の企業がそのような状況に直面している場合には、取引先の資金繰りや支払能力からみて、

取引先に対する債権の回収が困難になるケースが増えてくるものと想定されます。

この点、法人が保有する債権に関する貸倒損失の計上については、いくつかのルールがあり、

そのルールを満たさない場合には貸倒損失の損金算入が認められないこともあるため、

慎重な検討が必要となります。

本稿では、法人が保有する債権が貸倒れたり、放棄されたりした場合の税務上の取り扱いをご紹介いたします。

 

1.法人税法上の貸倒損失の体系

実は、法人税法上は貸倒損失の取り扱いについての明確な規定はありません。

しかし、実際にどのような状況であれば債権が貸倒れたと判断するかどうかは、個々の債務者の事情などにも左右されるため、

非常に難しい作業となります。

そこで、国税庁内部における事務処理の指針を定めた法人税基本通達というものに、貸倒れの判定に関する取り扱いが

規定されています。

基本通達では、債権の貸倒れについて以下の3つの類型を規定しています。

2.貸倒損失かどうかの判定

基本通達において示されている貸倒れの類型をそれぞれ見ていきましょう。

 

 (a)法律上の貸倒れ(法人税基本通達9-6-1)

基本通達の文言を引用すると下記の通りです。

 

9-6-1 法人の有する金銭債権について次に掲げる事実が発生した場合には、その金銭債権の額のうち次に掲げる金額は、その事実の発生した日の属する事業年度において貸倒れとして損金の額に算入する。(昭55年直法2-15「十五」、平10年課法2-7「十三」、平11年課法2-9「十四」、平12年課法2-19 「十四」、平16年課法2-14「十一」、平17年課法2-14「十二」、平19年課法2-3「二十五」、平22年課法2-1「二十一」により改正)

 

(1) 更生計画認可の決定又は再生計画認可の決定があった場合において、これらの決定により切り捨てられることとなった部分の金額

 

(2) 特別清算に係る協定の認可の決定があった場合において、この決定により切り捨てられることとなった部分の金額

 

(3) 法令の規定による整理手続によらない関係者の協議決定で次に掲げるものにより切り捨てられることとなった部分の金額

 

イ 債権者集会の協議決定で合理的な基準により債務者の負債整理を定めているもの

 

ロ 行政機関又は金融機関その他の第三者のあっせんによる当事者間の協議により締結された契約でその内容がイに準ずるもの

 

(4) 債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができないと認められる場合において、

       その債務者に対し書面により明らかにされた債務免除額

 

(1)~(4)の事実に該当する場合には、当該事実により切り捨てられた債権金額を損金の額に算入できることが定められています。

 

(1)~(3)の場合には、更生計画の認可による債権の切り捨てなど、法的整理手続を踏んで債権が切り捨てられた場合を想定しています。

債権が法的に切り捨てられたような状況にある場合には、誰の目から見ても債権が貸倒れたことは明らかであるため、

貸倒損失の計上を認めています。

 

一方、(4)の場合には、(1)~(3)とは異なり、債権が貸倒れたという事実ではなく債権放棄を行ったことを要件しています。

債権の「貸倒れ」ではなく債権の「放棄」であることから、もしその放棄が税務上の貸倒損失に該当しないとして否認された場合には、

取引先に対して何ら対価を受け取らずに債権回収を免除してあげたということで、税務上の寄附金として取り扱われる場合があるため、注意が必要です。

 

また、“その事実の発生した日の属する事業年度”において、損金に算入することとされていることにも注意が必要です。

例えば、過去に既に更生計画の認可などにより債権が切り捨てられている場合において、その切り捨てられた年度に債権金額を損金に算入していない場合には、その後の事業年度で債権金額を貸倒損失として損金に算入することはできません。

その事実が発生した事業年度の法定申告期限から5年以内であれば、更正の請求により過去に遡って貸倒損失に関する税金を取り戻すことができます。

しかし、その債権の切り捨てから5年超を経過しているような債権については、その損失に係る税金を取り戻せないことに注意が必要です。

 

(b)事実上の貸倒れ(法人税基本通達9-6-2)

基本通達の文言を引用すると下記の通りです。

 

9-6-2 法人の有する金銭債権につき、その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合には、その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理をすることができる。この場合において、当該金銭債権について担保物があるときは、その担保物を処分した後でなければ貸倒れとして損金経理をすることはできないものとする。(昭55年直法2-15「十五」、平10年課法2-7「十三」により改正)

 

(注) 保証債務は、現実にこれを履行した後でなければ貸倒れの対象にすることはできないことに留意する。

 

(a)のケースとは異なり、法的整理手続による債権の切り捨てにまで至らない状況であっても、

債務者の資産状況、支払能力等という実態からみて、債権の全額が回収できないことが明らかである場合においては、

貸倒損失の計上を認めているものです。

「全額が回収できないことが明らか」の判定については、債務者の置かれている状況(破産、債務超過など)を具体的に分析し、

実質的な判断を行うことが求められることから、当該判定について税務当局と争いになることも多いです。

なお、債権について担保が提供されている場合には、その担保物の価値分はまだ債権の回収見込みがあると考えられるため、

担保物を処分するまでは貸倒損失を計上できないことに留意する必要があります。

 

(c) 形式上の貸倒れ(法人税基本通達9-6-3)

基本通達の文言を引用すると下記の通りです。

 

9-6-3 債務者について次に掲げる事実が発生した場合には、その債務者に対して有する売掛債権(売掛金、未収請負金その他これらに準ずる債権をいい、貸付金その他これに準ずる債権を含まない。以下9-6-3において同じ。)について法人が当該売掛債権の額から備忘価額を控除した残額を貸倒れとして損金経理をしたときは、これを認める。(昭46年直審(法)20「6」、昭55年直法2-15「十五」により改正)

 

(1) 債務者との取引を停止した時(最後の弁済期又は最後の弁済の時が当該停止をした時以後である場合には、これらのうち最も遅い時)以後1年以上経過した場合(当該売掛債権について担保物のある場合を除く。)

 

(2) 法人が同一地域の債務者について有する当該売掛債権の総額がその取立てのために要する旅費その他の費用に満たない場合において、当該債務者に対し支払を督促したにもかかわらず弁済がないとき

 

(注) (1)の取引の停止は、継続的な取引を行っていた債務者につきその資産状況、支払能力等が悪化したためその後の取引を停止するに至った場合をいうのであるから、例えば不動産取引のようにたまたま取引を行った債務者に対して有する当該取引に係る売掛債権については、この取扱いの適用はない。

 

こちらも、(b)と同様に債権の法的切捨てにまで至らない状態であったとしても、

1年以上弁済がない場合や、取立費用が債権総額を上回る場合には、実態としては債権の回収可能性が既にないものと考えて、

貸倒損失の計上を認めたものです。

経過年数(1年以上)や取立費用の大小などの形式的な要件が定められているため、いわゆる形式要件などと言われることがあります。

 

(a)、(b)のケースと異なり、対象となる債権が通常の営業活動から生じる売掛債権に限定されている点に注意が必要です。

例えば、貸付金や損害賠償請求権といった、通常の営業活動以外から生じている債権についてはこの規定の対象外となります。

 

また、「継続的な取引を行っていた債務者」であることが求められているため、仮に営業債権であったとしても、

単発の取引で生じた債権については基本的に適用対象とならないことに注意が必要です。

しかし、一般消費者向けのネット販売で、継続的に取引を行うことを期待して顧客情報を管理していたが

結果的に1回の取引しか発生しなかったようなケースには、この基本通達の適用が認められていますので

(国税庁質疑応答事例「通信販売により生じた売掛債権の貸倒れ」)、

その債権が置かれている状況に応じて、適切な判断を行う必要があります。

 

4.貸倒れ以外の債権放棄

基本通達9-4-1(4)の貸倒損失の要件である債権放棄について、税務上の貸倒損失に該当しないと判断された場合には、

その債権放棄は取引先に対する経済的な利益の供与として、原則として法人税法37条に定める寄附金として取り扱われます。

 

寄附金として扱われる場合には、債権放棄額のうち、寄附金の損金算入限度額として計算される一定の金額までしか、損金に算入することができません。

具体的には、債権放棄は一般寄附金というものに該当し、以下の算式によって損金算入限度額を求めます。

一見すると難しい計算式となっていますが、要するに利益が多く計上されていたり、資本金の額が多額である会社の場合には、

損金に算入できる寄附金の額が大きくなります。

 

 

5.寄附金として取り扱われない債権放棄

 

税務上の貸倒損失として認められなかった債権放棄であったとしても、寄附金としては取り扱われず、

その全額を損金に算入できるケースがあります。

 

(1)子会社等を整理、再建する場合の債権放棄等(法人税基本通達9-4-1、9-4-2)

基本通達の文言を引用すると下記の通りです。

 

(子会社等を整理する場合の損失負担等)

9-4-1 法人がその子会社等の解散、経営権の譲渡等に伴い当該子会社等のために債務の引受けその他の損失負担又は債権放棄等(以下9-4-1において「損失負担等」という。)をした場合において、その損失負担等をしなければ今後より大きな損失を蒙ることになることが社会通念上明らかであると認められるためやむを得ず(必要性)その損失負担等をするに至った等そのことについて相当な理由があると認められるときは、その損失負担等により供与する経済的利益の額は、寄附金の額に該当しないものとする。(昭55年直法2-8「三十三」により追加、平10年課法2-6により改正)

(注) 子会社等には、当該法人と資本関係を有する者のほか、取引関係、人的関係、資金関係等において事業関連性を有する者が含まれる(以下9-4-2において同じ。)。

 

(子会社等を再建する場合の無利息貸付け等)

9-4-2 法人がその子会社等に対して金銭の無償若しくは通常の利率よりも低い利率での貸付け又は債権放棄等(以下9-4-2において「無利息貸付け等」という。)をした場合において、その無利息貸付け等が例えば業績不振の子会社等の倒産を防止するためにやむを得ず行われるもの(必要性)で合理的な再建計画に基づくものである等その無利息貸付け等をしたことについて相当な理由があると認められるときは、その無利息貸付け等により供与する経済的利益の額は、寄附金の額に該当しないものとする。(昭55年直法2-8「三十三」により追加、平10年課法2-6により改正)

(注) 合理的な再建計画かどうかについては、支援額の合理性、支援者による再建管理の有無、支援者の範囲の相当性及び支援割合の合理性等について、個々の事例に応じ、総合的に判断するのであるが、例えば、利害の対立する複数の支援者の合意により策定されたものと認められる再建計画は、原則として、合理的なものと取り扱う。

 

子会社や取引先など、事業関連性を有する者に対する債権放棄や無利息貸付について、

その債権放棄等をしなければより大きな損失を蒙ることが明らかな場合や、合理的な経営再建計画に基づく行為である場合には、

それが必ずしも経済的利益の供与に該当しないものとして、その債権放棄等の金額は寄附金の額に該当しないものとされています。

この点、経営再建計画等が合理的であるかどうかなどの判断を慎重に行う必要があります。

 

上記の要件を満たさない場合には、原則に戻って寄附金として取り扱われ、一定の損金算入限度額までしか損金算入が

認められません。

 

また、債務者が100%の支配関係がある国内の子会社に該当するようなケース(法人税法37条2項)や、

50%以上の支配関係がある海外子会社に該当するようなケース(租税特別措置法66の4条第1項)には、

その寄附金の全額が損金不算入となります。グループ会社に対する債権を放棄するようなケースには注意が必要です。

 

(2)新型コロナウイルスに関連する資金繰りの悪化(法人税基本通達9-4-6の2、9-4-6の3)

基本通達の文言を引用すると下記の通りです。

 

(災害の場合の取引先に対する売掛債権の免除等)

9-4-6の2 法人が、災害を受けた得意先等の取引先(以下9-4-6の3までにおいて「取引先」という。)に対してその復旧を支援することを目的として災害発生後相当の期間(災害を受けた取引先が通常の営業活動を再開するための復旧過程にある期間をいう。以下9-4-6の3において同じ。)内に売掛金、未収請負金、貸付金その他これらに準ずる債権の全部又は一部を免除した場合には、その免除したことによる損失の額は、寄附金の額に該当しないものとする。

 既に契約で定められたリース料、貸付利息、割賦販売に係る賦払金等で災害発生後に授受するものの全部又は一部の免除を行うなど契約で定められた従前の取引条件を変更する場合及び災害発生後に新たに行う取引につき従前の取引条件を変更する場合も、同様とする。(平7年課法2-7「六」により追加、令2年課法2-10「一」により改正)

 

(注)

 

1 「得意先等の取引先」には、得意先、仕入先、下請工場、特約店、代理店等のほか、商社等を通じた取引であっても価格交渉等を直接行っている場合の商品納入先など、実質的な取引関係にあると認められる者が含まれる。

 

2 本文の取扱いは、新型インフルエンザ等対策特別措置法の規定の適用を受ける同法第2条第1号《定義》に規定する新型インフルエンザ等が発生し、入国制限又は外出自粛の要請など自己の責めに帰すことのできない事情が生じたことにより、売上の減少等に伴い資金繰りが困難となった取引先に対する支援として行う債権の免除又は取引条件の変更についても、同様とする。

 

上記の基本通達は、従来、被災した取引先の債権の免除について、寄附金に該当しないことを定めていたものでした。

しかし、令和2年4月13日付の法人税基本通達の改正により、新型コロナウイルス等の感染症の影響に伴う取引先の資金繰りの悪化に

起因して行う債権の免除も、上記の通達の対象に含まれることが明確化されました。

この場合においても、その債権の免除が通達に定める事象に起因したものかどうか、因果関係などについて詳細な分析を行うことが

必要です。

 

6.消費税の取り扱い

過去に消費税が課されていた債権について、貸倒れの事実が生じた場合には、当該貸倒債権に係る消費税額を、

その貸倒れが生じた期の消費税額から控除することができます。(消費税法39条)

消費税法上の貸倒れの判定については、消費税法施行令59条、消費税法施行規則18条に具体的に定められていますが、

上記の法人税法基本通達9-6-1~9-6-3と内容に大きな差異はありません。

しかし、法人税法基本通達9-4-1,9-4-2により計上した子会社に対する債権放棄による損失などについては債権の放棄であるため、

あくまで貸倒損失には該当せず、資産の譲渡等にも該当しないため、消費税の控除ができないなど、消費税法上の貸倒損失に関する

取り扱いにも留意する必要があります。


【社内勉強会①】消費税の基本的な考え方を学ぼう

こんにちは。

スタッフの大滝です。

2020年6月にアンパサンド税理士法人に入社しました。

アンパサンド税理士法人では、社内勉強会という制度があります。

税理士事務所での仕事は未経験…そんな私が社内勉強会で税務や会計について学んだ知識を

「税務未経験者の視点 」でまとめた内容を掲載させていただきます。

現在、経理や税務に関わるお仕事をされている方、またはこれからお仕事に就く方へ向けて、お役に立つ内容となれば幸いです。

 

~社内勉強会とは~

毎月1回、テーマを変えて勉強会を行っております。

勉強会というと、堅いイメージがありますが、弊社の勉強会は職員が意見を交える場というイメージが合います。

税理士や会計士資格を持つ職員との意見交換や実務で感じた小さな疑問も解決でき、有意義な時間となります。

 

早速ですが、今回は「消費税」について基本的な内容を記載いたします。

 

1 消費税の仕組み

消費税というと、勝手ながら「生活する上で一番身近な税金」という印象がありました。

日々の買い物、外食等…様々な場所で消費税を負担しています。

しかしながら、買い物や外食等で負担した消費税は、どのように国に納付されているのでしょうか。

そこで、まずは消費税の仕組みを整理してみます。

 

私たちが買い物等で負担した消費税は、事業者が税務署に納付するという仕組みを取っています。

消費税は「間接的に納める」という特性から間接税と分類されます。

 

つまり、消費税の特徴は、以下の2点ということがわかります。

①消費税を負担する人=消費者

②消費税を申告・納付する人=事業者

 

一方で、事業者自身も仕入れ等の段階で消費税を負担しています。

事業者が支払った消費税はどのように納付するのでしょうか。

原則として、消費税は以下のような方法で計算します。

 

なぜ、このような計算の仕方をするのでしょうか。

それでは、ここである取引の流れで見てみましょう。

 

例1:日本の消費者がB社からパソコンを購入する取引

 

●A社視点

B社へパソコンを税抜き100,000円で販売します。B社から預かる消費税は10,000円です。

もしも、仕入れがなければA社は、10,000円を納付します。

●B社視点

A社からパソコンを税抜き100,000円で仕入れます。A社が支払う消費税は10,000円です。

そして、消費者へパソコンを税抜き120,000円で販売します。消費者から預かる消費税は12,000円です。

B社は、消費者から預かった消費税12,000円と、A社へ支払った消費税10,000円がある為、

納付する消費税額は差額の2,000円となります。

●消費者視点

B社からパソコンを税抜き120,000円で購入します。支払う消費税は12,000円です。

私たちが負担している消費税はこちらです。

 

上記をもとに、最終的に国に納付される消費税は、A社の10,000円とB社の2,000円を合計した12,000円ということが解ります。

消費者が負担した消費税額と同額になりますね。

 

2 消費税の判定

続いて、消費税の判定方法について整理しました。以下のフローチャートをご覧ください。

 

⑴課税取引

消費税の課税対象は、国内において、事業者が事業として、対価を得て行う資産の譲渡等とされています。

これに当らない場合は、消費税は課税されません。

⑵不課税取引

主に、国外取引や対価を得て行うことに当たらない寄付や単なる贈与、出資に対する対価が該当します。

⑶非課税取引

消費税の性格や社会政策的な配慮などから非課税とされています。(図中の限定列挙)

⑷免税取引

課税事業者が輸出取引や国際輸送などの輸出に類似する取引として行う商品の販売やサービスの提供が該当します。

参考URL: https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/01_3.htm

 

3 免税店での販売の仕組み

消費税には、免税店という制度があります。

免税店とは非居住者(外国人旅行者等)に対して生活用品等を販売する場合に、

消費税を免除して販売できる制度のことを指します。

免税店の登録は、納税地の税務署へ許可申請が必要です。

 

ここまでの内容を踏まえて、例1をもとに、《B社が免税店だった場合》に消費税の仕組みはどのようになるのか

という疑問を抱きました。

この場合の消費税の仕組みを考えてみます。

 

例2:外国人の消費者がB社からパソコンを購入する取引

 

 

 

例1の取引とは、

・B社が免税店であること

・免税取引を想定している為、消費者は外国人であること

が異なります。

 

●A社視点

B社へパソコンを税抜き100,000円で販売します。B社から預かる消費税は10,000円です。

もしも、仕入れがなければA社は、10,000円を納付します。

●B社(免税店)視点

A社からパソコンを税抜き100,000円で仕入れます。A社が支払う消費税は10,000円です。

そして、消費者へパソコンを120,000円で販売します。消費者(外国人)からの消費税の預りはありません。

B社は、A社へ支払った消費税10,000円の還付を受けることができます。

上記のように、受け取った消費税より支払った消費税が多い場合には、払いすぎているので消費税の還付を受けることができます。

●消費者(外国人)視点

B社からパソコンを120,000円で購入します。消費税は免税です。

 

A社は10,000円の消費税を納付する一方で、B社は同額の還付を受けられます。

つまり、この取引で消費税の負担は発生していないことになります。

 

 

4 まとめ

今回は、消費税の基本的な内容を整理しながらまとめました。

勝手ながら身近に感じていた消費税ですが、仕組みを理解することで、日々の買い物等で負担した消費税の行き先を意識するきっかけとなりました。

勉強会では、基本的な内容を学習した上で、「こういう場合はどのように考えられるか」等、様々な意見が飛び交います。

テーマに沿った知識を得るだけでなく、思考力を高めることができます。


消費税の納税義務判定で注意!特定新規設立法人とは?

こんにちは。

税理士の大塚です。

 

消費税の納税義務の有無については、基本は基準期間(前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以上あったかで判定を行います。

従って、基準期間が存在することのない設立してから2年間は、消費税の納税義務は生じないところです。

ただし、資本金、特定期間、組織再編、特定新規設立法人など、設立から2年以内の法人であっても、消費税納税義務となりうる規定が幾つか設けられています。

 

中でも複雑なのが特定新規設立法人による判定です。

平成26年4月1日以降設立の法人が対象となる比較的新しい税制ですが、特定新規設立法人に該当しているのを失念してしまっているケースや、反対に特定新規設立法人に該当していると思っていたら該当していなかったというケースも見聞きします。

 

今回は特定新規設立法人につき、ポイントを整理していきます。

 

1 2つの要件

 

特定新規設立法人に該当するかどうかは、以下の2つの要件を満たす場合に限られます。

(1)特定要件に該当するか

特定要件とは、その新規設立法人が他の者により株式総数の50%超支配されている場合を言います。

 

(2)基準期間相当の課税売上高が5億円を超えているか

特定要件の判定となった「他の者」と他の者の「特殊関係法人」のいずれかの、基準期間相当の課税売上高が5億円を超えている場合に該当します。

 

2 特定要件

特定要件のポイントは以下の通りです。

(1)個人株主は親族も含めて考える

個人甲40%、甲の配偶者である乙20%保有しているようなケースも、甲とその親族で50%超保有していますので該当します。

親族の範囲は広くとられており、法的な親族でなくても、事実婚の方や金銭の支援を受けて生計を立てられている方も含みます。

●特定要件に該当するケース

 

(2)100%支配している法人も含めて考える

他の者により100%支配している法人は、他の者と同一グループとして考えます。個人甲が100%出資のA社を所有している場合、個人甲の保有割合だけでなく、A社の保有割合も含んで判定を行います。

また、親族グループで100%支配している法人も、これらの親族と同一グループとして判定の対象になります。

100%支配であって、50%超でないところがポイントです。

● 特定要件に該当するケース

 

 

(3)議決権判定もある

組織再編や役員の選任等の重要事項の議決権で考えた際に、これらの議決権を50%超保有している場合も特定要件になります。

保有割合を50%以下にして、種類株式などで議決権だけは特定の親族で50%超保有しているようなケースは対象となります。

 

(4)誰を「他の者」とするのか

50%超支配を考える際の「他の者」が誰なのかは次のステップで重要な意味を持ちます。

「他の者」は株主の頂点にいる人のみが該当するわけではありません。

例えば、A社の100%子会社にB社があり、B社が新規設立法人に対して50%超出資していたとします。

新規設立法人が特定要件に該当するかを考えた場合、A社を「他の者」とすると、A社とA社の100%支配しているB社を含めて判定を行うため、特定要件に該当します。

一方で、B社を「他の者」として考えた場合は、B社単独で50%支配していますので、C社は特定要件に該当します。

この場合では、A社もB社も「他の者」になる状況となります。

 

 

(5)判定の対象時期

期首時点での判定となります。

 

3 基準期間相当の課税売上高が5憶円を超えるか

特定要件に該当した場合は、こちらのステップへと進みます。

特定要件の判定の基礎となった「他の者」と他の者の「特殊関係法人」につき、基準期間相当の課税売上高が5億円を超えるかの判定を行います。

「他の者」が複数いる場合は、全て確認していく必要があります。

 

(1)他の者は、株主もしくは議決権所有者に制限される

ここは特徴的なポイントです。特定要件の際に「他の者」に該当したもの全てが対象となるわけではなく、5億円超判定に用いる「他の者」は直接株式を保有している者、もしくは議決権判定により特定要件に該当した場合は直接議決権を有している者に限定されます。

A社の100%子会社にB社があり、B社が新規設立法人に対して50%超出資したケースでは、A社、B社ともに特定要件の際の「他の者」に該当しますが、A社は新規設立法人の株式を直接保有していませんので、5億円超判定には入らないことになります。

 

 

(2)特殊関係法人とは何か

特殊関係法人とは、「他の者」又は「他の者」とその親族(それらの者に100%支配されている法人含む)により100%支配されている法人を言います。

特殊関係法人自体が判定対象となる法人の株式を所有しているかは問われません。

A社の100%子会社にB社があったとして、新しくA社100%出資で法人を設立したとします。B社と新設法人は兄弟会社になります。

新設法人はA社を「他の者」として特定要件に該当しますが、5億円超判定は、A社が完全支配しているB社は特殊関係法人となり、A社、B社双方により判定を行います。

 

「他の者」により100%支配されているという定義の、「他の者」ですが、これは(1)同様、直接株式、議決権を保有している者に限定されます。

下図のような場合、A社が別のC社を100%支配していても、特殊関係法人にはならずに、C社は5億円超判定には入りません。

 

4 非特殊関係法人とは

特殊関係法人にならない法人というのも定義されています。

 

特殊関係法人で説明したように兄弟会社でも5億円超の判定対象になり得ます。「他の者」が個人株主である場合、親族も含めることになりますが、例えば、兄が100%出資で設立したA社があったとして、弟が50%超の出資で新設法人を設立した場合、A社を判定に入れなくてはならないのかという疑問が生じます。

兄弟別々に人生を歩んでいれば、会社を所有していたことすら知らなかったというケースもあるでしょう。

そこで非特殊関係法人として、別生計の親族が完全支配している法人は特殊関係法人には該当しないというルールがあります。

従って、兄と弟が別生計であれば特定新規設立法人の適用はありません。

 

別生計親族が100%支配している場合が対象外になりますので、弟が数%でも法人Aに出資していれば、法人Aは特殊関係法人に該当するので注意が必要です。

 

また、逆に兄が新設法人に数%でも出資をすれば、兄は「他の者」に該当しますので、法人Aは「他の者」の100%支配法人となり、特殊関係法人に該当し判定対象となります。

 

5 基準期間相当の判定は3段階に分かれている

基準期間相当の判定は、「他の者」「特殊関係法人」の前々事業年度相当だけを確認すれば良いわけではありません。

基準期間相当は、以下の3段階に分けられています。前々事業年度相当のみで判断してしまわないように留意する必要があります。

 

(1)新規設立法人の開始日の2年前の日の前日から1年経過までに終了する各事業年度

(2)新規設立法人の開始日の1年前の日の前日から当該開始日の前日までに終了する各事業年度

(3)新規設立法人の開始日の1年前の日の前日から当該新設開始日の前日までに、判定者の事業年度で6か月経過している場合 その6か月

※(2)、(3)判定において、判定対象となる事業年度の終了日から、新設法人の開始日までの期間が2か月未満の場合は除かれます。

 

6 その他の留意事項

(1)調整対象固定資産

特定新規設立法人に該当して納税義務が生じた事業年度に調整対象固定資産(棚卸資産を除く100万円以上の一定の資産。)を購入した場合は、いわゆる3年縛りのルールが適用されます。

(2)簡易課税

特定新規設立法人に該当した場合でも簡易課税の選択は可能です。