Category Archives: 企業支援

中小企業庁の認定する「M&A支援機関」としてアンパサンドは登録しました

こんにちは。

税理士の山田です。

 

当社は中小企業庁の管轄するM&A支援機関として2021年9月20日より登録がされました。

 

当社は下記の別紙ファイルの通り、中小 M&A ガイドラインを遵守していることを宣言します。

M&A支援機関登録制度公募要領掲載_遵守事項一覧チェックシート

 

なお、当社はM&Aのアドバイザリーと合わせて、下記制度の利用についても支援を致します。

◆事業承継・引継ぎ補助金◆

https://jsh.go.jp/r3/

こちらは事業承継やM&Aを契機とした経営革新等への挑戦や、M&Aによる経営資源の引継ぎを行おうとする中小企業者等を後押しするために創設された補助金となります。

当社のように「M&A 支援機関登録制度」に登録されたアドバイザーに対するM&Aアドバイザリー費用(株式取得費などは含まない)なども、補助金の対象となります。

是非活用をご検討下さい。

 

◆中小企業の経営資源の集約化税制◆

https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/shigenshuyaku_zeisei.html

中小企業が行うM&Aについては、一定の要件を満たす場合には、他法人の株式の取得額の70%までを、損金に算入することができます。

この税制を使うことができれば、M&A後の納税費用を抑えることができ、円滑な事業経営が促進できます。

 

また、これからM&Aのアドバイザリーのみならず、M&A実行後のPMI支援が出来るように体制を構築しています。

日本においてM&Aは今後益々加速すると考えております。今後様々な支援業務に取り組んで参りますので宜しくお願い申し上げます。

 

アンパサンド株式会社

代表取締役 山田典正


事業計画書のススメ④~数値計画の立て方~

こんにちは。

税理士の山田です。

前回までの記事で事業計画書を作成するためのポイントや考え方、有効に活用するための補助金制度等について整理してきましたが、事業計画の中で最も重要と言える数値計画について、今回は説明していきます。事業プランが上手くいくかどうかは、この数値計画に掛かっていると言っても過言ではないかと思います。

※過去の連載は下記のリンクより参照ください。

事業計画書のススメ①~基礎編~はこちらより

事業計画書のススメ②~フレームワーク編~はこちらより

事業計画書のススメ③~補助金制度+α~はこちらより

 

1.中期計画・ロードマップの作成

第1回の記事にて、事業計画の主な構成を説明しましたが、最後の項目である『事業スケジュール・損益計画』について本稿では深堀していきます。市場のニーズに対してどのような事業を展開していくか、マーケットに対してどのような販売方法・販売戦略を行っていくのか、今後3~5年間の事業スケジュールを固めたうえで、そのアクションプランを数値計画に落とし込んでいきます。

まずは、アクションプランの定め方については中期の計画と短期の計画に分けて定めていきます。中期の計画では、期間(3~5年間)を定めたら3~ 5年後のあるべき状態を明確にして、そこにたどり着くための大きなプランをまずは決定します。中期計画はいわゆるロードマップに落とし込むのが良いと思います。試しに、会計事務所の一つのモデルでロードマップのサンプルを作成してみます。

【ロードマップ サンプル】

 

2.短期計画・KPIツリーの作成

次に、中期の計画を実現するためには、最初の1年間に何をすべきか、という具体的なプランを定めて、計画に落とし込んでいきます。この時にはKGIとKPIを設定していくと良いと思います。KGI(Key Goal Indicator)とは重要目標達成指標のことで最優先に達成すべき経営指標を指しますが、売上高や成約数、利益率などで設定します。例えば、初年度のKGIを月間売上500万円と設定します。次にKPI(Key Performance Indicator)を設定して行きますが、KPIとはKGIを達成するための各プロセスが適切に実施されているかを評価するための指標でKPIツリーやロジックツリーというものを設定します。KGIを達成するための指標を因数分解して、指標ごとに目標値を設定して行きます。

 

【KPIツリー サンプル】

 

 

3.目標設定のフレームワークSMART

目標設定をするうえで、非常に重要な考え方がSMARTというフレームワークで整理出来ます。いくら目標であると言っても実現不可能な目標や達成を図ることが難しい目標を設定してしまうと意味がないものになってしまいます。SMARTの考え方に基づいて常に目標が適切かどうか検証しましょう。

Specific 目標設定が抽象的ではなく、具体的な目標か
Measurable 数値化された測定可能な目標になっているか
Achievable 現実的ではない目標を掲げていないか、達成可能な目標か
Result-based 設定した目標を達成することで会社の利益に貢献するか
Time-bound 目標を達成すべき期限は設けてあるか

 

4.売上計画の立て方

次に売上計画の立て方について説明していきます。計画値で立てたKGI・KPIを達成するためにどういうアクションプランを起こしていくか、検討していきます。KPIツリーの内容とも重なるところになりますが、売上計画の立て方で大原則となるのは『販売数×単価』という算式になりますが、販売数と単価の計画値を立てただけでは売上計画とは言えません。ここにたどり着くまでのアクションプランを設定して、販売数と単価を因数分解していく必要があります。例えば会計事務所を例に見ていきますが、見込客を作ってから顧客になるまでのコミュニケーションステップを設定して見ましょう。

 

【コミュニケーションステップ サンプル】

上記のステップで考えた時に、メインとなるファーストステップをWEB集客・SNSかパートナーからの紹介というルートで設定したとします。次のステップとしてはセミナーや勉強会を開催すると個別相談にたどり着く確率が上がるでしょうから重要なステップです。ここでステップごとに下記のようなアクションプランを設定し、またアクションプランに合わせた計画を立ててみます。

 

【アクションプラン】

WEB集客 毎月記事を10個アップする
SNS Twitterで毎日10回のTweetと10回のリプをする
セミナー 4ヵ月後から毎月1回、半年経過後から毎月2回開催
その他 4ヵ月後からパートナー向けの勉強会を毎月開催する

 

【アクションプランに応じた数値計画】

 

サンプルの計画ですので、これ以上の深堀は止めておきますが、実際の事業計画にあたってはより綿密な計画を立てた方が良いでしょう。フロー売上については、例えば新規成約のうち20%についてフロー業務の成約を見込むことが出来れば、1年後に月間2件ほどの獲得が可能となります。

続いて、単価については同業者他社のHP等から市場価格を想定して単価を設定して行きます。ここで単価を上げるために非常に重要な考え方であるアップセル・クロスセルについて説明しましょう。

<アップセル>

検討中の商品よりワンランク上の商品を購入して貰い顧客単価を上げる手法です。これは商品・サービス設計の話になりますが、必要な人に必要なモノを届ける、つまり顧客ロイヤリティが高い顧客であれば、仮に単価が高くても購入をします。例えば、同じ料理が800円で食べられるA点と1,000円で食べられるB店があります。ただし、800円で食べられるお店は入るのに20分間並ばなければいけません。お店に並びたくない、という要望がある顧客にとっては、B店はロイヤリティが高いお店となります。顧客のニーズを適切に把握して、ロイヤリティの高いサービスを適切な価格で提供することがアップセルに繋がります。

<クロスセル>

これは良く聞く『ご一緒にお飲物はいかがですか?』というセールストークが該当します。つまり、一つの商品に追加して別の商品を購入して貰う手法です。組み合わせて購入して貰うものは何でも良い訳ではなく、合わせて購入することで効果が上がる商品や、目的がより達成しやすくなる商品が良いと思います。例えば、スーツを購入したお客様にスーツの色にあうネクタイやワイシャツ、靴を提案する。サンプルの医業特化型の会計事務所の例であれば、これから創業する開業医の方に創業時の融資を受けやすくするコンサルサービスを提供すればニーズは高いでしょう。メインとなるサービスを受ける際に、導入前又は導入後のニーズを想定して、サービスとして提供すればクロスセルで顧客単価の増加に繋がります。自社でそのサービスを提供することが難しければ、例えば信頼のできるパートナーを見つけることで出来れば、サービス提供が可能になり、紹介・代理店契約をすることで売上に繋がります。

 

5コスト計画の立て方

最後にコスト計画の立て方について説明していきます。コストの設計にあたっては、まずは変動費と固定費に分類して見積をしていきます。

①変動費

変動費は売上に連動して発生する費用となります。原価が発生数するビジネスであれば、事業・商品・販売チャネル、等の原価率が変わるセグメントに分類して、想定される原価率を設定していきましょう。他にも売上計画に紐づく形でアクションプランに応じて発生するコストを見積もっていきましょう。

サンプルで想定している会計事務所業務の場合には完全に売上連動のコストは発生しませんが、例えば紹介者であるパートナーに対して紹介手数料が発生する場合には、紹介チャネルの件数に応じてコストを見積もります。また、セミナーや勉強会の開催にあたって会場代等は必要になるでしょうから、この辺りは個別にコストを見積もって設計していきましょう。

②固定費

固定費はその発生する要素に分類して見積をしていきます。一般的な分類として下記のような種類に分けて見積をするとやりやすいかと思います。


事業計画書のススメ③~補助金制度+α~

こんにちは。

税理士の山田です。

 

前回までの記事で事業計画書を作成するためのポイントや考え方を整理してきましたが、実際に作成した事業計画書を有効に活用する上で、切っても切り離せない公的制度について、今回は説明していきます。補助金、融資や税制での優遇制度など、毎年国の予算を使って運用している制度になりますので、ポイントを押さえておきましょう。

※過去の連載は下記のリンクより参照ください。

事業計画書のススメ①~基礎編~はこちらより

事業計画書のススメ②~フレームワーク編~はこちらより

 

さて、新型コロナの経済対策として給付金や長期かつ実質無利息の融資制度など、様々な施策が講じられましたが、元々一般の企業でも活用が出来る補助金制度が数多くあることはご存知でしょうか。補助金制度の概要とポイントをまずは抑えた上で、どのような制度があるのかを説明していきます。

 

1.補助金制度の概要

まずは補助金・助成金・給付金と似たような言葉をよく耳にすると思いますが、制度としてどういった違いがあるかご存知でしょうか。シンプルにまとめますと、補助金は主に経済産業省が主導している制度で経済成長のための攻めのコストを補助するもの、助成金は主に厚生労働省が主導している制度で雇用を維持するためや労働者の環境を整備するための守りのコストを支援するもの、給付金は定額給付金や持続化給付金など生活困窮者等を支援するもの、という整理になります。また、国の他にも自治体が主導する制度もそれぞれあります。ただ、明確に言葉の違いがあるわけではなく、助成金という名前でも補助金の性格を持つものもありますので注意しましょう。

この中でも補助金は最もハードルが高い制度であり、魅力的な事業計画書を作成しなければ受給を受けることが出来ません。一方で1件当たりの補助金額が大きい大型のものも多く、1社辺り1000万円を上限に補助するものづくり補助金を代表に、東京都が主催するものには1社辺り上限1億円の制度もあります。新規事業や研究開発を進めるにあたって先行投資が発生する場合には、補助金が利用できる可能性がありますので是非検討していきましょう。

 

2.補助金制度のポイント

補助金制度はルールが厳格であり、ほぼ成功している状態でも一つでも要件を満たしていいないだけで、全く受給が受けられないという可能性もあります。コンサルタントの支援を受けて補助金の申請を行って採択(いわゆる合格)が出ていたとしても、その後の手続きを失念すれば、無駄なコストだけ掛かってしまし、実入りは無いことも起こり得ます。申請にあたっては、まずはポイントをよく理解することが大切です。

 

①補助金は採択企業のみが受給対象

補助金制度はいわゆる大学受験のようなものです。魅力的な事業計画書を提出し、審査官がその計画書を魅力的なものであると判断すれば、採択通知が送られ補助金を受ける権利が発生します。ただし、採択後も交付申請や実績報告と言った手続きが必要であり、ルールさえ守ればその後の手続きで受給が受けられないことは無いのですが、逆に一つでもルール違反があれば補助金を受けとることは出来ません。

 

②募集期間が限定

補助金は募集の期間が決まっておりその期間内でのみ申請が可能です。書類等の準備が出来たから申請をしようと思っても、期間が終了していれば申請することは出来ません。

 

③スケジュールを抑える

補助金はスケジュールが厳格に決まっており、流れに沿って期限までに必要な手続きを行わないと補助金の給付は受けられません。大まかな流れとしては下記の通りです。

(出典:ミラサポhttps://www.mirasapo.jp/subsidy/images/subsidy_flow2.pdf

 

④対象期間と対象経費の考え方を抑える

補助金は対象となる事業に関する一定の経費を補助するものです。事業に掛かった経費に対して、1/2、2/3、3/4と言った形で経費を補助します。ここで対象となる経費については補助金の制度ごとに限定列挙されており、対象となる経費の支払が無ければ補助金は受けられません。また、対象となる補助事業期間内に発注から支払いまでを完結しておかないと補助対象になりません。

補助金制度は日本全国で年間3000種類あると言われており、毎年制度が少しずつ変わっていきますので、全てを説明することは出来ませんが、主要なものを整理してみました。まずは想定している経費が補助対象になるかどうかを抑えておきましょう。

 

⑤補助金の返還が必要なケースも

補助金の制度にもよりますが、補助金の受給後も継続して状況報告が必要になる制度も多いです。例えば『ものづくり補助金』という制度では、5年間の報告が必要となります。この5年間の間で補助金を使った事業で利益が多額に出る場合には、補助金を一部返還するケースもありますので注意が必要です。

 

⑥補助金を使った資産は処分に制限も

補助金を利用して購入した資産は、国や自治体のお金を利用しているため処分をするにあたっても一定の制限があります。事業売却や資産の売却などを行うと補助金の一部返還が必要となる可能性がありますので注意が必要です。

 

⑦対象となる事業者はほぼ中小企業者が前提

様々な補助金制度がありますが、ほとんどの制度が中小企業を対象にしているものになります。中小企業者の定義は業種により異なるのですが、例えばサービス業ですと、資本金の額等が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人、が該当します。

 

⑧まずはGビズIDの登録を

まさにコロナの影響ですが、2020年から補助金申請の電子化が一気に進みました。補助金の申請にあたってはほとんどのものでGビズIDの取得が必要となります。IDの取得にあたっては、最大で2週間程度の時間を要しますので、まずはアカウントの作成を進めましょう。

GビズIDの取得はこちらから

 

さて、この後は実際に利用可能な補助金制度について説明をしていきます。新年度予算の補助金制度については、まだほとんどのものが応募開始前の状態ですので、重要性の高い補助金制度を中心に過去の条件も参考にまとめていきます。

 

3.設備投資を支援する「ものづくり補助金」

続いて、具体的な補助金の制度について説明していきますが、まずは補助金の中で最もポピュラーで効果も大きい「ものづくり補助金」について概要を説明します。出来るだけシンプルに重要なポイントだけを整理しますので、詳細は必ず事務局のHPをご確認ください。「ものづくり補助金」は新規事業や既存事業の改善のための設備投資・システム投資を行う場合には、申請できる可能性が高いです。上限金額が1000万円と高額であり、採択率も高いため、最も効果的で使い勝手の良い制度です。

項目 要件
対象事業 生産性向上に資する革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等の一部を支援
対象者 日本国内に本社及び実施場所を有する中小企業者
主な対象経費 主に機械装置費・システム構築費
補助率 1/2~2/3
補助上限 1,000万円
事務局HP http://portal.monodukuri-hojo.jp/index.html

 

4.販路開拓を支援する「小規模事業者持続化補助金」

新型コロナ経済対策の目玉であった持続化給付金に名前が似ていることで少し話題にもなった「小規模事業者持続化補助金」ですが、この制度は販路開拓活動を支援するためのものです。対象となる事業者は小規模事業者(例えばサービス業だと常時使用する従業員の数が5人以下の事業者)のみですが、HP制作やカタログ作成、チラシやDM費用なども対象になるので使い勝手は良い制度になります。

項目 要件
対象事業 策定した「経営計画」に基づき、商工会議所の支援を受けながら実施する、地道な販路開拓等(生産性向上)のための取組
対象者 商工会議所の管轄地域内で事業を営んでいる小規模事業者等
主な対象経費 ①機械装置等費、②広報費、③展示会等出展費 他
補助率 2/3~3/4
補助上限 100万円~150万円
事務局HP https://r2.jizokukahojokin.info/corona/

 

5.ITツールの導入を支援する「IT導入補助金」

上記の二つの補助金に比べると比較的最近に創設された制度で、使い勝手の良い補助金が「IT導入補助金」です。こちらの制度は少し特殊で、補助金の申請に辺りサービス提供者がIT導入支援事業者として登録していることが必要になります。上記の二つの補助金制度に比べると、補助金の審査が形式的なものであり、ITツール自体が制度の趣旨に合致しているものであれば、補助金の採択を受けられる可能性が高いと思われます。(ただし、応募の時期によって採択の傾向は異なります。)

項目 要件
対象事業 自社の事業の生産性を向上させるべくITツールを導入する取り組みのうち、ITツールの要件を満たすもの。
対象者 中小企業・小規模事業者等、
主な対象経費 ソフトウエア費、導入関連費、ハードウェアレンタル費
補助率 1/2~2/3
補助上限 450万円
事務局HP https://www.it-hojo.jp/

 

6.コロナ禍からの脱却!話題の「事業再構築補助金」

2021年3月現在で最も話題性の高い補助金である「事業再構築補助金」について説明していきます。この補助金は今年1月に成立した令和2年度第3次補正予算で、1兆1485億円という巨額な予算が割り当てられました。コロナからの脱却に向けての目玉補助金と言えると思います。また、中小企業のみならず、資本金10億円未満(予定)である中堅企業まで対象にしている補助金は非常に珍しいです。また対象経費も非常に幅広く設定されており、主要経費である建物費、設備費、システム購入費がメインとなりますが、関連経費として広告宣伝費やクラウドサービス費なども対象に上げられており、本気度が伺えます。金額も種類により様々ですが、最大1億円が支給される可能性がある緒大型の補助金となります。応募はまだ開始しておらず3月中には開始の予定ですので、詳細な情報はその際に合わせてリリースされることになります。

項目 要件
対象事業 事業再構築指針に沿った新分野展開、業態転換、事業・業種転換等
対象者 中小企業・中堅企業、売上減少要件(任意の3ヵ月で10%以上減少)を満たす企業
主な対象経費 建物費、建物撤去費、設備費、システム購入費、外注費、研修費、広告宣伝費・販売促進費、リース費、クラウドサービス費、専門家経費
補助率 1/2~3/4
補助上限 6,000万円~1億円
事務局HP https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_saikoutiku/index.html

 

7.東京都等自治体が主催する補助金制度

国が主導する制度以外にも自治体が主導する補助金制度も数多くあります。東京であれば東京都が行う制度もありますし、区が行う制度もあります。東京都が行う補助金制度は「助成金事業」という名称になっておりますがいわゆる補助金の一種になります。自治体に事業所を置く会社で無ければ申請の資格はありませんが、種類が多い上に上限金額も大きいものがあります。事業開発、研究開発、製品改良、販路拡大、業態転換、創業等を支援するものがありますので、気になる方は是非チェックしてみて下さい。

公益財団法人東京都中央企業振興公社で実施している助成金の一覧がこちらから確認出来ます。

https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/josei/ichiran/index.html

 

8.補助金制度以外の優遇制度は?

事業計画書を活用する優遇制度として、後は税制優遇や金融支援が受けられる制度があります。補助金の制度に比べるとボリュームとしては軽いものが多く、税額控除や税額減免により明確にメリットが受けられる制度もありますので、是非確認してみて下さい。


事業計画書のススメ②~フレームワーク編~

こんにちは。

税理士の山田です。

 

事業計画のススメ第2回はフレームワークについて説明していきます。事業計画書や企業の戦略を考える上で切って切り離せないのがビジネスフレームワークです。

事業計画書のススメ①~基礎編~はこちらより

 

ビジネスフレームワークとは、意思決定、分析、課題の発見・解決、戦略立案、業務改善、組織マネジメントなどの枠組みのことですが、非常に便利なものです。何もないところから『自社のビジネスの事業内容と今後の戦略、その戦略の根拠を説明してください』と言われても、すぐに回答出来る人は少ないのではないでしょうか。

フレームワークに当てはめて考えることで、自社の事業内容がクリアになると共に、正しい戦略を導く助けとなってくれます。ビジネスフレームワークは上げればキリがないほどたくさんありますが、今回はその中から事業計画を作成する上で役立つ代表的なものに絞って説明していきます。

 

1.まずはフレームワークの王道 SWOT分析

まずはビジネスフレームワークの王道であるSWOT分析について説明していきます。どこかで聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。SWOTとは、「Strengths(強み)」「Weaknesses(弱み)」「Opportunities(機会)」「Threats(脅威)」の頭文字を繋げたものです。これは企業の「内部環境と外部環境」「良い点と悪い点」をマトリクス的に整理することで、今後取るべき戦略を整理するためのものです。図にするか下記のような整理になります。

SWOT分析を進める手順としては、下記の通りです。

①対象と目的を決める

まずは何に対して分析を行うのかの対象を決めます。複数事業がある企業であればどの事業に対して行うのか、もしくは会社全体に対して行うのかを決めます。目的としては社内の改善点を把握するのか、今後の事業戦略を決めるのかなど、目的によって項目が変わってくることもあります。

情報を書き出す

続いて内部環境と外部環境のそれぞれについて、今の状況をひたすら書き出していきます。強みなのか弱みなのか、機会なのか脅威なのか、については後で考えれば良いので、まずは情報を洗いざらい書き出すことが重要です。ホワイトボードなどにSWOT分析の4象限の枠を記載したうえで、情報については付箋に書き出していくのが良いでしょう。まずは情報を書いて各々の思う場所(SWOTのいずれか)に付箋を貼り付けていきます。この作業が一番重要ですので、複数で行う場合には全員が出るものが無くなるまで情報は出し尽くしましょう。

③項目の整理

続いて項目の整理をします。強みなのか弱みなのか、機会なのか脅威なのか、については二面性がありますので意外と当てはめるのが難しいことがあります。例えば、『お客様に合わたサービス』というのは、事業で考えるとコストや工数が掛かってしまい赤字事業になっている可能性がありますが、サービスで考えるとお客様に合わせたサービスをすることでニーズが把握出来るという強みもあります。どの分類に当てはまるかについては、上記①の目的に立ち返ったうえで全員で一緒に考えていきましょう。また、複数人で情報を出していると重複する内容もありますので、そういったものは付箋を重ねてまとめてしまいましょう。

 

ここまでの工程でSWOTの4項目は完成しますが、SWOT分析は次の工程があります。SWOT分析で洗い出された情報を整理したうえで、戦略を考えるSWOT分析というフレームワークになります。

 

2.SWOT分析から戦略を考えるクロスSWOT分析

クロスSWOT分析では、SWOTの4項目を使って、会社又は事業の戦略を考えていきます。SWOTの4象限を今度は縦軸横軸にして新たなマトリクスを構成することで、4分類の戦略を考えます。SWOTの単発で考えると「どのように強みを活かしていくか?」「どのように弱みを克服していくか?あるいは、切り捨てるか?」「どのように機会を捉えていくか?」「どのように脅威を回避していくか?あるいは身を守っていくか」という整理になりますが、クロスSWOTはこの情報を掛け合わせて戦略を考えます。

 

この段階でもSWOT分析の手順①で明確にした目的を改めて意識しましょう。この中で最も重要になるのは、当然なのですが「戦略1」になります。外部環境も内部環境もプラスの状況ですので、競争優位性を発揮できるように攻めの戦略を考えます。「戦略2」は外部環境がマイナスですが内部環境はプラスの状況ですので、脅威を避けるために、ターゲットを変える、提供方式を変えるなど方針転換が必要になると思います。今のコロナ禍の状況等が正にこちらに当てはまると思います。「戦略3」は弱みを改善することで新規の事業や顧客にアプローチ出来るかもしれませんが、今の自社のリソースで行うべきかどうか、などを検討します。「戦略4」については場合によっては撤退を考えますし、撤退が難しい場合には被害を最小限に出来るように戦略を考えます。

 

3.ミクロな環境整理はまずは3C分析から

3C分析はSWOT分析と並ぶ基本的なビジネスフレームワークであり、SWOT分析の情報を集めるうえで非常に重要なフレームワークです。SWOT分析はクロスSWOTに繋げるために良い点と悪い点で分類をしていきますが、その前段階の事実を集めるための工程が3C分析にあたると言えます。3Cとは「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」のことですが、それぞれの視点で主に以下のような情報を整理していきます。


4.自社のポジションを明確にするポジショニングマップ

3Cの中でも「Competitor(競合)」の分析をするうえで、ポジショニングマップは有効です。これは、市場における自社の位置づけを明確にするために作成しますが、差別化戦略を考えるうえで非常に便利です。自社のポジションを明確にすることで、お客様に自社の商品・サービスを選択して貰う理由を把握することが出来ます。

お客様が商品やサービスを選ぶうえで基準になると思われる要素を考え、特に重要である要素で二つの軸を設定し、四象限のマトリクスを作成します。その中に競業他者のポジションと自社のポジションを書き出していきます。全体の状況を踏まえて今後の自社の戦略を検討していきましょう。

例として、美容業界でのポジショニングマップを考えてみました。


 

5.マクロな外部環境分析のPEST分析

SWOT分析の項目の中でも外部環境の情報を整理するうえで有効なのがPEST分析です。PESTとは、「Politics(政治)」「Economy(経済)」「Society(社会)」「Technology(技術)」の頭文字を繋げたものです。外部環境の中でもマクロな視点での分析に優れています。4つの視分野に分けて自社への影響を分析します。特に今の状況だけではなく、今後どうなっていくか、短期、中期、長期の視点で分析してみましょう。


6.マーケティングミックス4P分析

事業としての戦略を考えたうえで実際に市場・顧客にアプローチする上で、4P分析は欠かせません。4Pとは「製品(Product)」「価格(Price)」「プロモーション(Promotion)」「流通(Place)」のことで、この4つの要素からマーケティングの戦略を考えます。4P分析は3C分析の「Competitor(競合)」を考える上でも有効ですし、逆にクロスSWOT分析で事業戦略を考えた後に、マーケティング戦略を考えるうえでも重要な視点となります。

7.最後に

ビジネスフレームワークはここで上げたもの以外にも多数ありますので、取り上げればキリがありません。一つ一つのビジネスフレームワークが完結しているというものより、それぞれのフレームワーク同士が補完し合っている位置づけのものが多いと思います。その中でも3C分析、SWOT分析、4P分析は一番基本となるビジネスフレームワークであり、その中でも事業戦略を考える上では、SWOT分析が中心になってくると思います。

これから事業戦略を立てる段階においてももちろん有効ですが、既に事業を行っている段階においても、改めて今の時点での自社のポジションや強み弱みを明確にして、再度戦略について考え直す機会を作ることも重要であると思います。


事業計画書のススメ①~基礎編~

こんにちは。

税理士の山田です。

 

これから『事業計画のススメ』というテーマで、全4回に渡って事業計画の書き方についてまとめていきたいと思います。2021年はちょうど事業再構築補助金という大型の補助金が注目を受けていますが、計画書を作成するにあたっての参考になりましたら幸いです。第1回は基礎編ということで、事業計画の概要とポイント・理想的な構成についてまとめていきます。

※事業再構築補助金の概要は経産省HPより

 

事業計画書とは一言で言うと『会社の説明書』です。会社は継続して事業を行うことを目的とした組織です。事業を継続するためには利益を生み出さなければなりません。

会社がどのようなターゲットに対してどのような事業を行っており、その事業を今後どのように展開していくのか、どのような価値観で事業を行うのか、どのような売上・利益計画でどのように成長していくのか、様々なことを説明書に記します。

 

1.事業計画書は何のために作成するのか?

事業計画書は様々な目的のために利用します。一般的には銀行からの融資を受けるため、国や自治体からの補助金を受けるため、投資家からの資金調達を受けるために作成することが多いです。

他にも事業計画の用途に制限はありませんので、会社に入社する従業員にどのような会社でどこに向かっているのかを魅力的に伝えるため、新規の事業提携にあたって提携先にどんなリソースがあってどんな事業展開が可能かを伝えるため、M&Aで会社を買い取って貰う際にどのような顧客にどのような展開が出来るかを魅力的に伝えて高く買い取って貰うなど、事業を展開する上で様々な利害関係者に会社の事を魅力的に知ってもらうことが目的であると言えます。

別の言い方をすると、事業計画書は誰かを説得させるために作成するものであり、見る人の気持ちを揺れ動かすほどの説得力のあるものを作り上げなければなりません。

 

2.説得力のある事業計画書のポイントは?

説得力のある計画書とはどのような計画書でしょうか?その計画を見た人がワクワクするもの、安心するもの、信頼できるもの、目的によって様々です。そのためにどのような計画書を作って行けばよいか、ポイントを解説して行きます。

① ヴィジュアル的で専門用語を多用せずに、シンプルで解りやすい内容であること

計画書を提出する相手先によりますが、銀行や投資家、補助金を獲得するために計画書を提出するときに、それを見る方が業界に詳しい方とは限りません。むしろそうであることの方が珍しく、専門用語を多用している計画書は見難いですし、文字だけの資料よりも図を活用してヴィジュアル的な資料が見易いです。

見難い資料というのはそれだけでストレスですので、読み手に取っても良い決断を阻害する可能性がありますので、シンプルで解りやすい内容の計画書を作成することをお勧めします。

② 客観的な数字や根拠に基づいて、実現可能性が高い計画であること

事業計画はともすれば独りよがりな内容になりがちです。如何に素晴らしい内容であってもその内容が実現出来なければ意味はなく、実現可能性が高いかどうかの判断は非常に難しいものです。

では、どのような事業計画書であれば実現可能性が高いと感じるか、それは客観的な事実や数字に基づいた内容であることです。

例えば単に『ターゲットである多数の企業にアプローチが出来る』という内容よりも『ターゲットである不動産業界にメールマガジンを配信しているA社との提携が決まっており、10万社の配信先に対して毎週アプローチが可能である。このメールマガジンの開封率は40%と非常に高い開封率をほこり、クリック率を2%と考えても800社にアプローチが可能である。さらに・・・・』と説明が続くと一段と説得力が増し、実現可能性が高いと感じて貰えます。

③ 市場から見てニーズがあり、競合他社の状況等から見て差別化が明確であること

その事業が本当に市場から見てニーズがあるのか、また同じようなことをやっている競合他社はいないのか、という点は非常に重要です。

市場のニーズがあるかどうかについては、上記②のように客観的な資料に基づいて説明が必要です。経済紙やインターネット、シンクタンク等の市場調査の情報を引用して、ニーズを明確にすると良いです。

また、どれだけニーズがある事業であっても競合他社が既にたくさんいる場合や、大手が参入しやすい事業の場合には限られたリソースである中小企業は太刀打ちが出来ませんから、どのような差別化がされているのかという点は中小企業にとって最も重要な戦略であると言えます。差別化の戦略によっていわゆるブルーオーシャンを目指しましょう。

④ 自社の強み、社長の知識・経験・人脈・熱意から一貫性がある事業か

なぜその事業を行おうと思ったのか。これはほぼ100%社長の過去の経験から来ています。どのような経験・背景があり、その事業をすることに至ったのか。これがそのまま事業の強みになります。

また、一つの事業を成功させるというのは並大抵の努力では実現することは困難であり、その原動力はどこから来るのか、どのような価値観でその事業を行うのか、という根源の部分というのは意外と重要であったりします。これがいわゆる経営理念にも繋がりますが、なぜその事業を行うのかという熱い想いがこもった計画書というのは魅力的に映るものです。

また、説得力がある計画書とは一貫性があるものであり、ストーリーが見える計画書を作りましょう。

 

3.事業計画書の主な構成は?

それでは最後に事業計画書の主な構成を整理して行きます。

① 会社概要

まずは自己紹介からです。社長の経歴や会社概要から入り、どのような経緯がありどのような事業を行っているのか概要をまとめていきましょう。この部分に事業のコンセプトが入ると非常に良いと思います。なぜその事業を行うのか、その事業により何を実現したいのか、社会に対してどのような価値を提供するのか、いわゆる経営理念にあたる部分だと思いますが、自社の事業に掛ける想いを記しましょう。ここを過去のエピソードも交えて説明が出来ると一貫性のある計画書になると思います。

② 事業の内容・特徴・ターゲット

続いて事業の内容をより詳細に記していきます。事業というのは単純なものではなく、例えば『Aという商品を作って売っている』としてもただ商品を売ることが事業ではありません。『弊社では、Aという商品を製造しており、この商品はこういう特徴がある、これを〇〇のような人たちに購入することで、〇〇のような使い方が出来て、〇〇に価値を提供出来る』というように記載をします。事業はお客様がいなければ成立しません。誰に(ターゲットはどういう方か?)、何を(どういう特徴の商品・サービスか?)、どのように(どのような使い方・利用をして貰うか?)、提供することでどんな価値が生まれるのか、という部分を明確にしていきましょう。

③ 競合企業との比較、差別化

事業を行うにあたってどれだけ魅力的な事業で合っても同じことをたくさんの企業が行っている場合には、中々事業としての成功は難しいです。いわゆるブルーオーシャンを目指して競合企業との比較、差別化をしましょう。例えばたくさんある美容院であってもターゲットとコンセプトを変えることで事業は全く異なるものになります。例えば『南国バリをイメージした家具を取りそろえ、お香を焚いて空間を演出、ココナッツの香りがするオイルで顔をマッサージしてリラックスして貰う』等、サービスの中に特長を入れていることで差別化が出来ます。ただし、これは市場にもよるのでそもそも人口が少ない市場でコンセプトを絞り過ぎてしまうと、自らお客様を減らしてしまうことになるので、注意しましょう。

④ 社会の需要・市場分析

今の状況に合わせた社会のニーズや市場分析を入れることで説得力のある計画書が出来上がります。今の状況であればコロナの影響はどうであるか、ということは必ず言及しましょう。場合によって、コロナの影響で『こういうニーズが生まれている』ということでプラスに転じることが出来るとベターです。また、市場の情報はインターネットで調べるとある程度の情報は取ることが出来ません。出典元を明らかにしたうえで引用したグラフなどを載せるようにしましょう。その際には、よく言われますがミクロとマクロ両方の支店で市場を分析するようにしましょう。

⑤ 事業体制・生産方法・仕入先など

会社としてどのような事業体制でこの事業が実現出来るのかを説明します。体制については内部体制に限らず外部体制も含めて整理しましょう。関係者が多いようであれば、いわゆるビジネス俯瞰図と言われる形でヴィジュアル的に表現た方が良いと思います。生産方法や仕入先等、どのように商品の調達をするのか、なぜそれが実現可能なのかについて説明することで説得力のある計画書に仕上がります。

⑥ 販売方法・販売戦略

ここは非常に重要な内容です。どのように販売していくのか、どれだけ販売していくのか、という手段を詳細に説明しましょう。『地域の〇〇に販売をしていく』だけでは説得力がありません。

『お店のオープンと同時に周辺〇〇世帯にポスティングを入れて、朝は駅前でチラシも配ります。オープン記念ということで初月の利用料は大幅割引をし、通常料金の5割で提供しまずは来店頂き良さを知ってもらいます。さらにスタンプカードを作り、リピートして来店頂くための仕組みを作ります』というように戦略を事細かに説明して行きましょう。そのうえでどの程度が反応して頂き、どの程度がリピートに繋がるか実際の数字で仮説を立てて売上の計画を立てていきましょう。

⑦ 事業スケジュール・損益計画

今後3年間~5年間でどのような事業展開をしていくのか将来の展望をまとめていきましょう。3年目には2店舗目をオープン、5年目にはグッドデザイン賞の受賞を目指す、Twitterやユーチューブ等のSNSを活用してフォロワーを増やして行き、3年目には10万フォロワー突破を目指す、等具体性のある計画書はやはり魅力的に映ります。

PDCAサイクルは時代遅れという風潮も出てきていますが、クリエイティブな事業ですとか発想力が問われる事業についてはそういう側面もあると思いますが、中小企業が展開するスモールビジネスに限ればやはりPDCAサイクルは有効であると考えています。また、計画書という意味ですと不言実行では相手には伝わらず、やはり有言実行で初めて相手に覚悟が伝わります。将来のアクションプランを記したうえで連動する形で損益の計画を描いていくと魅力的な計画書に仕上がっていくのではないかと考えます。

 

4.最後に

事業計画の作り方に唯一の正解はありません。事業の内容やコンセプトによっても異なってくるでしょうし、敢えて型を少し崩した計画書というのも魅力的であるのではないかと思います。

特に投資家からの資金調達で個人投資家であれば、事業というよりも社長個人に投資をしているというケースも多いと感じており、自分らしさを出した計画書に仕上げることも重要ではないかと思います。重なりますが、共通する事業計画の目的は『誰かを説得すること』です。独りよがりな計画書にはせずに、どうすれば相手に響くか、という視点で計画書を作り上げましょう。


新型コロナ関連の財務支援策一覧!【2020年5月10日時点】

こんにちは。

税理士の山田と申します。

 

2020年5月10日時点での財務支援策の一覧を出来る限りシンプルにまとめました。お役立て頂ければ幸いです。

 

ご覧頂くにあたって下記の注意点をご確認ください。

※ この表は制度の正確性を担保するものではなく、あくまで国の支援策の概要を把握するために、一覧にまとめたものです。

※ 2020年5月10日時点の情報をまとめたものですので、今後に制度変更がされる可能性があります。

※ 優先度はAが優先度高い、Cが優先度低い。難易度はAが難易度高い、Cが難易度低い。という意味です。こちらは完全な主観での評価になります。

 

新型コロナ関連 財務支援策一覧20200510(FROMDESIGN)

 

 

①持続化給付金

優先度                A

難易度                C

種類                    助成

受付                    中小企業庁 電子申請のみ

受付期間            令和2年5月1日(金)から令和3年1月15日(金)まで

対象者                資本金10億円未満の法人 個人事業主

要件                    2020年1月-12月のいずれかの期間で

                            単月売上が前年比50%以下となる(各種特例あり)

金額・優遇      法人200万円、個人100万円を上限で支給

参考URL          https://www.jizokuka-kyufu.jp/

備考                    要件については各種特例があるので、『申請要領』を確認

 

②東京都感染拡大防止協力金

優先度                A

難易度                C

種類                    助成

受付                    東京都電子・郵送・持参

受付期間            令和2年4月22日(水)から同年6月15日(月)まで

対象者                中小企業及び個人事業主など

要件                    令和2年4月16日から令和2年5月6日までの

                            全ての期間において、休業等を行うこと

金額・優遇      50万円~100万円を支給

参考URL          https://www.tokyo-kyugyo.com/

備考                    休業等の要請がされている業種のみが申請可

                            二次予算についても審議中で追加支給可能性有

 

③特別家賃支援給付金(仮)

優先度                A

難易度                C

種類                    助成

受付                    未定

受付期間            未定

対象者                中小企業及び個人事業主など(予定)

要件                    3カ月間の売上が前年比で3割以上減少、

                            又は、単月売上が前年比で50%以上減少

金額・優遇     半年分家賃の3分の2を助成(予定)

参考URL         未定

備考                第二次補正予算で審議中、詳細は未定

                           法人は月額50万円上限

                          個人事業主は月額25万円上限

 

④新型コロナウイルス感染症特別貸付

優先度                B

難易度                B

種類                    借入

受付                    日本政策金融公庫 受付のみ電子あり

受付期間            当面

対象者                企業全般

要件                    最近1ヵ月の売上高が前年又は前々年の同期と

                            比較して5%以上減少(比較時期は特例あり)

金額・優遇      無担保6,000万円限度で融資

参考URL          https://www.jfc.go.jp/n/finance/saftynet/covid_19.html

備考                     融資可否は審査次第 中小企業事業は上限3億円

                            返済期間 15年以内(うち据置期間5年以内)

                            金利は1.36%ベースで当初3年間はほぼ無利子

 

⑤マル経融資(小規模事業者経営改善資金)

優先度                B

難易度                B

種類                    借入

受付                    商工会・商工会議所経由で日本政策金融公庫

受付期間            当面

対象者                小規模事業者

要件                    最近1ヵ月の売上高が前年又は前々年の同期と

                            比較して5%以上減少(比較時期は特例あり)

金額・優遇      無担保無保証1,000万円限度で融資

参考URL          https://www.jfc.go.jp/n/finance/saftynet/covid_19.html

備考                    融資可否は審査次第

                            金利は1.21%ベースで当初3年間は0.31%

 

⑥経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)

優先度                B

難易度                B

種類                    借入

受付                    日本政策金融公庫 受付のみ電子あり

受付期間            当面

対象者                企業全般

要件                    コロナの影響を受けていること

金額・優遇      4,800万円限度で融資

参考URL          https://www.jfc.go.jp/n/finance/saftynet/covid_19.html

備考                    融資可否は審査次第 金利は2.16%程度

                            実質的にほぼ要件無で申請可

 

⑦セーフティーネット4号

優先度                B

難易度                A

種類                    借入

受付                    自治体で認定後に金融機関経由で保証協会審査

受付期間            当面

対象者                同一区で1年間以上継続して事業を行う中小企業者

要件                    最近1か月間の売上高等が前年同月比20%以上減少、

                            かつ、今後3か月間の売上高等が前年同期比20%以上減少する見込

金額・優遇      無担保無保証で2000万円限度で融資

参考URL          https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/sefu_net_gaiyou.html

備考                    審査は保証協会と金融機関で審査

                            5/1より金融機関のワンストップ手続き開始

                            一定の場合には、無利子・保証料もゼロ又は1/2

 

⑧セーフティーネット5号

優先度                B

難易度                A

種類                    借入

受付                    自治体で認定後に金融機関経由で保証協会審査

受付期間            当面

対象者                5/1から全業種が対象

要件                    最近3か月間の売上高等が前年同期比で5%以上減少。

金額・優遇      無担保無保証で2000万円限度で融資

参考URL          https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/sefu_net_gaiyou.htm

備考                    審査は保証協会と金融機関で審査

                            5/1より金融機関のワンストップ手続き開始

                            一定の場合には、無利子・保証料もゼロ又は1/2

 

⑨自治体ごとのコロナ対策融資(墨田区の例)

優先度                B

難易度                A

種類                    借入

受付                    自治体で認定後に金融機関経由で保証協会審査

受付期間            令和2年3月4日から6月30日まで

対象者                同一区で1年間以上継続して事業を行う中小企業者

要件                    最近1か月の売上高が前年同月比で5%以上減少、かつ、

                            最近1か月と今後2か月を含む売上高の見込みが5%以上減少する見込

金額・優遇      無担保無保証で1000万円限度で融資

参考URL          https://www.city.sumida.lg.jp/smph/sangyo_matidukuri/sangyo/yuusi/ta60100020.html

備考                    審査は保証協会と金融機関で審査

                            金利は自己負担0.2%、保証料は全額補助

 

⑩特例納税猶予(国税)

優先度                C

難易度                C

種類                    猶予

受付                    国税庁

受付期間            令和2年2月1日から令和3年1月31日まで

対象者                企業全般

要件                    令和2年2月以降の任意の1か月以上で、

                            売上が前期比おおむね20%以上減少、

                            かつ、国税を一時に納付する資金がないこと

金額・優遇      納付期限から1年間は延滞無

参考URL          https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/nofu_konnan.htm

備考                    原則は納期限までに手続きだが、

                            6月30日までは納期限後であっても申請可

 

⑪特例納税猶予(社会保険料)

優先度                C

難易度                C

種類                    猶予

受付                    日本年金機構

受付期間            令和2年2月1日から令和3年1月31日まで

対象者                企業全般

要件                    令和2年2月以降の任意の1か月以上で、

                            売上が前期比おおむね20%以上減少、

                            かつ、保険料を一時に納付する資金がないこと

金額・優遇      納付期限から1年間は延滞無

参考URL          https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2020/20200501.html

備考                    原則は指定期限(納期限の25日後)までに手続きだが、

                            6月30日までは指定期限後であっても申請可


中小企業向けの即時償却+αの優遇制度がスタート!!

こんにちは。

 

税理士の山田です。

 

中小・小規模事業者向けに「攻めの投資」を支援する税制措置が出来たのをご存知でしょうか。

 

一定の手続きを踏んで取得した設備に対して、購入年度に100%即時償却が出来ます。

 

さらに、一定の地域・業種については、固定資産税を3年間半分に減免します。

 

そして対象となる設備は、建物付属設備、工具器具備品、機械装置と幅広いです。

 

 

手続きが非常に煩雑なのですが、準備がちゃんと出来ていれば、要件自体は決して厳しくありません。

 

下記のポイントを抑えて確実に制度の適用を受けられるようにしてください。

 

 1、優遇制度を受けるための手続きの流れは?

 

要件はA類型・B類型の2パターンあり、それぞれ手続きの流れが異なります。

 

【A類型 生産性向上設備】

 

① まずは生産性が旧モデル比年平均1%以上改善する設備であることを証明

⇒ 設備の種類ごとに管轄の工業会にて証明書を発行して貰う。

 

② 続いて経営強化法の認定

⇒ 「経営力向上計画」を策定し、各事業分野の担当省庁から認定を受ける。

 

【B類型 収益強化設備】

 

① まずは投資利益率が年平均5%以上の投資計画に係る設備の認定

⇒ 経済産業局による投資利益率に関する確認書を取得

 

② 続いて経営強化法の認定

⇒ 「経営力向上計画」を策定し、各事業分野の担当省庁から認定を受ける。

 

A類型①の手続きはメーカー経由で手続きを行いますが、それ以外の手続きは事業者自身で行う必要があります。

 

つまり、A類型の手続きの方が事業者の負担は軽いですので、証明書の発行が可能かまずはメーカーに問い合わせ確認しましょう。

 

また、B類型の手続きは設備の取得前に完了している必要があります。1日でも送れますと優遇制度を受けられませんので注意してください。

 

手続きの詳細は下記の中小企業庁のサイトをご確認ください。

 

http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/2017/170315kyoka.htm

 

2 対象となる設備は?

 

対象設備は非常に幅広いのですが、設備の種類ごとに取得価額の要件があります。また、A類型の場合には先端設備であるために販売開始時期の要件もありますので合わせてまとめてみます。

 

設備の種類 取得価額の要件 販売開始時期の要件
機械及び装置 160万以上 10年以内
工具 30万以上 5年以内
器具備品 30万以上 6年以内
建物付属設備 60万円以上 14年以内
ソフトウェア 70万円以上 5年以内

 

他にも以下の4点を抑える必要がありますので注意してください。

□ 生産等設備であること(事務用器具、管理部門、寄宿舎の設備は対象外)

□ 国内への投資であること(国外資産は対象外)

□ 新品の資産であること(中古資産は対象外)

□ 自社で使用する資産であること(貸付用資産は対象外)

 

3 指定事業にあてはまるか?

 

事業内容が以下の指定事業のいずれかにあてはまる必要がありますので、注意しましょう。

 

製造業、建設業、農業、林業、漁業、水産養殖業、鉱業、卸売業、道路貨物運送業、倉庫業、港湾運送業、ガス業、小売業、料理店業その他の飲食店業(料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブその他これらに類する事業を除く)、一般旅客自動車運送業、海洋運輸業及び沿海運輸業、内航船舶貸渡業、旅行業、こん包業、郵便業、損害保険代理業、情報通信業、駐車場業、学術研究、専門・技術サービス業、宿泊業、洗濯・理容・美容・浴場業、その他の生活関連サービス業、映画業、教育・学習支援業、医療、福祉業、協同組合、サービス業

※性風俗関連特殊営業に該当するものは除く

 

ほとんどの業種が含まれてはいるのですが、電気業は含まれていませんので、いわゆる全量売買のための太陽光設備は対象になりません。

 

例えば自社の工場で利用する場合には、製造業の区分となりますので、設備自体ではなく、事業の内容に応じて判定を行います。

 

4 どのような優遇が受けられるか?

 

上記の手続き・要件を踏まえたうえで、設備を購入した企業は以下のいずれかの制度が受けられます。

 

① 100%即時償却(購入金額の全額を初年度に費用処理)

② 7~10%の税額控除(購入金額の7~10%を法人税額等から控除)

 

どちらを選択するにしても大きなメリットがある制度です。是非、事前に検討しておきましょう。

 

 

(参考)取得価額の判定、機械装置とは?

 

本制度の検討を行うにあたり、取得価額の判定は非常に難しい要素になります。

 

機械装置ですと160万円以上、器具備品ですと30万円以上の設備が対象ですが、そもそも設備が機械装置に該当するのか、器具備品に該当するのかは難しい判断となります。

 

機械装置の定義は「外力に抵抗し得る物体の結合からなり、一定の相対運動をなし、外部から与えられたエネルギーを有用な仕事に変形するもので、かつ、複数のものが設備を形成して、設備の一部としてそれぞれのものがその機能を果たすものをいう」となっております。

 

(平成19年10月30日の不服審判所の裁決を参照)

http://www.kfs.go.jp/service/JP/74/16/index.html

 

上記の定義にあてはまらないものは、一般的に『器具備品』に該当する可能性が高いです。

 

ですが、『複数のものが設備を形成して』という部分については例外の設備もあり、クレーン、ブルドーザー、のように単一の設備で機械装置に該当するものもあります。

 

また、逆に機械装置に該当した場合には、定義に『複数のものが設備を形成して』とありますので、購入単位とは関係なく、複数のものを合算して取得価額の判定が出来ることもあります。

 

今までは税務署も設備の区分について、納税者の判断を覆すことは多くありませんでしたが、本制度の適用を考えますと設備の区分を慎重に検討する必要があります。


減税制度で投資家を集めるエンジェル税制とは?

こんにちは。

税理士の山田です。

 

エンジェル税制という制度をご存知でしょうか。

 

これは、新規事業を行う中小企業が投資家より出資を集めるための制度で、

この制度を利用すると投資家は中小企業への投資によって減税を受けることができます。

効果としてはそこまでの影響額ではありませんが、企業版のふるさと納税に近いイメージです。

 

エンジェル税制の適用を受けるためには、投資を受ける側の中小企業が

経済産業省に確認申請をし、エンジェル税制の対象企業として確認を受ける必要があります。

 

※経済産業省 エンジェル税制のご案内

http://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/angel/

 

実は今年に入って、ある会社のエンジェル税制の申請のお手伝いをさせて頂きました。

この制度は実はまだ全然活用がされておらず、年間の利用企業数が10数社程しかありません。

 

それでは一体どんな制度なのでしょうか。

制度の内容を簡単にまとめてみます。

 

【エンジェル税制の優遇措置とは?】

この制度を利用できるエンジェル投資家は次のいずれかの優遇を受けられます。

① 『投資額-2,000円』をその年の確定申告で所得から控除できる(寄付金控除、上限あり)

② 投資額の全額をその年の他の株式を売却したことによる譲渡益から控除できる

※ ただし、①の制度は設立から3年未満の会社、②は設立から10年未満の会社への投資が対象です。

※ 一般的には①の制度を利用した方が有利になる方が多いです。

 

【減税制度となる企業の要件は?】

① 創業から3年未満または10年未満の会社であること(年数は制度による)

② 会社の設立経過年数に応じた一定の要件

新事業のために一定の人員やコストを要しているか、営業キャッシュフローが赤字か 等

※ ただし、新事業とは必ずしも研究を擁するような事業でなくても構いません。

③ 特定の投資家グループからの出資が合計の5/6を超えていないこと。

④ 大会社又はその子会社ではないこと、未上場会社であること、風俗営業ではないこと

 

【減税制度となる投資家の要件は?】

① 金銭の払い込みにより株式を取得しているか

② 対象企業の株式保有割合の順位で上位3位以内に入らないこと

※ ②の要件は正確にはより細かい要件がありますが、煩雑であるため解りやすいように説明を簡略化しています。

 

具体的には以下のご案内にエンジェル税制の詳細が記載されています。

http://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/angel/pdf/angeltax_panf1.pdf

 

 

細かい要件はありますが、実は複数の投資家から資金を集めている会社であれば、

上記の要件はある程度当てはまっている可能性が高いです。

 

大企業の子会社はこの制度の利用が出来ませんが、中小企業においても

最近は投資型のクラウドファンディング等、資本が自由化されて行っており、

この制度の利用が出来るケースは増えて言っているのではないかと思います。

 

利用出来る制度は極力利用して、経営を有利に進めていきましょう!

当事務所では税金に限らず、経営のお手伝いをしています!