Category Archives: その他税務

超速報!令和6年度(2024年度)税制改正大綱を徹底解説!

 

こんにちは。

税理士の山田です。

 

今回は令和5年12月14日に公表された『令和6年度税制改正大綱』の中から主要な項目を抜粋して解説をします。公表されたばかりの情報ですので、スピードと解り易さを重視して解説しております。読みやすさを重視しており、正確性を担保するものではございませんので、予めご了承ください。内容に誤り等がございましたら随時訂正して参ります。

 

また、税制改正大綱は税制改正の骨組となるものであり、おおむねこの通りの改正がされる予定ですが、あくまで骨組みである点はご了承ください。

 

令和6年度税制改正解説テキストの販売を決定!!

お陰様で、本記事は大変好評頂いておりますが、令和5年度に続き令和6年度でもKACHIELさんで税制改正解説テキストを販売することになりました。 本記事以上に気合を入れて作成しますので、購入を検討頂けると幸いです。後悔させない内容に仕上げるように尽力します。12/22までのご購入で早割が効きますので、是非是非ご検討下さい。

テキストの特徴は下記の通りです。

■ 細かい論点なども含めて徹底的に解説した大ボリューム!(昨年度はワード100ページ以上)

■ 12月中にリリースされる追加情報(各省庁の情報など)を追加し、さらにレベルアップ

■ 出来る限り事例を交えて解り易く説明

■ テキストの内容を説明した動画付

テキストの詳細と申込はこちらより  

 

 

Ⅰ 個人所得課税

1.所得税・個人住民税の定額減税(12.18に一部記載を訂正

令和6年分の所得税と住民税について、定額による特別控除を実施する。

 

【制度概要】

① 対象者の要件

居住者であり令和6年分の所得税(住民税)の合計所得金額が1805万円以下(給与収入の場合には2000万円以下)である者(大綱を読む限り、住民税は令和6年分の住民税の合計所得金額とあるため、所得税ベースで言う令和5年分の所得で判定

 

② 特別控除の額

(所得税)

 本人分 3万円 + (同一生計配偶者扶養親族)の人数 × 3万円

(住民税)

 本人分 1万円 + (控除対象配偶者扶養親族)の人数 × 1万円

 

※ 人数のカウントは全て居住者に限定

※ 言葉の定義は下記の通り

同一生計配偶者:生計を一にする配偶者で合計所得金額が48 万円以下(青色・白色の事業専従者に該当しないもの)

扶養親族:生計を一にする親族で合計所得金額が48 万円以下(青色・白色の事業専従者に該当しないもの)

控除対象配偶者:同一生計配偶者に該当し、納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下のケース

※ 住民税については、対象が控除対象配偶者に限定されているが、居住者であって控除対象配偶者を除く同一生計配偶者である場合については、令和7年度分の住民税額から1万円を控除するため、結論としては所得税と同様に、同一生計配偶者に該当すれば1万円の控除はされることになる。

 

【ケース1 給与所得者に係る特別控除の額の控除】

① 毎月の給与からの所得税額の控除

■ 令和6年6月以後最初に支払いを受ける給与等(賞与含む)につき源泉徴収をされる所得税額から特別控除の額を控除する。

■ 控除しきれない控除の額がある場合には、それ以降に支払う給与等につき源泉徴収をされる所得税額から順次控除をしていく。

■ 毎月の源泉徴収をされる所得税額から控除する場合には、配偶者の情報は「源泉控除対象配偶者」でカウントをする。(「源泉控除対象配偶者」とは、同一生計配偶者に該当し、納税者本人の合計所得金額が900万円以下のケース)

⇒ これは、現時点での「扶養控除等申告書」の様式でカウントできる情報が「源泉控除対象配偶者」に限られてしまうため。

■ 扶養親族に異動が生じたことにより特別控除の額が変わるときは、年末調整により調整する。

■ 給与明細には、特別控除の額を記載する。

 

② 年末調整での所得税額の控除

■ 令和6年分の年末調整の際には、年税額から特別控除の額を控除する。

⇒ 年末調整で再度計算をして差額があれば精算される。つまり、合計所得金額の正しい計算はこの時点で行うことになると考えらえる

■ 源泉徴収票の摘要の欄に控除した額等を記載する。

 

③ 個人住民税の控除

■ 特別徴収義務者は、令和6年6月に支払う給与からの特別徴収を行わない。

■ 令和6年分の個人住民税の額から特別控除の額を控除した金額を11分割し(端数調整あり)、令和6年7月~令和7年5月のそれぞれの給与から毎月徴収する。

■ 上記の計算がされた住民税額が各自治体から通知されてくる。

■ 上記の通り、居住者であって控除対象配偶者を除く同一生計配偶者である場合については、令和7年度分の住民税額から1万円を控除

 

※所得税の控除イメージ

 

※住民税の控除イメージ

出典:総務省「令和6年度地方税制改正(案)について」

 

【ケース2 公的年金等の受給者に係る特別控除の額の控除】

■ 令和6年6月以降に支払いを受ける公的年金等につき源泉徴収をされる所得税額から特別控除の額を順次控除していく。(考え方はケース1の給与と同様)

■ 公的年金等の受給者で、扶養親族に異動が生じたことにより特別控除の額が変わるときは、令和6年分の確定申告により調整する。

■ 公的年金等の受給者については、住民税額からの控除は所得税と同様の考え方。

  

【ケース3 事業所得者等に係る特別控除の額の控除】

■ 第1期分予定納税額(7月)から本人分に係る特別控除の額を控除する。

■ 第1期分予定納税額から控除しきれない部分の金額は、第2期分予定納税額(11月)から控除する。

■ 予定納税額の減額の承認の申請をすることで、同一生計配偶者等に係る特別控除の額についても控除を受けることができる。

■ 令和6年分の期限の延期(令和6年分のみ)

項目

現行

延期

第1期分予定納税額の納付期限

7月31日

9月30日

予定納税額の減額の承認の申請の期限

7月15日

7月31日

■ 最終的には確定申告で所得税額から特別控除の額を控除して精算する。控除対象は住宅ローン控除後の所得税額からの控除。(控除しきれない場合には、交付金等で調整がされると思われる)

 

【ケース4 住民税の普通徴収の場合】

■ 第1期分の納付額から特別控除の額を控除し、控除しきれない場合には第2期分以降の納付額から順次控除する

 

【実務上のポイントと気になる点】

■ 特別控除の順番は下記の通り

① まずは6月以降の給与又は年金から順次控除(配偶者の人数カウントは暫定的

② その後に給与の場合は年末調整で計算をして差額があれば調整

③ 最後に確定申告で計算をして差額があれば再度調整

■ 合計所得金額の算定が年の途中では困難であるため年末調整や確定申告で判定をして超えることになる場合には、特別控除の額相当額の返還がされる形になると思われる

■ 大綱の記載では、「給与等の支払者が同一生計配偶者等を把握するための措置を講ずる」との記載がある。現行での「扶養控除等申告書」では、「源泉控除対象配偶者」の記載項目しかないため、「同一生計配偶者」を把握するために(詳細は続報で確認

■ 6月以降に転職で入社した人で控除していない特別控除の額があった場合の取扱いが不明(詳細は続報で確認

 

出典:「令和5年10月26日 政府与党政策懇談会資料」(首相官邸ホームページ)

 

 

2.ストックオプション税制の要件緩和

権利行使時に経済的利益が非課税となる税制適格ストックオプションの要件が、次の通り緩和される。

 

【改正内容】

①保管委託要件の撤廃

■ 権利行使で取得した株式を証券会社等に保管委託することが要件であったが、撤廃される(ただし、譲渡制限株式で発行会社自身が株式管理をすることが要件)

②年間の権利行使価額の限度額の引き上げ

項目

現行

改正

設立から5年未満の株式会社

1200万円

2400万円

設立以後5年以上20年未満の会社で、以下のいずれかに該当する会社・未上場の会社

・上場後5年未満の会社

1200万円

3600万円

 

③社外高度人材である特定従事者がストックオプション税制の適用を受けるための要件を緩和

■ 認定対象企業の要件のうち、ベンチャーキャピタルからの出資を受けた時点での要件(資本金5講演未満かつ従業員数900人以下)を撤廃する

■ 社外高度人材の要件のうち、上場企業役員の経験については3年以上の実務要件を1年以上に緩和し、それ以外の専門家については、実務要件を廃止する

■ 社外高度人材の要件に一定のもの(教授、一定の実務経験がある未上場企業役員・上場企業の重要な使用人、など)を追加する。

 

※現行の取扱い(出典:経済産業省HP)

https://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/stock_option/sogaiyou3.pdf

 

【実務上のポイントと気になる点】

■ 改正内容①により未上場の状態での権利行使であっても税制適格ストックオプションが適用しやすくなり、活用の幅が広がる

 

 

3.子育て支援に関する政策税制(住宅ローン控除等)

子育て世帯に対する支援策として、住宅ローン控除と住宅リフォーム税制について一定の拡充を行う。令和6年度のみの暫定措置で、令和7年度以降については、次年度の税制改正にて検討を行う。

 

【子育て世帯とは】

以下のいずれかに該当する者=「子育て特例対象個人」

・ 自分の年齢が40歳未満で、かつ、配偶者を有する者

・ 自分の年齢が40歳以上で、かつ、40歳未満の配偶者を有する者

・ 年齢19歳未満の扶養親族を有する者

 

【住宅ローン控除の拡充】

① 子育て特例対象個人が、認定住宅等の新築等をして居住の用に供した場合の、借入限度額は次の通りとする。(控除率は0.7%)

住宅の区分

借入限度額(現行)

借入限度額(改正)

認定住宅

4,500万円

5,000万円

ZEH水準省エネ住

3,500万円

4,500万円

省エネ基準適合住宅

3,000万円

4,000万円

 

② 令和5年末までに建築確認を受けた認定住宅等の新築等については、床面積要件が緩和(通常は50㎡以上の床面積要件が、合計所得金額1,000万円以下に限り40㎡以上に緩和)されているが、これを令和6年末まで延長

③ 子育て特例対象個人である震災特例法の住宅被災者が、認定住宅等の新築等をして居住の用に供した場合の、借入限度額は次の通りとする。(控除率は0.9%)

住宅の区分

借入限度額(現行)

借入限度額(改正)

認定住宅等

4,500万円

5,000万円

 

出典:国土交通省「令和6年度国土交通省税制改正概要」

 

【住宅リフォーム税制】

子育て特例対象個人が、所有する居住用家屋について一定の子育て対応改修工事をして、令和6年4月~12月までに居住した場合、その工事に係る標準的な工事費用相当額(250万円を限度)の10%をその年分の所得税額から控除できる。

 

 

  

Ⅱ 資産課税

1.住宅資金贈与の非課税措置延長

以下の住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置等について、3年間延長する。

出典:国土交通省「令和6年度国土交通省税制改正概要」

 

 

2.法人版事業承継税制の特例承継計画の提出期限延長

非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予の特例制度(法人版事業承継税制)について、現行では2024年3月末までである特例承継計画の提出期限を、2026年3月末まで延長する。(適用期限は令和9年12月末のまま)

 

 

 

Ⅲ 法人課税

1.賃上促進税制(大企業・中堅企業向け)

大企業・中堅企業向けの人材促進税制について、次の通り見直しをする。(適用期間:令和6年4月1日~令和9年3月31日)

 

【改正内容】

① 大企業向け控除率の改正

要件の内容

現行

改正

控除率差

トリガー

控除率

トリガー

控除率

【ベース部分】

継続雇用者給与等支給額の増加割合

3%以上

15% 3%以上

10%

△5%

4%以上

25% 4%以上 15% △10%

5%以上

20%

△5%

7%以上 25%

±0%

【上乗せ①】(※1)

教育訓練費の増加割合

20%以上

+5% 10%以上 +5%

±0%

【上乗せ②】(※2)

女性子育て支援

+5%

+5%

最大控除率

30% 35%

+5%

※1 上乗せ①の要件で、教育訓練費の額が雇用者給与等支給額の0.05%以上であることが要件に追加

※2 「プラチナくるみん認定(優良な子育てサポート企業の認定)」又は「プラチナえるぼし認定(優良な女性の活躍推進企業の認定)」を受けている場合

 

②中堅企業向け控除率の改正(大企業向けとの違い部分のみ)

■ 中堅企業は、「中小企業以外の企業」で「従業員数が2000人以下の企業」(その会社の子会社を含むグループ全体で従業員数が1万人を超える場合を除く)

■ ベース部分の控除率は、トリガー(継続雇用者給与等支給額の増加割合)4%以上になると、MAXの25%となる(大企業でいうトリガー7%以上の控除率)

■ 女性子育て支援上乗せ措置に「3段階目のえるぼし認定を受けている企業」を追加

 

③ マルチステークホルダー方針を公表しなければならない企業の範囲に従業員数2,000人超の企業を追加

現行

改正

資本金が10億円以上かつ従業員数が1,000人以上の企業のみ 従業員数2,000人を超える企業が追加

 

 

2.賃上促進税制(中小企業)

中小企業向けの人材促進税制について、次の通り見直しをする。(適用期間:令和6年4月1日~令和9年3月31日)

 

【改正内容】

① 控除率の改正

要件の内容

現行

改正

控除率差

トリガー 控除率 トリガー

控除率

【ベース部分】

全雇用者給与等支給額の増加割合

1.5%以上

15%

変更なし

±0%

2.5%以上

30%

±0%

【上乗せ①】(※1)

教育訓練費の増加割合

10%以上

+10% 5%以上 +10%

±0%

【上乗せ②】(※2)

女性子育て支援

+5%

+5%

最大控除率

40%

45%

+5%

※1 上乗せ①の要件で、教育訓練費の額が雇用者給与等支給額の0.05%以上であることが要件に追加

※2 以下のいずれかの認定を受けてる場合

・「プラチナくるみん認定(優良な子育てサポート企業の認定)」

・「プラチナえるぼし認定(優良な女性の活躍推進企業の認定)」

・「くるみん認定」又は「2段階目以上のえるぼし認定」

 

② 法人税額から控除がしきれない控除額があるときは、5年間の繰越が出来る制度を追加する。

 

【実務上のポイントと気になる点】

■ 5年間の繰越が出来るようになったために、赤字である場合や控除上限(法人税額の20%)に抵触しても、最大限の控除が取れるように申告をする必要がある

■ 従前では通常の税額控除率で計算して控除上限に抵触してしまえば、上乗せ措置を検討する必要もなかったが、今後は繰越が可能であるため、可能な範囲で上乗せ措置を適用するべき

 

 

3.特定税額控除不適用規定の見直し

大企業向けの特定税額控除不適用規定について見直しを行う。

 

【改正内容】

① 要件が強化される法人について、「資本金が10億円以上かつ従業員数が1,000人以上の企業」のみでなく、「従業員数2,000人を超える企業」を追加。なお、前年度が赤字の場合には、従前より要件強化の対象外。

② 要件が強化される法人についての要件(いずれかの要件に該当しないと特定税額控除規定の適用を受けることができない)

要件

現行

改正

所得金額 対前年比で減少 変更なし
継続雇用者の給与等支給額 対前年増加率1%以上 変更なし
国内設備投資額 減価償却費の30%超 減価償却費の40%超

 

【制限対象の特定税額控除規定】

・研究開発税制(総額型、オープンイノベーション型)

・地域未来促進税制

・5G投資促進税制

・カーボンニュートラルに向けた投資促進税制

・デジタルトランスフォーメーション投資促進税制

 

 

4.中小企業事業再編投資損失準備金制度の拡充

中小企業事業再編投資損失準備金制度について、現行制度に新制度を追加して、適用を令和9年3月末まで延長する。

 

【新制度の内容】

① 「特別事業再編計画(仮)」の認定を受けた事業者が対象

② 購入する株式の金額が1億円以上100億円以下であることが要件となる。

③ 準備金の積立が出来る金額は、初回が株式取得価額の90%二回目以降は100%

(現行制度では70%)

④ 準備金取崩の期間が積立から10年経過後(現行制度では積立から5年経過後)以降5年間に渡って取崩を行って益金に算入となる。

 

【現行制度と新制度の共通の改正】

① 一定の表明保障保険契約を締結している場合には本制度の適用が受けられなくなる。

② 準備金積立後も一定の表明保障保険契約を締結すると全額の取崩が必要になる。

 

※現行の制度概要

出典:中小企業庁HP(https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/shigenshuyaku_zeisei.html

 

【実務上のポイントと気になる点】

■ 特別事業再編計画(仮)の認定手続きについて要確認(産業競争力強化法の改正)

■ 現行制度の経営力向上計画の認定に比べると、特別事業再編計画(仮)の認定手続きはかなりハードルが高いと考えらる。

■ 新制度の株式金額要件について、M&Aでは購入する株式対価の設定にあたっては、退職金の支給やM&A後の顧問料などを含めて金額の設定をするため、新制度の適用可否も含めてスキームを検討する必要がある。

■ 本制度の適用が受けられなくなる一定の表明保障保険契約について、どのような契約が該当するのか詳細の確認が必要(大綱には記載なし)

 

 

5.国内投資促進税制(戦略分野国内生産促進税制・イノベーションボックス税制)

 

【戦略分野国内生産促進税制の創設】

■ 産業競争力強化法の改正を前提に事業適応計画の認定が必要

■ 計画に基づいて産業競争力基盤強化商品の生産をするための設備(産業競争力基盤強化商品生産用資産)の購入が対象

■ 認定後10年間に渡って販売数量に応じて税額控除を行っていく

■ 控除が出来ない場合についても3年間~4年間の繰越控除がある

 

【イノベーションボックス税制の創設】

■ 無形資産への国内投資を後押しするための制度

■ 内国法人等に対して特定特許検討の譲渡・貸付を行った場合に、その事業から発生する一定の課税所得の30%相当額を損金に算入する

■ 国外への投資については制度対象外であり、国内投資のみが対象

 

  

6.交際費の損金不算入制度の除外措置拡大

損金不算入となる交際費等から除外されるいわゆる5,000円以下飲食費(社外との飲食に限る)の範囲について、金額要件を1人当たり5,000円以下から10,000円以下に引き上げる。

  

【実務上のポイントと気になる点】

■ 中小企業についてはいずれにしても年間800万円までの損金算入枠があるため影響は少ない

■ インボイス制度の適格請求書に該当しない飲食費の場合には、控除対象外消費税も上乗せした金額で単価判定が必要になるため注意が必要

 

 

7.外形標準課税制度の対象拡大

外形標準課税制度の適用対象法人の範囲について、現行の基準(資本金の額が1億円超の法人)を維持したうえで、範囲を拡大する

 

【減資への対応】

当分の間、以下の全てに該当する法人を外形標準課税の対象とする。

① 前事業年度に外形標準課税の対象であること(※)

② 当該事業年度に資本金が1億円以下であること

③ 当該事業年度に資本金と資本剰余金の合計額が 10 億円を超えること

※公布日(令和6年3月末を想定)以後に減資をして資本金が1億円以下になった法人については、①に該当するものとして扱われる。

※適用開始時期:令和7年4月1日に施行し、同日以後に開始する事業年度から適用

出典:総務省「令和6年度地方税制改正(案)について」

  

【100%子法人等への対応】

以下の全てに該当する法人を外形標準課税の対象とする。

① 資本金と資本剰余金の合計額が 50 億円を超える外形対象法人の100%子法人等

② 当該事業年度に資本金が1億円以下であること

③ 当該事業年度に資本金と資本剰余金の合計額(※)が 2億円を超えること

※公布日以後に、子会社から親会社への資本剰余金配当等があった場合には、加算した金額で判定する

※適用開始時期:令和8年4月1日に施行し、同日以後に開始する事業年度から適用

※上記改正により、新たに外形標準課税の対象となる法人に係る税負担の緩和措置が講じられる。(初年度:増差税額の3分の2を控除 次年度:増差税額の3分の1を控除)

出典:総務省「令和6年度地方税制改正(案)について」

 

【実務上のポイントと気になる点】

■ 公布日までの対応であれば適用対象から外れることも可能と思われる

■ 資本金と資本剰余金は会計上の金額を利用するが、監査法人の監査等が行われていない企業においては、会計処理で誤りがある可能性も十分考えられるので、資本取引の会計処理について精査が必要

 

8.その他

【倒産防止共済の掛け金の損金算入の特例】

■ 共済契約の解除があった後に再度共済契約を締結した場合には損金算入に一定の制限がされる

■ その解除の日から同日以後2年を経過する日までの間に支出する当該共済契約に係る掛金については損金算入できない

 

  

Ⅳ 消費税(インボイス制度)

1.国外事業者に係る消費税の課税の適正化(プラットフォーム課税など)

 【プラットフォーム課税の導入】

■ 国外事業者がデジタルプラットフォームを介して行う消費者向けの電気通信利用役務の提供のうち、特定プラットフォーム事業者を介したものについては、その特定プラットフォーム事業者が行ったものとみなす。

■ その課税期間における上記の取引金額が50億円を超える場合には、特定プラットフォーム事業者として指定される。

■ 適用開始時期:令和7年4月1日以後に行われる電気通信利用役務の提供

 

【事業者免税点制度の特例の見直し】

■ 特定期間における課税売上高による納税義務の免除の特例について、給与支払額による判定の対象から国外事業者を除外する。

■ 資本金1,000万円以上の新設法人に対する納税義務の免除の特例について、外国法人は基準期間を有する場合も、国内事業開始時点で本特例の適用の判定を行う。

 

【簡易課税制度等の見直し】

■ その課税期間の初日において恒久的施設を有しない国外事業者については、簡易課税制度の適用を認めない。

 

2.その他

 【高額特定資産の範囲拡大】

■ 高額特定資産を取得した場合の事業者免税点制度等の制限措置の対象に、その課税期間において取得した金地金等の合計額が200万円以上である場合を加える。

 

【免税購入された物品の課税仕入れについて仕入税額控除の制限】

■ 外国人旅行者向け消費税免税制度により免税購入された物品と知りながら行った課税仕入れについては、仕入税額控除制度の適用を認めないこととする。

 

【インボイス制度の自販機特例についての帳簿記載要件を緩和】

■ 帳簿のみの保存により仕入税額控除が認められるインボイス制度の自販機特例については、帳簿へ住所等の記載が必要であったが、不要とする。(令和5年10月まで遡って不要とする)

 

 

Ⅴ その他

1.GビズIDとの連携によって電子署名等の省略

法人が、GビズIDを入力して、e-Taxにより申請等を行う場合には、ID・PWの入力、電子署名・電子証明書の送信を要しないこととする。

 


超速報!令和5年度(2023年度)税制改正大綱を徹底解説!

こんにちは。

税理士の山田です。

今回は令和4年12月16日に公表された『令和5年度税制改正大綱』の中から特に気になった項目を抜粋して解説をします。公表されたばかりの情報ですので、スピードと解り易さを重視して解説しております。正確性を担保するものではございませんので、予めご了承ください。内容に誤り等がございましたら随時訂正して参ります。

また、税制改正大綱は税制改正の素案となるものであり、おおむねこの通りの改正がされることがほとんどですが、100%確実ではございません。読みやすさを重視するために文中ではまだ予定であることを態々記載していませんが、確定事項ではない点はご理解ください。

税制改正解説テキストの販売を決定!!

お陰様で、本記事は大変好評頂いておりますが、ご縁ありましてKACHIELさんで税制改正解説テキストを販売することになりました。 本記事以上に気合を入れて作成しますので、購入を検討頂けると幸いです。後悔させない内容に仕上げるように尽力します。12/25までのご購入で早割が効きますので、是非是非ご検討下さい。

テキストの詳細はこちらより

(2023年1月12日追記)

上記の税制改正解説テキストが完成しました!テキストにも収録している令和5年度税制改正の全体イメージをこちらにも掲載します。

Ⅰ 所得税(源泉所得税含む)

1.NISAの抜本的拡充と恒久化

令和6年1月より現行の制度を大幅に見直して、下記のように制度が生まれ変わります。

【その他のポイント】

■ ジュニアNISAは2023年で終了

■ 限度額の計算は簿価ベースで計算、上限に達するまで出し入れは自由で何度でも利用可

■ 過去の投資枠とは別枠で利用が可能

 

【実務上のポイントと私見】

■ 何度でも出し入れができる点は利便性が非常に高い

■ 中長期で預金に持っているくらいであれば、インデックスに投資をするメリットが高い

■ 成長投資枠をつみたて投資枠のように利用することも可能

【適用開始時期】 令和6年1月より

2.スタートアップへの再投資にかかる非課税措置の創設など

M&Aなどで多額の売却益が出た際に、売却資金を元手に創業する場合やエンジェル投資家としてプレシード・シード期のスタートアップに再投資する場合に、再投資金額をした金額を株式の売却益から控除することが出来る制度を創設されました。

投資額のうち20億円までについては完全に非課税となり、20億円を超えた投資についても投資株式の取得価額から控除をすることで課税の繰り延べが行われます。

また、エンジェル税制や創業5年未満の会社がストックオプションを発行する場合のストックオプション税制についても一定の要件の緩和が行われます。

 

【対象となる投資先の主な要件】

■ 設立以後1年未満

■ 販管費/出資金額が30%を超えること

■ 株式の99%以上を特定の株主グループが所有していないこと

■ 大企業の子会社等でないこと

 

【計算例】

5億円で購入した株式を30億円で売却、売却資金を元手に税制優遇が受けられるスタートアップに22億円を投資

「所得税の計算(復興特別所得税は除いて計算)

(売却額30億円 - 取得価額5億円 - 控除22億円) × 所得税率(15%) ⇒ 4500万円が課税

「スタートアップ株式の取得価額」

取得価額22億円 - (22億円 - 20億円) ⇒ 取得価額20億円

【実務上のポイントと私見】

■ 下記の「高所得者層に対する課税の強化」との兼ね合いが重要になると思われる

■ 「高所得者層に対する課税の強化」への課税回避のためにこの制度の利用が有効だと思われる

3.高所得者層に対する課税の強化

極めて所得が高い個人についての所得税の課税が強化されます。具体的には、下記の計算式で計算した金額が所得税額を上回る場合には、差額が上乗せされて課税されます。

【計算式】 (合計所得金額 - 特別控除3.3億円) × 22.5%

【計算例】

5億円で購入した株式を30億円で売却

「所得税の計算(復興特別所得税は除いて計算)

① (売却額30億円 - 取得価額5億円) × 所得税率(15%) = 3.75億円

② (合計所得金額25億円 - 特別控除3.3億円) × 22.5% = 4億8825万円

③ ②>① になるので、 ②の4億8825万円が課税

【実務上のポイントと私見】

■ 上記「スタートアップへの再投資にかかる非課税措置」を活用すれば、この制度の適用を回避することが可能だと思われる

■ 合計所得金額の計算からは源泉分離課税の所得は除かれるので、特定口座の株式の申告の有無で税額が変わることもあり得る (2022.12.18 11:43訂正) 合計所得金額の計算では『申告不要制度を適用しないで計算した金額』とあるので、特定口座の申告の有無によって税額が変わることは無いと思われる(ただし、源泉分離課税の所得は含めずに計算する)

【適用開始時期】 令和7年以降

4.個人事業者の各種届出等の手続きの簡素化

個人事業主の各種届出等の手続きが簡素化されます。

 

【ポイント】

■ 事業の開業・廃業時の届出書の様式が統一され、複数の届出書を一括で作成出来るようにする

■ 各種届出書の提出期限を「確定申告期限まで」とすることで、確定申告書へのチェックや追記などで届出書の提出が行えるようになる予定

 

【対象となる思われる届出書】

■ 個人事業の開業・廃業届出書

■ 青色申告承認申請書

■ 青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書

■ 青色申告の取りやめ届出書

■ 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

■ 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書

 

【適用開始時期】 令和8年~令和9年

5.その他

【源泉徴収票の提出方法等の見直し】

源泉徴収票の提出先が市区町村に一本化されます。つまり、法定調書の作成にあたって給与情報の記載が不要になると思われます。

 

【年末調整関係書類の記載事項の簡略化】

扶養控除等申告書や保険料控除等申告書の記載事項が簡略化されます。

Ⅱ 資産課税

1.資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築

相続時精算課税制度の使い勝手を向上し、次世代への資産移転をしやすくする狙いがあるようです。一方で暦年贈与については、相続対策としての利用が恒常化しており、バランスを取る形で生前贈与加算の期間が延長されます。

相続時精算課税制度について毎年110万円の基礎控除を創設

相続時精算課税制度により行われた贈与について、課税価格から毎年110万円の基礎控除が出来るようになります。また、相続税の計算において加算される金額も贈与財産の価額から過去の基礎控除額を控除した後の金額となります。

 

相続時精算課税制度による贈与財産が災害により被害を受けた場合の再計算】

精算課税制度による贈与後に、贈与財産である土地や建物が災害によって一定の被害を受けた場合には、相続税の計算において加算される金額は贈与財産の価額から災害を受けた金額を控除した金額とします。

 

【生前贈与加算制度の見直し(加算期間の延長)】

暦年贈与により生前に贈与を受けていた財産について、相続時に加算される贈与期間が相続前3年間から相続前7年間に延長されます。ただし、延長した4年間の贈与について総額100万円までは相続財産に加算しない措置が取られます。延長の期間は令和9年以降の相続から随時延長がされ、令和13年に7年間に達します。

 

【実務上のポイントと私見】

■ 暦年贈与による生前贈与加算制度では相続時に加算される際には基礎控除額が控除されない一方で、精算課税贈与では基礎控除額が控除されることになったため、相続前7年間の贈与は暦年贈与より精算課税贈与の方が有利になる

■ 基礎控除額を利用して相続税対策を行う場合には、精算課税贈与の選択が以前よりもしやすくなった。

■ 相続前7年間はいずれの制度を利用した贈与財産であっても相続財産への加算が必要となるため、相続時の預金調査が以前よりも重要になってくる

■ 災害をうけた場合の判定についての考え方はどうなるか?(雑損控除の考え方を引用するか?)

 

【適用開始時期】 令和6年1月以降

2.教育資金や結婚資金等の一括贈与に係る非課税措置の見直しと延長

【教育資金の一括贈与に係る非課税措置】

適用期限を3年間延長し、契約終了時に残高が残っていた場合にかかってくる贈与税の税率は本則の税率で計算をすることになりました。また、契約期間中に贈与者が死亡した場合で、贈与者の相続税の課税価格が5億円を超える場合には、受贈者の年齢に変わらず残高を相続財産に加算することになりました。

【結婚・子育て資金の一括贈与に係る非課税措置の見直し】

適用期限を2年間延長し、契約終了時に残高が残っていた場合にかかってくる贈与税の税率は本則の税率で計算をすることになりました。

Ⅲ 法人課税

1.オープンイノベーション促進税制の拡充

対象となる特定株式に発行法人からの株式発行以外に既存株主からの購入で一定の要件を満たすものを追加した一方で、取得価額の上限を100億円から50億円に引き下げます。また、購入から5年以内に一定の成長要件を満たせば減税効果が継続することになります。

【オープンイノベーション促進税制とは?】

オープンイノベーションを目的としてスタートアップ企業の株式を取得する場合に、取得価額の25%を課税所得から控除できる制度です。現行制度の詳細は経済産業省のHPを参照して下さい。

https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/open_innovation/open_innovation_zei.html

2.研究開発税制の見直しと延長

研究開発税制は次の見直しを行います。

【見直しのポイント】

■ 税額控除率を調整し、試験研究費の増加による控除率のカーブを見直された。

■ ビッグデータを活用した「サービス開発」のための試験研究費の範囲として、従来は新たにビッグデータを収集する場合のみが対象であったが、既存のビッグデータの活用も対象として認められた。

■ 従来はデザインに基づく「設計・試作」であって性能向上を目的としていなくても試験研究費の対象とされていたが、性能向上を目的としないことが明らかな「設計・試作」は対象から除外された。

3.中小企業投資促進税制等の見直しと延長

中小企業のための優遇税制である中小企業投資促進税制(7%税額控除・30%特別償却)と中小企業経営強化税制(10%税額控除・100%即時償却)の対象財産から一定のコインランドリー設備とマイニング設備が除外されることになりました。

【中小企業投資促進税制】

中小企業投資促進税制の対象設備からはコインランドリー業(主たる事業でない場合)の機械装置でその管理の大部分を外部に委託しているものを除外することになりました。

【中小企業経営強化税制】

中小企業経営強化税制の対象設備からはコインランドリー業か暗号通貨マイニング業(主たる事業でない場合)の機械装置でその管理の大部分を外部に委託しているものを除外することになりました。

中小企業経営強化税制の適用には一定の手続きが必要になるため詳細は中小企業庁のHPを確認してください。

https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/

 

【実務上のポイントと私見】

■ コインランドリー設備やマイニング設備は設備投資を全額即時償却が出来ることで課税の繰り延べ策として利用される側面があったため、それを回避する改正

■ ここ数年、国としては課税の繰延策をブロックする意向が明らかにあるため、ギリギリを攻めているような繰延策については、強攻策に出てくる可能性もあると考える

【適用開始時期】 令和5年4月1日以降

4.株式交付税制の見直し(同族会社を対象から除外)

株式交付税制の対象となる株式交付親会社が同族会社(非同族の会社が株主のケースを除く)に該当する場合には税制の適用を受けられなくなります。

【実務上のポイントと私見】

■ 株式交付税制はどこの子会社でもない会社(50%支配を受けていない)が対象

■ 上場前などに一定の状態で資産管理会社を作る際にも株式交付制度の利用が出来てしまっていたために、それをブロックするための改正

【適用開始時期】 令和5年10月1日以後に行われるもの

5.暗号資産の評価方法等の見直し

暗号資産の発行会社が自社発行の暗号資産を発行時から継続して保有する場合等については、その暗号資産は時価評価から除外されることになりました。

【実務上のポイントと私見】

■ 多額の納税によって暗号通貨発行法人の資金が枯渇してしまい、事業継続が困難であったための措置

6.その他

【特定の資産の買換えの圧縮記帳の見直しと延長】

既成市街地等内から既成市街地等外への買換えが対象から除外されるなど、一定の見直しがされたうえで制度が3年間延長されました。

【DX投資促進税制の見直しと延長】

DX認定基準を改定し、人材促進・確保等に関連する事項を要件化するなど、一定の見直しがされたうえで制度が2年間延長されました。

Ⅳ 消費税(インボイス制度)

1.小規模事業者に対する納税額に係る負担軽減措置

一定の小規模事業者であるインボイス発行事業者は、消費税の納付税額を売上に係る消費税額の2割の金額とすることが出来ることとなります。

【適用対象事業者】

下記のいずれかに該当するインボイス発行事業者

■ 免税事業者が適格請求書発行事業者になった場合

■ 課税事業者選択届出書を提出したことにより課税事業者になっている場合

⇒ つまり、基準期間の課税売上高が1000万円以下であるインボイス発行事業者が対象

【その他のポイント】

■ 令和5年10月1日より前から課税事業者を選択している場合には、令和5年10月1日の属する課税期間では適用出来ない

■ 課税事業者選択届出書を提出したことで、令和5年10月1日の属する課税期間から課税事業者となる場合には、その課税期間中に選択不適用届出書を提出すれば、課税事業者選択届出書は効力を失う

■ 消費税の申告書に適用を受ける旨を付記するだけで適用が可能

■ 当該特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間中に簡易課税の選択届出書を提出すれば、提出をした課税期間から簡易課税の適用が可能(インボイス制度の適用初年度の課税期間については現行制度でも届出を提出をした課税期間から簡易課税の適用が可能なため、翌期についてもOKとなった)

【実務上のポイントと私見】

■ 原則課税と簡易課税と当該特例の3通りの計算が可能なため、より詳細なシミュレーションが必要となる

■ 当該特例は申告書への記載のみで適用が受けられるので、実際の消費税額の計算後に有利な選択が出来る

■ 逆に選択を誤ると税理士には賠償責任が発生する可能性が考えられる

■ 当該特例の更正の請求の可否は現時点では不明

【適用課税期間】 令和5年10月1日~令和8年9月30日までの日の属する課税期間

2.中小事業者等に対する事務負担の軽減措置

一定の中小事業者は、対価が1万円未満の課税仕入については、インボイスの保存が無くても帳簿の保存のみで仕入税額控除の適用を認めることになります。

【適用対象事業者】

下記のいずれかに該当する事業者

■ 基準期間における課税売上高が1億円以下である

■ 特定期間における課税売上高が5000万円以下である

【実務上のポイントと私見】

■ 逆に売上が1億円を超える事業者は少額なものについても全てインボイス番号の確認と書類の保存が必要になる

■ クレジットカードで決済した経費などについても全てインボイス番号の確認や書類の保存が必要になるために書類の管理やオペレーションが非常に煩雑になることが想定される

【適用時期】 令和5年10月1日~令和11年9月30日までの間に行う課税仕入

3.少額な返還インボイスの交付義務の見直し

税込価格が1万円未満の売上返還については、返還インボイスの交付義務が免除ことになります。

【実務上のポイントと私見】

■ 売上が入金される際に振込手数料などを控除して振り込まれる場合などが対象

【適用開始時期】 令和5年10月1日以後に行う課税資産の譲渡等に係る対価返還が対象

4.登録申請手続の柔軟化

インボイス制度に係る届出書の提出期限について柔軟化がされました。

【免税事業者が登録申請をする場合】

免税事業者が課税期間の初日からインボイス発行事業者として登録を受けようとする場合の提出期限について、現行の課税期間の初日から起算して1月前であったのものが15日前までに緩和されます。

【登録の取消しを求める場合】

インボイス発行事業者が登録の取消を求める場合の届出書の提出期限について、取消を受けようとする課税期間の初日から起算して30日前の日の前日であったのものが15日前までに緩和されます。

【経過措置により10月1日より後で登録を受けようとする場合】

10月1日より後の日付でインボイス発行事業者の登録を受けようとする場合の登録申請書について、登録を受けようとする日から起算して15日前までに提出していれば、希望日に登録が受けられることになります。

【令和5年10月1日からインボイス発行事業者の登録申請を受ける場合の申請期限】

本来の申請期限は令和5年3月31日であるものが、困難な事情がある場合に、令和5年9月 30 日までの間にその困難な事情を記載して提出し、税務署長により適格請求書発行事業者の登録を受けたときは、令和5年10月1日に登録を受けたこととみなされる措置が設けられていました。この措置について、困難な事情の記載が撤廃され、実質的に令和5年9月30日が期限になったことになります。

Ⅴ 国際課税

1.グローバルミニマム課税の創設

多国籍企業グループの総収入金額が7億5000万ユーロ相当以上である場合に、最低税率15%に至るまでの課税がされる仕組みが創設されます。

2.タックスヘイブン税制(CFC税制)の見直し

タックスヘイブン税制について下記の見直しがされます。

■ 合算課税から免除される特定外国関係会社の租税負担割合の判定が、現行の30%以上から27%以上に引き下げられます。

■ 申告書に添付する外国関係会社に関する書類で株主関係を記載する書類について、その書類に代えて株主関係図に記載事項を埋めたもので代用が出来ることになる

Ⅵ 電子帳簿保存制度

1.電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度の見直し

電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度について要件の緩和が行われました。

【検索要件を不要とする措置】

下記のいずれかの場合において、税務調査等の際にデータのダウンロードに応じることが出来る場合には、検索要件を不要とされます。

■ 判定期間における売上高が5000万円以下である場合

■ 出力書面が整然かつ明瞭な状態で、取引年月日や取引先ごとに整理がされている場合

【出力書面での保存について猶予措置について】

令和4年1月~令和5年12月までの期間については、税務署長がやむを得ない事情があると認め、税務調査等の際に整然かつ明瞭な状態で出力された書面の提示が可能であれば、書面での保存が認められていました。従前にプラスして、電子保管対応が出来ないことに相当の理由があり、データのダウンロードの求めにも応じることが出来るようにしておけば、電子帳簿保存の要件が充足されることになります。

つまり、実質的にはほぼ紙保管が認められることになると考えます。

2.その他

優良電子帳簿の範囲の見直し

優良電子帳簿の範囲が以前は全ての帳簿であったが、「その他必要な帳簿」について一定の補助帳簿に限るものとなりました。具体的には、売上帳、仕入帳、経費帳、売掛帳、買掛帳、手形記入帳、貸付帳、借入帳、未決済項目に係る帳簿、有価証券受け払い簿、固定資産台帳、繰延資産台帳などです。

【スキャナ保存制度の見直し】

国税関係書類について、下記の要件緩和がされることになりました。

■ 解像度や大きさなどの情報について保存要件が廃止

■ 入力者等情報の確認要件が廃止

■ 相互関連性の保持要件が契約書や領収書等の重要書類に限定

Ⅶその他の納税環境整備

1.高額な無申告に対する無申告加算税の割合の引上げ

納付すべき税額が300万円を超える場合には、超える部分の無申告加算税の割合を30%に引き上げることになりました。(現行では、50万円までは15%、50万円を超える部分は20%)

また、更正の予知がない場合の期限後申告等については、300万円を超える部分の無申告加算税の割合を25%に引き上げることになりました。(現行では、50万円までは10%、50万円を超える部分は15%)

2.一定期間繰り返し行われる無申告行為に対する無申告加算税等の加重措置の整備

3回連続で期限後申告が行われる場合には、無申告加算税を10%加重する措置が取られることになります。

Ⅷ 次年度以降に持ち越しがされたもの

1.外形標準課税のあり方

資本金を1億円以下に減資すると外形標準課税の課税から逃れることが出来るため、以前と比べて課税対象となる法人数が3分の2まで減っているようです。外形標準課税の対象から外れている実質的な大規模法人については、制度の見直しを今後に検討する方針です。

2.マンションの相続税評価について

マンションについては、市場での売買価格と通達による相続税評価額に大きく乖離が見られるケースがあり、適正化について今後に検討をする方針です。

3.防衛力強化に係る財源確保のための税制措置

日本国の防衛力強化を目的として、安定的な財源を確保するために、令和6年以降に適切な時期で下記の内容で措置が講じられる予定です。

■ 法人税 法人税額に対して税率4~4.5%の付加税を課す

■ 所得税 所得税額に対して税率1%の付加税を課す

■ 復興特別所得税 課税期間を延長したうえで、税率を1%引き下げる

■ たばこ税 3円/1本相当の引き上げを行う


超速報!令和4年度(2022年度)税制改正大綱を徹底解説!

こんにちは。

税理士の山田です。

 

今回は令和3年12月10日に公表された『令和4年度(2022年度)税制改正大綱』の中から特に気になった項目を抜粋して解説をします。公表されたばかりの情報ですので、スピードと解り易さを重視して解説しております。正確性を担保するものではございませんので、予めご了承ください。内容に誤り等がございましたら随時訂正して参ります。

また、税制改正大綱は税制改正の素案となるものであり、おおむねこの通りの改正がされることがほとんどですが、100%確実ではございません。読みやすさを重視するために文中ではまだ予定であることを態々記載していませんが、確定事項ではない点はご理解ください。

 

なお、一部で話題になっていた『相続税と贈与税の一体化』については、今回の改正では織り込まれていません。引き続き検討を進めるようですが、早くても再来年以降の税制改正項目ということになりますので、改正のタイミングとしても早くても令和5年4月以降になります。

 

※令和4年度(2022年度)税制改正大綱についてはこちらをご覧ください。

https://www.jimin.jp/news/policy/202382.html

 

Ⅰ個人所得税課税(地方税含む)・源泉所得税

  1. 住宅ローン控除の改正

従前では令和3年において住宅ローンを組んで自宅を購入した場合に、借入限度額を5000万円(住宅の取得等が特定取得以外の場合は3000万円)として、住宅借入金の年末残高に対して1%の税額控除を10年間適用出来る取扱いとなっていましたが、令和4年以降も延長はするもの主に増税傾向となります。具体的には下記の表の取扱いとなります。

種類

居住年

借入限度額

控除率

控除期間

認定住宅等以外の居住用家屋の新築等

令和4年~5年

3000万円

0.7%

13年

令和6年~7年

2000万円

10年

認定住宅等以外の中古家屋の取得等

令和4年~7年

認定住宅(認定長期優良住宅と認定低炭素住宅)の新築等

令和4年~5年

5000万円

13年

令和6年~7年

4500万円

ZEH水準省エネ住宅の新築等

令和4年~5年

4500万円

令和6年~7年

3500万円

省エネ水準適合住宅の新築等

令和4年~5年

4000万円

令和6年~7年

3000万円

認定住宅等の中古家屋の取得等

令和4年~7年

3000万円

10年

※ 本税制の適用対象者はその年の合計所得金額が3000万円以下であることが要件となっていましたが、令和4年以降は2000万円以下が要件に引き下げられます。

※ 中古住宅の取得については、従来設けられていた築件数要件が撤廃される一方で、新耐震基準に適合する住宅であることが要件となります。

 

控除率が下がるのは住宅ローンの金利が大幅に下がりいわゆる逆ザヤ状態になってしまっていたためにそれを解消する措置となります。つまり、住宅ローンの変動金利が0.5%を下回ることも珍しくなくなってしまうほどの低金利であり、支払う住宅ローンの金利よりも本税制の控除額の方が多くなってしまうという現象が生じてしまっていたためとなります。

従前の新型コロナ税特法においては一定の条件で借入限度額を5000万円、控除率1%、控除期間は13年間とする取扱いが令和4年まで可能ですが、その点は特に変更がないと思われます。(大綱に詳細はなし)

 

  1. 子会社等からの配当に係る源泉所得税を廃止

以下の会社からの配当については、所得税の源泉徴収を行わないこととします。適用時期としては、令和5年10月1日以降に支払いをすべき配当について適用されます。

・ 完全子法人株式等(100%保有の子会社)

・ 基準日に置いて直接保有する株式等の保有割合が3分の1超である子会社

 

  1. 配当が総合課税とされる大口株主の範囲を拡充

上場株式等の配当等については源泉分離課税が適用されるところですが、大口株主が受け取る配当についてはこの制度が適用されずに、非上場株式からの配当と同様の取扱いとして、20.42%の源泉徴収がされたうえで総合課税により確定申告が必要とされています。

従来はこの大口株主の範囲として、直接にその会社の発行済株式の3%以上が保有する方が対象となっていましたが、その方が支配関係を持つ同族会社がその会社の株式を持っている場合に、3%の判定に含めることになる予定です。この改正は、令和5年10月1日以後に支払うべき配当等について適用がされます。

なお、私見ですが3%の判定おいては分母である発行済株式総数に自己株式を含めて判定することになっており、この点についても本来は改正がされるべき点であると思われますが、今回の大綱には含まれていません。将来的に改正となる可能性は高い部分ではないかと考えます。

 

  1. 納税地の変更に関する届出書

納税地が変更した場合には、税務署長に届出書を提出するルールとなっておりましたが、令和5年以降については届出書の提出が不要となります。(個人消費税についても同様)

 

  1. 上場株式等の配当所得割に係る課税方式の改正

個人住民税において、特定配当等及び特定株式等譲渡所得金額に係る所得の課税方式を所得税と一致させることとなりました。恐らくですが、これは所得税と住民税について別々の課税方法を選択することで、上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除額が所得税と住民税で不一致になってしまうことを防ぐ措置であると思われます。

 

Ⅱ資産課税

  1. 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税措置

適用期限(現行は令和3年12月31日)を令和5年12月31日までに延長し、限度額については下記の通りとなります。

・ 通常の住宅 500万円

・ 耐震、省エネ又はバリアフリーの住宅用家屋 1000万円

 

  1. 非上場株式等に係る納税猶予の特例制度

特例承継計画の提出期限が現行は2023年3月末までとなっていますが、1年延長してい2024年3月末までとなります。

 

  1. 添付書面等記載事項の提供方法の見直し

相続税の申告書の添付書類の提供方法に、光ディスク及び磁気ディスクが追加されました。相続税の申告書の添付書類は膨大な量となりますが、電子申告の添付データについては容量が限られているために取られた措置であると推察します。

 

  1. 財産債務調書制度等の見直し

まずは提出義務者が拡大され、現行の提出義務者にプラスでその年の12月31日において有する財産の価額の合計額が10億円以上である居住者が追加されました。

一方で提出期限については、現行は翌年の3月15日までとされていたものが翌年の6月30日に延長がされました。こちらの改正は国外財産調書についても同様の改正となります。

 

Ⅲ法人課税(地方税含む)

  1. 人材確保等促進税制の改正(いわゆる大企業向け)

従来の人材確保等促進税制を改正し、下記の変更が行われます。対象となる給与額の計算については、令和3年3月31日以前の開始事業年度に対する取扱いに戻る形になると思われます。(この1年間は一体なんだったのか・・・)

改正項目

現行

改正

適用期間

令和3年4月1日から令和5年3月31日までに開始する事業年度 令和4年4月1日から令和6年3月31日までに開始する事業年度

適用要件

新規雇用者給与等支給額(※)が、前年度より2%以上増えていること

※    国内新規雇用者のうち雇用保険の一般被保険者に対してその雇用した日から1年以内に支給する給与等の支給額

継続雇用者給与等支給額(※)が、前年度より3%以上増えていること

※    当期及び前期の全期間の各月分の給与等の支給がある雇用者で一定のもの(おそらく雇用保険の一般被保険者)に対して支給する給与等の支給額

控除額計算

控除対象新規雇用者給与等支給額(※)の15%

※    国内新規雇用者に対してその雇用した日から1年以内に支給する給与等の支給額

控除対象雇用者給与等支給増加額(※)の15%

※    明記されていないが、おそらく役員と役員親族以外の全従業員に対する給与等の支給額についての前年からの増加額

上乗せ措置

①教育訓練費の額が、前年度より20%以上増えている場合には、税額控除率を5%加算

 

①継続雇用者給与等支給額の増加割合が4%以上である場合には、税額控除率を10%加算

②教育訓練費の額が、前年度より20%以上増えている場合には、税額控除率を5%加算(変わらず)

教育訓練費の明細書

確定申告書の添付 会社保管

※ 資本金の額が10億円以上であり、かつ、常時使用する従業員の数が1000人以上である場合には、一定の事項を経済産業大臣に届出が必要

※ 人材確保等促進税制について

https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/syotokukakudaisokushin/syotokukakudai.html

 

  1. 所得拡大促進税制の改正(中小企業者限定)

従来の所得拡大促進税制を改正し、下記の変更が行われます。

改正項目 現行 改正
適用期間 令和3年4月1日から令和5年3月31日までに開始する事業年度 令和4年4月1日から令和6年3月31日までに開始する事業年度
上乗せ措置 雇用者給与等支給額の増加割合が2.5%以上であり、次のいずれかに該当する場合は税額控除率を10%加算

①教育訓練費の額が、前年度より10%以上増えている場合

②経営力向上計画の認定を受けて、かつ証明がされた場合

①雇用者給与等支給額の増加割合が2.5%以上である場合には、税額控除率を15%加算

②教育訓練費の額が、前年度より10%以上増えている場合には、税額控除率を10%加算

※ 所得拡大促進税制について

https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/syotokukakudai.html

 

  1. 大企業向けの税額控除制限措置の改正

大企業向けの研究開発税制等の特定税額控除規定の適用を受けることができないこととする措置について要件が改正されます。資本金の額が10億円以上であり、かつ、常時使用する従業員の数が1000人以上である場合で、かつ、前年度の課税所得金額がプラスであるときについては、継続雇用者給与等支給額の前年からの増加割合が1%以上(令和4年4月1日から令和5年3月31日までに開始する事業年度は0.5%以上)でなければ、特定税額控除規定の適用を受けることが出来ません。

 

  1. みなし配当の計算について

資本の払い戻しに係るみなし配当の額の計算について、払戻等対応資本金額等はその払い戻しにより減少した資本剰余金の額を限度とすることになりました。(従前は取扱い無)

また、種類株式を発行する法人の資本の払い戻しに係るみなし配当の額の計算について、種類資本金額を基礎と計算することになりました。(従前は取扱い無)

 

  1. 少額資産の損金算入制度について貸付用資産を除外

下記の規定について貸付の用に供する資産を対象から除外します。ただし、主要な事業として行われるものを除きます。

・ 少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度(10万円未満の少額資産)

・ 一括償却資産の損金算入制度(20万円未満の一括償却資産)

・ 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入特例(30万円未満の少額資産)

 

  1. グループ通算制度の投資簿価修正の改正

グループ通算制度ではグループ離脱時の、通算子法人株式の譲渡原価の計算を税務上の簿価純資産を元に計算するような仕組みとなっていましたが、これでは子法人買収時の買収プレミア相当額を税務上の損金として算入出来なくなってしまうことが問題視されていましたが、改正が行われました。

改正としては、グループ離脱時における各法人の確定申告において一定の計算明細を添付することで、子法人株式の帳簿価額に資産調整勘定等対応金額を加算するような調整計算が行われます。資産調整勘定等対応金額とはグループ通算開始時に時価取得をしたその子法人株式の取得価額のうち、仮にその時点で合併をしたものとした場合における資産調整勘定又は負債調整勘定相当額とされています。

個人的な意見として、負債調整勘定相当額が調整計算に含まれているのは、買収時の負ののれん相当額が離脱時に損金に算入されることを防ぐ措置であると思われますが、そもそもの取扱いが明細書の添付を要件としている規定となっており、不利な取扱いの場合には明細書の添付をあえてしないことで課税を免れることが出来るのか否か、という点が気になる点となります。

また、グループ離脱時の時価評価資産の取扱いで、帳簿価額が1000万円未満である資産については時価評価資産から除外されていますが、営業権については帳簿価額が1000万円未満であっても除外されないことになりました。

 

  1. ソフトバンクグループ対策税制の改正

ソフトバンクグループ対策税制とは、50%超の支配関係がある子会社からの配当を適用対象として、その株式等の簿価の10%を超える配当が行われた場合に、株式の簿価の切り下げを行う措置となります。ただ、適用除外要件として下記のような配当については対象から除外されます。複雑な制度となりますが、詳細は割愛しております。

① 設立以来90%以上国内資本のみの内国法人からの配当

② 買収後に発生した利益剰余金からの配当

③ 10年超支配継続している会社からの配当

④ 2000万円以下の配当

また、適用回避防止規定として、子法人が一定の孫法人(適用除外要件の①か③を満たす法人以外である法人)から1事業年度中に受ける配当等の額が、孫法人株式等の帳簿価額の10%を超え、かつ、2000万円を超える場合には、適用除外要件を満たさない措置が従来から取られています。

このソフトバンクグループ対策税制として、下記の2点の改正が行われます。こちらは令和2年4月1日以後の開始する事業年度から遡って適用するようです。

① 一点目として、上記適用除外要件の②について、従来は特定支配日の直前事業年度から配当決議等の直前事業年度までの利益剰余金額の増加額が配当金額を超えている場合には適用除外とされる措置が取られていました。ただし、このルールでは『配当決議等の直前事業年度から配当決議等までの間に増減した利益剰余金額』を原資として配当した場合には、適用除外要件を満たすことが出来ないことから、一定の書類保存を要件として上記の金額を計算に反映させることが可能となります。ただし、その場合には『特定支配日の直前事業年度から特定支配日までの間に増減した利益剰余金額』についても調整が必要となります。

② 二点目として、適用回避防止規定については孫法人が以下の要件を満たす場合には適用しないこととします。つまり、子法人は適用除外要件を満たせば本税制の適用を回避出来ます。

・ 配当等の基準時以前10年以内に子法人との間に特定支配関係があった孫法人の全てが、孫法人の設立時からその基準時まで継続してその子法人の特定支配関係にあった場合

・ 親法人と孫法人の間に、その孫法人の設立時から孫法人から子法人への配当等の基準時まで継続して親法人による特定支配関係がある場合で、かつ、その基準時以前10年以内に孫法人との間に特定支配関係があったひ孫法人の全てが、ひ孫法人の設立時からその基準時まで継続してその孫法人の特定支配関係にあった場合

 

  1. 大法人に対する事業税所得割の税率の見直し

外形標準課税適用法人については、令和4年4月1日以後の開始事業年度から軽減税率適用法人に該当しないことになり、所得割の標準税率は一律で1%となりました。

 

Ⅵその他

  1. 隠蔽仮装行為があって確定申告書が提出された場合等の措置

隠蔽仮装行為があって確定申告書が提出された場合や確定申告書の提出が無い場合には、帳簿書類や明らかな証拠書類等が無い限りは、その明らかなエビデンスが準備出来ない経費については損金の額に算入しないような措置が取られるようです。これは証拠書類が無い場合に調査で水掛け論になることを防ぐために取られた措置であると思われます。

 

  1. 修正申告書や更正の請求書の記載事項の整備

修正申告書や更正の請求書の記載事項より、申告前又は更正前の「課税標準等」「納付すべき税額の計算上控除する金額」「還付金の額の計算の基礎となる税額」を除外することになりました。これにより様式が簡略化されると思われます。

 

  1. 電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存の宥恕措置

電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度について、令和4年1月~令和5年12月までの期間については、税務署長が保存できないことにつきやむを得ない事情があると認め、保存義務者が税務調査を受けた際に印刷した書面の提出が出来る状況にある場合には、保存要件を満たすこととなります。この趣旨としては、保存要件への対応が困難な事業者の実情に配慮し、税務署長への手続きを要せずに出力書面等による保存を可能とするためのものである旨が大綱に明記されています。

ここからは私見となりますが、上記の『税務署長が保存できないことにつきやむを得ない事情があると認め』という部分については全ての法人について(又は中小企業限定か)、一律でやむを得ない事情があると認めるものと考えます。つまり、法律が施行された後に国税庁よりその旨の案内がされるのではないかと推察します。そうでなければ、上記の大綱の趣旨にそぐわないと考えます。

 

  1. 消費税の適格請求書等保存方式に係る見直し

免税事業者が令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中に適格請求書発行事業者の登録を受ける場合には、その登録日から発行事業者になれるような措置が取られます。また、この適用を受けて登録日から課税事業者となる適格請求書発行事業者については、2年間は課税事業者が強制される措置が取られるようです。

※ 本制度の概要については当社の別記事をご確認下さい。

適格請求書保存方式(インボイス制度)の概要

 

  1. 税理士制度の見直し

税理士事務所に該当するかどうかの判定について、設備又は使用人の有無等の物理的な事実により行わないことにするようです。リモートワーク等の柔軟な対応が出来るようにすることへの配慮であると思われます。

また、税理士試験の会計科目(簿記論と財務諸表論)の受験資格について、不要となります。つまり、高校生や大学低学年であっても会計学の試験は柔軟に受検が出来るようになると思われます。これは令和5年の試験から適用がされるようです。個人的には業界の発展のために非常に嬉しい改正です。


電子帳簿保存法の改正~令和4年1月からこう変わる~

こんにちは。

税理士の大塚です。

電子帳簿保存法が令和4年1月1日より改正されます。

大きく分けると、「電子データ保存の要件が大幅に緩和される」「電子取引の紙出力での保存が認められなくなる」ということがポイントになります。

今回は改正される電子帳簿保存法の要点をまとめます。

 

1 保存方法の概要

区分ごとに認められる保存方法は下記の図の通りです。

改正前、電子取引については紙出力による保存が認められていましたが、改正後は電子データとして保存することが求められます。

2 区分1:電子的に作成した帳簿、請求書等の書類

対象となるのは、会計ソフトで作成している会計帳簿、請求管理ソフトで作成した自社発行の請求書などです。

元データがPC内に保存されているケースが該当します。

 

この場合、出力した紙で保存することが原則ですが、一定要件を満たせば電子データのまま保存することも認められます。

従来から電子データのまま保存する方法はありましたが、改正で要件が大幅に緩和されました。主な改正点は下記の通りです。

 

⑴税務署長への事前承認制度の廃止

 

⑵下記の3要件を満たす場合、電子データのまま保存が可能

①システム関係書類等の備付

②PC、ディスプレイ、プリンタ等を備え付け、画面・書面に整然とした形状及び明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておくこと

③ダウンロードの求めに応じることができること

 

⑶優良な電子帳簿の要件を満たす場合は過少申告加算税が5%軽減される措置

事前に税務署へ届出書が必要となります。

事前承認制度がなくなり、最低限の要件で電子データのまま保存が可能になりましたので、従前よりも電子データのまま保存する企業が増加することが想定されます。

 

3 区分2:紙で受領・作成した請求書等の書類

対象となるのは、取引先から紙で受領した請求書、領収書、紙で取り交わした契約書、手書きで発行した請求書、領収書などです。

この場合、紙のまま保存することが原則ですが、一定要件を満たせばスキャンした上で電子データとして保存(スキャナ保存)することも認められます。

従来からスキャナ保存は認められていましたが、改正で要件が大幅に緩和されました。主な改正点は下記の通りです。

 

⑴税務署への事前承認制度の廃止

 

⑵タイムスタンプの付与期間が、最長約2か月と7営業日以内に延長

 

⑶受領者がスキャナで読み取る際の自署が不要

 

⑷タイムスタンプに代えて、訂正又は削除を行った場合に内容を確認できるクラウド等(訂正、削除ができないものを含む)での保存が可能

 

⑸検索要件の緩和 取引年月日、取引金額、取引先に限定

 

ダウンロードに応じられれば、範囲指定及び組み合わせ条件での検索は不要

 

⑹適正事務処理要件が廃止 相互けん制、定期的な検査等が不要

 

事前承認制度が廃止されたことに加え各要件も大幅に緩和されています。

改正前は受領者がスキャンする場合、タイムスタンプの付与期間が3営業日と非常に厳しいものでしたが、約2か月へ延長されます。

また、タイムスタンプに代えて、訂正又は削除の内容を確認できるシステム(訂正又は削除ができないものを含む)での保存が可能になりましたので、経費精算システムなどを利用されている企業は必然的に要件を満たしていくことも想定されます。

 

大きいのは適正事務処理要件が廃止されることです。

改正前は、スキャナした人と別の人による原本とデータの突合や、定期的に原本とデータを突合して不備がないか確認することが必要でした。

そのため、すぐに原本を廃棄することはできず、紙での保存も並行する必要がありました。

 

今回適正事務処理要件が廃止されることで、理論上はスキャナしてすぐに原本を廃棄することが可能となります。

但し、問題なくスキャンされているかの確認や、同じ領収書の使いまわしを防止するために原本の提出を求めるといった対応も考えられ、企業ごとに検討が必要と思われます。

 

出典:国税庁ホームページ(https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021005-038.pdf

 

4 区分3:電子取引

対象となるのは、紙を通さずに授受する電子データになります。請求書をメール添付して送受信するようなものや、ネットからダウンロードして証憑を入手するものが該当します。

電子で完結する取引を言いますので、メールで送った後に原本を紙で郵送を行うようなケースは電子取引には該当しません。

 

電子取引は、出力しての紙保存か電子データのまま保存かを選択できましたが、改正後は紙保存ができなくなり、電子データのまま保存することが求めれます。

 

電子データのまま保存する為には、「真実性の要件」と「可視性の要件」を満たす必要があります。検索機能など一部要件はスキャナ保存同様に緩和されています。

 

⑴真実性の要件

いずれか一つを満たす必要があります。

①タイムスタンプが付与されたデータを授受

②データ受領後、タイムスタンプを付与する

③訂正又は削除を行った場合に内容を確認できるシステム(訂正又は削除ができないシステムを含む)での授受及び保存

④「正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規定」の策定、運用、備付

 

最も簡単に要件を満たすのは、④の規定を整備することにあります。国税庁に規定の例がありますので、作成する際にはこちらをご参照下さい。

国税庁 各種規定等のサンプル

 

⑵可視性の要件

全ての要件を満たす必要があります。

①システムの概要を記した書類の備付 ※自社開発プログラムを利用する場合に限る

②見読可能装置の備付 ※ディスプレイ、プリンタなどの備付が必要

③検索機能の備付 ※取引年月日、取引金額、取引先に限定

ダウンロードに応じられれば、範囲指定及び組み合わせ条件での検索は不要

 

問題となるのは検索機能の備付です。検索機能は、取引年月日、取引金額、取引先のそれぞれで検索できる必要があります。

 

文書管理システムなどを利用していれば要件を満たすことは難しくないと思われますが、特にシステムなどの利用がない場合は困難です。

 

但し、別途Excelで管理台帳のようなものを作成してこれらの検索項目を網羅する方法や、PDFなどのファイル名自体に取引年月日、取引金額、取引先を入れて保存するといった方法も認められています。

※以下出典:国税庁ホームページ(https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021006-031_03.pdf

 

5.まとめ

区分1の電子データのまま保存する方法、区分2のスキャナ保存については、従前の要件が大幅に緩和されたことにより使用しやすくなりました。

ただ、こちらは紙での保存も認められますので、企業の必要性に応じて検討すれば良い事項かと思います。

一方で、電子取引は紙保存が認められなくなりますので、企業として対応が必要になります。

実際のところ、税務署がどこまで確認又は指摘をしてくるのか分からない部分もありますが、対応できる準備を進めていくに越したことはありません。

改正全般の細かい要件などは下記の国税庁のQ&Aをご参照下さい。

国税庁 電子帳簿保存法Q&A(一問一答)


【社内勉強会②】固定資産の基本的な考え方と償却資産について学ぼう

こんにちは。

スタッフの大滝です。

梅雨の時期となり、蒸し暑い日々の中にも、夏の強い日差しを感じる日も増えてきましたね。

社内での私の座席は、冷房直下のベストポジションなので季節を問わず快適なのですが、ふと目の前にあるエアコンを見て、「業務用エアコンは固定資産かな。耐用年数は…。」と思う時があります。

会計業務に携わる方にはお馴染みの「固定資産」という用語ですが、日常生活では中々耳にしない言葉ではないでしょうか。

早速ですが、第2回は固定資産の基本的な考え方と償却資産について整理してまいります。

 

1 固定資産とは

固定資産とは、一言でまとめると「事業活動において1年を超えて使用する目的で保有する資産」と説明できます。

資産とは、会社が保有する財産を指します。

これだけでは、わかりにくいのでまずは《資産》を分類した図をご覧ください。

1年以内に換金できる流動資産に対し、1年を超えて所有する資産を固定資産と言います。

また、固定資産はさらに有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産に分類されます。

 

2 固定資産の管理方法

会社にとって固定資産は財産であり、経営を行う上で固定資産を正しく管理し、把握する必要があります。

自社が所有する固定資産の実態(どのくらいあるか、どのような状況か)を管理するための帳簿を「固定資産台帳」と言います。

 

固定資産台帳には、資産の種類、耐用年数、資産名称、取得年月日、取得価額、償却方法等を記載します。

決算の時には、固定資産の棚卸を行い、廃棄している物がないか確認します。

こちらの台帳は、総勘定元帳や現金出納帳などの会計帳簿、貸借対照表(B/S)や損益計算書(P/L)などの決算書類と同様に、税法上では7年、会社法では10年保存する必要がある、と定められています。

 

また最近では、パソコン等が低価格にあり、固定資産として管理されなくなってきました。

しかし、パソコンのスペック等を管理するために、パソコン管理台帳を作成している企業も増えてきています。

 

3 減価償却とその目的

固定資産の会計処理に必要不可欠なのが、「減価償却」という処理です。

 

減価とは、「購入時の値段から下がること」、

償却とは、「どのくらいでその価値がなくなるか」と言うことです。

 

事業で用いられる建物、器具備品、車両運搬具などの固定資産は、一般的には時の経過によってその価値が減っていくという考え方をします。

このような資産を、減価償却資産と言います。

一方で、土地や美術品等、時の経過により価値が減りにくい資産は減価償却資産とは言いません。

土地や美術品は、価値が上がる可能性がある為です。

 

では、価値の減少はどのように決めるのでしょうか。

例えば、会社ごとに「うちの車はまだ傷んでいないから10年で償却しよう!」、「最近パソコンの動きが悪くなってきたから2年で償却しようかな…」等と償却年数を勝手に決めることはできません。

 

そこで、価値が減少していく期間=法定耐用年数が償却資産ごとに定められています。

この考え方に基づいて、軽自動車を購入した例をご覧ください。

 

軽自動車を400万円で購入しました。購入にかかる金額のことを、「取得価額」と言います。

軽自動車の法定耐用年数は4年ですので、4年間で償却していきます。

今回は、定額法という償却方法の前提で考えます。

そうすると、400万円÷4年間で毎年100万円ずつを減価償却費で計上する処理になります。

 

通常、何か物品を購入した場合には、購入日に全額を費用計上しますが、

高額で1年を超えて所有する資産である固定資産も同じく取得した日に、全額を費用計上してしまうと、購入した年(1年目)に多額の費用が計上され、2年目以降は費用が計上できません。

 

それでは、会社の利益を正しく計算することが出来なくなり、適正な利益を把握することが難しくなります。

減価償却をする最も重要な目的は、適正に費用を配分し、毎年の正しい損益計算を行うことにあります。

 

4 定額法と定率法

先程の、400万円で購入した軽自動車の償却方法は、「定額法」を前提に計算しました。

減価償却の方法には、「定額法」「定率法」という計算方法があります。

 

定額法とは、文字通り、毎年同額を減価償却していく方法です。

一方、定率法とは、毎年残った金額(簿価)に同じ割合(定率)を乗じて減価償却していく方法です。

毎年同額を費用計上する定額法に対して、定率法では年々、減価償却費が減少していきます。

 

なお、どちらの方法でも費用となる総額は同じですが、法人の場合は、原則として、建物・建物付属設備・構築物・ソフトウェアの償却は定額法を用いることが決められていますが、一方で機械装置・車両運搬具・器具備品はどちらの償却方法を採用するか選択できます。

 

具体的な計算方法は、国税庁のホームページを参考にしてください。

参考:国税庁 タックスアンサー No.2106 定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2106.htm

 

5 償却資産税

 ここまで、固定資産と減価償却について整理してきました。ここでは、固定資産にかかる税金についても触れていきます。

 

土地や不動産を所有している方は、毎年、固定資産税を納付していると思いますが、不動産以外の固定資産で減価償却が必要なものには償却資産税がかかります。

償却資産税とは、減価償却の対象となる償却資産に対して課される固定資産税の一部です。

 

よって、具体的には、事業で使っているエアコン、冷蔵庫などの器具備品などが対象となります。

これらの償却資産を所有している場合、毎年1月1日時点の所有内容を、1月31日までに都税事務所に申告する必要があります。

 

償却資産税の税額は、所有資産の課税標準額に税率1.4%を掛けて算出しますが、課税標準額の合計が150万円未満の場合は、課税されません。

 

会計業界、そして経理業務に従事している方にとって、1月は繁忙期と言える時期ですね。

源泉所得税の納期特例、税務署への法定調書、各市区町村へ給与支払報告書等、各方面に提出する書類も多いですが、償却資産の申告も忘れずにタスクに入れておくことが重要ですね。

 

6 金額ごとの減価償却の特例

ここでは、購入した金額ごとに適用することができる減価償却の特例について、まとめたいと思います。

 

一般的には、取得価額が10万円以上のものが固定資産であるという認識が多いと思いますが、一括償却資産と言って、購入した金額を3年で均等に損金算入するものや、

中小企業者等を対象に、取得価額30万円未満の減価償却資産を、一定の要件のもとに、損金算入することができる特例があります。

 

取得額別に、法人税上の取り扱い、償却資産の申告有無を図解しました。

 

⑴少額減価償却資産

取得価額が10万円未満の少額減価償却資産は、耐用年数によらず事業供用日に全額経費で処理できます。その場合は、固定資産台帳への登録も不要です。

 

⑵一括償却資産

取得価額20万円未満の減価償却は、一律3年間で減価償却することができます。事業年度ごとに一括償却資産の合計額で固定資産台帳へ登録が必要です。

3年間の償却ですが、月割の概念はありません。

つまり、取得価額×事業年度の月数/36月の金額を損金に算入します。

「一括」とは全部まとめるという意味と考えられます。

 

⑶中小少額減価償却資産

中小企業の場合、取得価額10万円以上30万円未満の減価償却資産であれば、事業供用日に全額経費にできます。

ただし、事業年度ごとの取得価額の合計は300万円を限度としており、固定資産台帳への登録も必要となります。

 

この特例の対象となる法人は、青色申告法人である中小企業者等で、常時使用する従業員が1,000人以下の法人に限られています。

 

10万円以上の場合は、取得価額によって選択することが出来ます。

例えば、15万円のパソコンを購入した場合、⑵か⑶の処理を、選択することになります。

 

⑷通常の減価償却資産

上記のいずれでも処理をしなかった物については、通常の減価償却資産として、主に定額法か定率法で減価償却を行っていきます。

 

7 まとめ

 

今回は、固定資産の基本的な考え方と償却資産税、そして金額ごとの減価償却の特例について整理いたしました。

固定資産、減価償却、耐用年数…など、聞きなれない用語が多いと、難しいように思いますが、会社の利益を正しく把握するために必要不可欠な処理です。

 

取得時の処理に注目しがちですが、除却時にも会計処理が必要となります。

私は実務上、除却処理を失念していたことがあり、決算時に慌てて計上した経験があります。

 

そのようなミスをなくすためにも、固定資産台帳での管理も重要ですね。


必見!合併時の税務申告

こんにちは!公認会計士の岸です。

 

現状のコロナ禍において、業績悪化に悩まれている中小企業様は多いかと思われます。

その中で、事業の継続が困難になり、会社や事業を他社に売却するM&Aの動きが徐々に活発になってくるものと思われます。

 

M&Aを実行する際には、様々な税務論点の検討が必要となり、特にメインの論点となる

組織再編の適格判定や欠損金の引継ぎに関しては多くの書籍や文献が存在します。

 

一方で、実際の申告書をどう書くか、といった部分を解説している媒体はそこまで多くないように見受けられたため、

私自身の備忘も兼ねて、組織再編時の申告書作成の実務的な留意点をご紹介いたします。

 

組織再編には様々な形態がありますが、ここでは、ある会社が他社を吸収合併した場合を想定します。

※ 2022.6.2追記 一部内容に誤りがあることが解り、訂正させて頂きました。大変失礼しました。

※ 2022.6.2追記 一部の様式が変更されていますが、古い様式での記載例となっています。

 

1.想定条件

以下の条件を想定して、申告書の記載例などを紹介していきます。

簡単な吸収合併のケースを想定します。

 

2.法人税申告(被合併法人)

被合併法人の最終事業年度の申告といっても、基本的には通常の期の申告と同様に税務処理を行えば問題ありません。

ただし、申告書の記載上、いくつかの留意点があります。

 

■国税申告書(別表一)

主な記載欄ごとの情報は以下の通りです。

記載例は以下の通りです。

 

提出先等

被合併法人の情報ではなく、合併法人の情報を記載する点に注意しましょう。

被合併法人の最終事業年度の税金の申告、納付時には、被合併法人は合併により消滅してしまっていることから、

合併法人が申告、納付を行うためです。

なお、法人名の欄では、合併法人名の後ろに、被合併法人名を併せて記載します。

 

旧納税地及び旧法人名等

被合併法人の納税地及び法人名を記載します。

 

添付書類

以下の書類にチェックを付けます。

通常の申告ではチェックが付かない場所かと思いますので、チェック漏れに注意しましょう。

また、チェックするだけではなく、書類の申告書への添付も忘れないようにしましょう。

 

◆“組織再編成に係る契約書の等の写し“

:合併の場合には合併契約書の写しです。

◆“組織再編成に係る移転資産等の明細書”

:(2)で説明する付表のことです。

 

利用者識別番号(e-Tax)

電子申告を行う法人限定の注意点ですが、利用者識別番号も合併法人の番号を使用しますので注意してください。

 

■組織再編成に係る主な事項の明細書(付表)

組織再編を行った際にはこの付表の添付が求められます。

当該付表は2020年12月時点において、電子申告に対応していないため、電子申告の達人などで

電子申告を行う際には、申告書の添付資料として、別ファイルで送付する必要があります。

 

記載例は以下の通りです。(当該附表は2020年12月時点のものです)

 

組織再編成の態様

該当する組織再編の形態をチェックします。

また、組織再編成の日には、合併契約書に記載されている組織再編の効力発生日を記載します。

 

適格区分

法人税法上の適格組織再編に該当するかどうかをチェックします。

適格組織再編に該当する場合には、根拠条文を併せて記載します。

適格要件の条文は複雑なので、参照条文を誤らないよう注意しましょう。

 

●組織再編成に係る関連法人

合併法人及び被合併法人の情報を記載します。

(名称及び所在地)

 

●株式保有関係等

適格組織再編の判定の基礎となる、株式の保有関係や割合、事業関連性などを記載します。

該当する適格要件の形態によって、記載の必要な箇所が異なってきます。

記載例は、最も要件が多い、共同で事業を行うための合併による適格合併を想定しています。

 

■地方税申告書

地方税の申告書の各欄に記載する情報は以下の通りとなります。

記載例は以下の通りです。

提出先等

提出先や法人番号、所在地については、被合併法人の情報を記載します。

それ以外の法人名などの欄は、合併法人の情報を記載します。

 

利用者ID(eLTAX)

利用者IDは、東京都については被合併法人のIDを使うように回答がありましたが、

自治体によって運用が異なる可能性があります。

そのため、申告書の提出前に、各自治体へ合併法人と被合併法人のどちらの利用者IDを使用すべきか、

電話で確認するようにしましょう。

 

3.消費税申告(被合併法人)

法人税と同様のため、省略します。

提出先や納税地は全て合併法人のものを記載します。

 

4.税務届出関係

吸収合併の際に提出する税務届出で基本的なものは以下の通りです。

 

この他にも、被合併法人が課税事業者選択届出書を提出している場合で、

合併法人が課税事業者の選択の特例を適用したい場合には、合併法人として改めて届出書を提出する必要があるなど、

個々の事例によって求められる届出が変わります。

また、特に会社分割の場合には、下記の国税庁のHPにもあるように、提出を検討する届出書が多岐に渡るため、

慎重な検討が必要になります。

届出の提出漏れが生じないように注意しましょう。

https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/kigyosaihen/mokuji.htm

 

5.合併における税務論点

以上では、申告書の記載について重点的に解説しましたが、合併における税務論点についても簡単に解説していきます。

 

合併にあたっては、そもそもその合併が適格合併に該当するのかどうか、

また適格合併に該当しても繰越欠損金が引き継げるのかどうか、といった点が最も重要な税務論点になるかと思います。

適格組織再編の判定や、繰越欠損金の取扱いについては非常に論点が多く、

それだけで本が1冊書けるような難解な税制になりますので、改めて記事にしたいと思います。

 

下記では、その他の合併における税務論点について俯瞰していきます。

 

◆適格合併の取扱い:

合併が税法上の適格合併に該当する場合には、被合併法人の資産負債は全て税務上の“簿価”で

合併法人に引き継ぐことになります。

そのため、いわゆる別表五(一)上の税務調整項目も、全て合併法人に引き継ぐことになります。

純資産部分についても、税務上の利益積立金額と資本金等の額をそのまま引き継ぐことになりますが、

親子間の合併などの場合には、抱き合わせ株式の調整が必要となりますので、注意が必要です。

他にも、法人税法では様々な規定に影響があり、過去の数値を使用して限度額計算や判定計算が

行われるような規定では、原則として被合併法人の数値と合併法人の数値の合計額で判定を行うことになります。

 

◆非適格合併の取扱い:

合併が税法上の非適格合併にが該当する場合には、被合併法人の資産負債は全て“時価”で

合併法人に譲渡されたものとして取り扱います。

被合併法人では時価譲渡により譲渡損益を認識する必要がありますし、

合併法人側ではいわゆるのれん相当額を 資産(負債)調整勘定という形で、

税務上の資産(負債)として認識します。

 

◆被合併法人のみなし事業年度:

合併を行った場合には、被合併法人は合併により消滅するため、合併が期中に行われた場合には

被合併法人の事業年度が1年を経過しない途中で途切れることになります。

この、途中で途切れた被合併法人の最終事業年度を、みなし事業年度といいます。

合併の効力発生日の前日が、被合併法人のみなし事業年度の末日となります。

 

◆事業年度が1年未満の場合の各種取扱い:

減価償却資産の償却率については、事業年度が1年存在することを前提として設定されています。

そのため、みなし事業年度が1年未満となる場合には、みなし事業年度の月数で償却率を調整することが必要となります。

また、交際費の定額控除限度額、法人税の税率判定、地方税の均等割、なども年額をベースとしているため、

月数による調整を行う必要があります。

 

◆納税義務判定と簡易課税判定(消費税):

合併により被合併法人を吸収した合併法人については、被合併法人の基準期間に相当する期間の課税売上高を考慮して、

納税義務判定を行う規定が設けられています。

課税事業者の判定漏れがないように注意しましょう。

一方で、簡易課税制度の適用判定における基準期間における課税売上高は、合併があったとしても

合併法人の課税売上高のみを使用して判定します。

納税義務判定の計算と混同しないように注意が必要です。

 

◆調整対象固定資産(消費税):

被合併法人が調整対象固定資産を取得しており、その調整対象固定資産を合併により合併法人が引き継いでいる場合には、

調整対象固定資産の調整計算に係る通算課税売上割合の判定を、合併法人で引き続き行う必要があります。

 

6.さいごに

今回は、吸収合併の場合を想定し、主に申告書の記載方法についてメインに解説いたしました。

M&Aは検討すべき論点が非常に多岐にわたり、税務業務の中でも高度な知識が求められる分野です。

事前に組織再編業務に精通した税理士に、組織再編実行時だけではなく、

事前のスキーム策定まで含めて相談することが非常に重要です。

 

弊社でもM&Aのスキーム提案などを数多く行っており、M&Aのマッチングサイトのアドバイザーとしての登録も行っています。

M&Aに興味がある方は、弊社でも様々なアドバイスや提案が可能ですので、お気軽にご相談いただければと思います。


超速報!令和3年度税制改正大綱を徹底解説!

こんにちは。

税理士の山田です。

 

今回は令和2年12月10日に公表された『令和3年度税制改正大綱』を解説します。

公表されたばかりの情報ですので、スピードと解り易さを重視して解説しております。

正確性を担保するものではございませんので、予めご了承ください。内容に誤り等がございましたら随時訂正して参ります。

また、税制改正大綱は税制改正の素案となるものであり、おおむねこの通りの改正がされることがほとんどですが、100%確実ではございません。確定事項ではない点はご理解ください。

 

Ⅰ個人所得税課税

①住宅ローン控除の特例措置

消費税率が10%に改正されたタイミングで導入された住宅ローン控除の特例措置で控除期間が通常は10年間のところが13年間に延長するというものがございました。こちらの措置について、従来は令和2年12月31日までに取得した住宅が対象となっていましたが、令和3年1月1日~令和4年12月31日までに取得の住宅についても適用が出来ることになります。契約の時期については縛りがありますので注意が必要です。

 

②社債の利子等に対する課税の見直し

社債の利子については、所得税・住民税において原則は分離課税(20.315%)が適用されるものの、同族会社が発行した私募債の利子については、同族株主やその親族が支払いを受ける場合には総合課税になるような措置がされています。ただし、同族会社であってもいわゆる子会社や孫会社から個人株主が利子の支払いを受ける場合には総合課税の対象となりませんでした。今回の改正で、株主が法人であっても、その法人に50%超の支配関係を有する個人は総合課税の対象になることになります。この改正は令和3年4月1日以後に支払を受けるべき社債の利子等について適用します。

 

③退職所得課税の適正化

退職金に対する所得税の課税においては、退職所得控除がされた後に1/2を乗じた金額が所得金額とされます。平成25年以降、勤続年数が5年以下の役員の場合には、この1/2を乗じる計算が出来ないようになる措置が取られていましたが、こちらの対象を役員だけではなく、従業員にも対象を拡大するというものです。ただし、従業員で改正の対象となる場合であっても、退職金額から退職所得控除を差し引いた金額のうち300万円部分については1/2の計算が認められており、それを超えた部分についてのみ1/2を認めないという措置がされます。この措置は令和4年分以後の所得税について適用します。

 

④源泉徴収関係書類の電磁的方法による提供の要件緩和

源泉徴収関係書類とは、いわゆる年末調整の際に提出する書類のことです。こちらの書類について電磁的方法(つまり、クラウドの給与システム等を利用して書類を提出する方法)による場合には、書面による書類の保存が不要とされていました。ただし、この方法による場合には事前に申請書の提出が必要で税務署長の承認を受ける必要がありましたが、こちらの承認手続きが不要となりました。この改正は、令和3年4月1日以後に提出する源泉徴収関係書類について適用します。

 

Ⅱ資産課税

①納税義務者と課税財産の範囲の見直し

いわゆる非居住者が、相続開始時点で国内に居住する在留資格を有する者から相続等により財産を取得する場合には、課税対象財産は国内財産に限定され、国外の財産については課税しないこととされます。

※現行の取扱については国税庁の下記HPを参照ください。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4138.htm

 

②直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税措置

令和3年4月1日から同年12月31日までの間に契約を締結した場合における非課税限度額が下記の金額に引き上げられます。

現行

改正案

消費税等の税率 10%が適用される住宅用家屋の新築等

1200万円

1500万円

上記以外の住宅用家屋の新築等

800万円

1000万円

※上記の非課税限度額は、耐震、省エネ又はバリアフリーの住宅用家屋に係る非課税限度額であり、一般の住宅用家屋に係る非課税限度額は、それぞれ 500 万円を減らした額

 

③直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税措置の改正

信託設定期間中に贈与者が死亡した場合において、相続税が課税されるケースは3年以内贈与に限定されていましたが、設定期間中の相続は全て対象となりました。ただし、受贈者が一定の要件に該当する場合(23歳未満である、学校等に在学中、教育訓練を受講している場合)については、従前どおり相続税の課税対象外とされます。この改正は令和3年4月1日以後の信託等により取得する財産が対象です。

 

④直系尊属から教育資金・結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税措置の改正

教育資金の一括贈与と結婚・子育て資金の一括贈与について、信託設定期間中に贈与者が死亡した場合で相続税の課税がされるケースについても、相続税額の2割加算の対象外とされていましたが、判定対象にも含まれることになりました。この改正も令和3年4月1日以後の信託等により取得する財産が対象です。

 

※上記③及び④の従前の制度内容については国税庁の下記HPを参照ください。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4512.htm

 

Ⅲ法人課税(大法人向け)

①産業競争力の強化法に係る措置

令和3年に産業競争力強化法の改正が予定されており、それにより事業適応計画(仮称)という制度が創設される予定です。詳細については現時点では解りかねますが、大綱によると「新商品開発や新生産方式・販売方式の導入により新需要開拓や生産性向上に全社を挙げて取り組む企業が提出する」とのことです。

この計画を提出した青色申告法人が、計画を実施するために必要な一定のソフトウェア(DXを促進するものが対象になると思われます)を取得した場合には、そのソフトウェアの取得価額について30%特別償却か3%~5%の税額控除を選択適用出来るようになります。

 

②大企業向け所得拡大促進税制の改正

従来の適用判定が一新され、新規雇用者給与等支給額により制度判定が行われることになります。「新規雇用者給与等支給額」とは、国内の事業所において新たに雇用した雇用保険法の一般被保険者(支配関係がある法人から異動した者及び海外から異動した者を除く。)に対してその雇用した日から1年以内に支給する給与等の支給額を言うようです。こちらの給与等支給額が前年比で2%以上増加することが適用要件とされます。具体的な計算については大綱からは読み取れないために、詳細は令和3年4月以降に明らかになると思われます。なお、適用時期は令和3年4月1日から令和5年3月31までの間に開始する事業年度となります。

※従前の所得拡大促進税制の取扱いについては経済産業省の下記HPを参照ください。

https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/syotokukakudaisokushin/syotokukakudai.html

 

③繰越欠損金の控除上限の特定創設

こちらは大法人を対象とした改正項目で、大法人は従前では欠損金の控除が当年度所得金額の50%までしか認められていませんでした。上記①にて説明した産業競争力強化法の事業適応計画の認定を受けた青色申告法人について、適用事業年度(※1)において特例対象欠損金(※2)がある場合には、累積投資残額(※3)の範囲内で、当年度所得金額の50%を超えて100%までの特例対象欠損金の控除が認められることになります。

※1「適用事業年度」とは、特例対象欠損金額が発生してからおおむね5年以内の期間を言います。詳細は割愛します。

※2 「特例対象欠損金額」とは、令和2年4月1日から令和3年4月1日までの期間内の日を含む事業年度(一定の特例あり)において生じた青色欠損金額を言います。

※3 「累積投資残額」とは、「事業適応計画に従って行った投資の額」-「既に本特例により当年度所得金額の50%を超えて損金算入した欠損金相当額」で計算します。

つまりは、コロナ禍で発生した欠損金額については、事業適応計画で行った投資額の範囲内で、50%超の欠損金利用を認めるというものです。

 

Ⅳ法人課税(中小法人向け)

①経営改善設備を取得した場合の優遇措置廃止

適用期限令和3年3月31日をもって制度を廃止します。制度の概要は中小企業庁の下記HPを参照ください。

https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/2015/150401zeisei.htm

 

②中小企業経営強化税制の延長

中小企業者等が特定経営力向上家設備等を取得した場合には、100%即時償却又は税額控除が出来る制度がありましたが、こちらの制度が対象設備を一部追加した上で延長がされます。適用期限は令和3年3月31日とされていましたが、令和5年3月31日まで延長がされます。制度の内容については中小企業庁の下記HPを参照ください。

https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/index.html

 

③中小企業向け所得拡大促進税制の見直し

本税制は2年間延長がされた上で、従前では継続雇用者給与等支給額の前年比にて行っていた1.5%以上の増加判定要件を、雇用者給与等支給額の前年比にて行うことになりました。これにより継続雇用者給与等支給額の集計が不要となりましたので、本制度の適用判定が非常に簡便になったと思います。なお、上乗せ措置の2.5%以上の増加割合判定についても同様に雇用者給与等支給額の前年比で行うことになります。また、給与等の支給額から控除する「給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額」について、範囲が明確になり雇用調整助成金等を控除しないことになります。

 

④中小企業の経営資源の集約化に資する税制の創設

本制度は中小企業等経営強化法の改正に伴う措置であり、改正により経営資源集約化措置(仮称)という制度が創設されるようです。具体的には、下記の要件を満たした青色申告書を提出する中小企業者等が、その取得する株式等の取得価額の70%の範囲内で、中小企業事業再編投資損失準備金として積み立てた金額を損金算入(費用処理)できることとなります。

<要件>

ⅰ)一定の時期に経営資源集約化措置(仮称)が記載された経営力向上計画の認定を受ける

ⅱ)その認定に係る経営力向上計画に従って他の法人の株式等の取得をする(10億円以下)

ⅲ)その株式等をその取得の日を含む事業年度終了の日まで引き続き有している

 

この準備金は、その株式等を有しなくなった場合やその株式等の帳簿価額を減額した場合には逆に一定額が益金算入(収益計上)され、それ以外の場合にもその積み立てた事業年度以後5年間で経過期間に応じてその準備金残高を均等に取り崩して、益金算入(収益計上)することになります。

 

Ⅴその他

①条約届出書等の提出手続きの電子化

本件は大綱からは詳細が読み取れないのですが、租税条約の届出書の提出手続きを電子化する内容にように読み取れます。もし、そうであれば国際取引が多い大企業等においては事務の効率化に繋がると思われます。詳細は不明ですが気になった改正項目となります。なお、租税条約の届出手続きについては国税庁の下記HPをご覧下さい。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2888.htm

 

②内国法人が外国子会社から受ける配当等の額に係る外国源泉税等の額の取扱いの見直し

大綱に下記の文章があるのですが、本件については現行で全額損金不算入とされている取扱いであるはずであり、大綱がどのようなことを想定しているのかが不明です。項目としてしては気になるものでしたので取り上げました。

<大綱文章>

外国子会社から受ける配当等の額(外国子会社配当益金不算入制度の適用を受ける部分の金額に限る。)に係る外国源泉税等の額の損金算入について、その配当等の額のうち内国法人の外国関係会社に係る所得の課税の特例(いわゆる「外国子会社合算税制」)との二重課税調整の対象とされる金額に対応する部分に限ることとする(現行:全額損金算入)。

本項については、情報収集をしたところ改正の内容が明らかになって参りました。まず前提として、外国子会社合算税制(いわゆるCFC税制)の対象になった課税対象金額から配当が行われた場合には、その配当に関する外国源泉税については全額が損金算入されることになります。しかし、例えば外国子会社からの配当金額が1,000で外国源泉税100が引かれて入金があったとして、課税対象金額は200だとします。この場合には、配当金額については200は全額が益金不算入、800が95%益金不算入となりますが、外国源泉税については100全額が損金に算入されます。この取扱いを改めて配当金額の取扱いに準じて、外国子会社合算税制の対象になった200に対応する外国源泉税20が損金算入の対象になるというものです。

また、一方で外国子会社合算税制の対象になった配当と通常の海外関連会社(外国子会社益金不算入制度の適用がない会社)からの配当についての外国税額控除も改正がされます。例えば、外国関連会社からの配当金額が1,000で外国源泉税100が引かれて入金があったとして、課税対象金額は200だとします。この場合には、配当金額については200は全額が益金不算入、800は全額が益金算入となりますが、外国源泉税については全額が損金算入となり外国税額控除の適用対象外になります。この取扱いを改めて配当金額の取扱いに準じて、外国子会社合算税制の対象外である800に対応する外国源泉税80については外国税額控除を認めるというものです。

※本項については12月17日に訂正を致しました。

 

③税務関係書類における押印義務の見直し

次に掲げる税務関係書類を除いて、税務関係書類の押印が必要なくなりました。さらに、この改正は令和3年4月1日以後に提出する税務関係書類について適用しますが、施工日前であっても実質的に押印を不要とするような柔軟な対応がされています。また、地方税についても同様の措置が取られます。

ⅰ)担保提供関係書類及び物納手続関係書類のうち、実印の押印及び印鑑証明書の添付を求めている書類

ⅱ)相続税及び贈与税の特例における添付書類のうち財産の分割の協議に関する書類

 

④電子帳簿等保存制度の見直し

この改正項目については今回の改正で一番重要であると考えています。そのために改めて本件だけで一度まとめようと思いますが、取り急ぎ概要のみ下記に整理します。本件は基本的には令和4年1月1日から施行されます。

(電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係)

・承認制度を廃止します。

・実質的に訂正等履歴要件、相互関連性要件が廃止され、検索要件が緩和されます。

・「システム概要書等の書類備付」「一定の電子機器と説明書等の備付」「調査官がデータのダウンロードを求めた場合には応じる」の3つの要件のみでOKとなります。

(スキャナ保存関係)

・承認制度を廃止します。

・タイムスタンプ要件の付与期間が入力期間(最長約2月以内)と同様となります。

・受領者等がスキャナで読み取る際に行う国税関係書類への自署を不要とします。

・電磁的記録について訂正又は削除を行った事実及び内容を確認することができるシステム、又は、訂正又は削除を行うことができないシステムであれば、タイムスタンプの付与が不要になります。

・適正事務処理要件(相互けん制、定期的な検査、再発防止策の社内規程整備等)が廃止され、検索要件が緩和されます。

(電子取引制度)

・タイムスタンプ要件の付与期間が最長約2月以内となります。

・検索要件が緩和されます。

 

⑤個人住民税の特別徴収税額通知について

給与所得に係る特別徴収税額通知について、eLTAXを経由して給与支払報告書を提出する特別徴収義務者が申出をしたときは、市町村は、当該通知の内容をeLTAXにて当該特別徴収義務者に提供しなければならないこととなります。つまり、地方税共有納税システムを利用することによって、住民税特別徴収税額の納付手続きがペイジー又はダイレクト納付により効率的に行うことが出来るようになります。この改正は令和6年度分以後の個人住民税について適用します。

 

⑥土地に係る固定資産税の負担軽減措置

令和3年度については、3年に一度の固定資産税の評価替えの基準年度にあたるため、本来であれば適正な時価に見直しがされ、固定資産税が課税されることになります。しかし、コロナの影響を鑑みて、一定の宅地及び農地については令和3年度の課税標準を令和2年度の課税標準と同額とする措置が取られます。これにより令和3年度の固定資産税は日本全国でみると数百億円規模の減税になるようです。


電子取引における証憑の保存について

こんにちは。

税理士の大塚です。

 

最近は請求書や領収書などの書類を、メールやシステムでやり取りするケースも増えてきました。特にコロナの影響からテレワークを推進されている企業も多く、極力紙ベースではなくデータでのやり取りへのシフトすることを検討されている方もいらっしゃると思います。今回は電子取引による書類の保存方法について解説します。

 

1 電子取引とは

電子取引とは、取引情報の授受を電磁的方式により行う取引をいいます。取引情報は、契約書、請求書、領収書等の書類に通常記載される事項であり、これらの情報を電子上でやり取りする取引になります。

具体的には、以下のようなものが該当します。

 

(1)電子メールによる請求書、領収書のPDFファイル等の受領
(2)インターネットのホームページから請求書、領収書のデータをダウンロードすることでの受領
(3)電子請求書や電子領収書の授受に係るクラウドサービスを利用
(4)クレジットカードの利用明細データ、交通系ICカードの支払データ等を活用したクラウドサービスの利用
(5)特定の取引に係るEDIシステムを利用

 

2 電子取引による書類の保存は税務署の承認が不要

電子データでの書類の授受がされた場合、大きく以下の二つに分けられます。

 

(1)電子データでも行うが、紙も発行されるケース
(2)電子データで完結するケース

 

(1)については、例えばメールで請求書を送った後に、原本を紙で郵送するようなケースです。紙が出る以上は、その紙を保存する義務が出てしまいます。紙ではなく電子データで保存をしたい場合は、3か月前までに税務署へ承認申請が必要です。相手から受領する請求書や領収書を電子データとして保存する場合は、スキャナ保存といって、タイムスタンプを付与する必要があります。

(2)については、①紙に出力したものを保存、②電子データのまま保存、のいずれかを選択することになります。ここが重要なポイントですが、②電子データのまま保存を選択した場合でも、税務署への承認申請は不要です。

 

簡潔にまとめると以下の通りです。

 

但し、電子取引につき無条件で電子データのまま保存することを認めているわけではなく、一定の要件を満たす必要があります。逆に言えば、一定の要件を満たすのが難しい場合は、①紙に出力したものを保存することが求められます。

 

3 電子データのまま保存する要件

電子取引を行った際に、電子データのまま保存を行う要件は以下の通りです。これら全ての要件を満たす必要があります。

 

(1)システムの概要を記した書類の備付

自社開発プログラムを利用する場合に限ります。

(2)見読可能装置の備付

ディスプレイ、プリンターなどの備付が必要です。

(3)検索機能の備付

取引年月日、取引金額など主要な項目につき検索ができることに加えて、例えば1月から3月の間といった範囲を指定しての条件設定が可能であること、任意の二以上の項目を組み合わせて条件設定が可能であること、が必要となります。

(4)その他以下のいずれかの要件を満たす

①タイムスタンプが付与されたデータを授受

②授受後遅滞なくタイムスタンプを付与

③訂正、削除ができない(行った場合確認ができる)システムを利用しての授受、保存

④「正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規定」の策定、運用、備付

 

電子データのまま保存と一口に言っても、例えばメールで送られてきたPDFの請求書をサーバーに保存しておけば良いというわけではなく、これらの4要件を満たしていくことが必要です。従って、現実的には外部システムを導入して保存していく以外は難しいかと思います。

(1)から(3)までの要件は保存のためのシステム面の規定です。外部システムを導入される場合は、(1)の要件は不要ですので、(2)(3)を満たす必要があります。特に(3)の検索機能の備付については、ある項目を単純に検索できるだけでなく、範囲指定や任意の二以上の項目指定も必要など細かい要件が求められます。

 

それに対して、実際の電子データの授受につきどのような措置が必要かというのが(4)の部分です。従来は②、④しか認められていませんでしたが、改正により2020年10月1日以降は①、③が加わることになりました。この改正により、例えば業者からの請求書にタイムスタンプがあらかじめ付与されていれば、①の要件を満たすことになります。

 

また、訂正や削除ができないクラウドサービスのシステムを通じて請求書等を授受する場合は③の要件を満たします。このようなサービスは今後増加していくことが予想されますが、保存要件に合致するかは、事前にシステム会社に確認することをお勧めします。

タイムスタンプや、訂正・削除に制限を持たせたシステムを利用することが難しい場合でも、④の事務処理の規定があれば電子データのまま保存することが可能です。国税庁が公表している「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」の問19に具体的な規定の例文がありますので、参考にしてみて下さい。

※国税庁 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/07denshi/02.htm#a019

国税庁が公表している規定は、自社の規定により訂正、削除を防止する規定になっておりますが、取引相手と契約によって防止する方法も認められています。この場合は、事前に訂正、削除の防止に関する条項を含む契約を締結する必要があります。


解散、清算時の税務

こんにちは。

税理士の大塚です。

事業を廃止する場合や子会社を整理する目的で法人を消滅させたい為、解散、清算という手続きを踏むことがあります。

今回は会社を解散、清算した際の税務の取り扱いについて解説します。

法的な会社清算などもありますが、今回は、通常の解散、清算に限定します。

 

1 解散から清算までの流れ

 

(1)事業年度の考え方

 

法人を消滅させる場合、「解散」と「清算」という二段階を踏むことになります。

法人を解散した場合、期首から解散の日までの期間をみなし事業年度として、その時点で事業年度が区切れます。

ここで解散事業年度として、一度申告が必要となります。(図 みなし事業年度①)

その後、残った資産、債務を整理する期間があり、株主に分配すべき財産を確定させます。

この財産のことを残余財産と言います。残余財産が確定するまでに1年以上を要する場合は、

解散の日の翌日から1年毎に申告が必要となります。(図 みなし事業年度②)

残余財産が確定すると、残余財産の確定日までの期間がみなし事業年度となり、

これが最終事業年度となり、最後の申告が必要となります。(図 みなし事業年度③)

 

 

従って、解散・清算を行うと、解散事業年度、清算事業年度で最低2回は申告が必要となり、

残余財産が確定するまでに1年以上を要する場合は、申告回数もその分増加します。

申告期限は、原則事業年度終了の日の翌日から2か月以内であり、延長申請を出されている場合は延長も可能です。

但し、残余財産確定事業年度のみ、残余財産確定した日の翌日から1か月以内

(その期間に残余財産の最終分配が行われる場合は、行われる日の前日まで)となります。

 

(2)税金の計算方法

 

通常の損益計算(益金から損金を控除)により税金が計算されます。

会社清算にあたり、債務免除を受ける場合も想定されますが、債務免除益として収益認識される為、注意が必要です。

 

(3)残余財産の分配

 

株主に対して残余財産の分配があった場合、有価証券の譲渡損益のみならず、みなし配当が発生する場合があります。

みなし配当は、本来の配当ではないものの、配当を受けたとみなされる制度です。

清算時の資本金等の額を超える金額の分配があった場合には、

資本金等の額部分は有価証券の譲渡対価となりますが、その超える金額はみなし配当とされます。

個人株主の場合、みなし配当は総合課税となりますので、累進税率により税額が高額になる可能性があります。

 

 

また、清算される法人としては、みなし配当にかかる源泉所得税を徴収して納付する必要があります。

2 繰越欠損金の取り扱い

(1)概要

 

通常の事業年度と同じく繰越欠損金の利用は可能です。

資本金1億円超の会社や資本金5億円以上の完全子会社は繰越欠損金の利用につき

所得金額の50%までの使用制限が生じますが、それも同様です。

解散事業年度、清算事業年度につき特例で制限が生じないということはありません。

 

債務免除を受ける場合など、多額の利益が出る可能性もありますので、

特に欠損金の制限がある会社は納税も意識しないといけません。

 

(2)残余財産がないと見込まれる場合

 

清算事業年度については、残余財産がないと見込まれる場合は、期限切れ欠損金を利用することができます。

残余財産がないと見込まれるかどうかは、清算事業年度毎に判定を行う必要があります。

残余財産確定までに時間を要する場合は、複数回申告することが想定されますが、それぞれで判定を行います。

 

法人税基本通達12-3-8によると、債務超過であれば要件を満たすことになります。

但し、残余財産確定事業年度については債務超過の状態だと通常の清算はできませんので、

純資産が0円の状態であれば、残余財産はないこととなり、期限切れ欠損金を利用できると考えられます。

 

また、期限切れ欠損金を利用する場合は、残余財産がないと見込まれる書類を申告時に添付する必要があります。

実務上は、資産、負債を時価に修正した実態貸借対照表などを添付します。

時価については、事業年度終了時の処分価格によりますが、

事業譲渡を前提とした解散である場合で継続して他の法人で事業供用される見込みであるときは、

譲渡される場合に通常付される価額によります(法人税基本通達12-3-9)。

 

(3)期限切れ欠損金の計算方法

 

具体的な期限切れ欠損金の金額は①から②を控除した金額となります。

①適用年度終了の時における前事業年度以前の事業年度から繰り越された欠損金額の合計額

②青色欠損金額又は災害損失欠損金額

 

上記①は法人税法基本通達12-3-2において、別表5(1)の期首現在利益積立金額の合計額とされています。

期限切れ欠損金は俗称ですので、適用期限を経過した別表7(1)の繰越欠損金ということではなく、

別表5(1)を確認すれば損金可能限度額が分かります。

 

(4)欠損金の繰戻還付

 

通常は、中小企業者等以外は繰戻還付の適用は停止されていますが、

解散事業年度、清算事業年度に関しては、資本金の大きさに関わらず適用可能です。

 

3 繰越欠損金の引継

例えば100%子会社など完全支配関係のある会社が清算した場合、

親会社は子会社が使用し切れなかった繰越欠損金を引き継ぐことが可能です。

その代わり、親会社で子会社株式の清算損失を損金にすることはできません。

清算損失を損金にして繰越欠損金も引き継ぐと、二重で損失を取り込むことになりますので、制限を入れています。

また、繰越欠損金を全額引き継げるのは、支配関係が生じてから5年を経過している場合、

子会社設立から継続して支配関係がある場合などに限られます。

清算する子会社が過去5年以内に買収されたものである場合は、

買収した事業年度以降に生じた欠損金しか引継ぐことができないため注意が必要です。

 

4 その他の税金の取り扱い

(1)事業税

 

事業税は申告書を提出した日を含む事業年度の損金になります。

そうすると、残余財産確定事業年に生じる事業税は損金算入されるタイミングが失われてしまう為、

残余財産確定最終事業年度において事業税を損金算入させることができます。

 

また、外形標準対象法人については、解散の日における資本金が1億円を超える場合に適用されます。

この場合、解散後に減資をしたとしても、清算事業年度は外形標準の対象となります。

但し、清算事業年度中は資本割については課せられません。

加えて、残余財産確定した日を含む最終の清算事業年度は、付加価値割、資本割ともに課税されません。

 

(2)消費税

 

解散、清算中の事業年度であっても消費税の納税義務は通常通りです。

資産の整理による売却が多額になる場合などは、消費税の納税があることにも留意する必要があります。

 


新型コロナウイルス感染症に関する申告期限の延長について徹底解説!!

こんにちは。

税理士の山田です。

 

この度の新型コロナウイルスの影響で多大な被害が出ております。

まずは、実際に被害に遭われている方にお見舞いを申し上げます。

 

今回の新型コロナウイルスの対策について国税庁は柔軟な対応をしてくれています。国税庁のHPにてQAが公表されていますが、こちらを紐解いて見ようと思います。

今回は条文などをベースにした解説で、解りやすさよりも根拠を重視していますので、どちらかというと同業者の方向けの内容となりますので、解り難さにはご了承ください。

 

国税庁よりFAQ公開

 

現状、新型コロナウイルスに関連した申告期限の延長について、下記の3件のFAQが公表されています。

国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ(PDF/1,252KB)

申告所得税、贈与税及び個人事業者の消費税の申告・納付期限の個別指定による期限延長手続に関するFAQ(PDF/708KB)

法人税及び地方法人税並びに法人の消費税の申告・納付期限と源泉所得税の納付期限の個別指定による期限延長手続に関するFAQ(PDF/846KB)

 

上記のFAQでは個人や法人の確定申告について個別延長を認めます、という旨の記載があります。

 

どのような場合に個別延長が認められるか?

 

FAQでは、具体的には下記のような場合に個別延長が認められる、とあります。

○ 新型コロナウイルス感染症の影響により、法人がその期限までに申告・納付ができないやむを得ない理由がある場合には、申請していただくことにより期限の個別延長が認められます。

○ このやむを得ない理由については、例えば、法人の役員や従業員等が新型コロナウイルス感染症に感染したようなケースだけでなく、次のような方々がいることにより通常の業務体制が維持できないことや、事業活動を縮小せざるを得ないこと、取引先や関係会社においても感染症による影響が生じていることなどにより決算作業が間に合わず、期限までに申告が困難なケースなども該当することになります。

① 体調不良により外出を控えている方がいること

② 平日の在宅勤務を要請している自治体にお住いの方がいること

③ 感染拡大防止のため企業の勧奨により在宅勤務等をしている方がいること

④ 感染拡大防止のため外出を控えている方がいること

○ また、上記のような理由以外であっても、感染症の影響を受けて申告・納付期限までに申告・納付が困難な場合には、個別に申告・納付期限の延長が認められます。

〇 新型コロナウイルス感染症に感染した⽅はもとより、体調不良により外出を控えている⽅や、平⽇の在宅勤務を要請している⾃治体にお住まいの⽅、感染拡⼤により外出を控えている⽅など、新型コロナウイルス感染症の影響により、確定申告会場にお越しいただくことが困難な⽅や、申告書を作成することが困難な⽅については、個別に申告期限延⻑の取扱いをすることとしています。

 

非常に幅広い書き方がされておりますので、実際のところでは緊急事態宣言が発令されているエリアに本店を構えている会社や住所がある個人については、ほぼ個別延長が認められるのではないかと思われます。

 

個別延長とは何か?

 

また、今回の個別延長は国税通則法 11 条、国税通則法施行令3条3項、4項の規定に基づく延長となります。

少し前に個人の所得税・贈与税・消費税の申告期限が一律で4月16日まで延長されましたが、これは国税通則法 11 条、国税通則法施行令3条1項の規定に基づく延長で、個別ではなく、国税庁がエリアなどを指定して延長を決めるものになります。

 

条文を整理します。

国税通則法第11条  災害等による期限の延長

国税庁長官、国税不服審判所長、国税局長、税務署長又は税関長は、災害その他やむを得ない理由により、国税に関する法律に基づく申告、申請、請求、届出その他書類の提出、納付又は徴収に関する期限までにこれらの行為をすることができないと認めるときは、政令で定めるところにより、その理由のやんだ日から2月以内に限り、当該期限を延長することができる。

国税通則法施行令第3条  災害等による期限の延長

1 国税庁長官は、都道府県の全部又は一部にわたり災害その他やむを得ない理由により、法第11条(災害等による期限の延長)に規定する期限までに同条に規定する行為をすることができないと認める場合には、地域及び期日を指定して当該期限を延長するものとする。

3 国税庁長官、国税不服審判所長、国税局長、税務署長又は税関長は、災害その他やむを得ない理由により、法第11条に規定する期限までに同条に規定する行為をすることができないと認める場合には、前2項の規定の適用がある場合を除き、当該行為をすべき者の申請により、期日を指定して当該期限を延長するものとする。

4 前項の申請は、法第11条に規定する理由がやんだ後相当の期間内に、その理由を記載した書面でしなければならない。

 

本来は納税者の申請に基づいて延長の処分を決めるのですが、今回はFAQにて『別途、申請書等を提出していただく必要はなく、申告書の余白に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」である旨を付記していただくこととしております』と案内があります。

 

具体的な記載の方法については、FAQを確認してください。

 

納付期限も全て延長されているのか?利子税・加算税は?

 

FAQにおいて『この場合、申告期限及び納付期限は原則として申告書等の提出日となります。』と記載があります。上記のように申告書に延長申請の旨を記載して提出すると、申告書の提出日が納付期限となります。

 

ここで気になってくるのが、利子税と加算税の取扱いです。とくに、法人税の申告期限の延長の場合などは申告期限内であっても利子税が掛かりますが今回はどうなのでしょうか。

 

まず、延滞税・利子税について条文を確認してみましょう。

国税通則法第63条  納税の猶予等の場合の延滞税の免除

2 第11条(期限の延長)の規定により国税の納期限を延長した場合には、その国税に係る延滞税のうちその延長をした期間に対応する部分の金額は、免除する。

国税通則法第64条  利子税

3 第60条第4項、第61条第2項(延滞税の額の計算の基礎となる期間の特例)、第62条(一部納付が行われた場合の延滞税の額の計算等)並びに前条第2項及び第6項の規定は、利子税について準用する。

 

つまり、国税通則法11条に基づく期限の延長ですので、利子税や延滞税は掛からないということです。ただし、申告書の提出日が納付期限となりますのでそれ以降については延滞税・利子税がかかる点は注意してください。

なお、現在(4月12日時点で)国会で審議中の延滞税免除による納税猶予が可決されれれば、この辺りは関係なく延滞税が掛からなくなる見込みです。

いわゆる通常の法人税の延長申請は、法人税法の規定に基づく期限の延長ですので、その場合には利子税が掛かりますが、国税通則法11条は別の規定となります。

 

続いて、加算税についてみて見ましょう。加算税については、過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税と種類がたくさんありますが、過少申告加算税、無申告加算税について今回は当てはまらないので除外します。

 

不納付加算税について条文を確認します。

第67条  不納付加算税

源泉徴収等による国税がその法定納期限までに完納されなかつた場合には、税務署長又は税関長は、当該納税者から、納税の告知(第36条第1項(納税の告知)の規定による納税の告知(同項第2号に係るものに限る。)をいう。次項において同じ。)に係る税額又はその法定納期限後に当該告知を受けることなく納付された税額に100分の10の割合を乗じて計算した金額に相当する不納付加算税を徴収する。ただし、当該告知又は納付に係る国税を法定納期限までに納付しなかつたことについて正当な理由があると認められる場合は、この限りでない。

 

また、法定納期限とはどういう定義か?これは国税徴収法基本通達に記載があります。

(国税を納付すべき期限)

14 法第2条第10号本文の「国税に関する法律の規定により国税を納付すべき期限」については、次のことに留意する。

(1)通則法第11条《災害等による期限の延長》の規定により国税の法定納期限が延長された場合には、その延長された期限が法定納期限となる。

 

つまり、通則法11条の延長がされるとこれが法定納期限ということになりますから、源泉所得税の不納付加算税も掛からないものと思われます。