ストックオプションに対する課税(Q&A)(最終改訂令和5年7月)を徹底解説!

ストックオプションに対する課税(Q&A)(最終改訂令和5年7月)を徹底解説!

こんにちは。税理士の山田です。

国税庁は5月30日、ストックオプションに対する課税(Q&A)を公表するとともに、税制適格SOに係る付与契約時の株価算定ルールに関連して通達改正に向けたパブリックコメントを開始しました。更にこの7月にパブリックコメントの募集が終了するとともに、ストックオプションに対する課税(Q&A)が更新されましたので、その内容をまとめていきたいと思います。

 

【留意点】

・この記事は、主にChatGPTを利用して作成しています。

・この記事は、出典:国税庁「ストックオプションに対する課税(Q&A)令和5年5月(最終改訂令和5年7月)」に基づいて作成しています。

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/kaisei/230707/pdf/02.pdf

・図表は「ストックオプションに対する課税(Q&A)令和5年5月(最終改訂令和5年7月)」より引用しています。

 

1用語の意義

用語の意義は以下の通りです。

用語説明
ストックオプション企業が従業員に対して株式を一定の価格で購入する権利を与える制度。この権利を行使することで、従業員は企業の株式を取得することができます。ストックオプションは、従業員のモチベーション向上や長期的な雇用関係の維持を目的としています。
権利行使ストックオプションで与えられた株式購入権利を実際に使用し、株式を購入する行為を指します。
権利行使価額ストックオプションで株式を購入する際の価格を指します。この価格はストックオプションが付与される際に設定されます。
税制適格税法上特定の条件を満たすことで、税務上の優遇措置を受けることができる制度や取引を指します。ストックオプションにおいては、税制適格とされると、ストックオプションの付与や行使に関連する所得が課税されるタイミングや方法に影響を与えます。

 

 

2税制適格ストックオプションの要件

税制適格ストックオプションの要件は以下の通りです。

要件詳細
ストックオプションの対象者ストックオプションは、発行会社の取締役等に無償で付与されること。
ストックオプションの権利行使期間ストックオプションの行使は、付与決議の日後2年を経過した日からその付与決議の日後10年(設立後5年以内であることなど特定の条件を満たす会社では15年)を経過する日までの間に行わなければならない。
ストックオプションの権利行使価額の年間合計ストックオプションの行使の際の権利行使価額の年間の合計額が1,200万円を超えないこと。
ストックオプションの行使価格ストックオプションの行使に係る1株当たりの権利行使価額は、当該ストックオプションの付与に係る契約を締結した株式会社の当該契約の締結の時における1株当たりの価額相当額以上であること。
ストックオプションの譲渡制限取締役等において、ストックオプションの譲渡が禁止されていること。
ストックオプションの行使に係る株式の交付ストックオプションの行使に係る株式の交付が、会社法第238条第1項に定める事項に反しないで行われるものであること。
ストックオプションの行使により取得した株式の保管発行会社と金融商品取引業者等との間であらかじめ締結された取決めに従い、金融商品取引業者等において、当該ストックオプションの行使により取得した株式の保管の委託等がされること。

 

 

3税制適格ストックオプションの課税関係

税制適格ストックオプションの課税関係については以下のようになります。

課税時期課税内容
付与時の課税課税関係なし
権利行使時の課税課税関係なし(繰り延べ課税)
譲渡時の課税株式譲渡益課税(譲渡価額 – 権利行使価額)

 

付与時の課税:税制適格ストックオプションの付与時には、譲渡制限が付されているため、そのストックオプションを譲渡して所得を実現させることができない。したがって、付与時には課税関係は生じません。

権利行使時の課税:税制適格ストックオプションの行使時(株式の取得時)の経済的利益については、租税特別措置法の規定により、課税が繰り延べられることから、行使時には課税関係は生じません。

譲渡時の課税:税制適格ストックオプションを行使して取得した株式を売却した場合、株式譲渡益課税の対象となります。具体的には、譲渡時の株価から、権利行使価額を差し引いた額が株式譲渡益となります。

 

具体的な事例を考えてみましょう:

ある従業員が勤務先から税制適格ストックオプションを取得したとします。以下のような価格が設定されているとします:

ストックオプションの付与時の株価:200円

ストックオプションの行使時の株価:800円(権利行使価額:200円)

権利行使により取得した株式の譲渡時の株価:1,000円

この場合、付与時には課税が生じません。次に、従業員がストックオプションを行使して株式を取得した場合でも、課税は繰り延べられます。最後に、従業員が取得した株式を売却した場合、売却価格(1,000円)から権利行使価額(200円)を差し引いた800円が株式譲渡益となり、これが課税の対象となります。

 

 

4税制非適格ストックオプション(無償・有利発行型)の課税関係

税制非適格ストックオプション(無償・有利発行型)の課税関係については以下のようになります。

課税時期課税内容
付与時の課税通常は課税関係なし(ただし、一部の場合において付与時に所得として課税される可能性あり)
権利行使時の課税給与所得として課税(行使時の株価 – 権利行使価額)
譲渡時の課税株式譲渡益課税(譲渡時の株価 – 行使時の株価)

 

付与時の課税: 一般的に、非適格ストックオプションには譲渡制限が付されており、そのストックオプションを譲渡して所得を実現させることができないため、付与時には課税関係は生じません。しかし、オプションが「即時行使可能」である場合や、特定の条件下では、付与時に所得として課税されることがあります。

権利行使時の課税:税制非適格ストックオプションの行使時(株式の取得時)には、行使によって生じた経済的利益は給与所得となります。具体的には、行使時の株価から権利行使価額を差し引いた額が給与所得となります。発行会社は、この経済的利益について、源泉所得税を徴収して納付する必要があります。

譲渡時の課税:税制非適格ストックオプションを行使して取得した株式を売却した場合、株式譲渡益課税の対象となります。具体的には、譲渡時の株価から、行使時の株価を差し引いた額が株式譲渡益となります。

 

具体的な事例を考えてみましょう:

ある従業員が勤務先から税制非適格ストックオプションを取得したとします。以下のような価格が設定されているとします:

ストックオプションの付与時の株価:200円

ストックオプションの行使時の株価:800円(権利行使価額:200円)

権利行使により取得した株式の譲渡時の株価:1,000円

この場合、付与時には課税が生じません。次に、従業員がストックオプションを行使して株式を取得した場合、行使時の株価(800円)から権利行使価額(200円)を差し引いた600円が給与所得として課税されます。最後に、従業員が取得した株式を売却した場合、売却価格(1,000円)から行使時の株価(800円)を差し引いた200円が株式譲渡益となり、これが課税の対象となります。

 

 

5税制非適格ストックオプション(有償型)の課税関係

税制非適格ストックオプション(有償型)の課税関係については以下のようになります。

課税時期課税内容
購入時の課税課税関係なし
権利行使時の課税課税関係なし(経済的利益は所得税法上認識されない)
譲渡時の課税株式譲渡益課税(譲渡時の株価 – 購入価額 – 権利行使価額)

 

購入時の課税:税制非適格ストックオプション(有償型)は、適正な時価で購入されているため、経済的利益は発生せず、課税関係は生じません。

権利行使時の課税:税制非適格ストックオプション(有償型)の行使時に生じる経済的利益(ストックオプションの値上がり益)については、所得税法上、認識しないこととされています。

譲渡時の課税:税制非適格ストックオプション(有償型)を行使して取得した株式を売却した場合、株式譲渡益課税の対象となります。具体的には、譲渡時の株価から、ストックオプションの購入価額と権利行使価額の合計額を差し引いた額が株式譲渡益となります。

 

具体的な事例を考えてみましょう:

ある従業員が勤務先から税制非適格ストックオプションを適正な時価(50円)で購入したとします。以下のような価格が設定されているとします:

ストックオプションの購入時の株価:200円

ストックオプションの行使時の株価:800円(権利行使価額:200円)

権利行使により取得した株式の譲渡時の株価:1,000円

この場合、購入時には課税が生じません。次に、従業員がストックオプションを行使した場合でも、行使時に生じる経済的利益は所得税法上認識されません。最後に、従業員が取得した株式を売却した場合、売却価格(1,000円)からストックオプションの購入価格(50円)と権利行使価額(200円)の合計額(250円)を差し引いた750円が株式譲渡益となり、これが課税の対象となります。

 

 

6税制非適格ストックオプション(信託型)の課税関係

税制非適格ストックオプション(信託型)の課税関係については以下のようになります。

課税時期課税内容
信託組成時の課税信託金銭に対する法人課税
ストックオプション購入時の課税課税関係なし
ストックオプション付与時の課税課税関係なし
権利行使時の課税給与所得として課税(行使時の株価 – 取得価額 – 権利行使価額)
譲渡時の課税株式譲渡益課税(譲渡時の株価 – 行使時の株価)

 

信託組成時の課税:発行会社又は発行会社の代表取締役等が信託会社に信託した金銭に対して、法人課税が行われます。

ストックオプション購入時の課税:信託会社がストックオプションを適正な時価で購入した場合、経済的利益が発生しないため、課税関係は生じません。

ストックオプション付与時の課税:発行会社が役職員を受益者に指定し、信託財産として管理しているストックオプションを付与した場合、課税関係は生じません。

権利行使時の課税:役職員がストックオプションを行使して発行会社の株式を取得した場合、その経済的利益は給与所得となります。具体的には、行使時の株価から取得価額と権利行使価額の合計額を差し引いた額が経済的利益となります。

譲渡時の課税:役職員がストックオプションを行使して取得した株式を売却した場合、株式譲渡益課税の対象となります。具体的には、譲渡時の株価から、行使時の株価を差し引いた額が株式譲渡益となります。

 

具体的な事例を考えてみましょう:

ある役職員が勤務先から信託会社を通じて税制非適格ストックオプションを適正な時価(50円)で取得したとします。以下のような価格が設定されているとします:

ストックオプションの購入時の株価:200円

ストックオプションの付与時の株価:600円

ストックオプションの行使時の株価:800円(権利行使価額:200円)

権利行使により取得した株式の譲渡時の株価:1,000円

この場合、信託組成時には法人課税が行われます。次に、信託会社がストックオプションを適正な時価で購入した場合、課税は生じません。また、発行会社が役職員を受益者に指定し、ストックオプションを付与した場合も課税は生じません。役職員がストックオプションを行使して株式を取得した場合、行使時の株価(800円)から取得価額と権利行使価額の合計額(250円)を差し引いた550円が経済的利益となり、これが給与所得として課税されます。最後に、役職員が取得した株式を売却した場合、売却価格(1,000円)から行使時の株価(800円)を差し引いた200円が株式譲渡益となり、これが課税の対象となります。

 

 

7税制非適格ストックオプションを行使して取得した株式の価額

税制非適格ストックオプション(無償・有利発行型又は信託型)を行使して取得した株式の価額は、所得税基本通達 23~35 共-9の例により算定します。具体的には以下の通りです。

 

【取引相場のある株式のケース】

まずは取引相場のある株式については、以下のそれぞれのケースで算定をします。株式が金融商品取引所に上場されている場合、公表された最終価格を使用します。旧株が上場されており新株が上場されていない場合、旧株の最終価格を基準に新株の価額を合理的に計算します。株式が上場されておらず、気配相場価格がある場合、その価格を使用します。

 

【取引相場のない株式のケース】

取引相場のない株式に該当しない場合には、以下のケースごとにそれぞれの方法で算定します。

■売買実例がある場合:最近(一般的には約6ヶ月以内)に行われた売買の中から適正と認められる価額を使用します。売買が1回だけであっても売買実例として扱います。なお、増資は売買実例として取り扱いますが、新株予約権の発行や行使は売買実例には該当しません。また、種類株式を発行している場合には、株式の種類ごとに売買実例の有無を判定することになります。

■公開途上にある株式の場合:ブックビルディング方式または競争入札方式により決定される公募等の価格等を参照します。公開途上にある株式とは、金融商品取引所が株式の上場を承認したことを明らかにした日から上場の日の前日までのその株式及び日本証券業協会が株式を登録銘柄として登録することを明らかにした日から登録の日の前日までのその株式を指します。

■売買実例がなく、発行会社と事業の種類、規模、収益の状況等が類似する他の株式会社の株式の価額がある場合:その価額に比準して推定した価額を使用します。

■上記に該当しない場合:権利行使日等または権利行使日等に最も近い日におけるその発行会社の1株当たりの純資産価額等を参照して、通常取引されると認められる価額を算定します。ただし、一定の条件の下で財産評価基本通達の例により算定している場合には、その算定した価額とすることができます。ただし、その価額が著しく不適当と認められる場合(例えば、財産評価基本通達の例により算定した普通株式の価額が、会計上算定した普通株式の価額の2分の1以下となる場合など)は除きます。

 

 

8税制適格ストックオプションの権利行使価額(付与契約時の株価)

税制適格ストックオプションの要件である「権利行使価額が、付与契約時の株価以上であること」が要件とされていますが、その算定方法について説明をします。表にすると以下の通りになります。

方法評価方式
Ⅰ原則方式所得税基本通達 23~35 共-9による算定方式
Ⅱ特例方式財産評価基本通達の例による算定方式
└ⅰ原則的評価方式同族株主等が取得した株式の評価に使用
 └類似業種比準方式発行会社と事業の種類が同一又は類似する複数の上場会社の株価の平均値に比準
 └純資産価額方式発行会社の純資産価額(時価ベース)を発行済株式数で除算
└ⅱ特例的評価方式同族株主等以外の者が取得した株式の評価に使用
 └配当還元方式配当金額に一定の比率を適用

 

算定方法はⅠ原則方式Ⅱ特例方式の二つがあり、どちらの方式を用いても算定した価額以上の価額で「権利行使価額」を設定すれば、権利行使価額に関する要件を満たすこととなります。

 

Ⅰ原則方式:所得税基本通達 23~35 共-9によって算定する方式であり、 上記「7税制非適格ストックオプションを行使して取得した株式の価額」で説明をした方法です。

 

Ⅱ特例方式:財産評価基本通達の例によって算定します。この方式は、さらにⅰ原則的評価方式ⅱ特例的評価方式の二つに分かれます。

ⅰ原則的評価方式:同族株主等が取得した株式の評価に使用されます。評価方法としては以下の2つがあります。

・類似業種比準方式:発行会社と事業の種類が同一又は類似する複数の上場会社の株価の平均値に比準して、株式の価額を算定する方法です。

・純資産価額方式:発行会社の純資産価額(時価ベース)を発行済株式数で除して、株式の価額を算定する方法です。

ⅱ特例的評価方式:同族株主等以外の者が取得した株式の評価に使用されます。評価方法としては以下の1つがあります。

・配当還元方式:配当金額に一定の比率を適用して株式の価額を算定する方法です。

 

以下の表が具体的な算定方法になります。

 

また、特例方式を用いる場合には以下の点に留意する必要があります。

・新株予約権を与えられた者が発行会社にとって同通達 188 の⑵に定める「中心的な同族株主」に該当するときは、当該株式会社は常に「小会社」に該当するものとして計算をします。小会社の株式の価額は、1株当たりの純資産価額による評価を原則とするが、納税義務者の選択により、Lを0.50として以下の算式により計算することができます。
【算式】
類似業種比準価額×L+1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)×(1-L)

・発行会社が土地や上場有価証券等を有しているときは、財産評価基本通達 185 に定める「1株当たりの純資産価額」の計算に当たり、これらの資産については、新株予約権の付与に係る契約時における時価で計算します。

・純資産価額の計算に当たり、同通達 186-2により計算した評価差額に対する法人税額等に相当する金額は控除できません。