一時的に収入が増加された場合 平均課税制度の検討を
こんにちは。
税理士の大塚です。
プロ野球もドラフト会議が終わり、新人選手の契約のニュースも一段落してきました。
上位で入団する選手は契約金1億円など景気の良い話が出ますが、税金が大変ではないかと思われる方もいるのではないでしょうか。
日本の所得税は超過累進課税制度と言って、所得が増えるほど税率が上がります。
その年の所得金額によって、税率が変わる制度が採られています。
プロ野球選手の契約金のように収入が大きければ、当然税率も高くなります。
ところが、翌年の収入は契約金がなくなりますので、契約金をもらえる年は一時的に収入が増加した状態とも言えます。
このような話は何もプロ野球選手に限ったことではありません。
収入の変動が激しい事業を行われていて、ある年だけ収入が多くなるという場合もあるでしょう。
通常はもっと低い税率なのに、たまたま収入が増加した際にその分高い税率で多額の税金を支払わなければならない。
これでは、不公平だと感じる方もいらっしゃると思います。
例えば、同じ1億円をもらう場合でも、1年で1億円もらう方と、5年間2,000万ずつもらう方では、税金負担は圧倒的に前者が大きくなります。
そのような場合に備えて、「平均課税制度」という制度があります。
1 制度概要
平均課税制度とは、一時的に収入が増加した方や収入の変動が激しい方に対して設けられているもので、通常使用される超過累進税率よりも低い税率で計算できる制度です。
ただし、全ての方が適用できる制度ではありません。
前提として「変動所得」と「臨時所得」のいずれかの所得がある方が対象となります。
2 臨時所得と変動所得
代表的な「変動所得」、「臨時所得」は以下のものです。
(1)変動所得
原稿、作曲の報酬 著作権の使用料 漁獲による所得 など
(2)臨時所得
プロ野球選手の契約金、不動産の長期貸し付けによる権利金 など
これらに該当しない場合は、一時的に収入が増加されていても使用できません。
ただし、変動所得が範囲を限定しているのに対して、臨時所得は「これらに類する所得」と範囲を限定していませんので、該当しそうな収入があれば税務署へ相談してみるのも良いと思います。
3 適用できる条件
変動所得や臨時所得があった場合、平均課税制度を利用できる条件は下記の通りです。
(1)臨時所得、変動所得の合計が、総所得の20%以上であること
(臨時所得+変動所得) ≧ 総所得金額の20%
(2)変動所得がある場合は、前年、前々年の変動所得の合計の50%を超えていること
前年、前々年に変動所得がない場合は、金額の要件はありません。
この要件を満たさないと、臨時所得のみが平均課税制度の対象となります。
4 計算方法
平均課税制度が適用できる場合の具体的な計算例をみていきます。
●総所得金額35,000,000円
内 臨時所得10,000,000円 変動所得20,000,000円
●前々年と前年の変動所得の合計12,000,000円
(1)平均課税対象金額を求める
臨時所得の金額 + 変動所得の金額 -(前々年と前年の変動所得合計額の50%)
前々年と前年に変動所得がない場合は、単純に臨時所得と変動所得の合計となります。
10,000,000円+(20,000,000円-12,000,000円×50%)=24,000,000円
(2)平均課税対象金額の5分の4 を除いた所得金額に対する税金を求める
この場合は、通常の超過累進税率を用いて計算を行います。
35,000,000円 -24,000,000円 × 5分の4 =15,800,000円
15,800,000円に対する税金を超過累進税率で計算 → 税金 3,678,000円
(3)平均税率を求める
上記の(2)で求めた税金を、対象となった所得で除して割合を求めます。小数点以下は切り捨てです。
税金3,678,000円 ÷ 対象となった所得15,800,000 = 平均税率 23%
(4)残りの平均課税対象額の5分の4部分の所得に対して平均税率で税金を求める
24,000,000円 × 5分の4 =19,200,000円
19,200,000円 × 23% = 税金 4,416,000円
(5)税額を合算する
上記(2)と上記(4)の合算になります。
3,678,000円 + 4,416,000円 = 税金 8,094,000円
※平均課税を用いずに、通常の超過累進税率を用いた場合
35,000,000円に対する税金を超過累進税率で計算 → 税金 11,204,000円
結果、平均課税を利用すると3,110,000円お得になります。
5 最後に
計算例で示したように、平均課税を使用する場合と使用しない場合とでは税金に大きな違いが出ることがあります。
臨時的な収入があったような方は、平均課税制度が適用できないかを検討してみることをお勧めします。
ここでは書いていない細かい要件もありますし、実際に適用する場合は、確定申告に計算書を添付する必要もあります。
分からないことがあればお気軽にお問い合わせ下さい。