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必見!合併時の税務申告

こんにちは!公認会計士の岸です。

現状のコロナ禍において、業績悪化に悩まれている中小企業様は多いかと思われます。

その中で、事業の継続が困難になり、会社や事業を他社に売却するM&Aの動きが徐々に活発になってくるものと思われます。

M&Aを実行する際には、様々な税務論点の検討が必要となり、特にメインの論点となる

組織再編の適格判定や欠損金の引継ぎに関しては多くの書籍や文献が存在します。

一方で、実際の申告書をどう書くか、といった部分を解説している媒体はそこまで多くないように見受けられたため、

私自身の備忘も兼ねて、組織再編時の申告書作成の実務的な留意点をご紹介いたします。

組織再編には様々な形態がありますが、ここでは、ある会社が他社を吸収合併した場合を想定します。

※ 2022.6.2追記 一部内容に誤りがあることが解り、訂正させて頂きました。大変失礼しました。

※ 2022.6.2追記 一部の様式が変更されていますが、古い様式での記載例となっています。

1.想定条件

以下の条件を想定して、申告書の記載例などを紹介していきます。

簡単な吸収合併のケースを想定します。

2.法人税申告(被合併法人)

被合併法人の最終事業年度の申告といっても、基本的には通常の期の申告と同様に税務処理を行えば問題ありません。

ただし、申告書の記載上、いくつかの留意点があります。

■国税申告書(別表一)

主な記載欄ごとの情報は以下の通りです。

記載例は以下の通りです。

提出先等

被合併法人の情報ではなく、合併法人の情報を記載する点に注意しましょう。

被合併法人の最終事業年度の税金の申告、納付時には、被合併法人は合併により消滅してしまっていることから、

合併法人が申告、納付を行うためです。

なお、法人名の欄では、合併法人名の後ろに、被合併法人名を併せて記載します。

旧納税地及び旧法人名等

被合併法人の納税地及び法人名を記載します。

添付書類

以下の書類にチェックを付けます。

通常の申告ではチェックが付かない場所かと思いますので、チェック漏れに注意しましょう。

また、チェックするだけではなく、書類の申告書への添付も忘れないようにしましょう。

◆“組織再編成に係る契約書の等の写し“

:合併の場合には合併契約書の写しです。

◆“組織再編成に係る移転資産等の明細書”

:(2)で説明する付表のことです。

利用者識別番号(e-Tax)

電子申告を行う法人限定の注意点ですが、利用者識別番号も合併法人の番号を使用しますので注意してください。

■組織再編成に係る主な事項の明細書(付表)

組織再編を行った際にはこの付表の添付が求められます。

当該付表は2020年12月時点において、電子申告に対応していないため、電子申告の達人などで

電子申告を行う際には、申告書の添付資料として、別ファイルで送付する必要があります。

記載例は以下の通りです。(当該附表は2020年12月時点のものです)

組織再編成の態様

該当する組織再編の形態をチェックします。

また、組織再編成の日には、合併契約書に記載されている組織再編の効力発生日を記載します。

適格区分

法人税法上の適格組織再編に該当するかどうかをチェックします。

適格組織再編に該当する場合には、根拠条文を併せて記載します。

適格要件の条文は複雑なので、参照条文を誤らないよう注意しましょう。

●組織再編成に係る関連法人

合併法人及び被合併法人の情報を記載します。

(名称及び所在地)

●株式保有関係等

適格組織再編の判定の基礎となる、株式の保有関係や割合、事業関連性などを記載します。

該当する適格要件の形態によって、記載の必要な箇所が異なってきます。

記載例は、最も要件が多い、共同で事業を行うための合併による適格合併を想定しています。

■地方税申告書

地方税の申告書の各欄に記載する情報は以下の通りとなります。

記載例は以下の通りです。

提出先等

提出先や法人番号、所在地については、被合併法人の情報を記載します。

それ以外の法人名などの欄は、合併法人の情報を記載します。

利用者ID(eLTAX)

利用者IDは、東京都については被合併法人のIDを使うように回答がありましたが、

自治体によって運用が異なる可能性があります。

そのため、申告書の提出前に、各自治体へ合併法人と被合併法人のどちらの利用者IDを使用すべきか、

電話で確認するようにしましょう。

3.消費税申告(被合併法人)

法人税と同様のため、省略します。

提出先や納税地は全て合併法人のものを記載します。

4.税務届出関係

吸収合併の際に提出する税務届出で基本的なものは以下の通りです。

この他にも、被合併法人が課税事業者選択届出書を提出している場合で、

合併法人が課税事業者の選択の特例を適用したい場合には、合併法人として改めて届出書を提出する必要があるなど、

個々の事例によって求められる届出が変わります。

また、特に会社分割の場合には、下記の国税庁のHPにもあるように、提出を検討する届出書が多岐に渡るため、

慎重な検討が必要になります。

届出の提出漏れが生じないように注意しましょう。

https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/kigyosaihen/mokuji.htm

5.合併における税務論点

以上では、申告書の記載について重点的に解説しましたが、合併における税務論点についても簡単に解説していきます。

合併にあたっては、そもそもその合併が適格合併に該当するのかどうか、

また適格合併に該当しても繰越欠損金が引き継げるのかどうか、といった点が最も重要な税務論点になるかと思います。

適格組織再編の判定や、繰越欠損金の取扱いについては非常に論点が多く、

それだけで本が1冊書けるような難解な税制になりますので、改めて記事にしたいと思います。

下記では、その他の合併における税務論点について俯瞰していきます。

◆適格合併の取扱い:

合併が税法上の適格合併に該当する場合には、被合併法人の資産負債は全て税務上の“簿価”で

合併法人に引き継ぐことになります。

そのため、いわゆる別表五(一)上の税務調整項目も、全て合併法人に引き継ぐことになります。

純資産部分についても、税務上の利益積立金額と資本金等の額をそのまま引き継ぐことになりますが、

親子間の合併などの場合には、抱き合わせ株式の調整が必要となりますので、注意が必要です。

他にも、法人税法では様々な規定に影響があり、過去の数値を使用して限度額計算や判定計算が

行われるような規定では、原則として被合併法人の数値と合併法人の数値の合計額で判定を行うことになります。

◆非適格合併の取扱い:

合併が税法上の非適格合併にが該当する場合には、被合併法人の資産負債は全て“時価”で

合併法人に譲渡されたものとして取り扱います。

被合併法人では時価譲渡により譲渡損益を認識する必要がありますし、

合併法人側ではいわゆるのれん相当額を 資産(負債)調整勘定という形で、

税務上の資産(負債)として認識します。

◆被合併法人のみなし事業年度:

合併を行った場合には、被合併法人は合併により消滅するため、合併が期中に行われた場合には

被合併法人の事業年度が1年を経過しない途中で途切れることになります。

この、途中で途切れた被合併法人の最終事業年度を、みなし事業年度といいます。

合併の効力発生日の前日が、被合併法人のみなし事業年度の末日となります。

◆事業年度が1年未満の場合の各種取扱い:

減価償却資産の償却率については、事業年度が1年存在することを前提として設定されています。

そのため、みなし事業年度が1年未満となる場合には、みなし事業年度の月数で償却率を調整することが必要となります。

また、交際費の定額控除限度額、法人税の税率判定、地方税の均等割、なども年額をベースとしているため、

月数による調整を行う必要があります。

◆納税義務判定と簡易課税判定(消費税):

合併により被合併法人を吸収した合併法人については、被合併法人の基準期間に相当する期間の課税売上高を考慮して、

納税義務判定を行う規定が設けられています。

課税事業者の判定漏れがないように注意しましょう。

一方で、簡易課税制度の適用判定における基準期間における課税売上高は、合併があったとしても

合併法人の課税売上高のみを使用して判定します。

納税義務判定の計算と混同しないように注意が必要です。

◆調整対象固定資産(消費税):

被合併法人が調整対象固定資産を取得しており、その調整対象固定資産を合併により合併法人が引き継いでいる場合には、

調整対象固定資産の調整計算に係る通算課税売上割合の判定を、合併法人で引き続き行う必要があります。

6.さいごに

今回は、吸収合併の場合を想定し、主に申告書の記載方法についてメインに解説いたしました。

M&Aは検討すべき論点が非常に多岐にわたり、税務業務の中でも高度な知識が求められる分野です。

事前に組織再編業務に精通した税理士に、組織再編実行時だけではなく、

事前のスキーム策定まで含めて相談することが非常に重要です。

弊社でもM&Aのスキーム提案などを数多く行っており、M&Aのマッチングサイトのアドバイザーとしての登録も行っています。

M&Aに興味がある方は、弊社でも様々なアドバイスや提案が可能ですので、お気軽にご相談いただければと思います。

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