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災害により損害を受けたときの所得税の軽減措置とは!?【雑損控除~制度概要~】

こんにちは。

税理士の山田です。

 

台風15号及び19号による被害は甚大なものがありました。

被害を受けてしまった方々に心からお見舞い申し上げます。

 

また、災害によりご自宅などに損害を受けた方は多いかと思いますが、その場合については、所得税の軽減措置があります。

制度としては少し複雑なものとなりますが、まとめていきたいと思います。

ご自宅などの被害に遭われた方の一助になれば幸いです。

 

さて、地震・火災・風水害などによって、住宅や家財などに損害を受けたときは、

確定申告で下記のいずれかの方法で所得税の軽減を受けることが出来ます。

 

Ⅰ「所得税法」による雑損控除による方法

Ⅱ「災害減免法」による所得税の軽減免除による方法

 

どちらか有利な方法を選ぶことが出来ますので、それぞれどのような制度なのか整理していきたいと思います。

1 制度概要

まず、それぞれの制度の概要を表に整理します。

Ⅰ「所得税法」による雑損控除による方法

項目内容
損失の発生原因災害盗難横領による損失
対象となる資産の範囲等住宅家財(家具、家電、什器、衣類、書籍、現金など)車両等で生活に通常必要な資産

※対象にならないもの・・・棚卸資産や事業用の固定資産、生活に通常必要でない資産(高級車、別荘、ゴルフ会員権、1個で30万円を超える貴金属・書画・骨とう等)

控除額の計算控除額は次のAとBのうち、いずれか多い方の金額です。

A 差引損失額-総所得金額等の10分の1

B 差引損失額のうちの災害関連支出の金額-5万円

控除の期間3年間の繰越控除が可能

 

Ⅱ「災害減免法」による所得税の軽減免除による方法

項目内容
損失の発生原因災害による損失(盗難・横領は×)
対象となる資産の範囲等住宅又は家財の損失額(※1)が、その価額の2分の1以上である場合
所得税等の軽減額その年分の所得金額所得税等の軽減額
500万円以下全額免除
500万円超750万円以下2分の1の軽減
750万円超1,000万円以下4分の1の軽減
控除の期間被害を受けた年のみで控除が可能

 

どちらの制度を使うのが有利かは非常に判定が難しいですので、どちらも当てはめて計算してみて有利となる方で申告をしましょう。

 

2 「差引損失額」「災害関連支出の金額」とは

(1)「差引損失額」の計算方法

「差引損失額」とは下記の算式で求めます。

差引損失額

=損害金額※1+災害等に関連した
やむを得ない支出の金額※2

保険金などにより
補てんされる金額※3

 

※1 「損害金額」とは、損害を受けた直前におけるその資産の時価を基にして計算した損害の額です。計算方法については、次の(2)で詳しく説明していきます。

※2 「災害等に関連したやむを得ない支出の金額」とは、災害の場合にはほとんど「災害関連支出の金額」とイコールと考えてください。

※3 「保険金などにより補てんされる金額」とは、災害などに関して受け取った保険金・災害見舞金・損害賠償金の合計額です。

 

(2)「損害金額」

損害金額の計算は下記の区分に応じて計算します。

① 住宅に対する損失額の計算

A 住宅の取得価額が明らかな場合

損失額(注1、2) =(住宅の取得価額 - 減価償却費) × 被害割合※

B 住宅の取得価額が明らかでない場合

損失額 =〔(1m2当たりの工事費用※ × 総床面積)- 減価償却費〕 × 被害割合※

② 家財に対する損失額の計算

A 家財の取得価額が明らかな場合

損失額 = (家財の取得価額 - 減価償却費) × 被害割合※

B 家財の取得価額が明らかでない場合

損失額 = 家族構成別家庭用財産評価額※ × 被害割合※

③ 車両に対する損失額の計算

損失額 = (車両の取得価額 - 減価償却費 )× 被害割合※

 

下記の国税庁HPにてそれぞれの別表情報を公表しています。

https://www.nta.go.jp/about/organization/tokyo/topics/sonshitsu/index.htm

別表1 地域別・構造別の工事費用表(1平方メートル当たり)
別表2 家族構成別家財評価額
別表3 被害割合表

 

非常に複雑な計算となりますが、諦めずにチャレンジしましょう。

判断に迷う部分についても所轄の税務署にも相談しながら進めて下さい。

 

(3)「災害関連支出の金額」

災害関連支出は、災害に関連してやむを得ない支出をいい、次のようなものが該当します。

① 被災した資産の取り壊し・除去のための支出

・住宅、家財などの取り壊し・除去

② 被災した資産を使用できるようにするための支出で災害後1年以内(大規模な災害の場合には3年以内)に支出したもの

・土砂その他の障害物を除去するための支出

・原状回復のための支出(損失部分の金額を除く)

・損壊又は価値の減少を防止するための支出

③ 被害の拡大又は発生を防止するため緊急に必要な措置を講ずるための支出

・倒壊する恐れがある住宅からの家具の搬出

・家屋の倒壊を防止するための雪下ろし

 

3 どのように確定申告の準備をすべきか?

色々と複雑な説明を続けましたが、まずすぐに準備出来ることは何か?

そんな視点で内容をまとめてみましたので、参考にしてみてください。

 

(1)罹災(被災)証明書の取得

まず前提として罹災証明書の取得は必須ではありません。

なので、仮に罹災証明書が無かったとしても諦めないでください。

ただ、罹災証明書があることによって税金の還付手続きもスムーズに進められる可能性が高いです。

可能な限り証明書の取得申請をしておきましょう。

 

罹災証明書の申請はお住いの市区町村に対して行います。

その際には『現場の被害状況が解る写真など』があると手続きがスムーズに進みますので、準備しておきましょう。

 

(2)被害を受けた資産の取得時の情報を把握

損害額の計算にあたって、被害を受けた資産の取得時の情報、つまり、資産内容、取得時期、取得価額が解るとベターです。

ただし、情報が無かったとしても『取得価額が明らかでない場合』の計算方法を上記国税庁のHPにて記してくれています。

諦めずに計算してみましょう。

 

(3)被害を受けた資産の取得時の情報を把握

後は実は確定申告にあたって提出が必須となる書類は『災害関連支出の金額の領収証と明細』のみとなります。

ただし、(1)(2)にも記載の通り下記の書類があると、手続きがスムーズに進められますので参考にしてください。

 

・被害を受けた資産の明細(内容、取得時期、取得金額)が解るもの

・保険金、損害保険金、災害見舞金があれば、その金額が分かるもの

・市町村から交付を受けた罹災(被災)証明書の写し

・その他源泉徴収票などの通常の確定申告で必要な書類

 

4 最後に

災害により損害を受けたときの所得税の軽減措置についてまとめてみました。制度としては、非常に複雑なものとなりますので、出来る限り正確かつシンプルに整理しました。

それでも中々すぐに見て解る説明ではないと思いますが、特に『3どのように確定申告の準備をすべきか?』について準備を進めて最後は税務署に相談しましょう。

 

どこまでの情報でどこまで税金の還付が受けられるか最終的な判断は税務署で行います。

税務署の職員は優しい方も多いですし親身になって対応してくれます。

 

『税金を徴収する怖い人』というのは過去のイメージですので、気軽に問い合わせて見てください。

雑損控除は災害による被害を受けた方の優遇制度として設けられた制度です。

ちゃんと制度を使うことが出来る多くの方々が、適正に制度の適用を受けられることを祈っています。

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