税理士が紐解くパナマ文書!タックスヘイブンとは?
こんにちは。
税理士の山田です。
久しぶりの投稿となりましたが、本日はパナマ文書について書いてみようと思います。
パナマ文書とはモサック・フォンセカという法律事務所によって作成された一連の機密文書であり、
オフショア金融センターを利用する21万4000社の企業の、株主や取締役などの詳細な情報記されている、と報道されています。
要は世界の金持ちや有名企業が税金を課税されないように、秘匿性が高い国であったり、
税率が低い国にお金を預けており、その情報が流出してしまったということです。
ここでいう税率が低い国のことをタックスヘイブンという言い方をします。
この報道で脱税という言葉が使われているケースがありますが、これは脱税にあたるのでしょうか。
ここでは過去と未来という二つの視点で、検討をする必要があります。(あくまで日本の税制についての話です)
1 今までにタックスヘイブンで稼いできた資金は申告する必要があるか。(過去)
通常タックスヘイブンを利用するスキームでは現地に株式会社等を設立し、そこで資金の運用をします。
個人であっても法人であっても、日本の税法では全世界で発生した利益に対して税金が課税されます。
株式会社は法律上は会社ごとに人格が異なりますので、タックスヘイブンにある会社を日本の法律で課税することが出来ません。
そのため日本の税法ではタックスヘイブン対策税制という法律があります。
これは、①軽課税国(税率が20%未満)にある会社で②日本からの出資割合が高い会社については
日本株主側でその分の利益を課税しますよ、という法律です。(これは株主が個人でも法人でも課税されます)
このような税制に対抗するために、日本の税制に合わせて税率を調整したり、
もしくは自分で税率を選択することができる国が存在したりもします。
もう一つの対策としては要件②の日本からの出資割合が高い会社がこの税制の対象になってしまうために、
現地の法人と共同して50%ずつの出資割合で法人を設立すると、税制の対象から除外されたりもします。
もう一つこの税制から逃れる手段として、適用除外要件というものがあります。
これは、①主要な事業が株式の保有等ではなく、②現地に事務所等の実態があって、
③その管理支配を現地でちゃんと行っていて、④ただの下請け会社でないようなケース
については上記のタックスヘイブン対策税制からの適用を受けない、つまり日本の税金は課税されません。
通常、大手の会社や富裕層がタックスヘイブンに法人を作る場合には、
上記の点をちゃんと踏まえた状態で法人を設立しますので、その場合には脱税行為にはあたりません。
(ただし、上記の適用除外要件をちゃんと満たすことが出来ず、後になって巨額の課税を受けるケースが実際にあります)
2 今後タックスヘイブンに貯めている資金をどうするか(未来)
日本では人が亡くなった場合には相続税という税金が課税されます。
これは海外に持っている財産も含めて、その方が持っていた財産全てに税金が課税されます。
パナマ文書で公開されたような方々の中には、海外にお金を預けてしまい、
亡くなったときには申告せずに隠してしまおうと目論んでいる方もいるかもしれません。これは明らかに脱税行為です。
このようなことを防ぐために、日本では海外に持ってい財産が5000万円以上の個人については、
毎年財産の内容を税務署に申告させるような制度が数年前から開始しました。
ただし、本件に関しても多額な海外資産を持っている方については実際には申告をしていないケースも多いでしょう。
この申告というのは、あくまで財産の内容を税務署に伝えるだけで税金が課税されるものではないからです。
この辺りについては、マイナンバー制度とも関連しますが、
どこまで個人情報を国に公表すべきなのかという議論もありますので割愛します。
いずれにせよ財産をタックスヘイブンに所有しているだけで脱税行為になるわけではなく、
合法にタックスヘイブンで運用をする方法もあるということです。
特に日本企業の子会社がタックスヘイブンにあるケースでは、そこで生まれた利益を日本に配当しても
ほとんど税金が課税されることがありませんので、合法に資金を日本に持ってくることも可能です。
ただし、この方法は一歩間違えるとタックスヘイブン対策税制という網引っ掛かり
過去に遡って多額の税金が課税される可能性もありますので注意が必要です。