新型コロナウイルス感染症に関する申告期限の延長について徹底解説!!
こんにちは。
税理士の山田です。
この度の新型コロナウイルスの影響で多大な被害が出ております。
まずは、実際に被害に遭われている方にお見舞いを申し上げます。
今回の新型コロナウイルスの対策について国税庁は柔軟な対応をしてくれています。国税庁のHPにてQAが公表されていますが、こちらを紐解いて見ようと思います。
今回は条文などをベースにした解説で、解りやすさよりも根拠を重視していますので、どちらかというと同業者の方向けの内容となりますので、解り難さにはご了承ください。
国税庁よりFAQ公開
現状、新型コロナウイルスに関連した申告期限の延長について、下記の3件のFAQが公表されています。
国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ(PDF/1,252KB)
申告所得税、贈与税及び個人事業者の消費税の申告・納付期限の個別指定による期限延長手続に関するFAQ(PDF/708KB)
法人税及び地方法人税並びに法人の消費税の申告・納付期限と源泉所得税の納付期限の個別指定による期限延長手続に関するFAQ(PDF/846KB)
上記のFAQでは個人や法人の確定申告について個別延長を認めます、という旨の記載があります。
どのような場合に個別延長が認められるか?
FAQでは、具体的には下記のような場合に個別延長が認められる、とあります。
○ 新型コロナウイルス感染症の影響により、法人がその期限までに申告・納付ができないやむを得ない理由がある場合には、申請していただくことにより期限の個別延長が認められます。
○ このやむを得ない理由については、例えば、法人の役員や従業員等が新型コロナウイルス感染症に感染したようなケースだけでなく、次のような方々がいることにより通常の業務体制が維持できないことや、事業活動を縮小せざるを得ないこと、取引先や関係会社においても感染症による影響が生じていることなどにより決算作業が間に合わず、期限までに申告が困難なケースなども該当することになります。
① 体調不良により外出を控えている方がいること
② 平日の在宅勤務を要請している自治体にお住いの方がいること
③ 感染拡大防止のため企業の勧奨により在宅勤務等をしている方がいること
④ 感染拡大防止のため外出を控えている方がいること
○ また、上記のような理由以外であっても、感染症の影響を受けて申告・納付期限までに申告・納付が困難な場合には、個別に申告・納付期限の延長が認められます。
〇 新型コロナウイルス感染症に感染した⽅はもとより、体調不良により外出を控えている⽅や、平⽇の在宅勤務を要請している⾃治体にお住まいの⽅、感染拡⼤により外出を控えている⽅など、新型コロナウイルス感染症の影響により、確定申告会場にお越しいただくことが困難な⽅や、申告書を作成することが困難な⽅については、個別に申告期限延⻑の取扱いをすることとしています。
非常に幅広い書き方がされておりますので、実際のところでは緊急事態宣言が発令されているエリアに本店を構えている会社や住所がある個人については、ほぼ個別延長が認められるのではないかと思われます。
個別延長とは何か?
また、今回の個別延長は国税通則法 11 条、国税通則法施行令3条3項、4項の規定に基づく延長となります。
少し前に個人の所得税・贈与税・消費税の申告期限が一律で4月16日まで延長されましたが、これは国税通則法 11 条、国税通則法施行令3条1項の規定に基づく延長で、個別ではなく、国税庁がエリアなどを指定して延長を決めるものになります。
条文を整理します。
国税通則法第11条 災害等による期限の延長
国税庁長官、国税不服審判所長、国税局長、税務署長又は税関長は、災害その他やむを得ない理由により、国税に関する法律に基づく申告、申請、請求、届出その他書類の提出、納付又は徴収に関する期限までにこれらの行為をすることができないと認めるときは、政令で定めるところにより、その理由のやんだ日から2月以内に限り、当該期限を延長することができる。
国税通則法施行令第3条 災害等による期限の延長
1 国税庁長官は、都道府県の全部又は一部にわたり災害その他やむを得ない理由により、法第11条(災害等による期限の延長)に規定する期限までに同条に規定する行為をすることができないと認める場合には、地域及び期日を指定して当該期限を延長するものとする。
3 国税庁長官、国税不服審判所長、国税局長、税務署長又は税関長は、災害その他やむを得ない理由により、法第11条に規定する期限までに同条に規定する行為をすることができないと認める場合には、前2項の規定の適用がある場合を除き、当該行為をすべき者の申請により、期日を指定して当該期限を延長するものとする。
4 前項の申請は、法第11条に規定する理由がやんだ後相当の期間内に、その理由を記載した書面でしなければならない。
本来は納税者の申請に基づいて延長の処分を決めるのですが、今回はFAQにて『別途、申請書等を提出していただく必要はなく、申告書の余白に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」である旨を付記していただくこととしております』と案内があります。
具体的な記載の方法については、FAQを確認してください。
納付期限も全て延長されているのか?利子税・加算税は?
FAQにおいて『この場合、申告期限及び納付期限は原則として申告書等の提出日となります。』と記載があります。上記のように申告書に延長申請の旨を記載して提出すると、申告書の提出日が納付期限となります。
ここで気になってくるのが、利子税と加算税の取扱いです。とくに、法人税の申告期限の延長の場合などは申告期限内であっても利子税が掛かりますが今回はどうなのでしょうか。
まず、延滞税・利子税について条文を確認してみましょう。
国税通則法第63条 納税の猶予等の場合の延滞税の免除
2 第11条(期限の延長)の規定により国税の納期限を延長した場合には、その国税に係る延滞税のうちその延長をした期間に対応する部分の金額は、免除する。
国税通則法第64条 利子税
3 第60条第4項、第61条第2項(延滞税の額の計算の基礎となる期間の特例)、第62条(一部納付が行われた場合の延滞税の額の計算等)並びに前条第2項及び第6項の規定は、利子税について準用する。
つまり、国税通則法11条に基づく期限の延長ですので、利子税や延滞税は掛からないということです。ただし、申告書の提出日が納付期限となりますのでそれ以降については延滞税・利子税がかかる点は注意してください。
なお、現在(4月12日時点で)国会で審議中の延滞税免除による納税猶予が可決されれれば、この辺りは関係なく延滞税が掛からなくなる見込みです。
いわゆる通常の法人税の延長申請は、法人税法の規定に基づく期限の延長ですので、その場合には利子税が掛かりますが、国税通則法11条は別の規定となります。
続いて、加算税についてみて見ましょう。加算税については、過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税と種類がたくさんありますが、過少申告加算税、無申告加算税について今回は当てはまらないので除外します。
不納付加算税について条文を確認します。
第67条 不納付加算税
源泉徴収等による国税がその法定納期限までに完納されなかつた場合には、税務署長又は税関長は、当該納税者から、納税の告知(第36条第1項(納税の告知)の規定による納税の告知(同項第2号に係るものに限る。)をいう。次項において同じ。)に係る税額又はその法定納期限後に当該告知を受けることなく納付された税額に100分の10の割合を乗じて計算した金額に相当する不納付加算税を徴収する。ただし、当該告知又は納付に係る国税を法定納期限までに納付しなかつたことについて正当な理由があると認められる場合は、この限りでない。
また、法定納期限とはどういう定義か?これは国税徴収法基本通達に記載があります。
(国税を納付すべき期限)
14 法第2条第10号本文の「国税に関する法律の規定により国税を納付すべき期限」については、次のことに留意する。
(1)通則法第11条《災害等による期限の延長》の規定により国税の法定納期限が延長された場合には、その延長された期限が法定納期限となる。
つまり、通則法11条の延長がされるとこれが法定納期限ということになりますから、源泉所得税の不納付加算税も掛からないものと思われます。