競走馬オーナーの所得税について
こんにちは。
税理士の大塚です。
12月22日は競馬の有馬記念でした。優勝賞金は3億円にもなるそうです。
歌手の北島三郎さんが所有するキタサンブラックが2017年に優勝したことも記憶に新しいところです。
今回は競走馬のオーナー、いわゆる「馬主」についての税金について解説します。
法人で馬主になることもありますが、個人のお話に限定します。
1 収益と費用
収益は、レースに出た際に貰える賞金や出走手当、もしくは競技中にケガを負った場合などにもらえる給付金といったものがあります。
費用としては、調教師に支払う委託料、騎手に支払う進上金、馬の輸送料などです。
通常の事業と同様、交際費や旅費交通費なども馬主事業に関するものであれば経費計上が可能です。
特徴的と言えるのは、競走馬の減価償却です。
器具備品や機械装置と同じように、競走馬も資産計上した上で、減価償却費として毎年徐々に費用化します。
競走馬の耐用年数は4年と決められています。
減価償却は、原則的には競走馬登録が完了した日から開始するのですが、継続適用することにより、馬齢二歳の4月から開始することも認められています。
2 事業所得か雑所得か
馬主の税金で、最も重要なのが事業所得になるか雑所得になるかという点です。
両者の最大の違いは、事業所得であれば損益通算ができますが、雑所得では損益通算ができないことです。
事業所得で赤字となった場合、他に給与所得などがあれば相殺することが可能です。
雑所得では赤字は切り捨てられて終わりです。
所有している馬があまり勝てないと赤字になる年も多くなりますので、事業所得として損益通算ができることは大きなメリットです。
その他、青色申告による最大65万円の青色申告控除など、事業所得の方が優遇されている規定が多くなっています。
事業所得になるかは、競走馬の保有数や出走回数によって決まります。
具体的には下記のような取り扱いです。
(1)保有頭数による判定
①その年において、登録期間が6月以上である競走馬を5頭以上保有している場合
②その年以前3年以内の各年において、登録期間が6月以上の競走馬を2頭以上保有し、かつ、その年の前年以前3年以内のうちに、競走馬の保有に係る所得の金額が黒字の金額である年が1年以上ある場合
(2)出走回数による判定
その年の前3年間の各年において競馬賞金等の収入があり、その各年のうち年間5回以上(2歳馬については年間3回以上)出走している競走馬を保有する年が1年以上ある場合
※事業所得として認められためには、日本中央競馬会や各地方競馬組合が発行する証明書の添付が必要となります。
一口馬主という制度もありますが、これは組合に対して出資をし、組合が競走馬を持つような仕組みで、賞金の配当なども口数に応じて受け取れますが、出資の配当という位置づけになり、雑所得になります。
3 消費税の納税義務者になることも
馬主事業で消費税の納税義務者になることもあります。
競馬の賞金は競走馬を出走したことによる対価であり、通常の事業の売上と同じく消費税がかかっています。
消費税は、幾つか例外規定はありますが、原則として前々年の課税売上が1,000万円以上の場合に納税義務が生じます。
賞金や出走手当などで、1,000万円以上あった場合は、翌々年に消費税納税義務が出ることに注意が必要です。
消費税は、賞金などの収入に対する消費税から、競走馬購入や経費など支払った消費税を控除して納付します。
競走馬の購入金額が大きいような場合は、還付となることもあり得ます。
納税義務がない場合でも、届出を出すことで敢えて消費税の納税義務者となり、還付を取ることもできます。
この場合、一定年数消費税の納税義務が生じますので、翌年以降の計画を検討して決める必要があります。
4 その他の税金
競馬の賞金については75万円を超えた場合、源泉所得税が引かれて入金されます。
源泉所得税はあくまで所得税の前払ですので、確定申告をすることで精算されます。
雑所得で赤字だった場合、損益通算もできないので確定申告をしても意味がないかと思いがちですが、源泉所得税が引かれている場合は申告することで還付を受けられる可能性があります。
個人事業税については、対象業種に入っていないためかかりません。
5 最後に
競走馬のオーナーにかかる税金は、事業所得になるか雑所得になるかでも取り扱いが大きく異なりますし、消費税の納税などもあり、奥が深いものです。
是非、今回解説したことを参考にして、税金面の検討もしてみて下さい。